概要
「機動戦士ガンダム」に登場する架空のコロニー国家、「ジオン」と略される一連の国家の創設期に相当する。首都はズムシティ。
政治は「全体主義的な軍事独裁国家であり、カリスマ性のある独裁者が率いている」、兵器は「技術力に優れているが、生産性が低い少数精鋭で、珍兵器も多い」、という経緯から、モデルと成ったのはナチス政権下時代のドイツと思われるが、そのままだと「ヤマト」のガミラスと被るからか、貴族制が採用されている。
ファーストガンダムの頃の命名規則は、ザク、ドム等、カタカナ2文字の造語だったが、シリーズが進むにつれ、ドイツ語が公用語であるかの様な描写が増えていった。
ジオン公国の前身
宇宙世紀60年代、当時「ニュータイプ論」を提唱した高名な思想家であるジオン・ズム・ダイクンがジオニズムを掲げて宇宙移民自立を求め、当時地球から最も遠いスペースコロニー群・サイド3に地球連邦政府から独立した議会、首相をもつ「政府」を作り、「ジオン共和国」の建国を宣言する。
この時、同時に国家として地球連邦から脱退したと思われる。
その後、ジオンは病に倒れ、後継者にデギン・ソド・ザビが指名されるが、これはデギンがジオンを暗殺し、自らが指導者の地位を手に入れる為の工作だったのではないかと言われている。
歴史
デギンはジオン共和国の君主制化をも目論み、程無くして自身を公王に据えた公王政権を樹立し、国家も「ジオン公国」とした。デギン政権下では型式上、議会や野党、首相と言う機構は形の上では存在するが、これらは議会制を演出するためのお飾りで置かれるものであり、ジオン公国の実質的支配権は軍部、それもザビ家一党に集中している中央集権体制を採用している。
ザビ家一党が公国を管轄する様に成ってから急速にジオン軍部の権限、発言力の強化が進み軍部司令官および政府首脳部には自身の一族であるザビ家一族の人間だけで構成された事実上の軍事独裁政権を成立させる。
ジオン公国軍部の最高権力者を意味する公国軍総帥にはギレン・ザビ、宇宙攻撃軍及びルウム戦役時の艦隊総司令にはドズル・ザビ中将、機動突撃軍の総司令にはキシリア・ザビ少将、地上攻撃軍総司令にはガルマ・ザビ大佐が置かれ、これ以降ジオン公国軍は連邦軍との全面衝突に突入する。(なお、ザビ家の人間に信頼され、なおかつ家柄が良くなければ、将官にはなれないという不文律があるのか、佐官の権限が地球連邦の将官に相当するほどに大きくされていた。あのエギーユ・デラーズでさえ、戦中は大佐で据え置かれていたほどである)
因みに、共和国時代から共和制が妥当とされたのかについては不明。また「国」という体裁を取り、「公国」と呼ばれてこそいるものの、これが正式な国号であるかどうかも明確にされておらず、寧ろ作中では帝国主義と取れる活動が目立つ。
一年戦争開戦に至るまで
ジオン政府は共和国として独立し地球連邦から脱退した際、連邦から数々の制裁を受けていた(という風に解釈される)ので、自治独立を完璧にするべく連邦の戦力を凌駕する武力の開発に至った様だ。そこで極秘に開発が進められたのが、ガンダム作品の世界観を象徴する人型機動兵器・モビルスーツと、レーダー等の電子装置を無力化するミノフスキー粒子である。
全く新しい兵器群の量産化を実現したジオン公国は、それらを用いて地球連邦に対し宣戦を布告。この戦争は一週間戦争とコロニー落とし作戦ブリティッシュ作戦、ルウム戦役 を経て、総人口を半減させ、地球圏の大半を巻き込んだ「一年戦争」と呼ばれる戦乱へと発展していく。
ジオン公国軍の傑作MSであるザクシリーズの開発、実戦投入を皮切りにジオン公国軍は破竹の勢いで連邦軍を攻め上げ、MSの初の実戦投入が行われたルウム戦役での艦隊戦ではレビル将軍、ティアンム提督麾下の大艦隊(THE ORIGINではジオン艦隊の4倍の戦力)を見事に撃破し連邦軍に大打撃を与えた。その後の3度に渡る地球侵攻作戦においてもその勢いは衰えず開戦から約半年で地球全土の半分をジオン勢力圏内に収める事に成功した。
しかし、人的資源の乏しいジオンでは地球全域を制圧するには戦力が足りず、各地で戦線が構築されるなど攻勢が鈍っていく。また、整備されたコロニー育ちのジオン兵は地球での過酷な環境に直面し、士気の維持にも悪影響を与え、完全に相手を攻めあぐねる様に成ってしまう。なお、開戦後には、コロニー落としの損害で荒廃した日本に降下してしまった部隊に冷戦時代の米軍が日本に置いていったと噂される核兵器(当時からすれば骨董品のはずだが)を本気で探させ、戦力の無駄遣いをする場面も見受けられ、情報の精査が上手くない一面もある。
戦時中から終戦まで
連邦軍も地球侵攻作戦時には「ホワイトベース隊」を始めとするMS部隊の整備、運用を開始しており徐々にジオン公国軍は押され始めていた。その後WB隊による攻撃でガルマ・ザビ大佐が戦死。
更に連邦軍はヨーロッパ方面を基点とした一大反抗作戦「オデッサ作戦」を決行し、これを成功に終わらせた事による地上でのジオン地上軍敗走により地球戦線は一気に連邦有利に傾いてしまう。状況の打破の為、連邦軍本部ジャブローを強襲するが、大した打撃を与えられ無いまま失敗。
「チェンバロ作戦」による攻撃でジオン本国を防衛する主要な拠点であるソロモンの陥落とドズル・ザビの戦死などが重なり、ジオンの敗色は濃厚となる。
ついにはア・バオア・クー攻防戦でのデギン・ソド・ザビ、ギレン・ザビ、キシリア・ザビの相次ぐ死亡と同時に、月のグラナダで結ばれた停戦協定によって、ジオンの国号を再び「共和国」へと戻した上で一年戦争は終結した(この際、停戦を良しとしない一部の将校が暗礁宙域やアステロイド・ベルトへ逃走。地球上に残った部隊も10年以上に亘って連邦軍への抵抗を続けている)。
その後、ジオン共和国はグリプス戦役でティターンズへの協力を強要され、第1次ネオ・ジオン戦争ではネオ・ジオンの統制下に置かれる等、様々な思惑に翻弄される(一方で、火星オリンポス山におけるマスドライバー建造への資金提供や、ジオン軍残党「袖付き」への人員供与など、争いの火種を幾つか作り出した)が、宇宙世紀100年にジオン共和国は自治権を地球連邦へ返還、「ジオン」の名は(表面的にではあるが)消滅した事に成る。
しかし、サイド3はコスモ・バビロニア戦争や木星戦役の後も生き残り、安定した工業生産能力を持つサイドとして成長するまでに至り、コンピュータ開発については他のコロニーと比較して一歩先を行く技術を有しており宇宙戦国時代では平和な片田舎となっている。
だがザンスカール戦争終結後の宇宙戦国時代が激化していく宇宙世紀0169年においてサイド3は「ザビ・ジオン」、「ハイ・ジオン」等、ジオンの後継を名乗る4つの勢力へと分裂・乱立しており、それぞれが対立しあっている。一種の独立が達成されている状態だが、技術力の低下や再び行われた独裁政治による生活環境の悪化で、住民はかつての連邦統治時代よりも遥かに疲弊しているという皮肉な状況になってしまっている。
そしてそれから時が経った宇宙世紀0218年に地球連邦が崩壊した後、再び独立したサイド3は親地球派として旧連邦派である地球諸国と共に地球連邦の後釜と言える統一政府「セツルメント国家議会」に参画しており、かつて地球と敵対したはずのサイド3が後の時代では地球と結託していると言うこれまた皮肉な事になっている。
宇宙世紀から数千年後のリギルド・センチュリーの時代、かつてサイド3が存在していた宙域には建国以来2000年以上の歴史を持つコロニー連合国家・トワサンガが成立しており、宇宙世紀時代からの技術を継承して高い工業生産能力を保ち続けている。
政府機関
総帥府
ギレン・ザビ総帥直属の機関であり、戦時中にはプロパガンダの制作から連邦軍の動向調査、情報収集を行う事実上の諜報機関である。
ジオン軍部内では現階級から二階級上の扱いをされる等の特権を持つ。第603技術試験隊に出向していたモニク・キャディラック特務大尉はこれを行使し、中佐扱いとされている。
親衛隊
総帥府とは別のギレン・ザビ護衛隊であり、一年戦争終結時には同隊隊長であったエギーユ・デラーズ大佐(階級は戦時中)ら率いる残存艦隊が後のデラーズ・フリートの母体と成った。
首都防衛大隊
サイド3ジオン本国を守護防衛する部隊であるという立ち位置だが、所属する隊員らは負傷などで戦線復帰が困難であるも戦功に優れた兵士らの実質的な慰労隊であると同隊所属のランス・ガーフィールド中佐が説明している。
一年戦争末期には首都防衛大隊のメンバーを中心とし、そこに有志らが参加した部隊らが突如として武装蜂起を開始。ジオン親衛隊と衝突するという事件が勃発している。
ジオンの名家(既出)
- ザビ家
- ダイクン家
- カーン家
- ラル家
- トト家
- マツナガ家
- クランゲル家
- サハリン家
- ケラーネ家
- アルギス家
- ブランケ家
- バハロ家
- カーウィン家
- キャメロン家
- フィーゼラー家
- レノックス家
- ヨッフム家
余談
「スペースノイドの為に戦う国家」と誤解されるが、実際にはサイド1、サイド2、サイド4、サイド5と言った宇宙移民者たちのコロニー群を反抗できないレベルまで壊滅させている。なお、ジオン公国はこの事に対して、宇宙に住んでいても地球連邦に付いた者はアースノイドであると攻撃した理由を述べている。