概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』に登場するひみつ道具の一つ。初登場エピソードはTC8巻収録「人間製造機」。
その名の通り人間を生み出すことができるひみつ道具。身の回りにある物を材料に使い、その中から人体製造に必要な成分を抽出・再構成し、人間を作り出す。
大山のぶ代版と水田わさび版で1回ずつアニメ化されており、のぶドラ版は原作と同様のタイトル(1979年7月13日放送)だが、わさドラ版では「大あばれ!のび太の赤ちゃん」というタイトル(2009年9月18日放送)になっている。
作中で使われた材料は脂肪分になる石鹸1つ、鉄分になる釘1本、リンになるマッチ100本、炭素になる鉛筆450本、カルシウムになる石灰コップ1杯分、硫黄1つまみ、マグネシウム1つまみ、水1.8リットル。なお硫黄とマグネシウムに関しては、鉱石標本とのび太の祖父が使用していた古いカメラのフラッシュ用の閃光粉(わさドラ版ではママが時々豆腐を作る際に使うにがりに変更されている)を使用している。
新世界デパート(わさドラ版では未来デパートに変更されている)が販売した新製品でドラえもんの下に誤配送された物だが、実はこの道具によって生み出される人間は念力などの強大な超能力を使用するミュータントになり、性格も凶暴で並の人間では太刀打ちできないほどの非常に危険な存在になってしまうという致命的な欠陥が発覚している。
さらにドラえもんの話によると、22世紀ではこの道具により生み出されたミュータントが勝手に仲間を増やして人類を支配しようとし、鎮圧のために国連軍が出動するほどの大騒ぎになってしまい、最終的にこの道具は販売中止になったという。一体どのような目的で開発・販売されたのだろうか…。
当然ドラえもんはこれをすぐ返品するつもりで、ちょっと部屋を空けている間、事情を知らないのび太に触らないよう釘を刺すも、のび太はイタズラ心が働いたのとジャイアンとスネ夫にプラモデル作りに参加させてもらえなかった悔しさから、回収に来た新世界デパートの職員に適当な理由をつけて返し、みんなを驚かそうとミュータントの赤ん坊を生み出してしまう。その後、ミュータントは事態を知って自分の誕生を阻止するため、機械を破壊しようとしたドラえもんが持っていた大きなハンマーを念力で動かして逆に叩きのめしたり、自分のためにのび太に用意させたミルクを、たまたま訪ねてきたしずかが台無しにしたのを見て激怒し、彼女を電撃で殺そうとしたりと暴れ回るが、咄嗟にドラえもんが逆時計を使用し、ミュータントが生まれる前まで時間を巻き戻したことでなんとか事態を解決した(結果ジャイアンとスネ夫が作っていたプラモデルが作る前の状態に戻るなど、あちこちで迷惑をかけたが)。のぶドラ版のアニメではホラーチックな演出と色使いで、子供にトラウマを植えつけたともっぱらの評判だった。
わさドラ版では後半の展開が大きく変更されており、ドラえもんは逆時計で時間を戻そうとするがミュータントに察知されて念力で逆時計を壊され、その後はミュータントを子守唄で寝かしつけた隙にタイムふろしきをかけて原料に戻そうとするが、これもすんでの所でミュータントが目を覚まし失敗に終わる。だがのび太の手で「ミュータン」と名づけられたミュータントはやがてしずかの愛情に触れて旺盛な知識欲と人間らしい感情を持つようになり、図書館の本を全て読み尽くして知識を得ると、生みの親ののび太を「お父さん」と、愛情を注いでくれたしずかを「お母さん」と認識するようになる。そして最後は自分と友達になれそうな同様の力を持つ生物がいる、自分が平穏に暮らせる環境を求めて、テレポート能力で宇宙へ旅立つという感動系のエピソードになっている。
ちなみに、作中でのび太がしずかに何気なく放った迷言「2人で一緒に作らない?」「何を?」「赤ちゃん!」はファンの間でもたびたびネタにされている。
余談
- 数あるひみつ道具の中でもぶっちぎりなレベルで倫理的な意味でヤバ過ぎる道具として有名である。
- この機械で生み出されたミュータントは、「ゲシシシシ」と不気味な笑い声を出すという特徴がある。使う超能力は念力やテレパシーや電撃を発するなど多岐に渡り、わさドラ版では念力でジャイアンとスネ夫を投げ飛ばす、分厚い本を一瞬で読み終える学習能力、宇宙まで行けるテレポート能力を発揮しており、テレパシーも最初は「ミルク…持ッテ…コイ…」とぎこちない話し方だったが、知識を得た結果流暢な会話もできるようになった。
- ミュータントの赤ん坊の外見は、原作版は人間とほぼ同様の外見で瞳はなくスネ夫のような髪型をしている。のぶドラ版は青緑色の肌と黄色く光る目をしており丸刈りのような髪型で、わさドラ版は肌が薄いピンク色で大きな黒い目をしており、髪の毛がない代わりに小さな2本の角があり、若干宇宙人を思わせる外見になっている。
- 人間製造機を原作通りの名称でアニメ化するのは無理があったためか、わさドラ版ではタイトルの変更に加え道具の名称も「架空動物製造機」に変更されており、のび太は最初にこの機械でドラゴンを作ろうとしたが、材料として木星の衛星のタイタン(なお、実際のタイタンは土星の衛星である)の石が必要で、次にユニコーンを作ろうとしたが、やはり材料として恐竜の糞が必要とわかり断念するという展開が追加されている。また原作版にはないコード式のマイクとプリンターが設置されており、これに作りたい動物の名前を言うと必要な材料の一覧が印刷されて出てくるという設定が追加されている。
- 一方、後に放送されたわさドラ版アニメのオリジナルエピソード「ドラえもんをのぞいちゃえ!」(2019年4月5日放送)では、道具の名称が「人間製造機」に戻っているほか、ドラえもんの回想に出てくるミュータントの赤ん坊の外見も、原作版をベースに青緑色の肌と黄色く光る目をしている。さらに、ドラえもんの下に来た未来デパートの配達ロボットが、追い返そうとするドラえもんに「新世界デパートと一緒にしないでくださいよ」と返すシーンがあったりする。