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F/A-18

えふえーじゅうはち

アメリカのマクドネル・ダグラス社(現ボーイング社)が開発した戦闘攻撃機。元々はノースロップ社がアメリカ空軍向けの新型戦闘機として開発した「YF-17 コブラ」で、F-16に敗れたものの、汎用機を求めていたアメリカ海軍の目に留まったことで空母艦載機として採用が決まり、マクドネル・ダグラス社によって再設計された。愛称はスズメバチを意味する「ホーネット(Hornet)」。
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概要編集

愛称は「ホーネット(=スズメバチ)」。

かつてはアメリカ海軍の主力艦上戦闘機であったが、現在第一線部隊は全てF/A-18E/Fで代替されている。

しかしながらアメリカ海兵隊では現役でアップデートも継続されており、それ以外にも多くの採用国がある。

スレンダーなボディに双発のエンジンを載せた特徴的なシルエットにはファンも多い。


元々はF-15の数を補う戦闘機を開発するアメリカ空軍の計画、LWF(軽戦闘機計画)で「YF-17」(非公式愛称:コブラ)として提案したが、不採用。あちこち手直しして今度は海軍の計画に応募し、こちらは見事に採用となる。


その高い汎用性とコストパフォーマンスのよさによりF-4戦闘機とA-7攻撃機を一挙に代替することに成功した。

しかしながら搭載重量は前任のF-4やA-7に劣り、空戦性能においては加速性能や高速域での性能低下が指摘されるなど、(高性能化したアビオニクスでカバーしているとはいえ)専門機には一歩及ばずに器用貧乏と言われることも多かったりする。

再設計型のF/A-18E/Fでは機体のサイズが従来よりも大型化し搭載量の少なさを改善、F-14A-6まで代替したほか、本来の戦闘攻撃機としての能力を拡張する以外にもEA-6Bを代替する電子戦機型のEA-18Gも製造されている。

更にKA-6Dの代替としてバディポッドを搭載する空中給油機としても使い回せる。

このように様々な機の任務を引き継いでいった結果、米空母はF/A-18ファミリーで埋め尽くされ、F/A-18は高い汎用性を証明することになった。


F/A-18の『同じ機体で様々な任務に対応させる』という考えは冷戦後の軍事事情にも合致しており、その後ヨーロッパに多用途化の風を吹かせたきっかけであるという意見もある。

実際にミラージュ2000Su-27はその後に改修で対応し、タイフーンラファールでは設計から対応する事になった。

だがF/A-18が妥協を余儀なくされたように、対空、対地の両立は困難を伴うため、その後の戦闘機開発では計画炎上が半ば定番化してしまっている。


ちなみに、F(戦闘機)とA(攻撃機)を最初から形式番号に併せ持つ戦闘機は珍しい。

F/A-18の場合、当初戦闘用の「F-18」と攻撃用の「A-18」に分けられる予定だったものが統合されてこうなったという経緯がある。


開発編集

ノースロップ社はF-5が海外での成功を収めたが、国内では採用を勝ち取れずに失敗したことを反省し、今度は更に近代的な構成を試み、「P-530」を設計する。

F-5Eが多目的機として運用されていることに着目し、低翼から中翼に変更して大型の武装を搭載できるように変更、またF-5で発見されたLERXを拡大、更にエリアルールを考慮し双垂直尾翼をやや前方に持ってきている。


こうして作ってはみたものの、当時大口の採用計画が純粋戦闘機を求める空軍のLWF(軽戦闘機計画)しかなかったので、P-530を空戦特化の「P-600」として再設計、これをYF-17としてLWFに提出する。

結局LWFにおいては、短い航続距離に加えて実績の無い開発中のエンジンを使用していた事、更にF-16のコックピット形状による視界の良さがパイロット達に好印象だったことがあって、ジェネラル・ダイナミクスのYF-16が制式化されてしまった。


YF-17が敗れたのと同じころ、アメリカ海軍はVFAX(海軍戦闘攻撃機研究)というプロジェクトを始動させていた。

元々はF-14がVFAXにより採用されていたのだが、F-14は実際のところ艦隊防空に特化していて対地攻撃能力が不足しており、加えて非常に高価だったので採用数が限られてしまった。NACF(海軍航空戦闘機)として計画が再始動すると、F-14を数の面で補いつつ、優れた対地攻撃能力を持つ機体が求められ、海軍向けに改修されたYF-16とYF-17が再度ぶつかることになる。

その結果、双発故に動力を完全喪失するリスクが少なく、また艦上機としての改修がより容易であると判断されたYF-17が採用枠を勝ち取ることになり、新たに「F/A-18」として採用が決まった。


なお、ノースロップ社には艦上戦闘機の開発経験が無かった為、海軍はやむなく主契約社をマクドネル・ダグラス社に変更、ノースロップ社はその下請けに甘んじるという結果になった。ノースロップで最後に制式採用を勝ち取った戦闘機は、お株を奪われてしまったのだった。(計画案では輸出専用機としてF-18Lという陸上配備型がノースロップの製造とすることとなっていたが、F-16と競合することや実績がない機体ということで、採用した国はない。どこまでも苦汁を飲ませられる格好である。)


これまでに正式採用されたノースロップ社製の戦闘機

P-61ブラックウィドー

F-89スコーピオン

F-5タイガーⅡアグレッサー機として採用)

以上の3機種のみであり、社運をかけて競作に挑んだことを窺わせる。


機体編集

後退角が小さく直線に近い翼平面形であり、これとLERXによりF-16よりも低速での旋回性能は高い。この性能は空母での繊細な発着艦を助けており、また対地攻撃でも小回りの利いた動きができる。さらに迎え角の制限がないため、急角度での機首上げも得意である上に、海外の航空ショーではF-22のような最新鋭機にも負けない、かなりトチ狂った機動も披露している。

エンジンのレスポンスもアイドリング状態から4秒以内にアフターバーナー全開に出来る程優れているので、発艦時から亜音速域までの急加速には長けている。

しかしながらLERXが空気抵抗を生んでしまい高速域での加速性能には難がある。また艦上戦闘機として主翼に折り畳み機能があるため耐G性能が低い(ただし負担をかけずに前述した高機動ができるという点ではメリットにもなる)上、推力重量比も低い(=急激な機動を行った後運動エネルギーの回復がしにくい)ため、瞬発力は高いが総合的な運動性能はF-16にやや劣るという評価がされる。

ただ、実は兵装搭載量はF-16より上で、やろうと思えばAIM-9×2+AIM-120×10という、F-15もびっくりなトチ狂った武装も可能だったりする。また、登場当時はF-16にはまだなかった視程外戦闘能力を最初から備えており、カナダオーストラリアスペインは双発の安全性と合わせて評価しF-16を下して採用した。


C/D型スイス軍仕様と中後期仕様ではエンジンと構造が強化され、対空ミサイル4発搭載の空対空戦用装備だと890km/hの速度で8.45Gの向心力に楽々耐えて19.2°/sの維持旋回率(=速度を保ったままでの旋回速度)を叩き出し(非武装状態なら9.0G対応となっている)、加速性能も離陸から高度15000m、M1.4までの上昇・加速時間が69%に短縮される等かなり改善されているが、それでもF-15やF-16と比べると高空・超音速領域での加速性能は劣っている。

低空での亜音速域以下での運動性はF-15もF/A-18Cも890km/hで20°/sと維持旋回性能が互角で、エンジンレスポンスの良さからF/A-18Cの方が瞬間的な急加速には長けているが、高速域の加速は低空だとM0.8→1.08までF-15Aが17秒程度で加速出来るのに対して、F/A-18Cは21秒かかり、高度10600mの高空ではF-15AがM0.9→1.6まで80秒程度で加速出来るのに対して、F/A-18Cは2分も掛かってしまう。


初期の運用でLERXから生まれた渦が垂直尾翼に直撃、振動により損傷させてしまうことが判明し、A/B型では垂直尾翼の根元を補強、C/D型からは渦の方向を変えるためのフィンが設置された。このフィンはA/B型にも後に追加され、LERXの設計が変わったE/F型には存在しないため、外見上分かりやすい違いとなっている。


目には見えない点だが、信頼性、整備性も格段に向上しており、平均故障感覚は他の海軍機の3倍、整備にかかる時間は半分だという。


操縦についてはF-16同様にフライ・バイ・ワイヤが導入されており、パイロットが直接動翼を動かすのではなく、姿勢制御コンピュータがパイロットの操作を受け取り、意に添うようにすべての動翼を統合制御する形式になっている。空母からの発艦も自動制御により手放しで行える。

一方で従来の機械式操縦系統はバックアップとして残っていたり、操縦桿はF-16が採用したサイドスティックではなく従来通りのセンタースティックになっていたりと、F-16に比べると保守的な部分もある。

サイドスティックは特に高Gでの操作がやりやすい一方、右手でしか握れないため、右側のスイッチを操作したかったり、身をよじって後方を確認するような場合には不便になる。

また、フライ・バイ・ワイヤも当時はまだ信頼性が未知数で電磁干渉による誤作動の恐れがあり、狭い飛行甲板でさまざまな機器の電磁波に晒される艦載機としてはまだ操縦系統の完全デジタル化は好ましいものではなかった。

操縦系統の完全デジタル化はE/F型で実現したが、操縦桿はコックピットレイアウトを引き継いだ関係でE/F型でもセンタースティックのままである。


バリエーション編集

F/A-18E/Fスーパーホーネットの配備によって旧型となった下記のバリエーションは、非公式にレガシーホーネットの呼称が与えられている。

  • F/A-18A/B

本機の初期型。C/Dと比べ、垂直尾翼のフェアリングの数や胴体上部のアンテナなどが異なる。(後にA+としてアップグレードされた機体がある。こちらはCに応じて改造されている為、尾翼のみが異なる)

アメリカ以外ではカナダ(後述)、オーストラリア、スペインが採用。

  • F/A-18C/D

A/Bのアップグレード型。外見上の変化は少ないが、機体の軽量化によって搭載量の少なさを改善した他、夜間作戦能力の付与、エンジンの強化などが段階的に行われた。アメリカ海兵隊ではD型が複座の戦闘爆撃機として使用されており、さらにその一部には偵察ユニットのATARSが取り付けられている。

アメリカ以外ではクウェートスイスフィンランドマレーシアが採用。

  • F-18L

計画のみ。ノースロップが担当するはずだった「陸上配備専用型」。地上での運用には不要な艦上機用装備がないため性能面では艦上機型を上回るという触れ込みだったが、各国ユーザーは実績のある艦上機型をそのまま採用したことから実機は製造されず。

  • CF-18A/B

カナダ向けのF/A-18A/B。同空軍ではCF-188と呼ばれる。機首左側に夜間識別用サーチライトを装備しており、後にこれは輸出向けC/D型の標準装備になった。


再設計機。機体を一回り大型化し、エンジン、電子機器も強化されている。共通部分が10%しかなく、ほぼ別物とも言われる。

詳しくはそちらの記事へ。

上記のF型の派生型であり、電子戦機。

詳しくはそちらの記事へ。


将来編集

レガシーホーネットの生産は2000年に終了し、スーパーホーネットに切り替わった。

それから20年以上経った現在、アメリカでは既に海軍での運用が終了し、海兵隊のみが運用している。海外でも、オーストラリアでは既に運用終了、他の国でも後継機が決まりつつある状態と、退役の動きが進みつつある。

しかし放出された中古機は一部で未だに需要があり、その中には空中戦訓練を請け負う民間軍事会社も含まれている。近年はウクライナ侵攻によりF-16だけでなく各地からさまざまな新戦闘機をかき集めようとしているウクライナもF/A-18を要請しているという。

レガシーホーネットが第一線から引いても、世界の空からすぐに消えるという事はなさそうだ。


フィクションでの活躍編集

反攻の狼煙を上げる米軍の主力機として、「エイリアン共をファック」していた。

F/A-18Cの放ったハープーンミサイルがハリウッド版ゴジラを撃破している。

毎回大規模な対地(対艦)攻撃作戦が展開される直前のあたりで長距離対地対艦ミサイルと共に使用可能になる為、お世話になったプレイヤーも多い事だろう。

VXガスを無力化するテルミットプラズマを搭載し、テロリストに占拠されたアルカトラズ刑務所を空爆するため、6機が出撃する。

原子力空母「ロナルド・レーガン」の艦載機として登場。

ウルトラマン80』で本機をベースにした地球防衛軍(UNDA)戦闘機が登場したほか、『ウルトラマンG』にはオーストラリア空軍所属機が、『ウルトラマンメビウス』にはGUYS所属機が登場している。

「ニビリア海戦」で敵機として登場。原子力空母「エンタープライズ」から発艦し、自機のミサイルを振り切るほどの高速で飛び回りながら機関砲で攻撃してくる。


関連タグ編集

戦闘機 攻撃機 戦闘攻撃機

アメリカ合衆国 アメリカ海軍

F-4F-14A-6A-7:主だった前任機。湾岸戦争まで活躍。

A-4:前任の前任。愛称「スカイホーク」。亜音速ジェット攻撃機でありながらコンパクトなボディで運動性が高く、戦闘機としての役割も担った事がある上に実際にジェット戦闘機を撃墜した記録を持つ。さらに練習機や仮想敵機としても長く活躍した。ベトナム戦争時代の機体だが一部の国ではまだまだ現役。

A-1:前任の前任のそのまた前任。愛称「スカイレイダー」。朝鮮戦争からベトナム戦争末期まで活躍したレシプロ機。攻撃機、爆撃機、雷撃機とまさに万能機と呼べる活躍をした。また、ジェット戦闘機を2機撃墜した記録もある。

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