「墜ちろッ、蚊トンボ!!」
CV:島田敏
概要
木星船団を統率する指揮官であり、いわゆる「木星帰りの男」。
自らを「歴史の立会人」と称して傍観者的立場を決め込むものの、長年に渡る木星圏での生活は、彼にある種の悟りを開かせるものだった。
生い立ちは不明であるが、小説版では天涯孤独の身だったと言う。
ニュータイプの資質を有し、事態を予見する洞察力、優秀なモビルスーツを独自に開発する知識を備えた天才肌の軍人である。
更には、自身にとって有益と思える人物を惹き付ける、天性のカリスマを備えるなど、非の打ち所の無い完璧さを兼ね揃えているのだが、一方で自分が認めるに値しないと見た他者に対しては、酷薄かつ不遜な態度を隠さず、反感を買う側面もあった。
パイロットとしての能力もとても高く、自ら開発したニュータイプ専用機「ジ・O」でファンネルの挙動を予測し、これを完全に封じている(ちなみに作中で初めてファンネルが登場したシーンであり、シロッコからしても初見での武装であったと思われる)。
最終的にΖガンダムのバイオセンサーの力を解放したカミーユ・ビダンに操縦を奪われるまで、作中一度も直撃弾の被弾がなかった。
戦闘で発揮されるニュータイプ能力についても、ハマーン・カーンと互角に渡り合い、カミーユの精神を崩壊に追い込む程の力があり、シャア・アズナブル(クワトロ・バジーナ)を「ニュータイプのなり損ない」と揶揄するシーンも見られた。
もっともシャアの場合は、自機と性能の差が激しいMSで自分に挑むこと自体が愚策と挑発する面もあった。
そうした自らの能力に対する絶対の自信か、劇中ではノーマルスーツを一切着用しなかった。
しかし、その自信が裏目に出てしまう場面も少なくない。
特にティターンズ、エゥーゴ、そしてアクシズ(=ネオ・ジオン)の三つ巴の戦いが佳境に向かっていた状況下で、どさくさに紛れてジャミトフ・ハイマンを暗殺してティターンズの実権を握ろうとしたのは大きな失策で、常日頃からシロッコに常に反感を抱いていた、ナンバー2のバスク・オムが素直に従うはずも無く、彼をレコア・ロンドに始末させても却って指揮系統は混乱する一方となり、更にその隙を突く形でコロニーレーザーの「グリプス2」がエゥーゴに奪われる事態となってしまう。そして発射されたグリプス2のレーザーによって、ティターンズの艦隊の大半は失われてしまい、この時点でシロッコの計略は完全にご破算で終わってしまった。
ニュータイプ能力についてはプレッシャーが代表的。
これだけでメガバズーカランチャーの狙いを外させたり、ハマーンと同等の異常なプレッシャーを見せたりもした。
しかし、他にも様々な超常的現象を見せたアムロとララァ、カミーユやハマーン、ジュドーほどの力は描写されなかった。
テレパシーや察知能力についても、サラが戦死した瞬間に彼女の声を聞くことは出来たが、レコアの時はそれを察知するシーンすら描かれていない。
そしてZガンダムとの決戦時には、寵愛していたはずのサラやレコアがいたにもかかわらず一切気が付かないまま終わっている。また、アッシマー撃退時のクワトロとアムロのような普通は成立しない状況での会話も見せていない。
後述するカミーユの精神崩壊を、意図的に狙って成功させたのはシロッコのニュータイプ能力によるものと見られており、実際オーラのようなものがカミーユに向かって伸びていた。
ただし、元々ロザミィを撃墜した辺りからカミーユの情緒がおかしくなっていたため、シロッコ1人の力に拠るものとも考えにくい。
最期はアニメ版の場合、ニュータイプを発揮したカミーユによるΖガンダムの突撃を受け死亡。しかし、死ぬ間際にカミーユの精神を道連れにした。
劇場版では「女達の所へ戻るんだ!!」の叫びと共に突撃したカミーユのΖガンダムに倒され、そのままジュピトリスを道連れに死亡した。
そのため、TVではカミーユの精神を破壊することが出来たのに対し、劇場版では配下であった女性にも裏切られ、カミーユの精神を破壊することもかなわず、自身の艦であるジュピトリスとともに死亡するという、シロッコにとっては惨め極まりない結末となっている。
シロッコの思想
シロッコは劇中で「この戦いが終わった後は恒星間旅行にでも行く」と語る等、権力の掌握そのものには興味が無かったように描かれている。
シロッコはティターンズに与しながらも、エゥーゴの理念と同じ「重力に魂を引かれた人々の解放」を掲げているが、その事実を指摘したクワトロの言葉を断固認めようとはせず、また自分の理念の詳細を語る場面も無かったので、劇中からは具体的な指針はわからない。
見方によれば「情勢を操り世界の流れを決めるが、その後の具体的な統治をするつもりは無い」とも取れ、それに薄々気付いていたハマーンは、シャアに「共に世界の事を考えよう」と呼びかける際、シロッコを指して「小うるさい見物人」と揶揄する場面もあり、シャアは彼をして「役者」と表現している。
シロッコは「『男性的権力』或いは『個人的才能』のみで世を治めることは出来ない」として「女性による世界統治」を提唱している。
彼はサラ・ザビアロフやレコア・ロンドなどの女性を配下に置いており、これは自らの感性をも研ぎ澄ませていたと語っており、彼女達の中に己の持ち得ぬ異性なるが故の美点を見出し、一個の男性として誠実に学びながら接していたと思われる。それ故、サラが戦闘中に自らを庇って戦死した折、普段の様子からは考えられない程シロッコは激怒し、彼女を撃墜したカツ・コバヤシへと銃口を向けている。
しかし一方で、シロッコは「『天才』が世界を引っ張っていき、そして自分はその『天才』である」と仄めかす発言も多く、実際に優れた技術的・政治的才能を有するシロッコは、自らの野心を心中に燻らせていた。彼が戦乱に身を投じた真の理由は、木星の僻地で持て余していた己の才能を「戦場」の舞台を借りて存分に発揮したいであったとする見方もある。
上記の「個人的才能(=男性的権力)のみで世を治めることは出来ない」と、「『天才』が世界を引っ張っていき(省略)」の持論は、一見して矛盾する思想のようにもとれる。しかしシロッコはレコアに対し「戦いが終結した後に人を変えるのは君かもしれない」といった趣旨の発言をしていたり、前述の通り自身が統治をおこなうつもりのない旨の発言もしている。これらの発言を考慮すれば、シロッコ自身の役割は露払い(戦争の終結)を達成した時点で完了し、その後に訪れると想定される平穏な世界の指導者に相応しい女性をして「天才」と捉えているとも解釈できる。これは後年のザンスカールが提唱した母系社会構築の理念に通じる思想である。またザンスカール指導者であるフォンセ・カガチとシロッコにはともに木星船団の出身という共通点がある。
また、サラやレコアに対しても、真に心を許していたとは言い切れない部分もある。
実際サラにはグラナダ落としに関するアーガマへの密告や、フォン・ブラウンへの爆破テロ等の汚れ役を行わせ、レコアに対してもコロニーへの毒ガス攻撃を止めなかったり、バスクの始末等やはり汚れ仕事を命じており、自身への忠誠を試すかのような指示を下している。
実際、万に一つでも失敗の許されない計画(ジャミトフ暗殺等)に関してだけは、自身の手で実行している。
小説版ではサラの死亡後に初めて彼女の自身にとっての存在の大きさを自覚する場面があり、また劇場版のカミーユとの決戦時は、霊体になって自身を守ろうとしていたサラを拒絶していたらしく、同じく霊体になりサラを説得していたカツ・コバヤシが、その事実を指摘している。
結局、彼の非凡過ぎる才能と傲岸不遜な性格は、更なる災いの種を呼び込む事態に繋がり、他者を自分の野心の手駒(劇場版では『家畜』)にする傲慢さ故に「究極的な最高のニュータイプ」と称されるカミーユの怒りと、そして死んでいった者達の「魂の念」によって、その野望に終止符を打たれてしまった。
設計したモビルスーツ
タイタニア ※
オーヴェロン ※
※ 機動戦士Zガンダム本編未登場
その他の登場作品
初登場時はティターンズに所属しており、ほとんど目立たず顔見せのみであったように思われたが、後にヤプール・シャドームーンと共に肩を並べる、ネオ・アクシズの三大幹部の1人として登場。使用機体はジ・O。
アポロン総統に仕えており、バスク・オムを自らの手で射殺。その後『プロジェクト・オリュンポス』を発動したりと裏で色々暗躍した。ゼウスメンバーの戦力強化に対する妨害も、他の幹部と違って表舞台に一切姿を見せず、傭兵の黒い三連星を雇ったり、軍事顧問のマ・クベを差し向けたりしながらも、尻尾を掴ませていない。
逆襲のシャアのシャアを思わせるキャラをしており、珍しく主人公達に敗北しても死亡しなかった(唯一戦死したのはヤプールのみ)。
三大幹部の中で唯一、私情ではなく思想の違いから対立したキャラクターであり、それは倒された後にも「対話」が存在していることからわかる。
出演シーンの立ち回りや言動からすると、他の三大幹部メンバーとは異なり、アポロン総統の「理想と目的」を心から理解していた唯一の人物である可能性が高い。
ガンダム無双シリーズ
1作目ではオフィシャルモードでプレイキャラに選択もできた。
ミッションモードでは小惑星を止める為にジュドー・アーシタ、ルー・ルカとの協力に至った。このトリオになった理由は木星船団繋がり(シロッコが先輩、ジュドーとルーが後輩)だが、2人が木星船団入りしたのはシロッコが戦死した後の『ZZ』であるため、原作での面識は無い。
ここの作品で『綺麗なシロッコ』と呼ばれたりとか……。
2ではミッションモードのみの使用に留まるが、地球に降りるまでの道中を描くストーリーである。
ギレンの野望シリーズ
アクシズの脅威・ティターンズ編では彼の提案する「アクシズとの同盟交渉」「バスク・オムの粛清」を通すと離反しない。
また同地球連邦軍編ではグリプス戦役中に(ルート次第で)黒服を着て合流し、やはり離反しない。
合流後にティターンズ一派が反旗を翻しても残留する。
連邦編では史実と異なりレビル将軍が存命の為、「レビルの下では野心を持たない」の解釈がなされているのだろうか。
或いはティターンズ編と合わせて、上記2シナリオでは(上に置いても良いと認める者が居る前提で)彼の主張する『傍観者』としての面が強調されているのかも知れない。
「JUPITER【ZEUS】IN OPERATION TITAN U.C.0083」(新MS戦記収録)
近藤和久の短編漫画に登場。宇宙世紀0083年、ジュピトリスでガンダムタイプに乗っていた頃の戦闘が描かれる。
シャアのギャンEXとアクシズで調整を受けていたハマーン・カーンのワルキューレは、木星の衛星ガニメデにあるジオン採掘施設を襲撃後に帰還しようとした地球連邦軍のガンキャノン8機を有線式アームビーム砲で瞬時に仕留める。
しかし、救援に駆け付けた謎のガンダムの先制攻撃によりギャンEXは左腕を失い、ワルキューレは一矢報いるものの小破、異常に強いガンダムのパイロットがアムロの可能性を警戒し接近戦は不利と判断したシャアの指示で後退し、
同行していたジム・コマンドからシロッコと呼ばれたガンダムパイロットも「所詮ガンダムは俺には合わぬ」と嘯いてジュピトリスへ帰還する。
シロッコが搭乗するガンダムタイプは、ガンダムMk-Ⅱに似ているが、膝などはGP-01に似ていて設定は明かされていない。
0083年と言えばMk-Ⅱどころかガンダム開発計画の頃であり、さらに木星に持ち込まれているということはジュピトリスに積み込んだ時期はさらに遡ることになる。
謎
ガンダムVSガンダムシリーズから、何故かサイコやサイキック等の単語を多用するようになった。
理由は恐らく同じ木星船団のこの人の影響だろうか……?。
関連タグ
エグゼブ:似たような死に方をしたロボアニメの悪役。