ひみつ道具としての解説
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』に登場するひみつ道具の一つ。及び同作品のエピソードの一つ。TC15巻収録。
手のひらに乗る程度のサイズの小さな道具で、半球状の本体の先端にボタン型スイッチがひとつ付いた、非常にシンプルな外観。
色合いはいずれのメディアでも黒い本体に白または銀の縁取り、赤いボタン部分という配色で一貫している。
使い方も、対象のことを考えたり声に出しながらこのスイッチを押すだけという、あまりにも簡単なものである。
このスイッチを押すと、気に入らない人間及び生物を消し去ることが出来る。
消し去られた人間は物理的に消滅する訳ではなく、最初からこの世に存在していなかったことになる。行方不明なんてそんな生易しい扱いではない、消し去られた人物のことは誰も覚えていないのである(例外として、どくさいスイッチの持ち主及び使用者は消し去られた人物のことを覚えている)。
また、作中(公式設定)で明言されている訳ではないが、憎い人間を消し去った場合、他の誰かがその人間の役割を担うという現象が起きている。
例えばジャイアンを消し去れば、代わりにスネ夫が乱暴者になりのび太を追いかけ回す等の変化が生じる(大山版アニメではそれに加えて体格も引き継ぐらしくスネ夫はのび太よりも背が伸びており、更にスネ夫を消した後は安雄とはる夫が役割を引き継いでいた)。
未来の独裁者が開発させた道具だが、実際には独裁者を懲らしめる為の道具で、消し去ってしまった人間や生物はいつでも元に戻すことが可能。
それだけでなく、作中ではのび太が手違いで「皆消えてしまえ!」と言いながらこの道具を使用したにもかかわらず、ドラえもんだけは消えていなかった(ドラえもんがこの道具の影響を受けていない理由については作中で説明されていない)。
エピソードとしての解説
野球の試合で失敗してしまったのび太はジャイアンに殴られてしまう。「ジャイアンさえいなければ…」と言いながら泣き出すのび太を見たドラえもんは「この道具で邪魔者は消してしまえ。住み心地の良い世界にしようじゃないか」と言いながら「どくさいスイッチ」を取り出す。
道具を受け取ったものの、のび太は「いくら憎いとは言っても、消しちゃうのは可哀そうだよ」と思い、どくさいスイッチを使用することに躊躇する。しかしジャイアンと遭遇してしまい、「さっきの続きだ!」と言いながら殴りかかってきた為、のび太は自分の身を守る為にどくさいスイッチを使用し、ジャイアンを消し去ってしまう。
その後、のび太は「大変なことをしてしまった」と後悔する。そこにしずかがやって来て、彼女から何があったかを尋ねられたのび太は「ジャイアンを消してしまった」と言うのだが、彼女は「ジャイアン?誰のこと?」と言う。
のび太は慌ててジャイアンのことを説明するが、しずかはまるでジャイアンのことを知らないという。その後、先生が歩いて来てのび太はジャイアンのことを話すも、やはり彼も「そんな子はクラスにいないし、今までいたことがない」と言う。
そこでのび太は剛田家へ行き、ジャイアンの母ちゃん(水田版アニメではジャイ子)にも質問するが、やはり「そんな子はうちにいない」と言われてしまう。
すると今度はスネ夫がやって来て、先程までのジャイアンのようにのび太を追いかけ回す。そして、のび太はまた自分の身を守る為にどくさいスイッチを使用し、スネ夫を消し去ってしまう。
これ以上、スイッチを使うのはまずいと考えたのび太は大慌てで自宅へ戻り、ドラえもんに相談する。しかし、ドラえもんは「消えた2人を元に戻して欲しい?むちゃ言うな。これは手品じゃないんだ。忘れるんだね」と言う。
のび太は「恐ろしい道具だ。カッとなるとつい押したくなっちゃうよ」と考えていると、いつの間にか昼寝をしてしまう。
そして、のび太は夢の中でしずかやママからバカにされ、挙句の果てにはドラえもんからも馬鹿にされる。のび太は悪夢にうなされながら「みんなでよってたかってぼくのことを。だれもかれもきえちまえ!(アニメ版などでは「みんなみんな消えちゃえ!」)」と叫び、うっかりどくさいスイッチを押してしまう。
直後、のび太は目を覚ますのだが、家の中が不気味な程に静かになっていた。外に飛び出したのび太は他の家に呼び掛け回るのだが、誰も顔を出さない。会社のパパに電話をかけても、「タケコプター」で空を飛んで確認しても、やはり町には誰もいない。のび太は自分が全人類を消し去ってしまったことに気付く。
しかし開き直ったのび太は自分一人だけの世界を楽しむことにする。最初は漫画もゲームもお菓子も自分だけで独占出来ると喜んだが、一人でいることに孤独を感じるようになっていく。
更にのび太以外誰もいないということは世の中のありとあらゆる生活サイクルが止まるという意味でもあり夜になると電気が止まってしまい、家の中はもちろん町も真っ暗になってしまう。のび太は暗闇の中で絶望し、「ジャイアンでも良いから出てきてよ…」と呟く。すると「気にいらないからと言って次々に消していけば、きりのないことになるんだよ。分かった?」という声が響く。そこにはドラえもんが立っており、彼はのび太に「実はこの道具、独裁者を懲らしめる為の発明だったんだ」と説明しつつ、消えてしまった人類を元に戻した(戻し方は原作ではわからないが、アニメ版では「もう一度ボタンを押す」だったり、「ボタンの下のつまみを少し回す」だったりする)。
後日、ドラえもんはのび太を連れて野球の練習を始める。ジャイアンとスネ夫がのび太を冷やかすのだが、それを聞いたのび太は「周りがうるさいってことは、楽しいね」と言い、その様子を見たドラえもんは優しく微笑むのだった。
関連タグ
独裁スイッチ(表記ゆれ)
類似するエピソードが存在する、他作品
銀河鉄道999:「誰もかれも消えちまえ!」を、惑星単位で本当に実行してしまった独裁者が登場する。
やみおちスイッチ:同じテレビ朝日系列の特撮番組の第16話のサブタイトル。語感が似ており、メインキャラの1人がこの道具を連想させるような言動を取っている。東映公式サイトに本エピソードにおけるセリフのオマージュが記述されている。
ホビホビの実(ONEPIECE):ドンキホーテファミリーのシュガーが持つ能力であり、触れた人間や生物をオモチャに変えてしまう能力。しかも変えられた人間や生物は周りから完全に忘れらてしまう。どくさいスイッチとほぼ同じ効果を持つ恐ろしい能力。