いっしょが、一番強い
概要
のび太と鉄人兵団やのび太とブリキの迷宮に次いで3番目に作られた人とロボットの関係をテーマにした劇場版作品である。
前2作ではロボットが人類の敵として登場している(前者は人間をコキ使おうとする種族、後者は人間に反乱を起こしたロボット)のが、本作はそれとは対照的にロボットと人との共存がテーマであり、ロボットの立場になって話が描かれている。そのため、のび太の日本誕生以来の主人公であるドラえもんが内容的にも主役の作品となっている。
また、本作ではのび太とブリキの迷宮でラスボスのナポギストラー一世を演じた森山周一郎氏がデスターを演じている。
2001年秋のアニメスペシャルで放送された告知映像ではタイトルが『のび太とロボット帝国』(「キングダム」の読みが「王国」ではなくて「帝国」。こちらは通常「エンパイア」の当て字がなされる)となっていた。
なお、本作では回想シーンではあるが、のび太の夢幻三剣士に次いでドラえもん史上一二を争うほど数少ない人間が死亡する瞬間のシーンが存在する(ただし、ドラえもんと同じく人気漫画及び人気アニメであるルパン三世やワンピースのように流血シーンが存在する作品とは対象年齢が違うため、直接的な描写はされていない)。
そして、本作の関係で特に重大な事はテレビシリーズが半年後の10月4日に放送された回以降、それまで制作に使用されていたセル画からデジタル画に変更されたため、映画シリーズでセル画が使用されたのは本作が最後である(ただし、当時既にセル画の使用が終了しているアニメ作品が多く存在するため、ドラえもんはそうしたアニメの中ではサザエさんと並んで比較的遅い方である)。
あらすじ
スネ夫に新型のペットロボット「アソボ」を自慢されたのび太は、ドラえもんに「ペットロボットが欲しい」と懇願するが「君には僕と言うネコ型ロボットがいるじゃないか」と拒否される。
するとのび太は勝手に押し入れのスペアポケットから「未来デパートの通販マシン」を取り出すが、操作がわからなかったため適当に押してしまい、未来デパートからロボットが大量に転送され、挙げ句の果てにはのび太の言うことを聞かず脱走して暴れ出してしまう。
町中で騒動を巻き起こしたロボットたちはドラえもんによって全て返品されたものの、最後に少年型のロボット『ポコ』が残った。どうやらそのロボットは地球の技術で作られたものではなく、現代に送られてくる途中で超空間内で紛れ込んでしまったものだという。ポコを元の世界に返してあげるため、ドラえもん達の冒険が再び始まった。
タイムマシンで時空の迷宮へと旅立ち、何とか目的の場所…『王国(キングダム)』に辿り着くドラえもん一行。その世界では、ロボットから感情を抜き取り人間の忠実な下僕へと変えてしまう「ロボット改造命令」が下されていた。少年ロボットであるポコはちょうど母親と共に追っ手のドロイド兵から逃げる途中だったのだ。捕まった母親を助けようと飛び出して行ったポコをのび太たちは追いかけるが、ドロイド兵達に見つかり、ドラえもんが拉致されてしまうのだった。
用語
王国(キングダム)
地球より遠くにある星(特殊な装置を取り付けたタイムマシンで向かったので時代も次元も大きく違うパラレルワールドに位置する可能性が高い)にある国。
一面荒野の星に別の星から人間とロボットが移住して開拓を進め築いてきた(移住元の星と交流しているかは不明)。
王家による君主制を採用し、軍隊と議会も存在しているが後述の計画が国民の反発多々にもかかわらず実行が続けられていることや軍の司令官が王族の代理継承権を持つとはいえそれがあっさり実行に移る辺り議会の力は弱い模様。
服装や中世ヨーロッパ、建築はそれに古代ローマの意匠も加わっているがロボットの技術は非常に高く人間と大差ない感情と心を待ち合わせ人間と手を取り合って暮らしている。しかし、現女王ジャンヌの意向で「ロボット改造計画」が進められるようになり、次々とロボットは唯の道具とされている。
ロボット改造計画
感情を持つロボットが社会と同化しているのに反してジャンヌがロボットの感情を持つことに葛藤し実行に移し出した計画。ロボット達を強制連行し感情を司る回路を排除(構成が違うこともあってかドラえもんは痛がる程度で済み一切変化はなかったが)、唯の労働力・道具となるよう再プログラミングされている。
タイムスペースラビリンス
直訳で「時空間の迷宮」とされる空間。異世界とも言える場所へと現実空間から飛ばされた物体が流れ込むことがある。この空間の行き来にはタイムマシンに特殊なセンサーを取り付ける必要がある。
ドロイド宮
国の王族や政府機関が置かれているたこ足状の土台の上に建造物が設置された作りをしている城。舞台の星に移民してきた際の母艦でもあり、着陸したこれがそのまま王宮として使われている。宇宙船だったと同時に巨大なロボットでもあり、自力歩行が可能。更に操縦ブリッジのある塔はロケットにもなり、単体で飛び立たせることも可能。
鋼鉄バトル
戦闘ロボットを剣闘士として戦い合わせる王国の娯楽の一つ。人型ロボットが手をくっ付けて輪になった形の造形をした闘技場で行われており相手をノックアウト・降参させるか舞台の外の堀に落とした方が勝つ。ここのロボットは検挙対象とされていない(感情のない単純なプログラムの動きは闘技として形にならないのかもしれない)が敗者は即改造工場へと連行されてしまう。
虹の谷
ロボット改造命令に強く反発した者達が政府の目から離れて秘境に築いたロボットと人間が平和に暮らす土地。辺境にある人顔の形をした岩が入り口となっているが王国本土からは作り話だと思われていた。
レギュラーキャラ
ドラえもん
王国へ向かう途中襲ってきたドロイド兵に対抗するが超空間の乱れで攻撃向きの道具を落としてしまう。地球という他所からきたことから興味を持たれ鋼鉄バトルに強制的に繰り出され、多くはない道具によって勝利する。大長編では更に負かして工事に連行されそうになるコングファイターの身を案じ反発されるが「捕まって感情を抜かれたら、そうやって怒ることも出来なくなるんだぞ!」と叱咤、彼の心を動かした。なお、試合に出る前にマリアと同じ独房に入れられ彼女の健在をポコに伝えた。
決戦では単騎でとっておきの武器石頭で特攻、見事敵をノックアウトさせるという全体に渡っての活躍を見せた。
今回は敵に拉致されはするものの、「のび太とブリキの迷宮」の時のように壊されたり故障すると言った展開はなく全編に渡って活躍シーンが多い。
のび太
ペットロボットを持つなら悩んでクラゲ型と言ってみたが皆に笑われ(映画版のみ)、欲しいと言うも検討すらしてくれないママについ文句を言ってしまったがポコを案じる内に頭を冷やす。ドラえもんというロボットの親友がいることからロボット改造命令にとりわけ強く反発を示す。
しずか
ペットロボットはコアラ型が欲しいと語っている。ポコと共にジャンヌを看病し、大長編では更に彼女を叱咤、考え直すのを促した。
ジャイアン
ペットロボットはライオン型を欲しがる。大長編では魔界大冒険と同じくボスキャラに止めを刺す役回りを買った。
スネ夫
自身に似せた犬型ペットロボット「アソボ」を皆に自慢するがのび太が転送した一体である医者ロボットの注射で言動をおかしくされてしまった。例によって異世界へ向かうのを躊躇うがドラえもんの代理でタイムマシンの操縦を引き受けたりもしている。
主なゲストキャラ
ポコ
CV桑島法子
泣き虫だけどとっても優しい少年のロボット。ドロイド兵に追われていたとき、逃がそうとしたチャペック先生の電送マシンで超空間の迷路タイムスペースラビリンスへと送られ、状況が把握できずアソボを猟犬型ロボットと誤認し飛びかかって損傷してしまった。地球のロボットとは部品構成も材質も違うのでドラえもんの手には負えず一行は彼の星へ向かうこととなる。ジャンヌとは遊び相手として共に育った弟同然の存在であり、現在の体制を敷くようになり追われる身にされたにもかかわらず彼女を案じ続けていた。
マリア
CV藤田淑子
ポコの母親ロボット。早くに母親を亡くしたジャンヌの養育係も務めており、彼女にも親心に等しい気持ちを持っている。逃亡の末捕らえられるもジャンヌに考え直してほしいと訴えていた。息子とは耳のアンテナで通じることで遠隔の意思疎通・探知が可能。
大長編ではドラえもんなど周囲のキャラと比較すると、身長2m以上の長身になるよう描かれているコマもある。
チャペック先生
CV穂積隆信
ロボット専門の医者。ロボットの修理の他、物体を瞬間移動させることのできる電送マシンなども発明している。
名前の由来は戯曲『ロボット』の作者、カレル・チャペック。
クルリンパ
CV野沢雅子
チャペック先生と共に住んでいるオコジョ型のロボットの助手。身体を丸めながら跳ねて移動することもできる。語尾に「ッパ」をつけて話す。
オナベ
CV愛河里花子
チャペック先生の家のお手伝いロボット。ドラえもんの友人の実家で働いてるキャラのスターシステム。
漫画版では、食材を口から入れ、腹から完成した料理を出すという機能を持っている。映画版では代わりにネジを食卓に出してきた。
ロビー
CV銀河万丈
アリスの家で働く農作業ロボット。カカシのような姿を持つ温和な性格の持ち主で、アリスの事を「お嬢様」と呼び、よく彼女の遊び相手をしてくれている。型番号はX-01。「ロボット改造計画」により強制連行・感情を抜き取られてしまった。
映画では感情を抜き取られた姿を最後に登場しないが、大長編のエピローグでは無事に感情を取り戻した姿が描かれている。
プロローグのみの登場であるが、【ロボット改造計画を受けたロボット】という重要な役割を担っており映画のポスターなどではドラえもん達と共演している。
アリス
CV南央美
ロビーが働く家の少女。天真爛漫な性格の持ち主で、よくロビーに遊び相手をしてもらっていた。王国に連れ去られた後、突然帰ってきたロビーの変貌っぷりにショックを受け泣き出してしまう。
ドロイド兵
デスターが尖兵として用いる、感情を持たないロボット兵士。一体がポコと共にタイムスペースラビリンスへ飛ばされ王国へ向かう一行に襲いかかった。尻尾がロケット噴射口になり飛べるロボホース(馬型ではなく小型獣脚類型である)を乗りこなし、猟犬型ロボットも従え、槍からレーザーを出したりしており、他のロボット達を圧倒する戦闘力を持つ。しかし人間には危害を加えられないという弱点を持っており、人間が盾として立ち塞がるとロボットも狙えず無力化される。後からジャンヌの命令を聞かなくなった事、超空間という人間が巻き込みかねない場所でドラえもんを攻撃しようとした事以外はロボット三原則に極めて忠実といえる。
コングファイター
CV郷里大輔
鋼鉄バトルに出場しているゴリラ型の大きい格闘ロボット。左腕の斧や右腕の鉄球を使用する(大長編では肩のアーマーが射出するカッターになる)豪傑で、300戦無敗という経歴を持つ。映画版は顔以外もゴリラにより似ており、武器は掌と入れ替える形で鉄球は右腕からも出てワイヤーでなく鎖で射出するというスタイルになっている。ドラえもんと戦うが、最終的にくすぐりノミによって敗北する。
(漫画版ではくすぐられて降参しているが、映画版ではその後鉄球を頭にぶつけて自滅する。)
敗北後は改造工場へ連行されそうになるも、原作ではドラえもんに助けられた上に叱咤され、ドラえもん一行を囲んできたドロイド兵を一掃して脱出を手助けした。
一方、劇場版ではズルをして勝ったことを詫びるドラえもんを「そんなことはない」と彼の実力を讃えており、彼に反発して叱咤される場面が無い。最終的にドラえもん一行を逃がす所は一緒。
トロイ
CV飛田展男
「ロボット改造命令」に反対し、「虹の谷」で多くの仲間と共に、平和に暮らしている。
コニック
トロイと同じ理由で「虹の谷」に暮らしているトロイのパートナーであるロボット。
名前の由来は中の人の名を捩ったものと思われる。
CV新山千春
メイン画像右。
ロボットから感情を抜き取る「ロボット改造命令」を下しているロボット王国の女王。
エイトム
ジャンヌの父である前国王。人間とロボットが共に豊かに暮らせる国を目指し、自ら開拓工事の指揮を執っていたが、重機ロボットが横転する事故が起き、逃げ遅れたロボットを庇って下敷きとなり亡くなってしまった。感情の無いロボットなら庇う必要はなかったのでデスターの言葉自体はあながち間違いではないのは皮肉と言える。
名前の由来は恐らく鉄腕アトムから。
CV森山周一郎
ロボット王国の軍司令官。鬼のようなマスクと鎧で全身を纏った厳つい容貌をしており、常にジャンヌ女王に付き従っている。
ジャンヌにロボット改造命令を下させた張本人。ジャンヌからは信頼されているが、実はジャンヌ女王に取り入って王国の実権を握ろうと画策する外道で、彼女を利用しているだけにすぎなかった。
詳細はリンク先を参照。
備考
今作より映画ドラえもんの公式サイトが作成された(現在は閉鎖)。
漫画版の単行本では、幼少期のポコとジャンヌの思い出を描いた描き下ろし短編『四つ葉のフライクローバー』が収録されている。