「頼まれたものは何があろうが絶対に届ける、それが届け屋だ!」 (バクアゲ1)
「どうやら俺の夢は、こいつを倒した先にあるらしい…」 (バクアゲ8)
「そうだな。だから“今”の俺は、聞こえた悲鳴は絶対に無視しない…」 (バクアゲ18)
演:井内悠陽 / 堀雅陽(幼少期)
概要
本作の主人公でブンレッドに変身する青年。
ワインレッドのジャケットに歯車のパターンがあしらわれたシャツがトレードマークであり、開発・改造の達人であると同時に自らチューンアップした赤い車で「届け屋」としての活動を行いつつ、ブンブンジャーとしてハシリヤンと戦う日々を送る。
「formation LAP」によれば、天才的開発力によって取得した数々の特許を元に若くして莫大な財を築いた資産家である。ブンブンカー用の巨大格納庫が併設されたガレージも自邸の地下にある個人所有物である他、サンシーターに狙われていた未来の変装の為に、ハイブランドのブティックを所持するブラックカードで店ごと買い占める等、大胆かつ気前のいい行動に出る場面も度々ある。
前出のガレージにはブンブンことブンドリオ・ブンデラスが居候しており、ブンブンジャーの装備一式も、ブンブンから得た宇宙由来のテクノロジーを取り入れ、共同で作り上げたものである。負傷したブンブンの体を初見で修理してみせたのに加え、前述の宇宙由来テクノロジーを理解・応用している点から、機械工学方面の知識に非常に秀でているものとみられる。
なおその天才的開発力と影響力に加え、用途不明の地下巨大スペース所有もあって世界中の情報機関からマークされているという身でもある。
大也の購入リスト
話数 | 入手した物品・企業体 | 購入金額 |
---|---|---|
バクアゲ1 | 高級ブティック(※1) | 不明 |
バクアゲ2 | ゴミ処理場(※2) | 10億円 |
バクアゲ3 | 自転車とヘルメット(※3) | 不明 |
バクアゲ17 | ビリヤード付のおしゃれなバー | 不明 |
バクアゲ23 | 新品のグローブ | 不明 |
バクアゲ25 | 対ジャッキー・ホイホイ用の人工衛星 | 不明 |
バクアゲ31 | 世界各地の幻のスパイスの数々 | 不明 |
映画 | サーキット場 | 不明 |
バクアゲ37 | 商店街のソーセージ工房に売られてるウィンナー | 不明 |
バクアゲ41 | カーポートマルゼン埼玉本店(※4) | 不明 |
(※1)公式サイト内では「ハイブランドショップ」と記載。
(※2)会社名は「久頭エコリサイクル鋼業」。
(※3)劇中で未来が届け屋の仕事をする際に使用。
(※4)社長のXより
人物
洞察力と勝負勘に優れ、リスクやピンチに遭遇しても前向き楽しむポジティブな気質の持ち主で届け屋としてもブンブンジャーとしてもスマートで余裕たっぷりな立ち居振る舞いを通す。
「自分のハンドルは自分で握る」をポリシーとしており、心から「そうしたい」と思える事柄に出会えれば大小・公私・損得は一切問わず、莫大な財産や時間の消費を惜しまないだけでなく、自身の命や尊厳を賭ける選択すら厭わない。この若さにして途轍もなくスケールが大きい男であり、余人の感覚では到底理解が及ばない精神を秘めた天上人とも言えるが、驕り高ぶる姿勢は欠片も無く、常にその視線は弱者や子供の方へ向けられている。
対人関係に関しては、上記の精神から誰に対しても対等かつ媚びない言動で接し、大抵のことでは感情を荒げない。基本的な二人称に「君」を用いる等々、根幹には品の良さを感じさせる。
そしてブンブンジャーの仲間達のように自身が心から「惚れる」に値する夢や意志=「バクアゲ」を感じた人物に対しては、自他の区別すらなくサポートする奉仕精神の持ち主でもある。
とりわけ「子供達の笑顔と喜ぶ姿」を何より尊ぶと共に逆に「人々が悲鳴を上げる状況・状態」を何よりも嫌う。これは先斗との対話から大也自身の幼少時代に起因していることが示唆されており、技術、資産、そして仲間といった確かな裏付けを得てまで「余裕」を保つポリシーの裏には、「余裕がないと聞こえるものも聞こえない」→「他人の悲鳴は絶対に無視せず手を差し伸べる」意志が込められており、それを餌とするエネルギーを求め悪逆無道の限りを尽くす元凶のハシリヤンの排除にも(やはり本来の意図とは関係ないにもかかわらず)、片手間にはせず同じく自身の全てを賭ける覚悟を示している。
上記の人格が形成された背景にはバクアゲ37・45の回想シーンで明らかになった過去の暗い出来事がある。
大也たち範道一家が住むマンションの隣室から、連日子供の泣き声が聞こえたが、当時の大也は訝しく思いながらもそのまま何もしなかった。しかし後日、それは『取り返しのつかない事件』となって発覚し、警察が動き新聞沙汰になるレベルの大ごとになった(作中では具体的描写は避けられているが、おそらく虐待死事件と思われる)
大也は「僕には悲鳴が聞こえたのに…」と後悔の念を抱く。そしてまひろ先生に「決めたんだ。僕は早く大人になる」と固い決意を明かし、今の大也が作り上げられていったのであった。
これらの精神から「届け屋」の仕事にも他人に充足感や生きる希望を与えられる喜び、そして「悲鳴に対して自らを届け、助ける」使命を見出している節が窺える。
届け屋の仕事は学生時代の恩師・内藤雷汰が社長を務める会社の商品を届けたのがきっかけであるとバクアゲ11で語られており、内藤からは大人になった今でも呼ばれている他、彼のオフィスには学生時代に2人で撮った写真が飾られており、当時は少し仏頂面な面持ちであった。2人で話してる時も幼い子供のような表情を見せている。届け屋のネットワークも彼の財団のネットワークが中心となっており稼いだお金は世界中の貧民層で暮らしてる子供達に使っている。
「惚れた」「買った」が口癖であり、「今まで俺が惚れ込んだもので失敗があったか?」と語るなど、手に入れた人材には強い信頼を置き、真正面からその意思を示す。
本人の財力・人格、そして「惚れた」人物への信頼感をまっすぐ示すスケールの大きさから、異星人のブンブンを始め、シャーシロこと射士郎や玄蕃のような裏寄りの人間から、一般人出身の未来や錠までも併せた、あらゆる背景を持つ人材を受け入れまとめるカリスマ性を持っている。
とはいえ、お金持ち故に未来の知り合いが営んでるカレー屋が経営難に陥った際に同じ経営者としてアドバイスを求められた時にはわざわざ世界中のスパイスを用意したり余計にお客が入りにくいゴージャスに改装しようとしたりと少し富裕層故に感覚がずれている所や、そのカレー屋がハシリヤンの被害を被ったと知った未来にアイテムとスターターをぶんどられて困惑しているなど一概にスマートなところばかりのみではない。
バクアゲ41でハシリヤン・ユナイテッドとの地球のサッカーの命運をかけた試合中に先斗と玄蕃がみっともない喧嘩を始めると少しキレたトーンで二人の頭を冷やさせるためにブンレッド119にチェンジして射士郎のシュートアシストのついでに玄蕃と先斗に水をぶっかけて容赦なくピッチから下ろしている。
しかし、その審美眼に絶対的な自信があるのに加え、先述の通り「自身のハンドルを握る」ポリシーに文字通り一切の損得を加味しない精神が、本来は余人とは相容れない(この点については、シャーシロや玄蕃のような一般人寄りではない人物の方がむしろ割り切りやすいのだが、当の2人が周囲へのフォローに向いた性格をしていない)弊害か、時に「(自分が認めた相手だからこそ)自分は相手を無条件に信頼しているので、相手も自分を無条件に信頼している」 と都合良く解釈し、自発的な交流を怠る場面が散見され、時に報連相の欠如を起こす=相手のハンドルを握ってしまう悪癖として表に出てしまう。
特に1stLAP終盤ではこの悪癖と知り合って日が浅かった未来、錠、調が大也への理解が不十分だった点に加え、間の悪さが偶然重なってしまった(ブンブンレーシングのテスト走行による反動で手当を受けていたり、丁度マッドレックスが暴れ出したりと大也が対応できないタイミングでブンブンジャーの結成経緯が大也当人以外から知れ渡った)で思わぬ亀裂を生んでしまったのもあり、表面上の人付き合いの良さやスマートさに反してスケールが大き過ぎる故に周囲の理解を得られない孤独を秘めている。
上記の感覚のズレについては、本人も理解できないなりに自覚はあったようでブンブンのフォローもあって3人が本当の意味で仲間となった際には、「ありがとう、みんな」と独り心からの感謝を漏らしている。
この出来事の反省に立っているかどうかは定かではないが、バクアゲ20で降野ノリオに投げかけた「他人のハンドルを握ろうとすれば、自分のハンドルが疎かになるぞ!」というセリフは、ファンの間で早くも「ブンブンジャー史上屈指の名言」との呼び声が高い。
射士郎との関係
彼とはブンブンジャーとして一番古くから共闘してきた仲であり、神の視点で見た視聴者からすると総じて異常なまでの信頼関係(どころか話が進んで明かされる毎に最早信頼を超えた何か)と絆で結ばれている。
実は射士郎は元は大也の技術及びブンドリオを探るために範道大也邸に侵入してきたスパイであった(コミカライズで掘り下げられている)。
彼が侵入してきたところをピアノ線というアナログな罠で引っかけ、射士郎と一戦交えるものの、その潜入スキルに対し「惚れたよ···その腕。買った!」と抹殺せず引き入れた。その後は射士郎と任務をいくつか共にこなしていた模様。
この信頼関係について最も“バクアガる”べきはバクアゲ37であり、かつての仲間の罠に嵌り捕らえられた上カメラグルマーに“焼き増し”された射士郎のコピーが本物になりすまし潜入、ブンブンジャーのシステムを破壊しようと試みるが最初から偽物と見抜いた上で泳がせてガレージに閉じ込め一騎打ちに持ち込んで偽射士郎の「本物はもう死んでいるはずだ」という動揺を狙った発言に対しても本物と同じく互いを信じ切る発言をし、そのまま偽物を割り切っていたのか躊躇わず撃破した(破壊されかけたプログラムに関しては予見していた本物が仕込んだカウンタープログラムにより守られた)。
なお見抜けた根拠というのが「目を見て解った」とのこと。
もう一つの根拠は仲間のスケジュールや動向を把握してる本物ならブンブンが先斗達と買い物に行ってることを知ってるはずなのにブンブンの居場所を聞いたのがお粗末だったと偽物に突きつける。
余談
- 名前は苗字が「ハンドル」、名前が「タイヤ」にそれぞれ由来するものと見られる。またフルネームの中には、昨今の自動車を構成するのに必要不可欠な半導体も入っている。
- 前述の通り、大金持ちであるがゆえの気前の良さを多々発揮する大也であるが、この内基地も兼ねたガレージは『アイアンマン』のイメージを、店1つまるごと買い上げるくだりは『バットマン』のスタイルを、それぞれ取り入れていると公式サイトでも言及されている。
- 当ガレージにはタイヤやハンドルが複数壁に掛けられて飾られているが、『高速戦隊ターボレンジャー』『激走戦隊カーレンジャー』『炎神戦隊ゴーオンジャー』等々の、先輩の車系スーパー戦隊の英語表記と第1話放送日が描かれたタイヤが混じっている。現状はファンサービスとしか見えないが、視聴者からは今後客演でコラボを示唆しているのではないかと考察する向きもある。
- 衣装はh.NAOTO(廣岡直人)が担当。『機界戦隊ゼンカイジャー』を皮切りに、4作連続で衣装提供としてスーパー戦隊シリーズに参加しており、本作では大也の他に玄蕃の衣装も廣岡氏の手によるものである。ジャケットは見た目はレザーだが、実際には合皮でもない特殊な素材を使用し、手作業で段階的に塗装して独特の色合いと質感を表現している。シャツは、最近ではインクジェットプリントが主流だが、逆張りとしてシルクスクリーンを用いて厚みのあるインクを使い、掠れた総柄を表現している。
- キラメイジャーの熱田充瑠/キラメイレッド以来4年ぶりとなる純粋な地球人が戦隊のレッドかつ主人公である。(『主人公』に限れば機界戦隊ゼンカイジャーの五色田介人/ゼンカイザー以来3年ぶり)
- 射士郎とのその信頼や友情どころではない信頼関係について、視聴者からは掘り下げられる度に「湿度が高い」と感想が上がっている。
関連イラスト
関連タグ
鹿鳴館香、須塔大翔・須塔美羽、アミィ結月:お金持ちの戦士の方々。ただし元々が御曹司や令嬢である彼ら彼女らに対し、大也はゼロベースから資産を形成したという点で違いがある。
ギラ←範道大也
大也の「夢」と「実現」
調によって自分が知らないところでブンブンジャーが解散させられようとしていた際、ブンブンが介入し、未来達に自身と大也の出会い、そしてブンブンジャー本来の目的を語った。
ブンブンジャー結成の少し前、届け屋とレース関係の仕事をしていたと思われる大也は、事故で地球に落ちてしまったブンブンを自宅のガレージで拾い修理した。ブンブンは「よく宇宙のロボットの自分を治せたな」と問うと彼は「前から機械いじりが好きだから」と答え、助けたのも「バク上がったから」と返した。
その後、ブンブンは「自身がビッグバングランプリのレーサーであり、ライセンス剥奪により選手生命と夢を断たれ自暴自棄になって走っていたら地球に落ちてきた」 経緯を語る。そんなブンブンの「いつか開催されるビッグバングランプリに再出場する」夢に惹かれ、大也は「絶対にその夢を実現させる!」と誓った。そこからブンブンジャーとしての活動が始まり、2人でブンブンカーとブンブンチェンジャーを開発していった。
まとめると ブンブンジャーの装備はあくまでレース用の装備であり、今はハシリヤンに対抗する為の戦力として転用している のが真相である。
ある日、射士郎や未来と共に範道家の一室を掃除していたブンブンは、自らの不注意で棚から落ちた段ボールの中から幼い頃に大也が描いた絵を見つけ、幼少期の彼の夢の一つが「消防士になること」だったということを知る。
大也のことをもっと知りたいと感じたブンブンは、ブンブンマシンをメンテナンスしていた大也に「大也の夢は何か」と問いかけるが、返ってきた答えは出会った時と同様「ブンブンをビッグバングランプリに再出場させる」という夢で「消防士になりたい」という返答ではなかった。期待していた回答を得られなかったブンブンは、一方的に大也との間に溝を作ってしまう。
思い悩んでいたブンブンはビュンディー達からのアドバイスで「夢を実現させるために今の自分にできることをやろう」と決意し、メカニックとしてのこれまでの経験を基にズンズンショウカブラスターを開発。ブンレッド119という形で「消防士になりたい」という夢を実現することができた。
ちなみにラストで引っ張り出された大也の絵には、この消防士の絵以外にも「ライオンに乗っている絵」や「ロケットで宇宙を飛ぶ絵」など、様々な夢を抱いていたことが明らかになった。
この先、バクアゲ43のネタバレ注意
シャーシロの裏切りで不穏な空気になりつつも助っ人の協力もありタカラバコグルマーを撃破した大也達だったがブンブンから衝撃の言葉を告げられる。なんと自分の資産が全て他人名義に勝手に書き換えられていた。
それもその名義は全く知らないものではなく、恩師である内藤雷汰が経営するライトニング・テックのものであった事に、大也は愕然とするのであった…
恩人の裏切り、相棒との別れ(バクアゲ44のネタバレ注意!)
調による調査で最終承認のみされていないことが判明。そこから「内藤社長が自分のハンドルで決断させようとしているのではないか」と推測。しかし、その直後突然ニュースで「ブンブンジャーは悪の組織」というデマが報道され、その報道を信じた民衆から一気に非難されることになる。
この事態を受け、大也は信じたくは無いものの目を背けてはならない恩人との対話を決意。2人の思い出の地である幼少期の自身が初めて夢を語り合った丘へと向かった。
その丘に着いた大也だが、内藤は全身黒のスーツとコートに身を包んでおり、嘗ての「恩師」としての面影はそこに無く、そこに居たのは「悲鳴こそが人の幸せを作る」という身勝手な理想を掲げ侵略者と手を組む「汚れきった大人」としての彼の姿であった。
彼の身勝手な理想を強く否定するものの、すぐさまワルイド・スピンドーが降臨。自身もブンレッドに変身するも見事なまでにボコボコにされ、チャンピオンブンレッドにチェンジしてもなおその状況は覆せなかった。
未来達も大也を助けるために駆けつけるが、スピンドーはそれすらも一捻りして圧倒。全員を満身創痍の状態へと追い込んだ。
仲間の絶体絶命の状況を見るに見かねたブンブンがブンブンジャーロボとして駆けつけるが、スピンドーはライトニングテック社が製造したブンブンキラーロボに搭乗。スピンドーのブンブンキラーロボに圧倒され、自身も突如現れたグランツ・リスクに押さえ込まれ、内藤から見下ろされながら冷たく言い放たれた。
内藤 「力なき者に自分のハンドルを握る資格はない。」
ブンブンはブンブンカーを呼び出して事態の打開を試みるも、ブンブンカーはまとめてスピンドーのブンブンデンジャーでカージャックされ、逆にキラーロボを強化してしまう。
実は先の展示会騒動で内藤は、ハシリヤンに進行ルートを漏らすのみならず、貸し出されたブンブンカーに細工をしていたのだ。
内藤 「彼を助けられる可能性はここにある。このボタンを押せば、君の資産や権利は全て私に譲渡され、君はかつてのように悲鳴に駆けつけることができなくなる。その代わり、今彼を助けに行かせてやろう。選択肢は2つだ。」
彼がそう言って見せたのは敢えて保留していた資産・権利譲渡の最終承認ボタン。『これからの未来にあがる悲鳴』と『今、大切な仲間があげる悲鳴』を天秤にかけさせた。そして大也の答えは……
「ボタンを押せ…………。全部くれてやるッ!!!!」
内藤 「バクアゲだなァ!!……"少年"」
大也はブンドリオを助けに行くことを選択。悪しき笑みと共に最終承認ボタンが押され、『これから駆けつけられる選択肢』が奪われていく中、ブンブンチェンジャーを取り返し、ブンドリオの元に向かうも、ブンドリオはブンブンキラーロボの「ゲキトツバスター」の前に斃れてしまう…。
「ブンブン……ブンブン……!ブンブン!!ブンブン!!!」
雨が降りしきる中、ひたすら相棒の名を叫ぶ大也。
「悲鳴に駆けつけるための手段と力」、「大切な相棒」…
それらを全て奪われるという受け入れ難い現実を前に、彼は雨の中慟哭した。
自分のハンドルを失った大也と、響き続ける過去(バクアゲ45)
「逝ってしまうんだ……ブンブンが……!」
あれから大也は、どこかの倉庫で寝ず食わずでブンドリオの修理に没頭していた。未来、錠、玄蕃も手伝ってはいたが、大也にこれまでの余裕がない事は、3人の目から見ても明らかだった。
玄蕃「……よせ、大也」
「…………」
玄蕃「……ブンドリオは帰って来ない!!」
「決めつけるなッ!!!!」
玄蕃「大也が一番わかってるはずだ。ブンドリオはロボットじゃない。我々と同じ、魂を持った生き物。魂は…パーツの交換で治せるものじゃないだろう?」
玄蕃にそう言われても尚、パーツの組み合わせが良くないだけだと言って聞こうとしない大也。そんな態度に痺れを切らした未来が口を開いた。
未来「こっち向け!範道大也!!!今一番、自分のハンドル握ってないの……大也だよ!!自分の悲鳴、聞こえてないでしょ!?」
そう言って無理矢理大也を座らせ、机の上に出したのは、いつもブンドリオが作っていたカレーだった。
未来「食べなさい。お腹いっぱいにして、話はそれから。ブンちゃんに教えてもらった通りに作ったの。大也が余裕ないと、助けたい人のこと、誰も助けられないよ」
「…………ブンブンの味だ……」
カレーを口にした大也は、ブンドリオのことを思い出し涙を流し、心に余裕を取り戻すのだった。
そして大也は3人に「悲鳴が聞こえたら駆けつける理由」として、自分が悔やんでいた過去について話す。
「壁の向こう側は、愛の無い世界だった。俺の耳には、今でもあの子の悲鳴が響いているんだ」
大也が小学生の頃、隣の部屋で児童虐待が行われていたようで、事件の詳細を知っていた錠によれば、被害に遭っていたのは、5歳の子供だったという。自分にはその悲鳴が聞こえていたにもかかわらず、子供だったために何も出来なかった後悔を今も引きずり続けていた。
「だから大人の力を借りたかった。心ある人もいたけど、余裕のある大人ほど、何もしないんだ。悲鳴を上げる子供達をなくしたい。それだけのことなのに、綺麗事だって笑われたよ……。だったら、俺が誰よりも余裕ある大人になる。悲鳴を上げていた子供達が安心できて、夢を見られる場所を作る。俺が死んだ後も、その世界がずっと続くようにしたいんだ。俺は、ブンブンと走ると決めたことを後悔なんかしない。失ったものは、また作り上げるだけだ」
錠「俺は、綺麗事だなんて思いません」
玄蕃「一人で戦うには、大きすぎる敵だねぇ」
未来「そうだよ。一人で抱えないで。私たちが……仲間がいるんだよ」
「……ありがとう。君たちが仲間で良かった」
未来「自分のハンドル、取り戻したね」
自分のハンドルを取り戻し、仲間と共に走る事を改めて決意した大也。すると、未来の流した涙がニコーラ姫のペンダントにこぼれ落ち、ペンダントに記録されていた映像が起動する。そこに映し出されたニコーラ姫から、ミラーボールのような物体が危機を打ち破るカギになり「乗り越えるために最も必要な力をそのカギに示せ」と伝えられた。この時、大也は心当たりがあるような反応をしていたが……。