概要
ヘイシソウ科のうちサラセニア属(学名:Sarracenia)に分類される食虫植物のこと。和名はヘイシソウ(瓶子草)という。
名前は本種の標本をヨーロッパに送ったカナダ人医師、ミシェル・サラザン(Michel Sarrazin)から来ている。
和名は捕虫器に変化した葉の形状が酒を入れる瓶子(へいし)に似ているところから名付けられた。
北アメリカに分布する。生息地・人工栽培とも交雑種が存在するが、それを除けば10種ほど知られている。
サラセニアと同じヘイシソウ科の植物は他にダーリングトニアとヘリアンフォラがいる。全てサラセニアと同様食虫植物であるが、前者は開口部が下に曲げて、後者は蓋が非常に小さいことでサラセニアから区別できる。
ヘイシソウ科とウツボカズラ
サラセニア含めてヘイシソウ科は同じ食虫植物のウツボカズラとよく似るため、かつては近縁と思われて同じウツボカズラ目に分類された。しかし遺伝子解析により、両者は他人の空似(収斂進化)であると判明。ウツボカズラはカーネーションやサボテン等と共にナデシコ目に属する一方、ヘイシソウ科はツツジやキウイ等と共にツツジ目に属するものである。
両者の主な違いは次の通り。
ヘイシソウ科 | ウツボカズラ | |
---|---|---|
茎 | 短くて地面を這う | 長くて目立つ |
捕食葉の形 | 茎から一体成型で上に伸びる | 偽葉先端から伸びた蔓の先に生える |
若い捕食葉の蓋 | 左右に閉じる | 上下に閉じる |
花 | 高い花茎からぶら下がって雌雄同株 | 数多くの花が串状にまとめて雌雄異株 |
生態
主に日当たりと通気性が良くて栄養が乏しい湿地帯の地面に生えて、食虫植物にしては珍しく発達した根を持つ。
ウツボカズラと同様、捕食葉は動かず、落とし穴のギミックで捕食を行う。開口から甘い蜜を分泌して虫を誘い、その滑らかな内壁や蓋に散在する下向きの毛で虫の脚を滑らせて落とす。奥の内壁は蓋と同様下向きの毛が生えて、落ちた虫はこれで上に登れなくなる。最深部に液体を蓄え、落とした虫を溺死させて消化する。
但し積極的に消化液を分泌するウツボカズラと違い、サラセニア含めてヘイシソウ科の場合は多くが液内に棲息する細菌が消化を行う。
開口部の蓋は虫の脚を滑らせる他、雨水が捕食葉に溜まって消化液が薄くなることや、獲物が浮き出して逃げてしまうことを防ぐ。
コヘイシソウとヒメヘイシソウは蓋がドーム状で透明の点から光を透かせ、開口部にやって来た虫を撹乱し、出口はそこだと勘違いさせる。この特徴は同じヘイシソウ科のダーリングトニアにも見られる。
一方、ムラサキヘイシソウは蓋が直立して雨水を貯まらせる。中に共生する微生物に溺死した獲物を分解させ、そこからより吸収しやすい栄養を受け取る。また、本種は野生では虫だけでなくイモリの幼体を捕食したこともある。
観葉植物としてのサラセニア
その独特の姿から観葉植物として人気が高い植物である。
また、アミメヘイシソウは姿形だけでなく美しい模様を持つために、観賞用や交配用としての需要が大きい。