概要
「木星船団」「木星エネルギー船団」あるいは「ヘリウム3船団」とも呼ばれる。宇宙世紀に存在する公社の一つ。
「公社」の名の通り、設立は地球連邦政府によるものだが、一年戦争(宇宙世紀0079年)前にはすでに独立してNGOとなっており、その規模は「コロニー公社」、「宇宙引越公社」と並んで、地球圏最大級である。
地球圏と木星圏(最短で5億km)を片道2年、計4年の歳月をかけて往復し、ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉に用いられるヘリウム3を地球圏へ輸送している。
このため、木星船団が機能しなくては全陣営がモビルスーツはおろか戦艦すら稼働が不可能となり、経済も成り立たなくなる事から、事実上不可侵の組織であり南極条約においても連邦軍、ジオン軍双方から保護対象とする約定が結ばれている。また、一年戦争終結後も、本公社所属船に対して海賊行為を行った組織(火星独立ジオン軍、新生クロスボーン・バンガードなど)は、テロリスト認定を受ける。
NGOのため当然ながらあらゆる組織に対して中立であり、地球圏最大の複合企業であるアナハイム・エレクトロニクスでさえも、繋がりを持つことはできなかった。
また、漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム』シリーズに登場した木星帝国(こちらは別公社が母体)からも組織的には完全に独立している(劇中に明言はされていないが、帝国は木星圏に留まりヘリウム3を採掘、船団が輸送してきた資源と取引していた描写がある)。これは、帝国としても地球圏から生存に必要な物資を輸送してくる文字通りの『生命線』であるため、本公社に手を出す事は、同時に自帝国の壊滅を意味するからである。(なお、同シリーズにおいて、木星船団公社に所属しているグレイ・ストーク卿が木星帝国残党やザンスカール帝国軍と戦闘を行っているのも、船団公社がこれらと独立した不可侵組織であるが故である。)
4年という長期間を星間航行し続けるため、広大な重力ブロックを有するジュピトリス級の超大型輸送艦(全長2.2km)を(複数隻)所有、運用している。このジュピトリス級内部には工場ブロックや居住区など、様々な施設が整えられているが、その航行は極めて過酷であり、ひとたび地球圏または木星圏から発ってしまえば、2年間は船内生活から離れることはできない(積載燃料や、加速の問題で進路を途中変更すると宇宙の漂流物となってしまう)。
よって乗員となるには心身ともに厳しいテストに合格せねばならない上、事実上地球圏・木星圏の両文化から取り残されることになるため、開拓精神に溢れているか、木星という新たなフロンティアに興味を持っている者もいれば、地球圏に居場所がない者や世俗に嫌気のさした世捨て人のような人間によって構成されている。
その上で星間航行を経験した「木星帰り」には、特殊な能力に目覚めたものや、独自の思想に行き着いたものも少なくない。
なお『完全中立』を謳ってはいるが、グリプス戦役期には、ジュピトリス(輸送船)責任者であるパプテマス・シロッコがティターンズ(当時は地球連邦軍の正規中枢部隊)に移籍した後、彼がジュピトリス工業ブロックで建造したMS群を提供するだけでなく、最終的にはジュピトリスそのものを接収して、メールシュトローム作戦に投入(その後、轟沈)するといった、明らかな援助を行っているが、公社側から何らかの政治的懲罰を下した記録は残っていない。また、逆にエゥーゴ勝利後も、公社側に制裁が下った記録もなく、むしろ新造艦・ジュピトリスIIには元エゥーゴ尉官を船員として受け入れている。
運用艦
星間航行とそれに伴う長期間生活を行うための艦艇は、ほぼジュピトリス(改)級に限られており、「ジュピトリスII」や「コバヤシ丸」など目的を同じくする同型艦が複数隻運航している。
木星帝国も独自に「ジュピトリス9」を所有し、地球侵攻の際の移動拠点として運用した(新造艦か、木星船団公社からの中古払い下げかは不明)が、最終的に、この「9」艦はクロスボーンガンダムの核攻撃により、轟沈している。
ヘリウム3
3Heの略号が一般的に用いられる。
地球の大気中に安定して存在するヘリウム(以下、4He)の同位体。地球の大気にも、4He:3He=100万:1の超微量であるが存在している。
逆に木星の大気中には(1997年の調査結果により)、4He:3He=1万:1という膨大な比率で存在している。
なお、当然ながら3He単体では無害であり、何らのエネルギー反応(爆発)も生じない(希ガス)=物理学上、爆発反応臨界状態には絶対に達しない。
ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉は、あくまでも重水素とヘリウム3が揃った上での核融合反応場である。
……厳密に言えば3He単体であっても、超々々高温・超々々高圧の場(太陽の中心の数百倍レベル)に置いてやれば、理論上は元素転換を起こすが、発生エネルギーよりも消費エネルギーの方が莫大になるため、文字通りの『エネルギーの無駄』である。
加えて、もしそのような圧力場(重力場)が発生した場合、万有引力の法則に従い太陽さえもその『場』に引き寄せられ、太陽系全ての惑星の公転軌道が乱れるため、地球を始めとした多くの惑星は確実に壊滅する。
主な船員
シャリア・ブル:元船団隊長。退社後、ジオン軍に移籍。
エフェメラ・ハント:0083年に入社。
パプテマス・シロッコ:元ジュピトリス責任者。退社後、ティターンズに移籍。
ジュドー・アーシタ:エゥーゴ解散後に入社。
ルー・ルカ:地球連邦軍(少尉)除隊後、入社。
フォンセ・カガチ:元職員。退社後、サイド2においてザンスカール帝国を興す。
オットー・フレミング:元船員。退社後、フレミング・インダストリー社を設立、ムーア同胞団首長に。イオ・フレミングの父。
アンディー・ウェリントン:元船員。退社後、アナハイム・エレクトロニクス社重役に。