概要
対地・対艦攻撃に特化して開発・改造された航空機を指す。
爆撃機や戦闘爆撃機、戦闘攻撃機に支援戦闘機など様々な呼び名があるが、開発元や所属する組織の命名基準によって変わる。
かつては双発の軽爆撃機サイズまでが一般にそう呼ばれていたが、冷戦以降は『爆撃機=戦略爆撃機』という認識が一般的になり、戦略爆撃機未満は攻撃機と呼ばれるようになった。アメリカでは型番に接頭記号の"A”を付ける。(Attackerの意味)
また、Tu-22M爆撃機を「海洋監視機」と言い換えるなど、『爆撃機』という呼称は政治的な意味合いも含んでいる。
多くの戦闘機も爆弾搭載が可能であり、攻撃機としての任務にもある程度対応できる。特に現代では戦闘機がマルチロール化し、攻撃機の機能を担わされていることが多い。特にF/A-18など、搭載数の限られる空母の艦載機はこの傾向が強い。
そのため現代では純粋な攻撃機は数を減らしているが、小規模な戦闘に戦闘機よりも安価に投入できる軽攻撃機、すなわちCOIN機は現在でも小国を中心に需要が高い。
日本の航空自衛隊では“攻撃”という言葉への抵抗感や、用途の違いにより攻撃機の名称は使わず「支援戦闘機」という名称が使われていた(今では戦闘機のマルチロール化により支援戦闘機という分類自体が廃止されている)。
また、特に地上部隊と協力して直接支援を行う機や、低空で敵部隊阻止に活躍するような機のことは「襲撃機」とも呼ばれる。対空砲火にそなえた防弾装甲や、対機甲・対歩兵のため多彩な兵器を搭載できる事など求められ、現在ではA-10やSu-25のような機がこちらに区分される場合がある。
ロシア圏では主にこうした役割を担う機種としてシュトゥルモヴィクという区分があり、Il-2やSu-25などがここに区分されている。
各国の主な攻撃機
日本
- 九七艦攻:帝国海軍初の全金属単葉攻撃機。太平洋戦争初期の大戦果の主役である。
- 一式陸攻:高速力と大航続距離、充実した防御火力を誇る雷爆可能な帝国海軍の陸上攻撃機。
- 流星:太平洋戦争末期に登場した雷爆兼用の大型機。大馬力と優れた設計で高性能を得たが活躍の場を逃した。
- 九九式襲撃機:超低空から地上部隊や飛行場を叩く帝国陸軍の襲撃機。末期は性能不足に悩んだ。
- 二式双発襲撃機:万能戦闘機としては失敗作に終わった帝国陸軍二式複戦に対地対艦兵装として37mm砲を積んだもの。
- キ102乙:大日本帝国陸軍の襲撃機である…が防空戦闘機として運用された
- F-1:第二次世界大戦後、はじめて日本が開発した支援戦闘機。
- F-2:分類上は戦闘機だが、空対艦ミサイル4発という世界最高レベルの対艦攻撃能力を持つ。
アメリカ
- TBDデヴァステイター:アメリカ発の全金属単葉雷撃機。太平洋戦争初期の米海軍航空戦力の主力を担った。
- TBF/TBMアヴェンジャー:太平洋戦争後期における米海軍航空戦力の主力。多くの派生型があり戦後も各国で用いられた。
- F-117Aナイトホーク:ステルス機。
- F-15Eストライクイーグル:F-15の派生タイプ。
- A-1スカイレイダー:大戦中期から開発が始まった艦上攻撃機。朝鮮戦争からベトナム戦争まで活躍。
- A-4スカイホーク:小型空母にも搭載可能な攻撃機。使い勝手の良さから多くの国へ輸出された。
- A-5ビジランティ:マッハ2で巡航し、1発だけ搭載した核爆弾で開幕ダッシュを狙った艦上機。デカすぎて使い勝手が悪く、ICBMが登場すると惜しまず退役になった。
- A-6イントルーダー:グラマンの開発した艦上攻撃機。アメリカ初の全天候攻撃機。
- A-7コルセアⅡ:LTV社の開発した艦上攻撃機。音速を出せない代わりに搭載量や航続距離が優秀。
- A-10サンダーボルトⅡ:近接航空支援(CAS)専用攻撃機。マルチロール機に更新しようとするたび、そのニッチを埋める役割からなかなか退役を許されない数奇な機体。
- A-12:ステルス艦上攻撃機。1991年に開発中止。
- A-16:F-16にGBU-5を搭載した派生タイプ。実戦で運用してみたものの、機体特性が合わず使えないために没となった。
- AC-130:C-130輸送機を改造した対地専用攻撃機。
- AV-8B:イギリスのハリアーの性能向上型。
イギリス
- フェアリー・ソードフィッシュ:複葉機にもかかわらず、第二次世界大戦終結まで運用されたの艦上攻撃機(雷撃機)。「ストリングバッグ(買い物カゴ)」の名で親しまれた傑作。
- フェアリー・アルバコア:艦上攻撃機。いいとこ無しの駄作。ソードフィッシュの後継機だったが、先に退役するはめに。
- ブラックバーン・バッカニア:低空での飛行能力に優れた攻撃機。湾岸戦争で活躍。
- BAe シーハリアー:世界初のV/STOL攻撃機。イギリス海軍の軽空母「インヴィンシブル」の艦載機としてフォークランド紛争に投入された。2006年に退役。
ソ連
- Il-2:ソビエトの対地攻撃機。代表的なシュトゥルモヴィク。ドイツ兵は「黒死病」とアダ名した。生産数は派生型を含め、軍用機最多の36,000機以上。
- Su-17:50年代の戦闘爆撃機を基に、主翼の一部を可変翼としたもの。使い勝手が大幅に向上し、本国で90年代まで、諸外国は現在も運用が続く長寿機。
- Su-25:ソビエトの対地攻撃機。ソ連版A-10のようなもの。
ドイツ
- Ju87:ドイツの急降下爆撃機。複座単発なので規模そのものは攻撃機。大戦前半の電撃戦を支え、37㎜砲をポン付けしたG型は対戦車攻撃機として活躍した。
- Hs129:ドイツの対地攻撃機。Ju87やIl-2に隠れて地味。
フランス
- シュペルエタンダール:艦上攻撃機。フォークランド紛争では、アルゼンチン海軍が使用し、イギリス海軍の駆逐艦「シェフィールド」とコンテナ船「アトランティック・コンベアー」を撃沈している。