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ラプラスの箱

らぷらすのはこ

ラプラスの箱とは、OVA『機動戦士ガンダムUC』に登場するキーワードであり、物語の根幹を成す存在である。
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概要

ラプラスの箱とは、ビスト財団が宇宙世紀の始まりから秘匿し続けてきた謎の存在であり、百年近くにも渡ってビスト家と地球連邦政府を縛ってきた「呪い」である。


宇宙世紀元年、改暦セレモニーが行われていた首相官邸「ラプラス」が爆破されるという「ラプラス事件」が起こった。

そのテロに携わった人間は口封じ目的で作業艇に仕掛けられていた爆弾で殺害されるが、青年(後のサイアム・ビスト)は爆発時に船外作業中であったために吹き飛ばされるだけで生存し、ラプラスの残骸の中を漂流していた所を天文学的な偶然から、後に「ラプラスの箱」と呼ばれることになる「ある物」を手に入れた。

奇跡的に生還したサイアムは「それ」が取引に使える重要な秘密であることを見抜き、裏社会で頭角を現していくと、秘密をネタに連邦を脅迫しつつも金目当てで無茶な要求はしない、連邦にとってもリスクを冒すより癒着しておく方が安全な共生関係を築き上げていく。

やがてサイアムは当時中小企業だったアナハイム・エレクトロニクス社と関係を持つようになり、「箱」の力を使ってアナハイム社を急成長させると、同社に役員待遇で迎えられた後に専務の娘の婿となってビスト財団を立ち上げ、その地位を確立させていく。


しかし、「ラプラスの箱」の正体はサイアムと当時の一部政府首脳陣しか知らず、世代交代とともに正体を知る人間も減っていき、いつしか「箱が解放されれば連邦政府は転覆する」という噂だけが一人歩きを始めていくようになる。


そして宇宙世紀0096年、サイアムは「箱」を開放するべく自身の孫カーディアス・ビストと結託し、「箱」の鍵であり道標でもあるユニコーンガンダムネオ・ジオン残党「袖付き」に譲渡しようとする所から物語は始まる。


正体


以下の内容は『機動戦士ガンダムUC』の重大なネタバレが含まれます。閲覧の際には十分注意して下さい。




























第七章 未来

第十五条

地球連邦は大きな期待と希望を込めて、人類の未来のため、以下の項目を準備するものとする。


1.地球圏外の生物学的な緊急事態に備え、地球連邦は研究と準備を拡充するものとする。


2.将来、宇宙に適応した新人類の発生が認められた場合、その者達を優先的に政治運営に参画させることとする。




その正体は、首相官邸「ラプラス」において発表される予定であった宇宙世紀憲章を記した石碑のオリジナルである。

しかし、それは宇宙世紀0096年現在ダカールにある事で知られるレプリカの石碑とは違い、当時の首相リカルド・マーセナスらによって七章目となる一つの条文が加えられていた。

未来」と銘打たれたその条文には、地球圏外の生物学的な緊急事態に備えた研究と準備を拡充する項目と、将来、宇宙に適応した新人類の発生が認められた場合の参政権を保証する項目が記されていた。


宇宙世紀開闢以前、地球は環境破壊と資源の枯渇により、爆発的に増え過ぎた人類をもはや支えることができなくなっていた。

そうした地球規模の諸問題を抜本的に解決すべく、世界統一政権たる『地球連邦政府』が発足。反対勢力を圧倒的な軍事力で押し潰しながら、半ば強引に宇宙移民政策が開始された。

しかし人類社会と地球を延命させるためとはいえ、それは社会の下層民を宇宙へ追放するという謂わば『棄民』という行為に他ならなかった。さらに過酷な宇宙空間で人類を生かし続けるためには膨大な予算を要することから、宇宙居住者(スペースノイド)は水や空気、重力にも重税を課せられた上、地球への渡航規制を受けるなど様々な面で冷遇され、地球に残った特権階級の人々(アースノイド)との間に軋轢が生まれていくことになる。


「箱」に記された「未来」の条文は、そうしたスペースノイドに対する行為への贖罪として、そして彼らが未来を紡ぐことを諦めてしまわないように希望と可能性を託すための、遠い未来には宇宙に出た人々が社会を担うことを約束するという、リカルド首相らによる善意からの「祈り」の言葉だったのだ。


条文そのものは非常に曖昧であり、法的な根拠としては御伽噺じみた文言である。

科学的に考えれば、地球と宇宙という異なる空間で長く時代を経ていけば人類は宇宙独自の進化を遂げることは間違いないものの、この条文ではその具体的な定義をしておらず、何をもってこの条文の対象とするかは不明瞭である。


しかし、そんな条文であっても、地球に残った特権階級、その権力や財産を世襲していくであろう子孫達にとっては、棄てたはずの平民に権力を譲渡する可能性の存在そのものが不都合であった。

このために連邦内部の保守派であるジョルジュ副首相達により「ラプラス事件」が起こされ、石碑はもちろん、条文に賛同した政治家、条文の存在を示す証拠や見てしまったマスメディアまで、全てが闇に葬られることとなった。


ところが、サイアムの生存により、テロの真相を示す証拠がただ一つだけ確保されてしまう。

「箱」の存在は、リカルドを継いだジョルジュの新政権の罪を暴く証拠であり、新政権にとっては公表されれば政府が転覆する秘密であった。



100年の歴史の中で

「箱」の奪回計画やサイアムの暗殺計画自体は何度も立ち上がったものの、当時の「箱」を利用したサイアムの要求も連邦の中枢権力に触れるようなものではなかったため、連邦は事を急いで余計なリスクを犯すよりも彼との共生関係を続けることを選択した。


だが、逆に言えば「箱」の持つ力は、ただその程度に過ぎなかった。この時点での「箱」はレプリカにない条文の存在がオリジナルであるということの証明として、あくまで連邦政府が首相官邸の爆破テロに関わっていたという政治的スキャンダルを暴く証拠でしかなく、時が経てばたとえ公表されても数代前の政権のスキャンダルに過ぎず、今の政権には関係無い物となり、いずれはその力も風化するはずであった。


しかし、ラプラス事件から半世紀が過ぎた頃、ジオン・ズム・ダイクンがスペースノイドの政治的独立を主張する思想ジオニズムを提唱し、スペースノイドの中から新人類「ニュータイプ」が出現すると予言したことで、「箱」の持つ意味は一変してしまう。


碑文に記された「宇宙に適応した新人類」との言葉が、よりにもよって反連邦の象徴的人物から発せられた言葉と偶然にも一致したことで、「箱」に「連邦政府はジオニズムに類する思想を秘匿してきた」という事実を後付けしてしまい、スペースノイドが連邦を攻撃する口実となり得るものになってしまったのである。

「箱」にはリカルド首相ら当時の首脳の署名が入っているため、公表・検証により本物であることが証明されれば法的にも十分有効である。

さらに、「宇宙に適応した新人類」の定義も曖昧でいくらでも拡大解釈出来るということから、「ニュータイプ」に限らず「スペースノイド=宇宙に適応した新人類」とする事もでき、参政権を持たないスペースノイドからの反発が強まるのではないかという危惧が生まれるに至る。

そして、ジオニズムがスペースノイドの間で一大ムーブメントを引き起こして独立運動を激化させ、スペースノイド主導の国家ジオンが勃興したことによって、連邦の危機感はさらに強まることとなる。


ジオニズムの生まれた時点で「箱」の存在を公表していれば、あるいはその後の歴史は変わっていたのかもしれない。だが、無闇に公表する事はかなり危険な事であった。公表により「箱」の存在を知ったスペースノイド達が、もしもジオンを先頭にして反旗を翻せば、途方もない大混乱や大戦乱が人類世界を包むことは間違いない。

何よりも「その存在を知りながら隠し続けてきた」という紛れも無い事実こそが、連邦の政治的・思想的不正義を証明するものとして、ジオン信奉者達にとって都合のよい最大の武器となってしまう。

それを恐れた連邦政府は「箱」を隠匿し、沈黙し続ける他無かった。「祈り」の言葉は、この瞬間から「呪い」へと変貌してしまったのだ。


しかし、それでも地獄のような悲劇は起きてしまった。一年戦争の勃発である。

混乱を避けるために沈黙を貫いたはずが、結果として「箱」の公表に関係無く戦争は起きてしまう(連邦との戦いを目論んだザビ家が平和主義者であるダイクンを暗殺すると言う余計な事をしたのもあるがもっとも、この時代においては公表しても戦争の時期が変わっただけの可能性は高い)。

数十億の命が失われ、地球環境も壊滅状態という犠牲の大きさと、戦争によって実証されたニュータイプの存在が、「箱」の呪いをますます重たくした。この戦争により、連邦は明確に「宇宙に適応した新人類」の出現を認めざるを得ない状況に置かれることになる。

連邦は「一年戦争のような人類全体の悲劇を繰り返さないように」、そして「宇宙に適応した新人類」の存在を否定するために、「箱」の隠蔽を続けることにに加え、ニュータイプという存在の否定のための道を選択せざるを得なかった。

財団や真実を知る一族の既得権益を守り続けるための癒着が、これ以上の混乱を避け仮初でも平和を維持するためには必要なものと、新たな意味付けがされてしまう。


皮肉なことに、ニュータイプと呼ばれることになった人間の多くは、連邦側、それも象徴的な存在であるガンダムタイプのパイロットから次々と現れてしまう。

連邦の勝利に貢献した存在が、同時にジオンの思想と「箱」の碑文の正しさを証明してしまう、極めて矛盾した状態である。このために、アムロ・レイが軟禁に近い待遇を受けたり、ニュータイプが優れた進化であることを否定するための人工のニュータイプの研究を推進したりと、連邦はさらに呪いに突き動かされていく。

仮初の平和を守るためのそうした行為こそが、新た戦争の火種を産み続けるとも気付かず。


そしてラプラス事件から100年が迫る宇宙世紀0096年、連邦軍は「人工のニュータイプを乗せたガンダムが、ジオンとニュータイプを根絶する」ためのフラッグシップとして、ユニコーンガンダムを投入し100年の呪いに終止符を打つことを決意。

しかし、同じく100年の節目を前に別の決着を目論んでいたビスト財団がこの計画に参加したことで、「箱」を巡る最後の戦いが幕を開けることとなる。


ラプラス事変

ビスト財団はラプラスの箱を秘匿する事で連邦から様々な見返りを受けて来たが、サイアムの財団設立の最終目的は、あくまで将来の「箱」の開放を意図したものであった。

短期的に見れば「箱」の秘匿により混乱を避けることは有意義だが、長期的に見ればやがて社会は停滞し逼塞する。良くも悪くも起爆剤となるであろう「箱」を公表することで、混乱を招いてでも社会を変えることが必要と思ってのことであった。

しかし、これはただ単に、地球圏の全人類が知るべきはずの重大な事実を秘密にし続ける事で富を築いた男の、その秘匿の為に生じてきた様々な犠牲や軋轢に対する、贖罪としての個人的な意味合いも大きい。

身も蓋も無いことを言えば、「サイアムが自分の死ぬ頃に開放して後の事は全部誰かに丸投げする」という、サイアムが気持ちよく逝く為の極めて身勝手かつ傍迷惑な自己満足でしかなかったとも言える。


しかし、孫のカーディアスは社会情勢から箱の開放が必要であると賛同。

「ニュータイプ」という言葉の定義すら変わり果て、ジオン本来の思想に人々が飽き、ジオンという国そのものが間もなくなくなり連邦による統一支配が完成する時代の中で、その歴史の重みを知った人間だけが箱を開けることができるように宝の鍵を用意し、開放するか秘匿し続けるかも含め託すべき人間を見極めるため、連邦軍の最新鋭ガンダム開発に寄生し「UC計画」を独自の目的に作り替えていく。


ジオン軍は「シャアの反乱」で既に反連邦派の一大勢力としての力を喪い、ジオン共和国(サイド3)はもはや正規軍と呼べないテロリストになり果てたジオン軍を(少なくとも表向きは)切り捨てていた。さらに宇宙世紀0100年を契機に自治権を放棄し完全に連邦政府の統治下に入ることが決まっており、反連邦運動のシンボルであるジオン勢力はいずれ消滅することになる。

もはやモナハン・バハロ達ジオン政府には求心力すら無く、亡きシャアの亡霊にすがりフル・フロンタルという偶像を用意することで、かろうじてジオン共和国及びネオ・ジオン軍(袖付き)が成立している状態であった。

カーディアスはそんな「袖付き」へラプラスの箱の道標となるユニコーンガンダムを譲渡すべく手筈を整える。

この前段階として試作機にあたるシナンジュ・スタインが譲渡(強奪に偽装)される等して計画は進められたが、実際にはフロンタルには開放する気は毛頭無く、ただ「箱」の持ち主=連邦を脅す相手がビスト財団からジオンへと移り、これにより利権を引き出してジオンを存続させることが目的であった。

しかし、カーディアスもそうした可能性は想定しており、ユニコーンに組み込んだラプラスプログラムは相応しくない相手には「箱」の座標を開示しないようにされており、ユニコーンの担い手が「ジオンの再興」に固執する狭隘な主義者ならば、「箱」が開くことは無いと、受け渡しに訪れたスベロア・ジンネマンに警告している。


こうして「箱」は鍵の試練という条件付きながら開放に向け受け渡されるかに思われた。

しかし、財団と連邦の共生関係を続けることを目論む妹のマーサ・ビスト・カーバインの差し向けたロンド・ベルの介入により失敗する。

これまで長らくサイアムの暗殺を断念してきた連邦政府にとっても、最大の懸念事項であった箱の所在そのものが譲渡計画により浮上するであろうこの機会こそが、サイアムも「箱」も全てを持ち去る最大の好機であった。

「箱」の譲渡は失敗に終わり、その鍵となるユニコーンガンダムを巡り、箱を手に入れたいジオンと箱を消し去りたい連邦、うまく両者を阻止し今後も癒着関係を続けたいマーサの三つ巴の戦いに突入。

ユニコーンガンダムは数奇な運命を経て、カーディアスの息子であるバナージ・リンクスの手に渡り、成り行きでそれを回収したネェル・アーガマは3つの勢力から狙われる陰謀の中枢となった。

かくして、短期間の小規模戦ながら様々な爪痕を残すことになる「ラプラス事変」が幕を開ける。


「箱」の開放

ユニコーンのラプラス・プログラムに導かれた旅路の果てに、サイアムのもとへ辿り着いて「箱」の正体を知ったバナージとミネバ・ラオ・ザビは、第七章碑文は決してニュータイプ論を正当化させるものでも忌避するものでもなく、100年前の人々が新たな可能性を信じて地球の重力を振り払い新天地へと旅立つ同胞たちへ向けて、祈りを込めて贈った善意の言葉であったはずだと気づく。

全ての始まりであった宇宙移民政策も、「箱」の誕生と封印も、ジオニズムとジオンも、一年戦争に端を発する数々の戦乱も、経緯と結末は不幸なものとなってしまったが、どれもその発端にあったのは「少しでも善き世界・善き時代を、次の世代に残してやりたい」という誰かの善意ではなかったか。


始まりは罪悪感からの無責任な根拠無き慰めの言葉に過ぎなかったかもしれない。それでも宇宙移民政策は人口増加解決のただの棄民政策ではなく、スペースノイドは人類の新たな可能性を信じて希望を以って送り出されたのだという事は、その未来を生きる人類には周知されるべきであり、そして何より、「その先にある人の持つ可能性を信じたい」としてバナージ達は「箱」の開放を決断する。


宇宙世紀0096年5月4日、ミネバによって全世界に「箱」の持つ真の意味が公表された事でラプラス事変は終結を迎え、「箱」の魔力は今度こそ完全に消滅した。


放送の中でミネバは告げる。

「人間の業を否定して、ニュータイプの地平に救いを求めても何も始まらない。世界を変えるには自分達が自ら変わっていくしかなく、そして人はニュータイプにならずとも変わっていくことのできるだけの力を持っている。だから百年前の人々と同じように、善意を以って次の百年に想いをはせて欲しい。自分達の中の、可能性という名の内なる神を信じて


歴史的影響

ラプラス宣言」、「ミネバ・ラオ・ザビ殿下の演説」として、地球圏全域に響き渡った呼び掛けではあったが、人々はただ目前の生活を続けていくことに精一杯であり、二ヶ月もしない内には各コロニーのワイドショーで取り上げられる程度にまで、世界は平穏へと戻っていった。

更にその後一年が経過してなお、世界の枠組みは大きく変化することなく、日々は続いていったのだった。


民衆にとってラプラスの箱は、連邦が危惧するほどの価値を持たず、早い話どうでもよかったのである。

こういう話に関心を示すのは一握りの暇人だけであり、現状維持するしかない、現状維持でいい自分達には関係がないのだから。

また、劇中ではネェル・アーガマのオットー・ミタスが「たった……それだけ?」と正体を知った際に唖然としていたが多数のスペースノイドが同じ考えだったのだろう。

何せ、箱そのものは事実だけ見れば「宇宙世紀が始まった時に起きた事件の遺物」「連邦の昔のスキャンダル」「一年戦争を経て意味合いが大幅に変わった物」に過ぎず、公表されてもそれ自体にはいまさらすぎる時代遅れなネタでしかない。

この宣言の後に、「箱」の秘密を知り隠蔽に関わってきたマーセナス家のリディ・マーセナスが政界入りしていることからも、もはや100年前のスキャンダル程度では今を生きる世代には政府転覆の価値など無いことがうかがえる。


何より、この100年にも満たない期間ですでに一部のスペースノイドは政府への参画や大企業を立ち上げて地位を確立しており、新人類という希望に縋らずとも、実力で平民から権力者へ駆け上がることができる社会はすでに確立していた

社会を変えたいと思うスペースノイド達はすでにその志で前に進んでおり、棄てられた平民の出世は難しく未来への希望が必要という大前提自体が、解放前に否定された杞憂だったのである。

結果として100年の社会変化は「箱」の持つ意味を次々と呪いに変えた末に、肝心の「箱」の祈りは、「箱」の力が無くとも有志により短期間で果たされていたという、少数の関係者が「箱」に怯える間に社会は「箱」を追い越していた、皮肉な結末となっている。

結果論ではあるが、ラプラス事変はそうした社会全体の変化を前向きに受け取れず過去に縛られたままの大人達による、徒労のために犠牲や混乱を招いただけで、それを若者たちが尻拭いするという話であった。


更には『鍵』として用意したはずのユニコーンガンダムがラプラス事変で見せた超常現象の数々から、2号機と共に「シンギュラリティ・ワン(技術的特異点)」とされ重要度が逆転してしまい、『鍵』こそが新たな火種となるという、どこまでも皮肉な結末となってしまった。

そのあまりの超常現象は科学者達に「ニュータイプやサイコミュは我々の手に負えないので使えない」と技術の凍結封印をさせるに至ってしまい、新たなる人類≒ニュータイプの未来を拓くどころか、ニュータイプ神話の時代に終焉をもたらすこととなっている。


とはいえ、公表するものがジオニズムの再興や反連邦テロの奨励に掲げれば、そうした血気盛んな層への大義名分となりえた可能性は存在する。

その意味では、何も変わらなかったというより、世間が無駄に混乱や暴動を起こさないよう、最も穏便で無意味になるように公表の仕方を選んだという、ミネバの演説内容がその思惑通りに果たされた結果でもある。

しかし、「箱」の祈りとは無関係に社会が変革していたからこそ、ミネバの示した「新たな時代への祈り」もまた社会を変えるほどの力にはならず、政財界に実力で進出したスペースノイド達も後の時代にマフティー動乱オールズモビル戦役コスモ・バビロニア建国戦争ザンスカール戦争木星戦役などさらなる戦乱の火種へと変わっていくこととなる。


スーパーロボット大戦では

様々な作品が共演するスパロボ世界においてはニュータイプの参政権保障と地球連邦が昔起こしたスキャンダルだけではパンチが弱すぎるため、他作品と絡めた解釈がなされている。

初登場となる『第3次スーパーロボット大戦Z天獄篇』では原作同様物語の戦乱に深くかかわっており、御使いサイデリアルとその下部組織クロノによる人類の飼育に関するエルガン・ローディックの演説映像が秘匿されており、箱を開放すると全世界のネットワークに公開されるよう仕向けられていた。この映像公開はヴェーダを通じてリボンズ・アルマークが行い、のちに地球を支配していたサイデリアルへの反乱のきっかけとなった。


スーパーロボット大戦BX』ではEXA-DBがもう一つのラプラスの箱と呼ばれ、アクセス端末としての機能が追加されアナハイムに狙われていたが、開示に伴い無効となった。


スーパーロボット大戦V』では空白の10年と名付けられた本来の宇宙世紀憲章の存在を恐れた連邦政府によって意図的な隠ぺいが行われ、マフティー動乱と合わせてガンダムの世界観から宇宙戦艦ヤマト2199の世界に流れるきっかけとなった。

平衡世界に当たる宇宙世紀世界においても原作に比べ一触即発の空気が漂っていたためバナージやミネバ、フロンタルらの意思によってあえて公開しないという選択肢がとられた。

またシャアもかつてこれと接触したが切り札として使うには戸惑いがあったと言及されている。


機動戦士ガンダムNT』『機動戦士Vガンダム』の時代である『スーパーロボット大戦30』ではすでに開示済みであり、地球連邦の権威は失墜。ザンスカール帝国が台頭するようになった。

今作では箱の開示はクエスターズが関与していたとされ、アクシズショックゼロレクイエムの二つの事件を通し、人類は平和を手に入れたが、その平和が恒久に続くのか、それともすぐに終わるのかの実験として開示を促し、サイアムは目を背けていては真の平和は訪れないとあえて乗る事にしたという。

結局、箱の開示による平和は1年しか持たなかったもののエンジェル・ハイロゥが新たな心の光となり、人類は未来へと歩きだすこととなった。


バトルスピリッツ

2020年3月14日発売の「コラボスターター【ガンダム ~OPERATIONオペレーション UCユニコーン~】」に「宇宙世紀憲章」のマジックカードとして登場。


メイン効果のドロー自体は特に原作再現では無いが、発動後にフィールドに置いた後が問題となる。

まず、お互いのターン毎に創界神ネクサスにコアが1個ずつしか置けなくなるという、創界神ネクサスを主軸とする構築に対して強烈に刺さる効果を有している。

ちなみに創界神とは、バトスピ本編の背景世界上では人間とは完全に異なる純粋な「異星の神々」であったり、カード上の話ではアニメバトルスピリッツシリーズに登場したキャラクターを模した言わば「キャラクターカード」だったり、果ては当ガンダムなどのコラボにおいて特定の人物のキャラクターカードでもあったりするが、いずれにしろ多種多様なキャラクター(宇宙の神であったり異世界の人種であったりなど)に対して多大な影響を与えるのが、このカードの原作再現と言える所だろう。

また、NT-Dを発揮すると手札に戻せる効果を持つが、繰り返し使い回すことで搭乗者(このカードのプレイヤー)をラプラスの箱に近付けるような擬似的な再現を行えるようにしている。


さて、このカードの存在は多くの創界神を主軸とした構築を震撼させるものであるが、実際のバトルスピリッツの環境では全く影響が無かった

というのも2020年以降の環境は創界神ネクサスよりは別ギミック(転醒や契約煌臨など)が流行しており、そもそも創界神ネクサス自体の採用が稀だったためである。

さらに言えば環境上位のデッキは依然として超星など創界神ネクサスが入りそうな構築も見られるものの、やはり環境でプッシュされている系統やギミックでは無いため、使用率としても下火にあった。


最も影響があったのは、2024年の「契約創界神ネクサス」の登場に伴う、創界神ネクサス環境の再来であり、それを見越し2024年3月30日に宇宙世紀憲章が突如として禁止カードに指定されたことだろう。

バトスピ環境では特に見向きもされなかったカードだが、それはあくまで今までの環境で需要が無かっただけであり、需要があればまさに原作のような戦争の火種になりかねない強烈な効果なのは確かであった。


ちなみにバトルスピリッツにおいて初のコラボカードの禁止カードでもある(ただし前情報の公開順としてはダークタワーが先で、ダークタワーは特殊な条件で禁止になっている)。


禁止カードに指定されたことで財団Bの既得権益が守られるとか本当にラプラスの箱になったとか、諸々の原作再現と言われる皮肉な末路を辿るのだった。

とはいえ、創界神ネクサス環境を過ぎれば再び日の目を見る可能性も捨て切れない(それはそれで上記でも言及されている「今更感」なのだが)ため、今後も環境によって状況が一変するカードとなるだろう。


余談

作中においては歴史に大した影響を与えることがなかったものの、開封されるタイミング次第では宇宙世紀の歴史を大きく変える可能性があったのもまた事実である。

特にスペースノイドの独立が声高く叫ばれた一年戦争前夜やニュータイプの存在が確認され始めた一年戦争中〜後期、ティターンズによるスペースノイドへの弾圧が極まっていたグリプス戦役期に開封されていれば箱とニュータイプを旗印にスペースノイドが結集して打倒地球連邦政府を掲げて大規模な政治運動が起きていた可能性もあった

フロンタルが劇中で語った通り、政治力とはタイミング次第なので、ラプラス戦争の時期に『箱』の解放を行ったのはあまりにも遅すぎ、また後のスペースノイド独立に関する戦争が起きる時機を見れば、早過ぎた物であったのだろう…。


なお、箱の解放後にブッホ・コンツェルンと木星船団等が人工的にニュータイプを生み出す計画を立てたり、連邦軍内部ではファテストフォーミュラなるNT部隊の結成を行ったりしている。



……ところで、新人類と言う特定の存在に対して優先的に政治運営と言う特権を与えるなどと言うこの条文、リカルドやその支持者からすれば善意と贖罪の気持ちから来た「祈り」だったのだろうが、実のところどう考えても大問題……あるいは問題外としか言いようがない、と言うのは、ファンの間でよく指摘される点である。


例えば上記の曖昧さを逆に利用して、自分に都合の良い人間を「新人類である」と認定して政治運営にねじ込む、あるいは「自分は新人類である」と主張して特権を主張する、と言った悪用法が考えられる。

また、正しく運用されたとしても、新人類に認定された者が悪意を持っていないと言う保証はどこにも存在せず、そういった者を優先的に政権に参加させた時のデメリットについては言うまでもない。

実際、後に発生したジオニズムとの兼ね合い問題は、これによる所が大きい。劇中では「連邦政府はジオニズムに類する思想を秘匿してきたという事実を後付された」事が問題とされるが、秘匿せず正式に履行された物であっても、何の変わりもなく同じ問題は発生するはずである。

例えばの話、ギレン・ザビやハマーン・カーンが自分が新人類であると主張して連邦政府への参画を求めてきた場合、この条文ではそれを否定するのが難しいのだ。


また、もし悪用されず、新人類が旧人類に好意的であったとしても、その他の法を無視して特別扱いする事はむしろ国民に「新人類」への大きな悪感情を抱かせかねない。実際、現実ではそうした特権階級は「上級国民」と呼ばれて悪感情を買っているため、新人類もそうした扱いを受ける可能性が高い。はっきり言って逆効果にしかならないだろう。

もし新人類を受け入れさせたいなら過度の特別扱いなどすべきではなく、もっと穏当で正当な手段で国民に支持を広げ、その上で公平な選挙を通して政権に参画させるべきである。


そして何より最大の問題は議会を通さず、世論の了解も得ず、首相周辺が独断で憲章に条文を追加すると言う、法的手続きを全く無視した凄まじい暴挙である。

石碑に刻んで公開する前に、条文の正当性について広く審議を行うのが、正しい議会制民主主義と言うものだろう(石碑に刻んだと言う既成事実を作って強行採決に持ち込もうとしたのかもしれないが、それはもうリベラルな政治家のやる事ではない)。


こうした様々な問題から、もし憲章が公開されたとしても、そのまま通ったかどうかはかなり怪しい。むしろリカルド政権が非難されて倒閣に至り、穏当に政権交代が行われた可能性すらある(まあジョルジュ副首相やその支持者からすれば、それこそが問題であったのかもしれないが。与党のままでいれば次期首相が見えていた所に、首相の明らかな暴走で政権を追われる羽目になるかもしれないのだから)。

ところが実際にはテロが発生してしまい、これによって条文の問題について追及、検討する場も失われてしまった。テロを起こしたジョルジュ副首相達にしてみれば、完全に隠滅するつもりだったので(計画時点では)それでも問題なかったのだろうが……。

実際には欠陥のある条文の石碑が、検討もされないまま残されると言う最悪の事態を招き、後の大騒動に繋がっていくのである。


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