曖昧さ回避
- クローン【英:clone】 - 均一な遺伝情報を持つ遺伝子、細胞、個体の集団。またはそれを作成する技術。本項で詳述。
- クローン病。消化器の難病のひとつ。
- エストニア・クローン - 2010年のユーロ移行までエストニアで使用されていた通貨。スウェーデン・クローナ、ノルウェー・クローネと同語源である。
- ディズニー映画『ダイナソー』に登場するキャラクター。草食恐竜の群れを率いるリーダーのイグアノドン。
概要
植物・動物にかかわらず、ある個体からまったく同じ遺伝情報を持った別個体が作られること。語源はギリシャ語で「挿し木」を意味する。
自然的なものは1つの個体が単独で新しい個体を形成する無性生殖のうち、生殖細胞を使わず体細胞から行われるものを指す。体組織からのクローンは、多くの植物では挿し木などで容易に行えるが、普通の動物では困難である。
人為的なものは生物学の応用技術(バイオテクノロジー)の一つである。
ただし、個体の性質は遺伝情報のみで決まるものではないので、「遺伝情報が全く同じ=形質が全く同じ」であるというわけではない。ましてやクローン元人物の記憶が引き継がれる事など有り得ない。クローン元の人物と、クローン技術で生まれた子供は同じ遺伝情報を持つまったくの別人である。
全く同じ遺伝情報を持つ一卵性双生児は、外見こそ良く似ているが性格・性質は生長するにつれ徐々に違いが出てくる事からも「クローンは人間のコピーではない」ということが理解できるであろう。
天然のクローン
天然のクローン(体細胞による無性生殖)は自然界でもごく普通に存在する。単細胞生物は基本的に自身が分裂する事により増殖する。
植物では種子繁殖だけではなく、芋や球根が増える、地下茎や匍匐茎から新しい個体が発生するなどの栄養繁殖もできるものが多く存在する。遺伝子が完全に同じであるという特性から免疫の多様性に欠け、特定の病気に弱く、相性の悪い流行病にかかると急速に死滅してしまうというデメリットが生じてしまうこともある。
ただし、動物に関してクローン生成をおこなえるものは、プラナリアやヒトデなど、一部の種類に限られる。
「体細胞による無性生殖」という定義からは外れるが一卵性双生児は「同一の遺伝子を持った複数の個体」という広い意味ではクローンであると言える。ただし、単独の個体のみで生殖する場合でも、自家受精(自家受粉)による発生は有性生殖の過程を経るのでクローンとは言えない。
アブラムシ等の虫は雌雄の交尾もするが、雌が交尾無しで自分のクローンを産むことも出来る(単為生殖)。殺虫剤Aに耐性のある雌が産んだクローンの群れにはもう殺虫剤Aは効かないため、人間(農家)にとっては非常に厄介である。
動物のクローン技術の歴史
初めて1891年にドイツの生物学者ハンス・ドリーシュにより、ウニの受精卵利用し、受精して間もない卵を分割する『胚分割』で初めて動物のクローンの生成に成功している。
さらに1952年に、アメリカでカエルの胚と卵を利用し、卵に胚の細胞の核を植え込む『胚細胞核移植』でのクローン生成に成功した。また1962年に、同じくカエルの細胞を利用し、卵に生体の細胞の核を植え込んだ個体の誕生に成功している。
そして1998年に、卵の核を排除して体細胞を植え込む『ホノルル法』が日本の生物学者によって確立され、現在のクローン生成法の主軸となっている。
哺乳類のクローンとして初めて生成されたのは羊で、1996年に誕生したクローン羊のドリーは記憶に新しい。次いでネズミ、ネコと生成に成功している。
ただ、クローン猫をビジネスにした会社は事業を取り止めてしまった。これは、毛並み(必ずしも遺伝子ではなく子宮環境など他の要因で決まる)の再現に至らず、依頼主から苦情が殺到したためである。
現在、人への応用が研究され、拒絶反応のない臓器移植など、再生医療での技術転用が期待されている。
人為的なクローンの問題点
脆弱な肉体
人為的なクローンの欠点として、生成した際に肉体の一部が欠損を起こしたり、臓器などに機能障害を起こすなど、その肉体の脆弱さが目立つ。また遺伝子において細胞分裂の回数にかかわるテロメアの長さが短くなることも発見されており、複製体の老化が早まり、寿命が短くなる危険性を示唆している。前述の羊のドリーでもこの問題が起きた……と長らく信じられてきたが、2016年7月にドリーの死因は、クローニングによる細胞老化の促進ではなかった、という新たな研究結果が発表された。クローンの処置によりテロメアの長さはむしろ回復する場合もあり、ドリーの問題“は”クローン由来の問題ではなく、羊には珍しくもない症例であることが判明している。
実際、2007年にドリー作成に使用されたものと同じ冷凍組織から誕生した4頭のドリーの姉妹羊は、一般的な羊の寿命である10歳前後まで生き延びており、本当にドリーは「たまたま若くして病気を患ってしまっただけ」だと証明されている。なお、この姉妹羊達は一頭が高齢により変形性関節症を発症するなど身体も弱くなってきていた為、2017年に4頭一斉に安楽死させられた(前述の通り彼女の年齢は既に羊の平均寿命と同じくらいであり、仮に安楽死させていなかったとしても後1、2年持つか程度の差だと思われる)。
ただし、細胞分裂の回数の限界と劣化(ヘイフリック限界)が存在するのは確実であり、ドリーの反証はテロメアだけがヘイフリック限界を決めているわけではない可能性が高い事がわかっただけとしか言えない。つまるところ、未だクローン生物の寿命(健康)については、未知の領域が大きいのが現状である。
倫理的な問題
仮に人間の健全なクローンの生成に成功すれば、男女による生殖行為が無くとも繁殖が可能となり、さらにその技術が乱用されれば、人間そのものがヒトという生物の枠から逸脱する危険性をはらんでいる。またこの技術が戦争などに利用された場合、それこそ後述のクローントルーパーよろしく戦うだけに生み出された多数のクローンを生むことになり、命の在り方に対して様々な波紋を呼ぶことになる。また、創作作品ではクローンは「見た目はそっくりでも精神的には赤ん坊である」といった描写がなされる事も多く、作品によっては傀儡や影武者といった目的で使い捨てのように扱われる場合も多い。
また、SF作品などで臓器移植用にオリジナルとなる存在のコピーを作っておく展開もあるが、上に生殖行為がなくとも、とあるが、機械性のカプセルで臓器だけを作る典型的なSF描写は困難であり、代理母出産などで一度産んでからそのクローンを殺すなり脳死状態にして取り出すことも多く、この場合は例え戸籍等がなくとも殺人である。
宗教的には、「遺伝子(DNA)操作」とともに、"神への挑戦状"といっても過言ではない。
創作におけるクローン
古くからSF作品に取り入れられており、日本でも手塚治虫が未来世界を描いた作品に登場させている。特に、この技術を有名にしたのは『スターウォーズ』に登場したクローントルーパーたちの存在であろう。
その後、多くの映画や漫画に取り入れられ、今となってはSF作品において欠かせない要素の一つとなっており、作品によっては非常に重要な要素ともなっている。
作品によってはクローン人間を自ら、もしくは重要人物の替え玉としてすり替えるという使われ方もある。またファンタジーでも『ホムンクルスの生成』と融合した、特殊なクローン技術が開発されるなど、大きな影響を及ぼしている。
デザイナーベビー
概要にあるように本来クローンとは、原形と完全に同じ遺伝情報を持つ複製であり、人造生命体を指す言葉ではないのだが、フィクションの設定では混同して使われる事が多い。この辺は古い作品でアンドロイドとサイボーグが混同されていた状況に似ている。
創作におけるクローンには遺伝子操作などの技術を組み合わせる事で原体にはない身体的特徴を人為的に付与されているケースもある(つまり厳密にはクローンではなくデザイナーベビー)。例えば上記のクローントルーパーは通常の倍の速度で成長する他、独立心を弱めて忠誠心を高めるよう遺伝子操作されたり、戦場で各個体を識別する番号が遺伝子に刻印される等している。「アルティメットスパイダーマン」では、男性であるスパイダーマンから採取した遺伝子の染色体の部分を操作する事で女性のクローンが生み出されている。
クローン(もしくはそれに相当)とされるキャラクター
ネタバレを含んでいる可能性があります
(※追加があればお願いします)
男性のクローン
※1 弱い精神力を抽出して特殊な機械で発生させた精神クローン。
※2 自分の死を偽装する為にIPS細胞から製作したもの。
※3 マモー同様、存在維持のための代替ボディー。
※4 カービィバトルデラックス!編でカービィプリンターの力によって生み出された。
女性のクローン
※4 ギンガ・スバル・ノーヴェの遺伝子素体は同じ人物だが戦闘機人化されている。
※5 アニメオリジナル設定。
※6 オリジナルは死亡、アロマの意識をルキヤのボディに移している。
※7 お守りに入っていた毛髪から
性別不明のクローン
キャラクター | 原体となったキャラクター | 登場作品 |
---|---|---|
ミュウツー | ミュウ | ミュウツーの逆襲 |
カービィザウルス | カービィ | 星のカービィ(アニメ) |
メタリドリー | リドリー | メトロイドプライム |
クローン剣士ダークマター | ダークマター | ロボボプラネット |
コジャッジくん | ジャッジくん | スプラトゥーンシリーズ |
原体が不明なクローン
キャラクター | 原体となったキャラクター | 登場作品 |
---|---|---|
プレア・レヴェリー | 不明 | 機動戦士ガンダムSEEDXASTRAY |
ソード | 不明 | プロジェクトクロスゾーン2 |
SSグラップラー | 不明 | メタルマックス2 |
レプリカ兵 | 不明 | F.E.A.R. |
仄姉妹 | 不明 | シドニアの騎士 |
セス、アベル | 不明※8 | ストリートファイター |
飴村乱数 | 不明 | ヒプノシスマイク |
※8 大本の遺伝子の持ち主は明言されていない。ベガが憑依するための「代替ボディ」製造用に調整された受精卵から、同じ遺伝子を持つ多数の「スペア」が生まれ、加工されている。
親と性別が違うクローン
キャラクター | 原体となったキャラクター | 登場作品 |
---|---|---|
X-23 | ウルヴァリン | X-MEN |
アルティメットスパイダーウーマン | ピーター・パーカー | スパイダーマン |
戒道幾巳 | アベル | 勇者王ガオガイガー |
キャミィ | ベガ | ストリートファイター |
キース・バイオレット | キース・ホワイト | ARMS |
怪盗X(イレブン)※9 | シックス | 魔人探偵脳噛ネウロ |
アルフレッド・アシュフォード | ベロニカ・アシュフォード | バイオハザード CODE:Veronica |
ティトス・アレキウス | シェヘラザード | マギ |
ガロニア姫 | クライシス皇帝 | 仮面ライダーBLACKRX |
妖将レヴィアタン | オリジナルエックス | ロックマンゼロシリーズ |
※9 「出生時の性別は雌」とされている(シックスは男性)が、高度な変身能力を持ち自らを男性にも女性にも変化させることができる。
原体を治療するためのクローン
キャラクター | 再生方法 | 登場作品 |
---|---|---|
深町晶 | 自己細胞増殖 | 強殖装甲ガイバー |
ディア・アクセル | 医療カプセル | 独立降下隊ガンフェロン |
ノーザ、ヒガント、ニキータ | ガイキングLOD |
人外型クローン
関連タグ
デザイナーベビー…素体の遺伝子を人為的に操作した、クローンとは似て非なる人造生命体。原体を治療する場合、原体が患っている病気を克服した「改良済みの強化人間」になる。
ジュラシック・パーク…作中の恐竜達は、琥珀に封じ込められていた遺伝子の欠損部分を、現在の生物の遺伝子で補ったデザイナーベビーである。