「ワシが真に願ってやまぬものはただ一つ!!紅蓮の炎に焼かれて消える地球そのものだーっ!!」
CV:永井一郎(GジェネF、第2次スーパーロボット大戦α)/麦人(GジェネSPIRITS以降)
※いずれもゲーム作品での配役
概要
木星帝国の総統。
100歳近い老人で、生命維持のためか普段は謎の液体に満たされたカプセルの中に常駐、頭部には数本のコード、口には呼吸器らしきものを着けている。
両目はまともに機能していないのか片目だけ閉じていることが多い。
元は木星開拓船団の最高責任者であり、木星圏に人類が住める環境の開拓に生涯を捧げてきた人物だった。
外惑星である木星は、地球から最短でも6億kmの距離があり、宇宙世紀においてもジュピトリス級大型輸送船などで片道2年間を要しなければならない僻地であるが、ヘリウム3=あらゆるモビルスーツと艦艇のジェネレーターの反応元素を採掘できる唯一の星でもある為、非常に重要な意味を持っている。
生身は既に年齢的・肉体的に限界が来ているのもあり、本人の思考をコピーした9体のバイオ脳と、それを操る人形を用意しており、本人は自分と同じように思考するそれらを総括して「クラックス・ドゥガチ」であるとしている。 所在地である衛星イオの木星帝国司令本部基地にクロスボーン・バンガードが殴り込んでそこにいた彼を倒したかに見えたが……それはコピーであるバイオ脳の一つであった。
テテニス・ドゥガチ、つまりトビア・アロナクスと親密になっているベルナデット・ブリエットの父親。彼女とは80才近く年齢が離れているが、本人曰く『間違いなく実子であると「医者はそう保障していた」』と答えている。
勝つ為ならば自軍の兵や実の娘の命すら捨て駒とする卑怯かつ残虐な一面もある。
気の長くなるような時間(作中の台詞では「70有余年」。本作の年代が宇宙世紀0133年である事実から、シャリア・ブルやパプテマス・シロッコなどの木星船団公社の所属人物と軒並み面識がある可能性もある)と労力を費やし、0110年代には木星圏に小規模ながらも国家と呼べるだけの自治体を構築した後、地球の名家の女性ダナエ・ブリエットを妻に迎える(テテニスが実母の苗字を咄嗟の偽名に用いたのは偶然だが、以降ベルナデット・ブリエットと言う名はクロスボーン・ガンダムシリーズの象徴的な名となる)。
また、ロナ家もこの縁談に絡んでいた。
しかしこれは、彼のご機嫌を取ろうとした地球連邦政府による政略結婚であり、自分達が最も苦しい時には何の援助もしないでおいて、環境・経済が整い始め、地球圏に経済的メリットが生じたとなるや、親子(人にもよるが祖父と孫)ほども年下の女性を送りつけ、それで自分の信頼を買えると考える連邦のやり口に強い憤りと屈辱を抱く(彼にとっては「地球に尻尾を振れ」と言われたようなものだった)。
加えて、妻は豊かな恵みに満ちた地球で生まれ育ったためか、押し付けられた結婚にも不満を漏らさず、自然体のままに優しく振舞い、心にゆとりがある女性だったのだが、そんな彼女と、僅かな資源も無駄に出来ない木星の環境に慣れてしまい、心にゆとりのない自分とを比較して自分と自分の人生を否定されたような思いに囚われるようになり、いつしか地球そのものに対して激しい憎悪を持つようになった結果、地球そのものを破壊する目的(表向きには「地球圏を自分達の手にするため」としている)で地球侵攻を画策する。
本来は木星圏に建造したコロニーレーザーによる地球の狙撃を画策していたが、それでは間に合わないと軍を率いてジュピトリス9を旗艦として地球圏へ直接侵攻を開始。大量の核ミサイルの発射により地球圏の7割を壊滅させる大空爆計画の敢行を図った。
しかし、かねてより木星圏で妨害行動を行なっていたクロスボーン・バンガードの手によってジュピトリス9を破壊され、自ら大型MAディビニダドを操り地球を死の星にせんとするも、コピーは連邦軍、コロニー軍の共闘で撃破され、オリジナルもトビア・アロナクスによって機体を行動不能にされ、地球が死の星になる幻を見ながらキンケドゥ・ナウの手によって最期を迎えた。
地球を壊滅させようとした悪魔ではあるが、そうなる以前は虚無の世界である木星を開拓し、人類が住める環境を整える偉業を成し遂げた立派な指導者であった。
「短気で心にゆとりの無い人間」だと自嘲していた彼ではあるが、そのカリスマ性故に多くの木星の民から、未だに支持されていたのも事実である。
最終回での回想シーンでは子供達と共に木星圏のコロニーを見ながら穏やかに微笑んでいる場面があった。またいつ頃かは不明だが宇宙を漂流していた少年時代のカラスを助けたこともある。
それゆえなのか、彼の死後も木星圏に彼の思想に影響された人々がタカ派として存在し、テテニスの改革により穏健的な共和制国家となった木星圏が豊かになっていてもテテニスらハト派に反発していた。
ダナエ・ドゥガチ(妻)への思慕 と歪んだ晩年
ドゥガチは地球を憎むきっかけの妻に対し「あやつが卑しい女であれば、あやつだけを憎んでいればそれですんだのかもしれん」と語り、そしてまた彼女を否定するような発言は一言も述べていなかった事実から、親子程の年の差にもかかわらず、自分の子供まで産んだ妻に嫉妬や羨望が入り混じった、複雑な思いを抱えているのが見受けられる。
ドゥガチはそれを「わしは討ち滅ぼさねばならぬにおいをひきずりすぎているのだ!」と物語中盤で語っている。
本人は「苦しい時にはなんの支援も寄越さなかったというのに木星圏が豊かになれば良家の娘をくれてやり、しっぽを振れと宣った」と見なしているが、見方を変えれば「過酷な環境でも優しさや思いやりを忘れず、歳の差があまりにも離れすぎてるドゥガチに妻として尽くし、愛している」と、地球連邦に良い感情を抱いてないドゥガチ本人が認めざるを得ないほど、人格者かつ適齢期の女性を妻に差し出した辺りは、連邦も木星圏を決して軽んじてはおらず、むしろそれだけこの婚姻を重要視していた。
後の作品で明らかになったが、この時差し出す女性を選別したのはVガンダムの登場人物である木星帰り(Vガンダム当時)「フォンセ・カガチ」とF91のラスボス「カロッゾ・ロナ」であり、カロッゾは自身が妻に裏切られた過去と木星の英雄であるドゥガチの妻になる女性ということから「せめて美しく誠実な女性を」と全力を注いでおり、そもそもが女性不信気味であった彼が「誠実」と太鼓判を推すほどの女性であったこと、最後まで夫のドゥガチを愛して逝ったことを考えれば地球圏にとって出来得る最大限の誠意を尽くしていたと言ってもいい、問題は「それでは木星は何も楽にならないこと」と「自分が一生をかけてギリギリ人が住めるように整えた木星は"自分に差し出された女性を死なせてしまう"ほどに未だ過酷な環境であったこと」であろう、地球圏がもっと早く支援を寄越していれば、或いは自分などに嫁がせなければ、彼女は死なずに済んだかもしれないのだから。
そもそも「苦しい時にはなんの支援も寄越さなかった」とあるが、連邦の思惑はどうあれその頃の地球圏は、大体戦火に巻き込まれたり、戦争後にはジオン残党や内部組織の専横、反連邦組織等の対処に追われ疲弊していて、木星への支援もそのような余裕など全く無かったのは想像に難くないのも事実ではある(ただし、グリプス戦役に関しては木星船団公社のパプテマス・シロッコがジュピトリスをティターンズに接収させて暗躍した挙句、肝心のジュピトリスを轟沈させたので、この一件に関してはドゥガチが根に持って仕方ない)。
また、妻の面影を残すテテニスに対しても「自分が生身であれば情に流されて止められてしまったかもしれない」と考える場面もあり、娘への愛があったのも間違いないと思われる。
更に言うなら「それが最善なら娘であろうと捨て駒として切り捨てられる」思考体のドゥガチですら最期の最期まで妻の悪口は一切言っていない辺り本当に愛していたのだろう。
後に(主にストーリー展開の都合により)、実は80才前(政略結婚直前)に子供まで儲けた内縁の妻や、テテニスの母の死後にもう1度若い女性と再婚していた設定が随時追加され、70才後半以降に実質3人の妻を娶った(内、2人とは実子を儲けた)とする、かなり複雑な家庭事情を持った人物となっていった。
木星の独裁的指導者の立場を考えれば、世間体や政治戦略の為に結婚を繰り返すのもおかしな話では無いが、齢80を過ぎてこのような歪な家庭生活を送ったとすれば、いささか哀れな話ではある。この事情を鑑みれば、彼の人格が地球への病的なコンプレックスに侵されて、歪んでしまったのも無理からぬ話である。
後発作品
本作は富野監督が制作・監修として関わった最初で最後のガンダムシリーズの漫画作品であるが、同時に作画担当の長谷川氏の代表作ともなったため、以降は長谷川氏単独で続編作品が制作されていった。
クラックス・ドゥガチはその後の物語においても大きな影響を与えており、彼の思想を継いだ木星帝国残党は、トビア率いるクロスボーン・バンガードと熾烈な戦いを繰り広げ、彼の実子のキゾ中将に至っては人類を滅ぼしかねない狂気の計画を推し進めた。
関連項目
機動戦士クロスボーン・ガンダム 木星帝国 木星船団公社 エレゴレラ ディビニダド
テテニス・ドゥガチ:実子(第二子:公式上の第一子)
長谷川氏単独作品
キゾ中将:血縁上の実子(第一子)
ベル・ドゥガチ:孫娘
フォンセ・カガチ:信頼に足る知己
ニコル・ドゥガチ:2人目の孫