※この記事はその性質上、機動戦士ガンダムシリーズの宇宙世紀における「逆襲のシャア」以後の時間軸の大半の作品の軽度のネタバレを含みます。ご注意ください。
概要
宇宙戦国時代とは、『機動戦士Vガンダム』を初出とする時代区分である。同アニメの23話のザンスカールの学徒兵の会話中、宇宙戦国時代の単語が出ている。
小説『G-SAVIOUR 上巻』の巻末の世界観説明においてコロニー主義の台頭が宇宙世紀143年にあるとの記載があり、宇宙戦国時代の始まりもこの時期に設定された。
この時代区分に該当する作品は『機動戦士Vガンダム』、漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』、実写ドラマ・ゲーム『G-SAVIOUR』である。
特徴
宇宙戦国時代は、地球連邦政府がスペース・コロニーに対する監視を緩め、それに伴うコロニー国家間の戦争が多発したのが特徴である。
『機動戦士Vガンダム』の前作に当たる『機動戦士ガンダムF91』までの戦争はアースノイドが牛耳っている地球連邦政府とそれに反抗するスペースノイドによる反連邦政府組織との対立がメインだったが、この時代はスペースノイド同士が自治権を求めて殺し合うようになっている。
地球連邦政府は各コロニーによる軍事面での防衛要求を無視し、各コロニーの自衛のためのコロニー軍増強行動も静観した。
ギリギリ自活できるレベルになった各コロニー間での経済格差や住民意識の隔たりが非常に大きなものとなり対立が激化した。連邦政府は各コロニー政庁に自衛権を認めたことで、スペースノイドの意識はジオン・ズム・ダイクンらが望んだサイド国家主義からコロニー単位の国家主義であるコロニー主義へとミクロな変貌を遂げていった。
地球連邦政府のサイド内での動向に対する無関心や連邦の干渉が無くなった各サイド内での各コロニーにおける戦力増強、連邦により与えられた自衛権の拡大解釈による各コロニーの独立国家並みの自治権行使がまるで地球における武将たちの争いのごとくコロニー同士の戦国時代を招いたのである。
宇宙戦国時代に至るまでの作品の流れ
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(第2次ネオ・ジオン抗争)
宇宙世紀0090年代初期、スペースノイドには地球を複数ある星の一つであると考える風潮が蔓延しており、既に地球に対する興味を失いかけていた。
この事に危惧を抱いたシャア・アズナブルは、地球に小惑星アクシズを落とすことでスペースノイドに地球の大切さを思い出させ、彼らに地球の再生を託そう画策する。(もっとも、シャアの本音としてはアムロと決着をつけるための理由付けとしての意味合いが大きいのだが)
そして0090年から数年かけて旧ネオ・ジオンの残党や旧エゥーゴ系過激派組織『エグム』、私設軍隊養成組織『NSP』などの反連邦セクトを糾合して作り上げた私設武装組織『新生ネオ・ジオン』を率い、0093年に行動に移すのだった。
この戦いの末にアクシズ落下作戦は失敗し、シャアも行方不明になった為、新生ネオ・ジオンは衰退した。
『機動戦士ガンダムUC』(ラプラス事変(第3次ネオ・ジオン抗争))
ジオン共和国の自治権放棄が迫った宇宙世紀0096年。インダストリアル7でのビスト財団とネオ・ジオン残党組織『袖付き』の地球連邦の重大な秘密に関するラプラスの箱の受け渡しと言う裏取引が切っ掛けで、戦いが勃発した。
袖付きの首領であるフル・フロンタルはラプラスの箱を利用してジオン共和国の自治権廃止を先延ばし、その間に地球を排した各サイドによる共栄圏を樹立しようと企むがバナージ・リンクスやミネバ・ラオ・ザビによって阻止され、ミネバによりラプラスの箱の正体も演説で暴露された。
この4年後、予定通りにジオン共和国は自治権を放棄し地球連邦の直轄領となり、これを機に連邦政府は戦乱の消滅を宣言した。
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(マフティー動乱)
宇宙世紀0100年代、地球を独占しようと、合法的に正規の居住権を持った人間であっても強制的に排除出来る法案の成立を目論む地球連邦政府に対し、連邦軍地球方面軍の要職にあった将軍クワック・サルヴァーが立ち上げた秘密結社マフティー・ナビーユ・エリンが戦いを挑むのだった。しかし宇宙世紀0105年のアデレードでの戦闘でマフティーの主要人物であるマフティーことハサウェイ・ノアが撃墜され、逮捕された末に銃殺にされてしまった。
『機動戦士ガンダムF90』(オールズモビル戦役)
宇宙世紀110年代、この頃は比較的平和な時代であったが裏ではいくつもの反連邦組織が活動していた。ネオ・ジオン残党組織『レガシィ』を筆頭として、それに呼応したNSPや共和国解放戦線、元エゥーゴメンバーの武装組織エグムなど、地球圏のオールズモビルが宇宙世紀0115〜0116年にかけてテロ行為を働き、そして宇宙世紀0120年に火星を拠点とする火星独立ジオン軍(火星圏のオールズモビル)が活動を本格的に開始した。しかし火星に派遣された連邦軍部隊との戦いで火星のオールズモビルは壊滅する。
しかし0122年にシャルル・ロウチェスター率いる火星独立ジオン軍残党部隊は、とある企業の力で新戦力を有して連邦軍に反旗を翻した。この2度に渡るオールズモビル戦役によりジオン系の勢力は事実上消滅したと言える。
またこの少し後にアナハイムの試験部隊がとある戦いを繰り広げた。
『機動戦士ガンダムF91』(コスモ・バビロニア建国戦争)
宇宙世紀0123年。オールズモビルを陰で操っていたロナ家率いる武装勢力「クロスボーン・バンガード」がサイド5のコロニー「フロンティアⅣ」を占領。コスモ・バビロニアと改名し、地球連邦政府に宣戦布告した。
マイッツァー・ロナの提唱した思想「コスモ貴族主義」はそれまでの「ジオニズム」と並び宇宙世紀の歴史に大きな影響を与えた。
その後、コスモ・バビロニアはフロンティアⅠでの虐殺事件をきっかけで起きたベラ・ロナの反乱により自滅・瓦解した
『機動戦士クロスボーン・ガンダム』(木星戦役)
宇宙世紀0133年、木星圏コロニーにおいて連邦の知らぬ所で密かに建国していた木星帝国が宇宙海賊クロスボーン・バンガードを振り切って地球に親善訪問のふりをして地球圏へ侵攻した事で戦いが勃発した。
この時は10年前のコスモ・バビロニア戦争の影響か各コロニーが自立化し始めており、軍備まで保有。
木星帝国の攻撃による地球滅亡まで動かないと思われていたそんな各コロニー軍が連邦軍と宇宙海賊の危機に突如として加勢し、その戦いで帝国総統クラックス・ドゥガチが討たれ、帝国撃退に成功した。
その後、木星帝国残党の暗躍がいくつかあったものの、宇宙世紀0136年の「神の雷事件」で帝制は瓦解、平和的な木星共和国となっている。
宇宙戦国時代
『機動戦士Vガンダム』(ザンスカール戦争)
サイド1のアルバニアンコロニーで買春行為を行っていたマリア・ピァ・アーモニアは、誰の子かもわからない子供シャクティ・カリンを妊娠。
出産と同時にヒーリング能力を中心とした霊能力に目覚めたマリアは、宇宙世紀0141年にアルバニアンにおいて人生相談所を設立。0144年には出版された書籍が話題を生み、同年に組織は弟であるクロノクル・アシャーや支援者の手により宗教団体「マリアの光の教団」に発展解消する。
「マリアの光の教団」は戦乱の原因を男性社会に求めて批判、女系社会への回帰とその象徴である母なる地球を大事にすると言う女性優生思想「マリア主義」を提唱。これ自体はジオニズムの一つである「優性人類生存説」を女性目線で焼き直したに過ぎず、教団も単にマリアのカリスマによって成り立ったものだった。
しかし、その力に目を付けたフォンセ・カガチが宇宙世紀0146年に結成した政治結社「ガチ党」は民間団体を取り込んで勢力を拡大。翌年にサイド2のアメリア政庁の政権与党となる。
そして宇宙世紀0149年、マリアを女王とするザンスカール帝国の建国を宣言。
サイド2におけるサナリィの支社、サイド4の一部コロニー、月面のアナハイムの都市吸収等急速に力をつけていったザンスカールは、マリアによる「マリア主義」による平和思想、カガチによるギロチンに代表される恐怖政治の二面性を現していった。
このような状況下でも形骸化していた連邦は何ら対策も取らず、ついには「神聖軍事同盟」及びレジスタンス組織リガ・ミリティアがザンスカールに抵抗を試みる。
宇宙世紀0153年、ザンスカール帝国は軍事組織ベスパを用いて地球への侵攻作戦を展開、
既に弱体化し権威失墜していた地球連邦政府はザンスカール相手に敗色濃厚となっていたが、リガ・ミリティアが何とか抵抗を行い、そしてムバラク・スターン率いる「ムバラク艦隊」がリガ・ミリティアと合流。
力関係が逆転し、ザンスカールの最終兵器エンジェル・ハイロゥも破壊され、ザンスカールが事実上滅亡したことでザンスカール戦争は終結した。
『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』(戦国時代の激化)
ザンスカール戦争を終結に導いたのは連邦政府ではなくレジスタンス組織であるリガ・ミリティアで、さらに決戦に動いたムバラク艦隊は主流から外れた勢力であったため連邦の主流派はいずれも傍観を決め込んでいた。
宇宙世紀169年。上述の事情によるザンスカール戦争の結末は結果的に地球連邦の弱体化と言う事実を内外へ知らしめ、その連邦という巨大な力の歯止めを失った各コロニーの独立運動は徐々に暴走し、長い戦乱の影響による技術力の低下から戦力の大多数を整備が容易な旧式のモビルスーツに切り替えながらも、互いの覇権を奪い合うような泥沼の混戦へと移り変わっていった。
旧式機ばかりで戦力が低下したので大規模な戦争は起こっていなかったがザビ・ジオンやハイ・ジオン、ネオコスモ・バビロニアなどの勢力が乱立している状況であった。
この頃はエンジェル・ハイロゥの残骸が地球の周囲を漂っているせいで航路が限定された事もあってか連邦の勢力圏は地球近傍までに縮小しており、コロニーの防衛や統治を実質的に放棄してしまっている。また宇宙にいる連邦軍も腐敗が悪化しており、末端部隊は連邦と言う看板を掲げてやりたい放題するだけの愚連隊に成り下がっている。十分な規模を持つ治安維持部隊であるキュクロープス隊でも腐敗した末端部隊よりは多少はマシ程度のレベルであり、その容赦の無い非道行動と合わせて内外からティターンズの末裔と言われるほど。
更にこの頃には讃美歌(ヒム)の国と言うならず者集団がルナツーを拠点に台頭し暴れまわったが、サイド1・ネオ1バンチコロニーの地球降下作戦「DUST計画」のさなかに、首魁である「首切り王」が無敵運送を始めとするコロニー防衛戦力やキュクロープスに討たれたことで壊滅した。
『ガイア・ギア』(メタトロンVSマハ)
宇宙世紀200年代。反連邦組織メタトロン機関と地球連邦の秘密警察組織マハの戦いが描かれていた。
執筆された当時は、宇宙世紀戦国時代の設定が無かった為、それに関連する設定は見受けられない。
ただし、コロニーがスラム化しているなど、小説『機動戦士ガンダムF91』や小説『機動戦士Vガンダム』で見受けられた肥大化した人口による諸問題は散見される。
ニュータイプ100%コレクション 42 G-SAVIOUR Full Weapon(地球連邦崩壊)
度重なる戦乱の影響によりサイドの自立化が促され、弱体化した連邦内ではかつてのような地球至上主義が醸成していった。
宇宙世紀0217年、権勢回復を目論む連邦政府の命令により連邦軍が各サイドの制圧を開始し、それに反発したサイド自治政府はサイド駐留軍で抵抗を試みて紛争が各地で勃発。やがて地球圏を巻き込んだ高烈度紛争に発展していく。
宇宙世紀0218年に地球寄りのサイドが仲介役として調停し、紛争を終結させた事で連邦の支配体制が瓦解、政府機能や支配力を完全に失った連邦がサイドの独立を認め、これにより長きに渡って地球圏を支配していた地球連邦政府は遂に崩壊した。
そして地球と同等の権利を持ったスペースコロニーは、スペースセツルメントへと名を変えた。
『G-SAVIOUR』(セツルメントの時代)
宇宙世紀223年、絶対民主主義が消滅した宇宙では各セツルメントが互いの権力をめぐり抗争をくり返し、依然として宇宙戦国時代の様相は継続していた。
世界は地球各国で構成された旧連邦派と地球寄りサイドが樹立したセツルメント国家議会とそれに反対するサイドと月面都市によるセツルメント自由同盟の2大勢力が対立するさながら冷戦時代へ突入。地球ではそれまでの戦乱による環境破壊などで食糧危機と言った問題が発生しており、新興のセツルメントであるサイド・ガイアがそれを解決する為の研究に乗り出していた。また、セツルメント国家議会軍内部では地球を至上とする強硬派が再び地球から宇宙を支配しようと画策しており、食糧危機やガイアの研究も世界支配の道具にしようとしていた。
プライベートクラブを前身とする組織イルミナーティはそんな不安定な世界情勢の秩序やバランスを保つ為の活動に乗り出した。
『G-SAVIOUR』(ゲーム)
宇宙世紀223年冬、ドラマ『G-SAVIOUR』で殉死した議会軍の強硬派であるガーノー提督には腹心がいた。
その男の名はバイス・バッシング准将。彼は軍事政権を獲得するために、戦力増強プロジェクト「レイヴン」を推し進めていた。
世界の勢力バランスを崩しかねないその非人道的な計画を阻止するためイルミナーティはライトニング部隊を派遣する。プロジェクトに関連した施設や部隊を次々に撃破したライトニング部隊や正規軍等によってとうとうバイスは逮捕され、プロジェクト・レイヴンは崩壊した。