細菌
さいきん
細菌(バクテリア)は原核生物の一群。古細菌、真核生物と並ぶ生物の3ドメインのひとつである。古くは菌類とごっちゃにされていたが、のちに真核生物に属する菌類と原核生物の細菌は全く異なる生物であるとわかった。
「細菌」という呼び名そのものも細菌と菌類が近縁種だと思われていた頃の名残である。
古細菌(アーキア)は大きさ・生態が類似しており外観では区別がつかないが、内部構造が大きく異なる(真核生物に近い)ため、生物学的には区別されている。細菌を古細菌と区別して特に真正細菌と呼ぶこともある。
主に単細胞で存在し、分裂によって無性的に増殖(クローン)する。外観的には球形のもの(球菌)、円筒状のもの(桿菌)、コイル状のもの(らせん菌)などがあり、しばしば分裂して長く連なる。粘液細菌のような一部の細菌は細胞群体としてふるまう。移動に用いるべん毛(メイン画像のような糸状の構造)は持っているものと、持っていないものがある。大きさは約0.1~1マイクロメートル程度で、ほとんどの種は人間の肉眼で見ることはできない。
藍色細菌(藍藻、シアノバクテリア)の一部は菌類のような糸状構造を形成し、ネンジュモ類のように目に見えるサイズになるものもある。原核生物で真の多細胞になるのはシアノバクテリアだけである。
地球上のいたるところに存在する。増殖には水分が必要だが、一部の細菌は乾燥時は真菌類の胞子のような芽胞を形成するため、長時間の乾燥にも耐える。酸素のある環境で増殖する好気性細菌と酸素のない環境で増殖する嫌気性細菌がある。身近な細菌の多くは10℃以下、60℃以上ではあまり増殖しないものが多いが、低温環境でも増殖できる好冷菌もあり、思わぬ食中毒の原因になることもある。こういった生育環境の多様性のため、はるか地下深い岩盤の中や、深海の海の底にも生息している。
多くの細菌は従属栄養(有機物を分解してエネルギーを得る)であるが、硫化水素、水素ガスなどの無機物を酸化してエネルギーを得る独立栄養の細菌もある。またシアノバクテリアは植物と同タイプの光合成を行う点で特異であるが、植物の葉緑体自体がシアノバクテリアの細胞内共生に起源を持つと考えられている。
種類は多岐にわたる。生物に感染し病気をおこさせる原因となる病原菌(俗に「バイキン」と呼ばれるもの)や、食品を腐敗させるものなどが広く知られているが、ヨーグルト、納豆などの発酵食品の製造に関わるもの(乳酸菌、納豆菌など)、抗生物質を生成するもの、マメ科植物の根に共生して窒素を供給するもの(窒素固定菌)、逆に土中の過剰な窒素分を空気中に還元するもの(脱窒菌)、果ては直接食用になるもの(スイゼンジノリなど)といった、人間にとって有用なものも多い。このほかにも人間生活に直接かかわらないものを含めると、おびただしい種類が存在するらしい。
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