概要
ひみつ道具(「ひみつ」はひらがな)とは、藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』に登場する、22世紀の技術で作られた凄い、あるいは少し不思議な機能を備えた道具のこと。
主人公・ドラえもんが「四次元ポケット」から取り出す(例外もある)。一まとめに道具と言うが、動植物や薬品、装置や乗り物等もある。これらの道具の不思議な効果、及びそれによってもたらされる騒動は、『ドラえもん』という漫画の大きな要素である。サブタイトルに記載される道具の初登場エピソード等が、物語の大きな軸となっている。
以下、ひみつ道具の設定及び描写等について記述する。原作版と派生作品の設定を分けて記述するのが難しい為、便宜上どちらも同じ項目に織り交ぜて記述する。
作中設定
基本的には未来デパートから購入するものである。ドラえもんが所持しているひみつ道具のバリエーションは豊富だが、中には使用制限がある使い捨ての道具もあるとのこと(TC45巻収録「四次元くずかご」ではドラえもんが「使い捨ての道具の方が安く買える」と明言している一方、TC41巻収録「無人島の大怪物」ではドラえもんが「〈簡単に故障するような〉安っぽい道具は持っていない」と発言している)。これは道具を購入する際、のび太のママから貰う小遣いやお年玉でやりくりしている為である(TC22巻収録「税金鳥」では、のび太の小遣いが毎月500円〈2021年版「上げ下げくり」では1000円〉であることが明言されており、TC9巻収録「無人島の作り方」及びTC15巻収録「ポータブル国会」では、ドラえもんも小遣いやお年玉を貰っている)。
また、それだけでは足りないと思った時は未来へアルバイトしに行くこともある(藤子・F・不二雄大全集2巻収録「宝さがし」、水田わさび版アニメオリジナルエピソード「空想動物サファリパークと約束の笛」)。それでもお金が足りない時はバーゲンセールで道具が安く販売されている時を狙ったり(『鉄人兵団』)、ローンを組んで購入することもあり(TC19巻収録「天井うらの宇宙戦争」、『夢幻三剣士』)、代金を支払う為のカードも所持している(TC45巻収録「ガラパ星からきた男」)。
「たったそれだけの収入でひみつ道具を購入出来るのか?」と思うかもしれないが、TC3巻収録「ボーナス1024倍」では、のび太のパパが持ち帰ったボーナス(札束)を銀行に100年間預金し、ドラえもんが「タイムマシン」で100年後に行って預金を引き出したら、ボーナス(札束)がリュックに入れて背負わなければ持ち歩けないほどの量に増えていた。
しかしこのお札は当然ながら未来のお金なので、このままでは現代で使用することが出来ない。そこでのび太の提案で未来では古銭となっている現代(20世紀~21世紀)のお札を買ったのだが、その際ドラえもんが「古銭が凄く値上がりしててね。(のび太君がパパのボーナスを増やした分で買いたいとねだっていた)自転車1台分やっと儲かった」と言っている。このことから、現代のお金は22世紀では価値が飛躍的に上昇していることが分かる。
故にママから貰える小遣いやアルバイトで稼いだお金で、ドラえもんは様々な道具を購入することが出来るのだ。ただし、ドラミが所持している道具と性能差が開く事もしばしばある(タイムマシン等)。レンタル品も多いらしく(TC34巻収録「「時」はゴウゴウと流れる」では、のび太から「時門」を貸して欲しいとねだられたドラえもんは「借りてた会社へ返したよ」と発言している。また『ドラえもん最新ひみつ道具大事典』では、原作者である藤子・F・不二雄が「ドラえもんが持つひみつ道具は3分の2がレンタル」と説明している)、上記の使い捨ての道具についてを考慮すると、ドラえもんはいつでも全ての道具を所持している訳ではないことが分かる。
一方でTC18巻収録「百苦タイマー」では大量のひみつ道具を点検していたり(ドラえもん曰く「百か月ごとに全ての道具を点検しなければならない」とのこと)、TC17巻収録「大むかし漂流記」ではドラえもんが「ポケットの中の道具の半分近くを修理に出した」と言っていたり、『緑の巨人伝』ではドラえもんが大量のひみつ道具を修理に出していたり、カラー作品集2巻収録「いねむりシール」でもドラえもんが自ら道具の点検・手入れをしていたり、TC32巻収録「巨大スクリーンの中へ」及び「超リアル・ジオラマ作戦」ではドラえもんが「超巨大スクリーン立体テレビ」や「実物大プラモ」を購入したと明言している等、彼が正式に購入し、修理や手入れを行うことで繰り返し長く使用することを前提とした道具も数多く持っていることが分かる。
また、ドラえもんが持つひみつ道具は全てが安物という訳ではなく、上記の「実物大プラモ」や「ホンワカキャップ」、「デンコーセッカ」、「ききがきタイプライター」(の付属品である「マイク」)等、高額だと明言されているひみつ道具も存在する。
それだけでなく、ドラえもんが全てのひみつ道具を所持していることが前提になっているエピソードも存在する。
TC26巻収録「魔女っ子しずちゃん」では、人助けをしたいと考えたしずかの為に、ドラえもんが四次元ポケットを彼女に貸した際、しずかは「これがあれば、何でも出来るわ」と述べている。その後も目当ての道具が故障中だったり、ポケットの中に見当たらないということはなく、しずかはその場に適した様々な道具を取り出して数多くの人々を助けている。
また、TC37巻収録「なんでもひきうけ会社」では、のび太が「スペアポケット」を押し入れから取り出した際、彼は「(これがあれば)何でも出せるんだ」と説明している。その後も目当ての道具が故障中だったり、ポケットの中に見当たらないということはなく、のび太はその場に適した様々な道具を取り出して使用している。
漫画版『ひみつ道具博物館』でも、のび太が「ひみつ道具博物館に展示されている道具のほとんどがドラえもんのポケットに入っている」と述べており、それを聞いたドラえもんは特に否定することもなく「まあね。大抵の物は…」と述べている。
上記の通り、ドラえもんは度々ひみつ道具を修理に出しているが、耐久性は道具によってばらつきがある。「いやな目メーター」や「タンマウォッチ」等のように壊れやすい道具もあれば、「どこでもドア」等のように作品によって頑丈さが異なる道具もあり、「デンデンハウス」や「安全カバー」等のように頑丈だと明言されている道具も存在する。それだけでなく10年間野晒しの状態でも問題なく機能した「SOS発信機」や、作り出した地下室が6500万年以上残っていた「ポップ地下室」、1億年以上野晒しにされた状態でも問題なく機能する「飼育用ジオラマセット」等、凄まじい耐久性を発揮している道具も存在する。
総数
原作版(短編・大長編)で登場した道具は1600個以上(複数個でセットのものや名称不明のもの等もある為、数え方にもよる。また、「自動コジ機」や「スカートめくり用マジックハンド」等、書籍によっては収録が抜けていたり名称が変わっているひみつ道具も存在している)。
他に派生作品やアニメ・映画版で登場した道具もあり、アニメ(第1期・第2期)に登場したものを含めると総数2300個を超える。アニメオリジナルひみつ道具の中には、視聴者やスタッフが考えたひみつ道具も存在している(「わがまま時計」、「あの人は居間」、「アセッカキン」等)。
特徴
『鉄腕アトム』等に登場するロボットや装置と比べると子供の夢をストレートに実現したものが多く、原子爆弾は一先ず置いておくとして、他人の心や行動を支配してしまえたり、社会制度を無視・変更出来る道具等、倫理的に問題がありすぎる道具が数多く存在し、作中でも非常に危険と明言されている道具も存在する。
また、ドラえもんは未来の気象庁専用の道具と記載及び明言されている「天気決定表」さえ所持しており、「22世紀では一般的な子守用ネコ型ロボットである筈のドラえもんが何故そのような道具を持っているのか」というツッコミどころ満載なものもある。「空気砲」や「ショックガン」等、兵器も非常に多い(場合によっては、それらの道具が大長編・映画版等に登場する悪役に対抗する為の手段として活躍することもある)。
他にも新たな宇宙や世界を創造出来る道具、死者蘇生さえ可能にしてしまう道具、品物を無限に複製出来る道具、欲しい物を無料かつ無限に入手出来る道具、次元を超えて異世界へ行くことが出来る道具も存在し、挙句の果てには全知全能の力を行使出来る道具さえ存在する。また、これほど強力な道具を子供の小遣い程度の値段で購入することが出来る上に、上記の通り未来デパートで販売されていることから、日常品として一般家庭に普及している。
先述のように子供の夢を体現するものが多いが、一方で教訓に用いられたり、道具の力に頼らず成長することの大切さを投げかけるエピソードも複数存在する(「あの日あの時あのダルマ」等)。
その他
原作版では、ひみつ道具がどのように開発されているかについて説明及び描写されたことはない。参考として『最新ドラえもんひみつ百科1』では、ひみつ道具は22世紀の未来工場・飛行島で開発されており、飛行島の中は超空間になっている為非常に広く、ここで様々なひみつ道具を研究・開発し、その後は未来デパートで販売されると解説されている。
「入りこみ鏡」や「雲かためガス」等、これらの道具によって実現する現象がどのような技術及び理屈なのかをのび太が質問したこともあるが、ドラえもんはその度に「詳しく話せば長くなる」と述べている(TC33巻収録「鏡の中の世界」、『雲の王国』等)。
「どくさいスイッチ」等、何かしらに改変をもたらすひみつ道具については、持ち主や使用者(専らドラえもんやのび太)、その場に居合わせた人達には効果があらわれていないことも多い(使用者が明確に持ち主に効果が及ぶよう使用することもあるが、その場合は持ち主は道具の影響を受けていると自覚していることが多い)。
『宇宙小戦争』では、ドラえもんが「効き目が永久に続く薬なんてあるか!何にだって有効期限はあるんだ!」と発言しているが、実際には「細胞縮小き」(TC2巻収録「恐竜ハンター」では、のび太がこの道具を使用して恐竜を小さくし過ぎてしまった際、ドラえもんは元に戻せない〈=永遠に小さい状態のまま〉と明言している)、「ビッグライト」(TC22巻収録「デビルカード」では、ドラえもんがこの道具を使用してのび太の身長が縮み続けてしまう危機を回避しており、その後のエピソードでものび太の身長が縮む描写はない)、「原料ライト」(TCプラス3巻収録「ドラえもんがいなくてもだいじょうぶ!?」では、10年以上効き目が持続している)、「国際保護動物スプレー」(TC27巻収録「のび太は世界にただ一匹」では、ドラえもんが「このガスを吹き付けられた動物は、国際保護ガス〈の臭い〉が身体に染みつくから、敵に襲われることもなく安心して生きていける」と説明している)、「日光ゴケ」(『竜の騎士』では、6500万年以上効果が持続している)、「バイバイン」(映画版『新魔界大冒険』及び映画版『宇宙英雄記』では、現在も栗まんじゅうが宇宙空間で増殖し続ける様子が描かれている)、「飼育用ジオラマセット」(『新恐竜』では、上記の通り1億年以上機能し続けている)等、効果が長期間持続している(あるいは効果が長期間続くことが前提になっている)ひみつ道具も存在する。
ちなみにタイムマシン等のひみつ道具を使用して金儲けをすることは法律で禁じられており(TC5巻収録「宝くじ大当たり」では、ドラえもんが「タイムマシンを金儲けに使ってはいけない。法律で決まっている」と説明している)、もし破れば罰金刑になってしまう(上記の「なんでもひきうけ会社」では、ドラえもんが「〈ひみつ道具で〉金儲けしたら莫大な罰金を取られるんだぞ!」と発言している。大山のぶ代版アニメ「なんでも引き受け会社」では、罰金刑ではなく「ドラえもんが22世紀へ強制送還されてしまう」と説明されている)。
しかしドラえもんやのび太はひみつ道具を使用して何度か金儲けを企んでいる(TC10巻「夜を売ります」、TC33巻収録「地底のドライ・ライト」、TC39巻収録「厚みぬきとりバリ」等。ただし金儲けは成功した場合も稼ぎは大したことはなく、大半は失敗している)。
それだけでなく、上記の通りひみつ道具による金儲けは禁止されており、TC4巻収録「してない貯金を使う法」ではドラえもんが「お金を勝手に作る道具はないし、そんなことをしたら(未来の世界でも)犯罪だ」と説明している。しかし、ひみつ道具の中には金を無限に増やし続けることが出来る道具が存在しており、こちらはドラえもんが普通に取り出して使用している。
余談
- この一般的に知られる呼び名は元々アニメ版のみであり、原作では単に「べんりな道具」に過ぎなかった(実際、ドラえもん自身がひみつ道具と呼んでいる場面はない)。ジャイアンが「ドラえもんのひみつ道具だな!」と叫んでいるシーンがあるのみである(つまり、本人にとっては秘密でもなんでもなく、守秘義務もないからである)。また、原作においてドラえもん本人は、それらを総称して未来道具と発言している。
- 昔、ファンの子供が作者に直接質問するというスペシャル番組があった。その筆頭の質問が「ひみつ道具は全部でいくつあるんですか?」というものだったが、作者は笑顔で「僕も知りません」だった。その後、マニアらによる調査で、だいたい作者直筆の劇中(緊急でアシスタントが代筆した2作を含む)で1900~1930個(含めるかどうか曖昧なのがあるため)ということがわかった。
- その道具の中には存在するが実体が不明の道具がある。「夢中機をさがせ!」という作品で、ドラえもんは夢中機という、物事に集中できる機械をポケットから探そうとするが見つからず、しかも脱線、寄り道ばかりしてしまい、最後の最後まで実体が不明なままであり、あとの作品にも登場しない。
- ドラえもんのひみつ道具登場時と同時に流れるBGMはない。劇中の流れとしてはドラえもんが道具を出す(それと同時にジングル)→ パッパラッパラーパーパーというイントロ、という流れになっており、これとキテレツ大百科の発明品登場シーン(こっちはBGMが流れてから、発明品が紹介される)と混同しているものと思われる。
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秘密道具:表記ゆれ