概要
宇宙世紀0079年1月3日から1月10日にかけて行われた、地球連邦軍とジオン公国軍の間で発生した大規模戦闘。約7日間行われたことから、一週間戦争とも呼ばれている。
人類史上初の大規模宇宙戦闘であり、モビルスーツが大量導入された初の戦闘となる。また史上初のコロニー落としも行われ、宇宙世紀の中でも最大規模の犠牲者を出した。
なお、作戦名は「かつての大英帝国が植民地(コロニー)の喪失をきっかけに零落した」という史実に由来している。
経緯
宇宙世紀0079年1月3日、ジオン公国は地球連邦に対して宣戦布告を行い、連邦よりのコロニーであるサイド1、サイド2、サイド4を奇襲。内部に毒ガスを注入して民間人を虐殺し、各サイドを占拠すると翌1月4日、サイド2第8番コロニー「アイランド・イフィッシュ」に核パルスエンジンを装着し、地球への降下軌道へと乗せた。その後は各コロニーにも核パルスエンジンを装着して地球に降下させ、そのまま地球連邦の総司令部のある南米のジャブロー基地に落着させ、指揮系統を完全にマヒさせようとした。
1月5日、事態をようやく把握した地球連邦はティアンム総司令率いる第四艦隊を派遣し、地球に接近するアイランド・イフィッシュとジオン軍迎撃に向かった。
1月6日から8日にかけてコロニーへの攻撃が行われたが、護衛のジオン軍の妨害にあう。
そして1月8日、ティアンム中将は護衛艦隊の排除を決断し、宇宙世紀初となる大規模宇宙戦が勃発する。ジオン側は大量のミノフスキー粒子を散布して連邦のレーダーや通信機器をマヒさせ、さらにモビルスーツ部隊を投入し小回りの利かない連邦のトマホークやセイバーフィッシュと言った宇宙戦闘機、サラミスやマゼランと言った宇宙艦船を相手どり、容赦なく核弾頭を発射して撃沈させていき最終的には第四艦隊の戦力の70%を失わせ、壊滅へと追いやった(連邦側も核兵器を使っていた模様)。
1月9日、コロニーが地球へ接近するにつれて、連邦軍の攻撃は少なくなり最終的には中止された。この段階でコロニーを破壊しても破片が地球に降り注ぎ、被害が拡大するという判断があったためである。
連邦軍はジャブローへの墜落予想時刻の6時間前から航空機を使った大規模な退避を開始するなど、両軍ともにコロニーがジャブローに落下するのは確実視していた。
1月10日、ついにアイランド・イフィッシュが地球に突入するが、予想外の事態が発生する。戦闘と連邦軍の攻撃でボロボロになったコロニーは大気圏突入時にアラビア上空で崩壊。ジャブローへの攻撃は避けられたものの、残骸が分散して地球へ降下。オーストラリア大陸の東岸の都市シドニーに落下し、街を完全に破壊。残りはバイカル湖や北米、ヨーロッパに降下。また、海上に落下した残骸が大津波を引き起こし、連邦海軍にも壊滅的な打撃を与えた。
その後、小さな破片の一部は軌道上に残っていたが、宇宙世紀0080年1月には大気圏に突入し「ブリティッシュ流星群」として観測されている。これによる被害は軽微だった模様。
結果
連邦よりのサイドを破壊し、迎撃に当たった地球連邦軍を壊滅させたという点ではジオン側の勝利と言えた。
しかし、ジャブローへのコロニー落とし自体は連邦軍の抵抗によって失敗に終わった。だが市街地への落下ということもあり、わずか1週間で30億人ものアースノイドやスペースノイドを虐殺し、人類の思考に対し一年戦争そのものよりも遥かに大きな影響を与えた。また、自然環境に与えた悪影響は深刻であり、地球の自転速度を1時間あたり約0.1秒速くさせた(1.2秒ともされる)。異常気象などは戦後もしばらく頻発し、南極の気温が上昇したり、大量の生物が絶滅した。
アースノイドの中にはこの一連の事件の影響でPTSDを患う者も少なくはなく、「空が落ちてくる」という表現で評された。
またコロニー落下により発生した津波により太平洋の連邦海軍が壊滅したことで地球降下後のジオンが海上優勢を獲得する原因にもなった。
アースノイドへ恐怖を植え付けたこの作戦であったが、ジオン最高指揮官ギレン・ザビはこの結果を良しとせず、さらなるコロニー落とし作戦を慣行。のちにルウム戦役と呼ばれる大規模戦闘の引き金となった。
その一方で、地球に抑圧されたスペースノイド開放を目的としたジオンが作戦遂行のために同じスペースノイドを虐殺したという事実は大義名分の喪失へとつながり、ジオニズム思想はサイド3を除いて大幅に支持者を失うこととなった。まさにジオンの悪逆非道を象徴する行動であった。一方であまりにも残虐な作戦だったことから一部の海兵隊には使用するガスが毒ガスだったことを知らされておらず、公国民には虐殺事件の事実そのものが知らされていなかったともいわれている。また多くの指導部が戦中または戦後に、毒ガス注入作戦は一部海兵の独断であるという虚偽の報告をしたため、戦後に海兵隊が戦犯として扱われ、それがデラーズ紛争の際の遺恨となった。
ちなみにコロニー落下で消滅したシドニー跡地はグランド・ゼロ、またはシドニー・クレーターと呼ばれている。余談だが、コロニー落着による地球環境の変化などから、シドニー・クレーターでの生態系の発生は早くても来世紀以降との試算もあった。
ただ、一年戦争から16年後にはクレーターの海中に小中型の魚介類だけでなく、サメなどの大型魚が確認されており、これは生態系再生の根拠となっていると言う。
尚、一年戦争から100年以上たった宇宙世紀0224年にシドニーに落下したイフィッシュの残骸でセツルメント国家議会軍とイルミナーティの戦いが2度に渡って行われた。
ブリティッシュ作戦関連の人物
この史上最大最悪の作戦の立案者であると言われている。
コロニーへの毒ガス注入を担当させられた海兵隊指揮官。彼女らの海兵隊は毒ガスとは聞かされておらずコロニーにガスを注入してしまった。シーマはこの事がトラウマになっている。
シーマと同じく海兵隊を率いる隊長。同じように毒ガス注入をさせられた。またその際の戦闘で顔に傷を負った。
シーマら海兵隊に毒ガス注入を命じた人物。
アイランド・イフィッシュ出身で休暇で故郷に帰っていた時に毒ガス注入を目の当たりにし、家族を失い、ジオンに敵意を抱く。
- オクスナー・クリフ
シドニーが故郷であり、コロニーが落下して全滅した故郷の惨状を目の当たりにした際に人類の底無しの悪意を思い知って恐怖した。
- オリヴィア・グラント
シドニー出身の地質学者。コロニー落下の時はパリでの学会に出席していた為生き延びれた。
- トルド・ボブロフ
シーマらと同じくコロニーへの毒ガス注入をやらさせられた海兵。
コロニーが落着したオーストラリアに住んでいた子供たち。コロニーの落着を「特異な才能」を用いて予見し、シドニー近郊の人々にそれを伝えて一部の人々を救ったため「奇跡の子供達」と称された。その後、その「特異な才能」は連邦軍に利用されることとなり、彼らの熾烈で数奇な運命は18年後まで続くこととなる…
小説版「ククルス・ドアンの島」にてジオン兵時代に毒ガスを積んだユニットの牽引をする戦艦の護衛任務に就いていた。しかし作戦から半年後連絡が取れなくなっていた妻からの手紙で妻と息子がアイランドイフィッシュにいたことや、のちに毒ガス開発者が傭兵時代にエグバ・アトラーと共に助けた重罪人だったことを知り、深く絶望することとなる。
ジオン公国軍の軍人。もともとはスペースノイド独立のために戦っていたが、コロニー落としを目撃したことをきっかけに、ザビ家に対する忠誠心をほとんど失った。
ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション Code Fairy』の登場人物。
コロニー落としで両親と妹を失い、自身も負傷しており、ジオンを憎んでいる。ちなみに、漫画版によるとコロニー落としがあった日は彼女が連邦軍に入隊した日であり、入隊式の最中にコロニーの破片が落下してきたことが判明している。
- レイニー・ゴールドマン
漫画『機動戦士ガンダム ムーンクライシス』の登場人物で、一年戦争から20年後である宇宙世紀0099年時点での地球連邦政府の大統領。
一年戦争のコロニー落としで母親を失い、自身も左腕に大火傷を負った。そのためスペースノイドを憎んでいたが、憎しみに支配されてしまうことはない良識的な人物であり、物語の最後にはサイド3を訪問した。