生物の遺伝子
遺伝子とは、古典的にはmRNAを通してタンパク質をコードする構造遺伝子(シストロン)を指す。
細胞核でmRNAに「転写」された遺伝情報は、リボソームでタンパク質に「翻訳」される。
全ての生物の遺伝子はDNAにコードされており、DNAが複製されることで細胞から細胞へ、親から子へと受け渡される。
生物の身体はタンパク質で構成されているが、そのタンパク質の配列をコード化したのが遺伝子ということである。もっとも、人間のDNAのうちタンパク質合成に関わるのはわずか2%ほどであり、残りの98%はタンパク質をコードしていない。つまり、「DNA=遺伝子」ではない。タンパク質をコードしていない「余分な」領域はジャンクDNAと呼ばれる。
...が、タンパク質の転写に関わらないDNAの一部は、mRNAへの転写制御に関わる「プロモーター」であることが早くから知られていたほか、近年(21世紀に入ってから)90%以上のDNAは「ノンコーディングRNA」と呼ばれるタンパク質をコードしないRNAに転写されており、形質発現の修飾などの役割を果たしていることがわかった。こうしたことから「ジャンクDNA」という呼称は適切ではないとされ「ノンコーディングDNA」と言い換えられることが多くなっている。
ノンコーディングDNAは生物進化や遺伝病、老化、ガンの発病機序など人体の健康に深く関わっており、21世紀に入ってもっとも精力的に研究が進められている生物学領域のひとつである。
ウイルスの遺伝子
ウイルスは生命の構成単位である細胞を持たない、すなわち生物ではないが、DNA(またはRNA)の遺伝子を持っており、宿主の細胞に感染して自らを複製させることができる。RNAウイルスの中には逆転写酵素によって遺伝子をDNAとしてコピーしそのDNAから遺伝情報を読み出すタイプのもの(HIVウイルスなど)があり、レトロウイルスと呼ばれる。