アクロバティックさらさら
あくろばてぃっくさらさら
「やっと手に入れたあ、愛羅あ。愛羅が私を“見えるようになるまで”ずっと待ってたんだよおお」
「おかあさんですよおおお」
「あなたのせいよ!!あなたが愛羅を唆して、“お”不良(ツッパリ)にしたんでしょうが!! 私の事“化け物”だなんて!!そんな事言う子じゃなかったわ!!」
CV:井上喜久子
赤いロングワンピースと黒いサラサラの長髪が特徴的で、“アクロバチック”な動きをする怪異。
頭に逆さにした大きい皿のような装飾を帽子のように付けている。
ターボババアからすればかなり若い三下の妖怪らしく、当初は名前を知らなかった。
名詞に“お”と丁寧語を付けて呼ぶ口癖があり(おどんだけやお感動など日本語としては大分変だが)、何故か「おったまげー」や不良のことを「ツッパリ」と呼ぶほか、通信ケーブルの存在を知っている等バブル期に流行したワードを使うことが多い。
ターボババアの霊力に包まれたオカルンの金の「タマ」を拾ったことで霊が見えるようになった白鳥愛羅の前に突如として現れた「妙な女」の正体。
どういう訳か自身が愛羅の「お母さん」だと主張し、攫った愛羅と一心同体になるために彼女を咀嚼しようとする。
「私のアクロバティックは“お”暴風!!あらゆるものを“お”巻き込んで“お”吹き飛ばす!!」
名前に違わないバレエのようなアクロバチックな動きで翻弄し、そのサラサラの長髪を駆使して相手の自由を奪い首を締め、大きく開いた口で蛇のように丸呑みにしてしまう。
狭くて障害物の多い倉庫の中でもしなやかな動きで器用に動くこと可能で、変身したオカルンの高速移動すらひらりと回避する程の機動力の高さを誇る。
そこから繰り出すキックの威力はコンクリートも砕くほどである。
10年以上前から愛羅が自らを見えるようになる瞬間を虎視眈々と狙っており、オカルンの「タマ」で霊能力に目覚めたのを機に活動を開始。桃の悪魔祓いをしようとした愛羅を攫おうとする。
愛羅を取り返さんとする桃達をトリッキーな動きと強力なキックで追い詰め、オカルンを捕食。
そして愛羅に自分を「お母さん」と呼ぶようにお願いするが、オカルンの「タマ」を手に入れ自信過剰になっていた当の愛羅から「化け物」と激しく拒絶され衝動のまま彼女を捕食。その怒りを桃にぶつけ、両手を縛られ思うように動けない桃を更に髪で拘束し、何度も壁や地面に叩き付ける。
ボロボロになった桃に「これは愛羅の“お”特権だけど」と前置きしつつ「お母さん」と呼ぶよう強制するも「クソ野郎」と言われた事で桃まで捕食。
「私の子供はどこ…?」と涙を流すが、ターボババアの幸運を招く力で偶然、食べてしまった長髪を着火剤に桃が愛羅の取り巻きから借りてきたロザリオ(と言われるがどう見ても十字架)型のライターを使って内部から引火。サラサラだった髪がチリチリのおばちゃんパーマのようになり捕食した全員を吐き出してしまう。
「てめえら、私から愛羅を奪いやがりましたね!!私の愛おしい愛羅をお!! “お”返し!!このブタ野郎どもがあ!!」
激昂し怒りのままに大暴れするが、チリチリの髪ではあらゆるものを巻き込んで舞う事が出来ず、狭い倉庫の天井の鉄骨に髪が絡まって身動きが取れなくなる。
それでも髪を無理矢理引きちぎる等して力づくで抜け出そうとするも最後は変身したオカルンの本気の体当たりに吹っ飛ばされてノックアウト、髪もほとんど抜け落ちボロボロの姿に変わり果てた。
「私の愛羅ぁ…」
「そんなことしたって愛羅は生き返らない。それよりもいい方法があるわ。私の炎(オーラ)を愛羅にあげるの」
瀕死の状態ながらも自身に食われたことで死んでしまった愛羅を生き返らせるために自身の炎(オーラ)を愛羅に与えようとするアクロバティックさらさら。当然桃達は疑うも、敵意がない証明としてなんの躊躇いもなく自らの顎を引き裂き、更にまだ信用出来ないのなら鉄骨で頭を潰しても構わないとまで言い放つ。ターボババアの言葉もあり、愛羅へ炎(オーラ)を渡す手伝いをする桃。そこでアクロバティックさらさらの記憶を垣間見ることになる。
彼女は生前、バレエが得意な一児のシングルマザーで、複数のバイトの掛け持ちや身売りなどをしながらも、娘(CV:木野日菜)と共に慎ましくも幸せに暮らしていた。しかしある時、訪れた借金取りの男達によって娘が連れて行かれてしまう。死に物狂いで娘と借金取りが乗った車を追いかけるも追いつけず見失い、満身創痍となり絶望した彼女は降りしきる雨の中、建物の屋上でバレエを踊りながら投身自殺するのであった。
この最期は、アニメでは投身自殺した事が直接伝わらないように、屋上の水たまりでバレエを踊る様子がまるで湖面の上で踊っているかのような演出へとぼかされていたが、よく見ると飛び降りる寸前に屋上のふちが一瞬映っており、更にその後のグシャッという鈍い音でも何が起きたか察せられる風になっている。
怪異へ生まれ変わった後は生前の記憶を失い、ただ彷徨うだけの存在だったが、偶然にも子供の頃の愛羅に出会い、母親を失ったばかりの愛羅に“おかあさん”と呼ばれたことから「私があの子を守る」と彼女に強く執着するようになった。また、アクロバティックさらさらを象徴する赤いワンピースも、かつて娘に買ってあげた洋服と同じものであった。
アニメ版では完全な怪異と化すまでの経緯が少し異なり、小さい頃の愛羅に出会うまでは原作では既にワンピース姿だったのが、アニメ版では死んだ当時の姿で描写されており、愛羅を守ると決意した瞬間髪が伸び「アクロバティックさらさら」として変貌する演出が追加された。
そして愛羅が霊感に目覚め、自身を視認できるようになったことで遂に我慢の限界を迎え襲い掛かってしまったが、元々害意を持っていた訳ではなく、本質的には優しい性格であることがうかがえる。
「もっとたくさん遊んであげればよかった……」
「私の所に生まれてこなければ……幸せだったろうに…」
「私が不幸にしたんだ…!」
「ごめんなさい…!!」
生前の記憶を思い出すと共に、愛羅に自身の炎を与えたことで肉体が崩壊。未練を残したままであるため成仏もできず、失った娘への想いを口にしながら『無』へと消えていく。その間際、生き返った愛羅が彼女へ抱き着き、こう告げる。
「お母さん、愛してる」
「忘れない。絶対」
「宇宙で一番、幸せだったから」
その言葉が、かつての娘と築いた幸せの記憶を呼び起こさせたことで未練が晴れ、アクロバティックさらさらは消滅ではなく(アニメ版では残っている左腕で愛羅の髪を撫でて優しく抱きしめて)成仏するのだった。
どうか誰も傷つけたりしない、幸せで優しい世界で。
- 上記の「バブル期に流行していたワードを多用する」ことから、生前の彼女はバブル期辺りを生きていたのではないかという推測もある。
- 仮に生前の時代がバブル期だった場合、暴対法は施行以前で(暴対法は1991年5月。対してバブル期は1986年12月から1991年2月頃)、子供の拉致などを行う暴力団などとの繋がりを感じさせる借金取りから身を守る術はほぼない。
- 連れ去られた娘のその後の行方と生死は不明であり、もし生き延びているのであれば登場してほしいと願う声が上がっている。
- 彼女の過去は原作の時点で既に悲惨な描写なのだが、アニメでは更に盛られておりより悲壮感が増している(特に腕にガラスの破片が刺さり流血したり、左目が潰れる描写が丁寧に描かれる等で視聴者にトラウマを植え付けた)。その為、他の悲しい過去を持つ人物たちの過去も更に盛られた描写になるのではないかと原作既読勢からは噂されている。なお、桃も炎を通じて過去を見た為か精神的に辛くなり、アニメ版での第8話の次回予告において、戦いの後で星子とのやり取りがあるのだが普段の強気はなくあまり元気ではなかった。
- アクさらの娘を演じていたのは、幼女の声の演技に定評のある木野日菜氏であるが、泣き叫ぶ演技があまりにも凄惨で悲痛すぎたため、声優の凄さとともに、今回の話自体を「もう見られない」と心を折られる視聴者も少なからずいた。