概要
藤子・F・不二雄没後の最初のドラえもん映画。大航海時代の海賊をテーマにしている。
ゲストキャラクターの声に芸能人を起用するようになった(※ただし、『のび太の宇宙漂流記』は除く)ことと、アスペクト比画面サイズがビスタサイズに変わったのは、本作からである。
また、当時TVシリーズの音楽を担当していた菊池俊輔が、長編映画版の音楽を降板(同時上映の短編作品は引き続き担当)し、代わって大江千里が『のび太の太陽王伝説』まで音楽を手がけた。そのため、映画ドラえもんシリーズで唯一、全て映画オリジナルの音楽となった作品でもある。
配給収入21億円、観客動員数400万。大山のぶ代版のドラえもん映画、及び前世紀のドラえもん映画の中としては歴代1位でもある。
ちなみにこの映画はなんと中盤からラストまでドラえもんのひみつ道具の大半を失い限られた道具のみで黒幕と戦うという一段と不利な状況なのも大きな特徴。他の映画でも度々ドラえもんの四次元ポケットが奪われるか破壊されるかで何らかによって一時的に使用不可になる事があったが、最後までポケットがない状況なのは唯一この映画のみ。
また、のび太がドラえもん達とはぐれて別行動になる展開も特徴。そのため、のび太とゲストヒロインとの絡みはほぼなく、該当のキャラであるベティはジャイアンとの絡みが強い。
あらすじ
夏休みのグループ研究で海をテーマに調べることになったのび太達。だがのび太は海賊と宝島の財宝への憧れに胸をふくらませる。
ドラえもんの道具で地図上から財宝が眠る宝島「トモス島」を偶然発見し、さっそくドラえもんが用意した帆船型ボートで財宝探しにカリブ海へ出航したのび太達。しかし、時空間の乱れでタイムスリップしてしまい17世紀の大航海時代に跳ばされてしまう。更に現れた巨大な海賊船にぶつかり帆船型ボートが破損したことでのび太は海に流されドラえもん達と離れ離れになってしまう…。
流されたのび太はピンク色のイルカ「ルフィン」に助けられて無人島「トモス島」に着く。そこには海賊のジャックという少年が1人で生活していた。
一方ドラえもん達はぶつかった海賊船に乗っていた海賊達に助けられたものの、四次元ポケットを始めとした大多数のひみつ道具が流されてしまっていた。
果たしてのび太とドラえもん達は無事合流して現代へ帰れるのか。財宝の島の在り処とは。カリブ海を舞台に、海賊とドラえもん達の大冒険が始まる。
レギュラー
のび太が一発で宝の場所を突き止めた時は夢かと思わず疑っていた。ポケットを失くした後何もないお腹は格好悪いとポケットの絵を描きジャイアンをぬか喜びさせてしまった。終盤はキッド船長と共にリーダシップを発揮し時間犯罪者達の撃退に貢献した。事件後、別れ際にキッド船長から「キャプテン・ドラえもん」と讃えられた。
宿題のテーマを探しに図書館に来るも海賊の本に夢中になり、さらにTVニュースで実際に南の島で海賊時代の宝が発見されて躍起になる。見かねたドラえもんが出したひみつ道具「宝探し地図」で宝がある地点「トモス島」を一発で突き止めてた(1ミリずれても反応しない地図が360枚あった)事で南海への冒険に乗り出す。
冒険の途中でキャッシュ一味が引き起こした時空乱流でキャプテン・コルトの船を何度か目撃したり、17世紀に跳ばされた際は船の損壊で海に放り出され行方不明になる。その時救ってくれたルフィンによって「トモス島」に辿り着きそこで出会ったジャックと友情を深める(その際、夜中に本来の仲間4人から見放される夢を見た)。その後、キャッシュ一味に捕まった際、仲間と再会し今回の事件を知る。
友人になったイルカのルフィンを改造しようとしたDr.クロンに対して激怒し、コンピューターに向けて得意の射撃で実銃を発砲するという一面も。
夏休みのグループ研究のテーマに海中の植物を選ぶ。
17世紀に跳ばされた際は海戦でキッド達と交戦した敵海賊に捕まりかけるがベティのお陰で事なきを得る。それ以降は目立った活躍は無かったが、終盤では無生物さいみんメガホンを使用し岩男(ゴーレム)を使役し改造生物と交戦する。
グループ研究のテーマにどんな魚が美味いのかについてを調べることにする(蒲鉾も入っていたが…)。のび太の提案で宝島の冒険に同行する事になる。自分達の船が海賊船に衝突した際、海に落ちかけたのび太の手を必死に掴むもその甲斐むなしく掴んだ手が離れてしまう。自分の所為でのび太が行方不明になった事に激しく悔やみ、誰よりもその身を案じていた。そして、ベティの時は同じ過ちを犯さないように頑張るなど仲間想いな一面が強調されており、のび太と再会した際、誰よりも喜んだ。
今回は彼の歌が状況の好転につながり、さらに後述のベティから絶賛される。
グループ研究のテーマに海の生物の進化を選ぶ。のび太の提案でジャイアンと共に宝島の冒険に同行する事になる。終盤では改造動物の戦いで活躍し、トラゾウとの戦いではおしり印のきびだんご(下剤)でトラゾウを戦闘不能にし、リバイアサンとの戦いでは対抗手段に搬送船の操縦を半ば強制に引き受けていた。
ゲスト
キッド一味
全員最初は英語で話していたがほんやくコンニャクによって日本語になった。
言わずと知れた伝説の海賊で船長。右目に眼帯をつけている。
筋骨隆々とした体躯と威厳のある勇敢な男で、仲間想い。
ほんやくコンニャクや夢たしかめ機など、ドラえもんの落としたひみつ道具を少し拾っていた。
常に冷静沈着でドラえもん達が冷静さを失った際も一喝するなど頼りになる存在でもし、ほんやくコンニャクが無ければドラえもん達はお荷物になっていただろう。
突如行方不明になってしまった兄貴分のキャプテン・コルトとその仲間達を探すため、ドラえもん達と共に宝が眠る無人島「トモス島」に上陸する。
- ジャック(CV:マッハ文朱)
海賊キャプテン・コルトの息子の幼い少年で、ベティの弟。
冒頭で仲間達と共に無人島「トモス島」に上陸し、海岸で留守番をしていたが、突如海賊船が消滅し、さらに仲間達が戻らずそれ以降島でひとりで暮らしていた。のび太を「ノビー」と呼び行動を共にする。
台詞の半分は英語で姉のベティと再会してから日本語になった。のび太ともほんやくコンニャクのおかげで会話できるようになった。
- ベティ(CV:早見優)
ジャックの姉でキッド海賊団に所属する少女。
「ドラえもん」史上、ジャイアンの歌声に素で聴き惚れた数少ない人物(そのためジャイアンは素で褒められてとても喜んだ。ちなみにジャックの方は絶句して驚いた)。
気が強く喧嘩っ早いところなど性格や感性があらゆる面でジャイアンと相性が良く、別れ際には彼を正式に海賊団の仲間に誘っていたほど。生きている時代が違うのがなかなかに悔やまれる。
ラゲッティとピンテル的な存在。アジトでは大活躍をする。大長編と映画では大分容姿が異なり、ゴンザレスは大長編では髪が薄く上半身は服を着てない大柄な姿をしており、映画版では痩せ型で髭面で帽子を被っている。パンチョは大長編では、小柄で半袖と髭面になっており、映画版ではもう少し背はあるが小太りでちょび髭になっている。間抜けな二人組であるが悪運が強く終盤でドラえもん達を救う強力な助っ人となり、恐らく彼らの活躍がなかったら、最悪の結末を迎えていたのかもしれない。
- ルフィン(CV:一龍斎春水)
無人島「トモス島」でジャックと共に過ごすピンク色のイルカ。ある時のび太の持っていた島の地図を見るとのび太とジャックを背に乗せたまま島の水流を辿って内部に入り込むもキャッシュの部下達に捕らえられてしまう。その後は実験室でDr.クロンに知能や脳のレベルの高さを買われ、改造生物『イルカニ』にされそうになるものび太達に助けだされた。実はテレパシーで人間の言葉を話すことが出来て島をタイムパトロールからカモフラージュしているバリアーループの解除を提案・現地の他のイルカに協力を仰ぎキャッシュの野望阻止の作戦に協力する。その正体は脳を強化されたタイムパトロール隊員でキャッシュ一味の尻尾を掴もうと島に居ついていた(のび太の島の地図でようやく侵入口を突き止めた)。本隊を要請し崩壊する基地から一行を脱出後、未来へ帰っていった。
キャッシュ一派
22世紀からやって来た時空間犯罪者。
クロンのスポンサーを務め、動物たちを不法に改造した怪獣を作り、いたる時代で売りさばいている(ドラえもん達が17世紀に飛ばされたのも一味が所有する改造生物の輸送タイムマシンにより時空間が乱れたため)。
他にも、未来世界で流行っているアドベンチャーゲームのギミックを島内に仕掛けている。その後、ドラえもん達によって悪事は失敗に終わり、他の手下共々タイムパトロール隊に逮捕された。
キャッシュの元で働くマッドサイエンティスト。22世紀で危険な生態改造を行った事により学会から追放され、キャッシュの下で生物の生態改造を行っている。
ルフィンまで改造しようとしたその悪辣さは、比較的温厚なのび太をマジギレさせるほど。
ちなみに、演じた富田耕生氏は、日本テレビ版『ドラえもん』でドラえもんを演じており、実質新旧ドラえもん対決となった。
キャッシュの部下達。
半魚人の様に見えるが、その正体はその様に見える服を着た普通の人間。
怪獣達
トモス島に生息する不思議な生物達。
その正体はDr.クロンが異なる生物を掛け合わせて作り出した改造生物。
最後はタイムパトロールによって(リバイアサン以外が)回収された。
海坊主・イルカニ以外の名称及び能力は1998年4月3日放送の『春だ!一番ドラえもん 夢航海120分超スペシャル!!』のコーナー『怪獣クイズ』で判明している。
最初にドラえもん達の前に出現した大型怪獣。
伝説復元機のバーチャン…もといバーチャル映像の怪物だと思って油断した彼らを襲撃し、船の一部を破壊した。キャッシュ曰く「施設からよく抜け出す」らしい。
- メロンベロン
メロンの様な果実型の小型怪獣。
食べようとしたパンチョの顔を舐めまわした。
大長編ではパイナップルの「パイナッペロン」となっており、ゴンザレスの顔を舐めまわした。
- カメレオンコウモリ
カメレオンの体とコウモリの翼を持つドラゴンの様な姿の中型怪獣で、その見た目通りの能力を有している。また、粘着性の舌を持つ。
トモス島のジャングルで海賊達を追い回し、落とし穴に落とした。
その後、キャッシュ一派の秘密基地のモニタールームでドラえもん達に襲い掛かるが、のび太に撃退された。
- 焼きイモ虫
海賊達に炎を吐き、落とし穴に落とした。
大長編では目と触手が無く、ミミズに近い姿をしている。
- クモバチ
群れで海賊達に襲い掛かり、糸で拘束した。
- パックリソウ
ハエトリソウに似た巨大な肉食植物。蔦で獲物を捕らえ、葉で飲み込む。ただし消化するまで2日かかる。
のび太とジャックに襲い掛かり、改造生物の存在を知らなかったのび太を拘束、のび太を助けたジャックを捕食したが、岩を使ったのび太の決死の連撃によりダメージを受けジャックはすぐに救出されていた(中のジャックも瘤だらけになった)。それでもなおのび太達に迫り捕食しようとする執念深さを見せていた。
- トラゾウ
トラの体とゾウの鼻と耳と牙を持つ大型怪獣。トラの凶暴性とゾウの怪力を併せ持ち、筋力はゾウ100頭分。
ジャイアン達に襲い掛かるが、スネ夫が桃太郎印のきびだんごと間違えて食べさせたおしり印のきびだんごにより腹を下し、2足歩行でトイレへ駆け込んで行った。
- サイワニ
サイの体と角とワニの頭と皮膚を持つ大型怪獣。突進力はサイの200頭分であり、あっさりと貨物を吹き飛ばす程。
しずかが無生物さいみんメガホンで作り出した岩男と戦い優位に立つが、ジャイアンが携帯カラオケマイクで歌った歌で撃退された(その際岩男も崩れたが、その原因がサイワニの攻撃なのか、ジャイアンの歌なのかは不明)。
余談だが、外観や下記のリバイアサンから考えて実は本当の名前が有った可能性があり得る。
Dr.クロンの作り上げた、海蛇に似た最強の怪獣。
全長263mという巨体でミサイルでも倒せずタイムパトロールへの充分な対抗手段になると評されている。作中ではシャーク号を怪力で破壊した他、ドラえもんとキャッシュを飲み込んでしまった。
トモス島の中に閉じ込められていたが、最後には夢たしかめ機で胃をつねられた為に大暴れして海へと逃げ出し行方不明になってしまったが、キャッシュの様な悪人がコントロールしない限り凶暴性を発揮する事は無いとのタイムパトロールの見解も有りそのまま放置される事となった。
その後、シーサーペントや伝承の悪魔と言った伝説動物として語り継がれる存在となり、劇場版のスタッフロールにてのび太がグループ研究にて海賊について調べる際の資料として図書館から借りてきた文献に記載されていることが確認できる。
操られなければさほど危険がないということなので本来はさほど狂暴ではない様子。
- イルカニ
クロンが捕らえたルフィンをカニと合成して造り出そうとしていた怪獣。
その直前にドラえもん達にコンピューターを破壊されて阻止されたため、構想のみに終わった。
もし実現していた場合、イルカの弱い皮膚をカニなどの甲殻類の強靭な肉体でカバーし、イルカの能力と掛け合わせる事によりリバイアサンを超える存在になったらしい。
関連項目
のび太の海底鬼岩城、のび太の人魚大海戦、のび太の宝島:同じく海が舞台の映画ドラえもん。その中でも海底鬼岩城はクロンを演じた富田耕生氏が演じる敵キャラが登場する他、宝島は本作と同じく海賊の宝探しが物語の発端である。
南海の大冒険、無人島の大怪物:この二つの話が元になっている。
のび太のBIOHAZARD…本家の続編において(二次創作ではあるが)、今作の後日談だった事が明かされた。