概要
『神酒クリニックで乾杯を』は、知念実希人による推理小説シリーズ。角川文庫より2015年10月から刊行されている。2019年にBSテレビ東京で実写ドラマ化された。主題歌は、ASIANKUNG-FUGENERATIONの「ホームタウン」。
あらすじ
当直中に医療事故を起こし勤務先の大病院を追われた外科医・九十九勝己は、恩師・三森大樹教授の紹介で東京青山にある「神酒クリニック」という医院に入職する。
一見の患者が入って来ぬよう会員制バーを模した作りになっている神酒クリニックは大学病院にも引けを取らない医療設備を持っており、そこで働く医療従事者も院長の外科医・神酒章一郎を始め、美人女医・夕月ゆかり、ローティーンの少年にしか見えない精神科医・天久翼など、才能豊かだが一癖も二癖もあるような者ばかり。そして各界のVIPを相手に、秘密絶対厳守・患者さんのためなら診療以外の依頼もお引き受けしますとうたうかなり変わったクリニックだった。
否応無しにクリニックから依頼された事件の調査に巻き込まれ、最初は戸惑う勝己だったが、格闘技や奇術の才能を発揮し存在感を増していき、自身の医療事故についての真相も判明する。
登場人物
- 九十九勝己(演:三浦貴大)
本作の語り手。一流大学の医学部を卒業し研修医を経て有名病院に入職するが、個人病院での当直のアルバイト中に泥酔し患者を死亡させた医療事故を引き起こす。病院を追われ再就職活動しても雇い入れられなく失意で過ごしていたが、恩師である三森教授の紹介で神酒クリニックに入職。
医療行為の他に探偵まがいの事件調査なども引き受ける神酒クリニックに最初は戸惑っていたが、格闘技の腕前や奇術の才能を発揮し、神酒クリニックで存在感を増していく。格闘技はプロライセンスを所持しており、奇術も後述の新庄雪子曰く「天才的な腕前」。大学卒業時に恩師から贈られたイニシャル入りの万年筆を常に持ち歩く。
神酒クリニック
- 神酒章一郎(演:安藤政信)
神酒クリニックのオーナーで自身も外科医である。年齢は40歳手前、長身で彫りの深い顔立ち。外科手術の腕前は超一流で、対複数の格闘技の手練れでもある。クリニックに舞い込む事件調査などの依頼を喜んでいる節がある。
神酒クリニックのナースで、手術の際の器具出し・術後の器具の洗浄・医療補助などを担当。年齢は23歳。スレンダーで清楚な女性だが、過激なドライビングテクニックを持つなど色々な面を併せ持っている。幼少期に両親が離婚し母方に引き取られたため名字が異なるが神酒章一郎の妹でもある。クリニック開院時に章一郎から一緒に働かないかと誘った。愛車は赤いミニだがエンジンをハイパワーなものに換装してある。
- 夕月ゆかり(演:松本まりか)
産婦人科医、小児科医。神酒が執刀する手術では助手を務めるほか、婦人科の手術では自ら執刀を担当する。高級クラブのホステスでも十分通用するような美貌と色気を持ち、劇団員の経験もあり声帯模写もできるので九十九の窮地をサイレンの声真似で助ける場面も。医療技術も優れている。年齢不詳だが自称28歳。翼のローティーンのような外見をからかい、その仕返しとして翼からは「オバさん」「痴女」などと言われている。
- 黒宮智人(演:栁俊太郎)
内科医。超人的な記憶力を持ち、ハッキング・ピッキングなどの技術もあるが、うつ病気味。目が隠れるほど前髪が長く黒縁メガネ、猫背で話し方もボソボソしているが、素顔は映画俳優のような長身の美男子であり、大学生4年生まではイケメンで成績優秀、テニスの大会で優勝などスポーツ万能の優等生として女性にもモテモテだったが翼の妹と会い、自分を超える知性により打ちのめされて挫折し、現在の姿になる。手術の際は麻酔科医の業務も担当。
- 天久翼(演:板垣李光人)
精神科医。小柄でローティーンの少年にしか見えないがこう見えて30歳は過ぎている。読心術に優れ、他者の表情や目線、仕草などの動きから心情を分析しているに過ぎないのだが、他人からは人の心を読める妖怪サトリのごとく思われているが、手術などの手技は苦手でクリニックでの手術には参加してない。スーツを着た姿を「七五三」と言われるなど、よくゆかりに外見をからかわれている。読心術を利用してのギャンブルなども得意。ホットココアを好む。
ちなみに、「天久鷹央の推理カルテ」のヒロイン・天久鷹央は彼の妹にあたる。しかし、妹とは反りが合わず一方的に拒絶されている。
白泉医科大学
- 新庄雪子(演:臼田あさ美)
勝己の大学時代の先輩で、現在は大学病院の外科医局に勤務している。勝己が在籍していた大学の奇術同好会の会長でもあり、勝己とは恋愛から仕事まで相談し合える、仲の良い先輩であった。
- 三森大樹(演:竹中直人)
白泉医科大学第一外科講座の教授、勝己の恩師。
警察関係者
警視庁捜査一課に属する刑事で、ヨレヨレのトレンチコートにボサボサ頭と、某有名刑事ドラマの主人公を思わせる風貌をしている。神酒クリニックが調査する事件の情報交換に、クリニックを訪れる。また自身も神酒クリニックから入手する情報を自分の捜査に有益に活用し、捜査一課の管轄外の情報については他部門に流すなど、神酒クリニックを利用している節がある。