概要
てんとう虫コミックス42巻及び、藤子・F・不二雄大全集17巻に収録された「やりすぎ!のぞみ実現機」に登場。
叶えたい望みを言うとどんなことでも自然な形で実現できる機械である。効力の具合はレベルメーターで調節できるが、その加減がとても難しく、使用者からは予測できない形で望みが叶うこともある。
「やりすぎ!のぞみ実現機」のストーリー
いつものようにスネ夫から、週末に家族で飛行機で北海道へ行って札幌のバターラーメンを食べたり、レンタカーでドライブした自慢話を聞かされ、ジャイアンはよだれを垂らして羨ましがっていた。だが一緒に話を聞いていたのび太は珍しく「別に…それどころじゃないよ」と食いつかず、一人先に帰っていった。実は元々悪かった成績がさらに悪くなり、「もし明日のテストが50点以下だったら二度と学校に来るな !! 」と先生から脅されていて、本当に学校から追い出されると心配でならなかったからだった。
急いで帰宅したのび太だったが、玄関にはジャイアンが先に来て待っていた。どうやら彼は、のび太が先ほどの話に食いつかないのは「ドラえもんに頼んで北海道へラーメンを食べに行くんだろ、だから羨ましくないんだろ」と(勝手に)思っていたらしく、「俺も連れてってくれ、いいだろ?頼むよ」と頼んできた。これにのび太は「違うんだよ、これから勉強しなきゃならないんだよ」と説明するが、ジャイアンは聞く耳を持たず「自分一人でラーメン食べる気だな !? 」と逆上し、のび太をボコボコにした上「いいか、行く時は連れてけよ」と無理矢理約束を押しつけてきた。
ズタボロにされたのび太が部屋に戻ると、ドラえもんが真剣な顔である機械を操作していた。これは「どんな望みも自然な形で叶えてくれるのぞみ実現機」だそうで、これで「どら焼きを腹いっぱい食べたい」という望みを叶えようとしていた。さっそく使いたがるのび太だが、ドラえもん曰く「効力の調節が難しいから、君なんかに使いこなせる訳がない」とのこと。操作を終えたドラえもんが「果たしてどんな形で叶うやら」とソワソワしていると、机の引き出しから「お兄ちゃん、お土産持ってきたわよ」とドラミの声がしたと思ったら、同時に部屋を埋め尽くすほどの巨大などら焼きが出てきて、ドラえもんとのび太はどら焼きの下敷きになってしまった。
なんでも近所の菓子屋がギネスブック掲載を目指して作った物を持て余したので、ドラミがドラえもんを喜ばせようと持ってきたのだという。ドラえもんは最初「いくら僕でもこんなの食べきれないよ」と尻込みするが、ドラミが仕方なく持ち帰ろうとしたので、やはり「もったいいないから」と食べることにする。なんとか完食したが、食べ過ぎで腹がパンパン状態になり動けなくなってしまった(なおこの回のドラえもんは最後までこの状態だった)。
これを見たのび太は、ドラえもんの制止も聞かず自分の望みを叶えることにし、まず「ジャイアンをうんとひどい目に遭わせてほしい」と要求する。そして、タケコプターで飛んで様子を見に行くとジャイアンは路上で気持ちよくローラースケートで滑っていたが、その先の交差点で走ってきた車とぶつかりそうになったため、のび太は慌てて急降下しジャイアンを突き飛ばして助けた。これでジャイアンは車に撥ねられずに済んだが、当のジャイアンはそんなことは知らず「やい!なんで突き飛ばした!」と怒り出し、のび太はまたボコボコに殴られてしまう。
帰宅後、「そら見ろ、だからやめとけと言ったのに」と言うドラえもんにのび太は「今のは調節が悪かったんだ、今度は慎重にやってみる」と返しつつ「札幌ラーメン食べたい。できれば、家族揃って北海道へ…」と要求する。するとその時会社にいたパパから「おい、大変な事になったぞ」と急に北海道支社へ転勤になったことを知らせる電話がかかってきて、電話に出たママも慌てる事態になってしまう。これにのび太は「引っ越さなきゃならないのは困る、もっとささやかな形で」と慌てて効力レベルを調節し直すと、転勤は急遽取りやめになり、その代わりに北海道の叔母さんから家庭で調理するタイプの札幌ラーメンが航空便で送られてきて、ささやかながらものび太の望みは叶ったのだった。
そしてまだ腹パンパンのドラえもんは「さ、気が済んだらその機械を僕のポケットへ」とのび太に言うが、のび太は「最後にあと一つ」として「明日のテスト、受けたくないんだ。なんとかしてよ」と要求し、「もう知らん」と呆れるドラえもん。明日どうなるかが気がかりなのび太は勝手にドラえもんのポケットからタイムテレビを取り出して様子を見るが、なんと「マグニチュード9の大地震が関東地方で発生し、甚大な被害を出す大災害になって、テストどころではなくなる」という形で望みが叶うことが判明する。
これに慌てたのび太は「冗談じゃない、もっとささやかに」と効力レベルを最低に調節し、その夜は布団に入りつつ明日どうなっているか気にしながら就寝する。そして翌日、寝坊してドラえもんに叩き起こされ急いで登校したが、教室に着いた頃にはテストはとっくに終わっていた。つまり「寝坊してテストに遅刻する」という形で望みは叶ったが、先生に「バカモン!テストはとっくに終わったぞ、廊下に立ってろ!」と叱られ廊下に立たされる羽目に。結局望みは叶ったものの散々な目に遭ったのび太であった。
アニメにおける原作との主な相違点
のぶドラ版は1990年1月19日に、わさドラ版は2010年12月29日及び2017年12月1日に、それぞれ放送されている。
2010年版
- スネ夫とその家族は北海道での土・日曜日はスキーを楽しんでいて、その後のスネ夫のセリフはカットされていた。
- 先生はのび太に「二度と学校に来るな !! 」ではなく、「もう一度5年生をやり直してもらう !!」と言っていた。また、この後のジャイアンの「俺も連れてってくれ、いいだろ?頼むよ」などのセリフはカットされ、代わりにジャイアンは「のび太ちゃ~ん♥」と彼の頬を指でつついて媚びている。
- 巨大どら焼きを持ってきたドラミのセリフのうち、「ギネスブック」は「世界記録」に変更されている。
- ドラえもんはジャイアンの様子を見に行こうとするのび太を止めようとしたが、巨大どら焼きを完食したことで腹がパンパンになっていたためその場から動けなかった。そしてジャイアンは車に撥ねられる前に道路工事で掘られた穴に落ちそうになったが、寸前にかわしている。
- のび太は「家族揃って札幌ラーメンを食べたい」と要求した際、あらかじめレベルメーターは低めに設定している。そしてのび太がレベルを調整し直す前に引っ越し業者が家に来てしまい、腹パンパン状態のドラえもんも業者に転がされて運び出されそうになったが、玄関のドアを通れず業者も搬出を断念した。そしてこの間にのび太がドラえもんの指示で、もっとささやかにレベルを調整し直した。
- のび太は「明日のテストを受けたくない」と要求した後、のぞみ実現機から「絶対に受けたくないのだな?」と念押しされたが、それでもそのまま実行を求めた。
- のび太の望みを叶えるための「テストどころではなくなる甚大な被害」は季節外れの巨大竜巻の直撃だった。そして「被害者の数は計り知れない」と説明されていて、学校の被害状況の説明もあった。
- 就寝の際は、ドラえもんは腹パンパン状態で押し入れに入れなかったため、のび太の隣で寝ている。ちなみに翌朝には元通りになっていた。
2017年版
- スネ夫が話した北海道の話は回想シーンつきで、土曜日は大通りのイルミネーションを楽しんでいたほか、原作と違いしずかもその場にいた。ちなみに「札幌ラーメンが食べたい」と言い出したのはスネ夫の父親で、現地で食べたのは味噌バターラーメンだった。
- 2010年版同様に先生のセリフが変更されており、のび太にテストの点が50点以下だった場合は、「1年生からやり直しさせる !! 」と言っている。
- ドラミが巨大どら焼きををよこす時のセリフが放送時の時節柄「メリークリスマス」となっていた。
- 2010年版と同じく、ドラえもんはジャイアンの様子を見に行こうとするのび太を止めようとしていたが、やはり同じ理由でその場から動けなかった。ちなみにジャイアンはローラースケートではなく、自転車で家業の手伝いの配達中だった。
- のび太は「札幌ラーメンを食べたい」と要求した後、しずかに「外で遊ぼう」と誘われてそのまま遊びに行ったが、2人でボール遊びをしていた所にラーメン屋の出前のバイクが突っ込んできてのび太と衝突し、のび太は出前が持っていた札幌ラーメンを頭からかぶってしまう。そしてこの後帰宅したが、玄関先で再びジャイアンと鉢合わせして、札幌ラーメンの匂いがしたことで「一人でラーメン食べに行ったな !? 」と誤解され、またボコボコにされてしまった。
- パパは北海道に転勤になったことをわざわざ一旦家に帰って伝えている。そしてママと一緒に引っ越しの準備をしていて、会社からの転勤取りやめの電話もパパが取っている。
- のび太の「明日のテストを受けたくない」という望みを叶えるための「テストどころではなくなる甚大な被害」は、学校に巨大隕石が落ちることだった。さらにこの後も、のび太はレベルメーターを調節してなんとかささやかな形で望みを叶えようとしていたが、「先生がライオンに襲われる」「ジャイアンが教室で歌を披露する」「先生がギャングの一員に間違われ警官に追いかけられる」など、とんでもない形ばかりだった。
余談
先生自身は本気ではないだろうが、原作やアニメでも言っていた「二度と学校に来るな !! 」「1年生からやり直しさせる !! 」というセリフだが、見てわかる通り明らかに児童虐待・教師失格の問題発言であり、生徒に対する侮辱と暴言そのものでもある。彼のお決まりの行動である「遅刻・居眠り・宿題忘れなどをした生徒を廊下に立たせる」のは作者の存命時には黙認されており、作者の晩年期である1990年代においても一部の小学校で行われていたが、体罰などが問題視されている現代でこういう発言をすれば保護者は間違いなく激怒して学校に訴えるだろうし、問題教師としてニュースでも取り上げられ、懲戒処分になるだろう。
それもそのはず、先生は以前からのび太に対する問題行動が少なくなく、虫スカンが登場した「しずちゃんさようなら」に至ってものび太がしずかとの絶縁を決意するほどの説教をしてきて、ジャイアンとスネ夫も「あれだけ言われれば世の中嫌になるよな」「僕なら死にたくなるね」と話していたことから、のび太がいかに精神的に追い詰められていたかがよくわかる。最終的にのび太は(のび太が自殺を図ったと思った)しずかの涙ながらの説得で思い直したが、今回ののぞみ実現機の回での上記の問題発言は明らかに許される物ではない。のび太の両親も、もしその問題発言を聞けばいくら息子の成績が悪いからと言ってもさすがに怒髪衝天だろう。
ちなみにテスト終了後に遅刻してきたのび太だが、後日一人で再テストを受ける可能性がある。