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のび太と雲の王国

のびたとくものおうこく

アニメ『ドラえもん』の劇場版作品。1992年公開。
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概要

映画ドラえもん第13作。天上の世界を舞台に、地上の文明を滅亡させようとする天上人と、ドラえもん達が築いた雲の王国の戦いが描かれている。
シリーズで初めて、主人公であるドラえもんが故障してしまうというピンチが描かれた作品でもあり、作中で2度故障してしまっている(一回目は絶滅動物保護州の管理員宿舎から脱出した直後、雷に打たれコンピューターが狂ってしまい、2回目は雲戻しガスのタンクに特攻して意識不明の瀕死状態となってしまっていた)。
過去の短編に登場したキャラクターたちも多く登場しており、物語上重要な役割を果たすのも特徴。
本作はドラえもん映画の中では珍しく直接的な武力対決ではなくシビアな外交交渉で事態の解決が図られている。そのため、本作は初歩の安全保障を学ぶための教材として用いられることもある。

原作のコミックは「コロコロコミック」1991年10月号より連載が開始されたが、作者の体調不良のため翌年の1月号で連載が中断され、2月号と3月号には藤子プロによる「完全ビジュアル版イラストストーリー」が掲載された。その後、1994年3月に刊行された「ドラえもんクラブ」に完結篇が掲載され、ようやく正式な完結となった。

あらすじ

神話や昔話等の影響で天国の存在を信じて疑わないのび太を見たドラえもんは、有りもしない天国を探すより自分たちで作ってしまう事を提案し、ひみつ道具の上に自分たちだけの王国を作り始めた。しかし資金難に苦しみ、ドラえもんとのび太はジャイアンスネ夫しずかちゃんに融資を募り、世界初の「株式王国」として雲の王国を建国した。
そんな中、本当に雲の上に住んでいる種族、「天上人」と遭遇したドラえもん達は、彼らとふれあい生活を知っていく。
一見、友好的な天上人達だが、彼らは環境破壊を進める地上人達を憎み、地上人の文明をすべてを洗い流す恐るべき「ノア計画」を進めていた。
天上人達に捕まっていた密猟者達から「ノア計画」を聞いたドラえもんとのび太は、天上世界を消滅させる「雲戻しガス」の存在をチラつかせ「ノア計画」の白紙撤回を要求するが...。

登場人物

天上世界の絶滅動物保護州管理員の女性。友好的な態度でドラえもん達を天上界を案内したが、内心では環境を汚し続ける地球人を憎んでいる。しかしドラえもん達と行動を共にするうちに、地上人の全てが悪人ばかりではないと、理解を示すようになっていく。終盤では自らを犠牲にして天上人を救ったドラえもんや、のび太達の味方となるシーンもあり、実質、敵でもあるが味方でもある。
なお、クアッガの群れを追いかけ回したフクロオオカミを叱る場面があるが、そりゃ肉食動物と草食動物を同じ区域に住まわせたのだからそうなるような…。

天上世界の絶滅動物保護州管理員の男性。天上人こそ正義と考え、地上人を敵視しており、ドラえもん達がノア計画に感づいた時も「地上人は狡猾で油断がならない」と思うなど差別的態度を隠す事も無い。仮面をかぶっていて、素顔は不明。

父と祖父と共に無人島に漂着しサバイバル生活をする中、誤って天上連邦に拉致された少年。天上連邦を信用している父親たちと違って天上人に疑念を抱いている。

アフリカで象を密猟していたところを、象と共に誤って天上連邦に拉致され、連邦議会で「象牙を取る」目的で家族を殺された象に名指しで非難されていた。
天上人のUFOを奪って逃亡を図るも、追撃により雲の王国に不時着し、ドラえもんとのび太に匿われ、二人に「ノア計画」の事を教える。
ドラえもんとのび太の隙をついて雲の王国を乗っ取り、天上界のすべてを破壊しようとするが、ドラえもんの特攻を許してしまい崩壊していく王国に置き去りにされ、海へ落下していった。
その後は再び連邦議会に出頭しており、キー坊の演説を聞き、最後の最後でようやく反省の色を見せていた。

かつてドラえもんとのび太が育てた人格を持つ苗木。植物星の存在を知った事で地球から植物星に移住する。
作中では成長した姿で登場し植物星の大使として天上連邦に駐在している。
ラストで連邦議会に出席し、故障したドラえもんを自身の能力で救い、ドラえもんとのび太に自身の素性を明かす。そして、地上人達が己の過ちに気付き、環境を守る為に努力している事、植物星が天上人の移民を受け入れる事を発表した。

用語解説

天上連邦

12の雲の大陸からなる連邦国家。遥かな大昔、地上の戦乱を逃れた人々が建国した。
地上で戦争を繰り返し、更にはオゾン層破壊といった環境破壊にまで及ぶ地上人に対し、強い警戒心と敵愾心を抱いている。
高い科学力を持ち、宇宙の知的文明とも交流を持っている。氷河時代の生物も保存しているため、建国は神話の時代であることが窺える。ドラえもんの「マジックドーム」と同様の技術で宇宙の気象衛星やレーダーによって地上人に発見されることを防いでいる。

天上人

天上界で暮らす人々。宇宙人の類ではなく、人類と同じ種族として描かれており、違いは雲の上に築かれた国で暮らしている点。地上よりもはるかに進んだ科学技術を有しており、地上では既に絶滅した動物を保護するなど地上の自然を何より大事にしているが、地上の環境汚染が原因で自分たちも絶滅の危機に陥っており、最終手段としてノア計画の実行が間近となっている。そういった部分もあってか、天上人の多くは地上人を憎悪・差別している。
特に上記の経緯・戦争のリスクゆえか地上人とは大々的な交流・交渉は避けられており、一方で地球を訪れる宇宙人達のターミナル(空港)が存在している。作中明確な説明はなかったが、宇宙人や天上人による地上人との正式な交流が避けられているのは何か理由があるのかもしれない。
地上人による環境破壊の結果、地上人に対する嫌悪感が増し、もはや上層部の殆どが強硬派に牛耳られ(※)、もはや地上人側の言い分に聞く耳を持とうとすらしなくなっていたため、ドラえもんも対等な話し合いに持ち込む為に、雲もどしガスを使った恫喝による強硬手段に出ざるを得なくなった。

元は地上人であったが、異民族(恐らくは地上人の祖先。ローマ風、中華風、北欧風の三種族が確認できる)からの侵略を逃れて雲の世界に降り立ち、そこから降り注いだ雨が異民族を洗い流したと彼らの神話にあり、地上人を嫌悪する理由の一つにもなっている。しかし、この神話がどこまで本当かは不明であり、またその歴史映像から、地上人=強欲な侵略者として描写されて、一種のヘイト教育に近い環境も垣間見せている。
ただし、彼等が地球環境の行く末を憂いていること自体は間違いではなく、敵役ではあっても悪ではない点は注意すべきである。(逆に正義や義憤等の思いが暴走している訳だが)

(※)環境破壊の証拠は集めているのに、なぜか環境保全に関する調査は進めておらず、証拠を見せろと地上人代表に仕立て上げられた小学生らに迫っている。

また、彼等の問題点の一つに過剰な自然崇拝による盲信の傾向が見られることである。
ノア計画は化学兵器等の人工的なものを用いない普通の雨水による自然的な手段なので、この方法なら地球や自然に負担をかけないだろうと言う甘い目算で計画を推進している。問題点は下記にあるように、自然の自己修復なら負担を掛けない訳ではない。

ノア計画

天上人たちが自分たちの生活圏を存続させるため、環境汚染を続ける地上世界に大雨を降らせ、大洪水によって浄化する計画。地上人たちも一時的に天上界に避難させる予定となっているが、計画の終了後は地上に戻され、全てを失った地上人の生活レベルは原始時代に戻ってしまうとされる。非道な手段だが議会でも賛成派が大多数となっており、「地上人の自業自得」と辛辣な考えを露わにしている。
そのための下準備として地上の動植物を天上界に避難させており、その中には地上ではすでに絶滅した種も多い。地上では絶滅した動物も、天上世界では何種類か飼育されている。中にはマンモスなどの様に氷河時代の生物やネス湖ネッシーといったUMAもいる。ここにいる動物たちの中にはアフリカゾウやオランウータンのように人間をよく思わないものもいる一方で、ドードーモアなどは過去にのび太たちに助けられた為に恩義を感じている。
作中でのび太のママがどこでもドアのダイヤルをいじったせいで、ドラえもんとのび太がノア計画が実行された世界に出てしまう。

なお、動植物保護の為の吸引行為により無人島の植物を傷つけるなど明らかに天上人の側も環境破壊をやっていたりする。その上、その吸引行為の際にはギリギリになって「船を作ってすぐ出て行きなさい」と無人島の住人に警告を促すだけで特に救済措置を用意していない。無人島ごと吸引されたとしても絶滅動物保護州に収容という有様である。

  • 問題点
加えて、もしノア計画が実行されれば以下の事が起こると考えられる(参考:『アニヲタwiki』より)。
  • 大洪水の影響で地上のゴミや放射性物質が流出し、海洋・土壌汚染が起こる。
  • 陸地では文明を洗い流すレベルの大雨で海水が増水する為、塩害や土砂崩れが起こる。
  • 雨雲で日光が遮られて土壌が浸水する為、地上に残った植物はまともに育たず、酸素も供給されにくくなる
    • 地球に酸素の20%を供給すると言われる大アマゾンがこれで大打撃を受けた場合、天上界側にも影響が出る事になる。
  • そもそも、天上界への収容数や時間の事情で保護しきれずに地上に残される生物が多数出てくるであろう事が予想でき、行き着く先が大量殺戮とそう変わらない(この点はスネ夫達にも指摘された)。
    • キー坊が大使として着任している以上、これで植物星との関係が悪化する可能性も…。
    • さらに、これまでの映画が一通り繋がっていると仮定した場合、ムー連邦バウワンコ王国などの勢力とも敵対してしまう危険性がある。

こんな環境下で原始時代の生活を送れという方が無理だろう(おまけに生物達も地上に戻そうと考えている始末である)。もはや「地上人の自業自得」で済まされるレベルを超えており、余りにも問題点が多すぎる計画であると言えよう。

天上界を守る為ならば、多少の犠牲は仕方がないといった所であろうが、皮肉にも、それは自分たちの生活を守る為に自然を犠牲にする地上人達の姿そのものである。

雲かためガスと雲もどしガス

雲の王国を作るのに使用したひみつ道具で、雲を固めたり戻したりできるガス。雲の大陸も雲の王国と同じ原理で出来ていたため、雲もどしガスは雲の王国・天上世界にとっては深刻な大量破壊兵器になる。ドラえもんとのび太は「天上界を壊滅させられるほどの量のガスを備蓄している」と脅しをかけ、ノア計画を阻止すべく交渉に臨んだ。
因みに交渉に臨んだのは映画版、原作漫画版共にドラえもんだが、映画版が脅しをかけながらも丁寧な敬語口調で交渉に臨んでいたのに対して、原作漫画版だと中々に過激な言い方をしていた。また、コロコロコミックに掲載された特別版(先生の体調不良のため、文章とイラストでストーリーが語られた)では密猟者を庇った日の夜に王冠を奪われてしまったため、最初から密猟者の脅迫に使われてしまっている。

関連タグ

キー坊 旧約聖書 ノアの方舟 絶滅動物
ドンジャラ村のホイ モアよドードーよ永遠に
のび太の海底鬼岩城:本作とは違う形で相互確証破壊が題材になっている。

冷戦…当時は核ミサイルに基づく第三次世界大戦による「地上滅亡」もより身近な世界であり、天上人の恐怖心も想像に難くない。作者もSF短編「ある日……」にてこれを題材に用いている。
エコテロリスト:天上人は彼らの存在を予見していたという説も見られる。天上人のやろうとしている事はのあり方に近い。

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