A-6「イントルーダー」とは
グラマン社が開発した全天候型の攻撃機である。
電子機器の充実を優先して開発された最初のジェット攻撃機でもある。
並列複座型という軍用機には珍しい座席の配列となり、パイロットと爆撃・航法士が乗る。
兵装搭載量はおよそ8tと、第二次大戦中の爆撃機に匹敵するレベルである(参考までに、B-17は最大5.8t、B-29は最大9t)。
1965年にベトナム戦争で初の実戦デビュー。
運用当初は整備性・信頼性が低く(新型なら当然ではあるが・・・)、ベトナムのような熱帯雨林気候の戦場では、レーダーなどの電子機器の故障が多発し、稼働率は低下した。
しかし、66年末に気象が荒れ、目視爆撃など出来るはずもないほとんどの艦上機が作戦不能となってしまった。
そんな中でも、唯一レーダーを搭載していたA-6だけは作戦できたのだ。
海軍はそれを評価し、トラブルは少しずつ、粘り強く改善されていった。
冷戦後は予算が割り振られなくなり、改良型のA-6F/Gのみならず、後継のA-12まで計画中止となった。改修されなかったA-6Eは機体の老朽化に伴い、1997年に引退した。
任務はF/A-18「ホーネット」に引き継がれている。
電子戦型であるEA-6B「プラウラー」はその後も長く第一線で活躍し、EA-18G「グラウラー」に置き換えられる2019年まで運用された。
派生型
A-6A(A2F-1)
最初の生産型。のちのE型と違い、胴体にもエアブレーキがある。
A-6B
A-6Aから19機改造された対防空ミサイル・レーダー型。
AGM-45「シュライク」を使えるように装備追加。
A-6C
夜間攻撃能力を拡充した型で、胴体にふくらみを設けている。
内部には赤外線センサーや暗視カメラ等を収める。
北ベトナム軍の補給路「ホーチミン・ルート」を攻撃するためだったが、当初の思惑どおりには戦果を挙げられなかった。
A-6Aから12機を改造。
KA-6D
搭載力の大きなA-6を基にした艦上空中給油機。
攻撃用電子機器をすべて降ろし、代わりに空中給油用誘導灯や給油装置の制御盤を設置。
能力的にはいちおう昼間爆撃に使えない事もないのだが、実際に使われたことは無い。
他の攻撃機型でも空中給油ポッドを積んで使えるが、KA-6Dを使う方がランニングコストが安いので長く使われている。E型と共に退役。
A-6E
A-6Aから進化した型。電子機器を換装し、近代化している。
新造された機とA-6Aから改造された機とがあり、改造機には胴体にエアブレーキが残されている。
(パネルラインが残っているだけで、機能は殺してある)
なんやかんやで運用期間が長かったのでSWIP・SWIPコンポジット等の改造バリエーシュンがある。
ハセガワ1/72「A-6Eイントルーダー」
このキットはA型をもとに金型改修されており、E型用のパーツを追加している。
その気になればA型として完成させる事もできるので、デカールを流用して挑戦してみるのも手。
A-6F「イントルーダーⅡ」
E型より電子機器を更新し、さらにJ-52エンジンをF404-GE-400Dに換装した型。
冷戦が終結したので海軍の予算が削られてしまい、アオリを食って開発中止。
A-6G
F型の簡易型で、こちらは電子機器を更新するだけ。
やはり開発中止。
EA-6A(A2F-1Q)
外翼にパイロンを追加しており、爆装にくわえて電子妨害用ポッドを装備できる。
30機改修。
EA-6B
海軍・海兵隊で使用された4座の電子戦機。2019年3月に退役。詳細はこちら。
1969年から1991年までの22年間に183機が生産されている長寿機。
『イントルーダー ~怒りの翼』(原題:Flight of Intruder)について
戦闘機部隊ではなく、攻撃機部隊を題材にとる映画は非常に珍しい。WIKIによると1972年(ベトナム戦争末期)の空母インディペンデンス上に展開するA-6飛行隊VA-196が舞台との事である。尾翼の書き込み(テイルコードとも)は「NK」となっており、これは実際に描かれていた。
劇中でのA-6飛行シーンには主に模型飛行機が使われたそうだ。(模型だけとは思えない迫力だが)また、製作が1990年というだけあってZSU-23-4やDShK38のような共産圏の兵器にも実物が使われたようだ。
また、本作品いちばんの特徴として『ベトナム戦争を題材にしてる割には、トーンが非常に明るい』という点があげられる。たしかに劇中ほとんどは夜間の作戦であるし、冒頭で爆撃手が戦死するくだりも暗いストーリーを思わせる。
だが、印象は後半になってガラリと変わる。
独断でハノイを空襲するシーンなどは「633爆撃隊」や「スターウォーズ」を連想させるし、ラインバッカー作戦が発動するとRESCAPにA-1まで登場する。
(そしてこのA-1がまた派手に飛びまわる)
このように飛行機の飛びっぷりが心地よい作品ではあるのだが、TVでの放映は1995年以来一度も無いようで、少々残念ではある。
なお、最初の動画0:52付近の「Let's go downtown!」という台詞は放映時「さあ、ハノイに出発だ!」と訳が振られていたが、実際には「敵地に出発だ!」位の意味である。
(実のところ、ハノイまで行ってない)
1:43付近では、主翼後端フラップに円い切り欠きが入れられているのが見て取れる。
これはフラップを下げたときに搭載物(爆弾・増加タンク等)と干渉しないようにする工夫である。
なお、ジェイク・グラフトン大尉(主人公)には劇中『戦闘機乗りは映画になるが、爆撃機乗りは歴史になる』というせりふがある。いや、あんたら映画になっとるやん。
(ただし、題材に選ばれることが少ないのは本当)
アイアン・ハンド
劇中ではアイアンハンド任務(対空ミサイル・レーダー基地狩り)にも出撃しているが、この際AGM-45を使用している。だがAGM-45は射程が短く、また速度もマッハ2程度とそう速くないため、敵ミサイル(SA-2「ガイドライン」)よりも早く発射できなければ(本来は)勝ち目はない。
そこで考えられたのが「低空で侵入してレーダーをかいくぐり、発見されにくくしてミサイルを発射する」という方法である。これで敵のロックオンは回避しやすくなったのだが、今度は高度が低すぎて(ただでさえ短い)射程が短くなるという問題がでた。
最終的には発射直前に高度を上げる事で射程を伸ばすことになったのだが、劇中ではこれも再現されている。
その他のベトナム戦争映画
同年公開の「エア★アメリカ」はまだ明るかったが、はっきり言って暗い映画ばかりである。
(テーマは少々違うが、「フォレストガンプ」位のものだろうか)