ハエトリソウ
はえとりそう
食虫植物の一種にして代表ともいえる植物。
葉が牙の生えた大口のような形になっているのが特徴で、実際虫を咬み潰して養分にする捕食器としての機能を有している。
葉は内側にある感覚毛で刺激を受けると、反射的に素早く閉じる機能がある。
その後外側のトゲも内側に曲がる事で、主な接触原因である小虫を完全に閉じ込め、そのまま分泌する消化液でゆっくり溶かして吸収する。
正確には2回または2本以上の感覚毛に同時に触れると閉じる。1回ではないのは、近くの葉や雨の水滴などが触れた時の誤作動を防いだり、獲物を確実に捕えるための適応と考えられている。
なお名前は「蠅取り」だが、これは正確には蠅サイズという意味であり、本物は速すぎてそうそう捕れない為、専らアリとかナメクジなどを捕食する。
その異質な生態はチャールズ・ダーウィンをして「この世で最も驚くべき植物」と言わしめた。
こうした性質と歴史から不気味で凶悪な印象が強く、もっぱらRPGやモンスターパニックで食人植物として描かれる事が多い。
大航海時代にもロジャー・コーマンが残した「南太平洋上に死の島があって、人が寝られるくらいのコレの葉っぱがいい匂いを放ってくぱぁとしているので、そこへ行って寝ると消化される」という伝説がある程。
現在においては愛好家の方々も数多く存在し、観葉植物屋さんへ行くと「赤い竜」「デンタータ」などの品種がいっぱいある。
だが実際は、植物離れしたスピードを実現している代償も大きい繊細な植物でもあり、葉っぱを動かし過ぎるとすぐにエネルギー切れを起こし枯れてしまう。
たとえ適切な感覚で捕食していようと、一枚の葉は4-5回位の可動で寿命を迎え、その都度新しい葉っぱに生え変わる。
湿地の植物なので「水は大量にやらなきゃいけない」「日光はいっぱい浴びせなきゃダメ」「寒さにも弱い」と、育てるのは中々に面倒。こうした要素が祟ったのか、現在野生種は絶滅危惧種にもなっている。だが、それがいいという方々もかなりいらっしゃるようである。
葉っぱの形や虫を取る仕草にエロスを覚える愛好家もおり、加えて葉っぱのトゲを女神のまつ毛に見立てた事に由来してか、英語では「Venus Flytrap」(ヴィーナスの蠅取り罠)と言う。
因みに学名は、その虫を捉えて食うところから、血を愛で給う女神ディアナ(神官の交代の際に、現職と信任でちょっと殺し合いをさせる儀礼があった)にちなみ「Dionaea Muscipla(ディアナのハエ取り器)」という。