白い仮面の男(ウルトラマンアーク)
しろいかめんのおとこ
「…飛世ユウマ君。君の足元に何があるか分かるか?」
「その下には川が流れている。…いや、“流れていた”と言うべきか」
「川の上にコンクリートで蓋をした、所謂暗渠だよ。川の存在を知る者はもうほとんどいないがね」
「そしていずれ人々の記憶から完全に忘れ去られた時、川そのものも消滅する。丁度、“雨”が消えつつあるようにね」
ユウマ「誰なんです、あなたはっ!?」
「楽園を夢見る…ただの男さ」
『ウルトラマンアーク』第22話「白い仮面の男」に登場する怪人。
その名の通り、目元や留め具に宝貝の貝殻が装飾されたデザインの石膏のような材質の不気味な白い仮面を付け、黒いスーツと帽子を身に纏っている。
その正体は、長年人類の歴史における"楽園"について…そしてどうすれば不安や苦しみを社会からなくす事ができるのか、研究を続けてきた考古学者。
その答えとして、仮面と共にかつて地上に存在した楽園の一部である出土品「柱」を発見し、古代の人々に倣いそれを用いることで、現在の人類が抱える最大の《憂い》である“怪獣”に関するあらゆる記憶や物事を削り取りながら、やがては怪獣が存在する事実を消し去り、完璧な楽園を築こうと暗躍する。
仮面や「柱」の影響か、自らも接触した人間の《憂い》ごと記憶や物事、果ては存在すらも消し去る能力を持つが、同時に自身の顔も名前も完全に捨て去っており、その素顔はフランスの画家のルネ・マグリットが描いた『人の子』のような、顔に空いた虚空のような穴に一つの青リンゴが浮いている状態になっていた。
しかし、「柱」の効果の及ばないウルトラマンアークの存在と、彼との絆の源となっているユウマの想像力が計画の妨げとなったため、その力を手放してもらおうとユウマの前に姿を現し、彼に接触する。
「君の想像力は強力だ…君が思う以上にね。…だから、どうかその力を手放してほしい。アークの存在が、怪獣を消し去る事の妨げになっているんだ」
ユウマ「できませんよ!そんな事!!」
「できるさ。ただ、身を委ねさえすれば良い。名前も顔も捨てた、私のように…」
「仕上げの時は近い。まもなく私は「柱」の一部となる…」
その後、「柱」から落下し記憶や想像力を失ったユウマの姿を(「柱」により改変された世界でかつてのSKIPのメンバーが経営する喫茶店の客として)見届けた後、完璧な楽園の"仕上げ"として、自ら「柱」の一部となって一体化。
リン「何か、嬉しい事でもありました?」
「…ああ。いよいよ、仕上げの時が来たようだ」
遂には人である事すらも捨て去ったかつての男は、とある偶然からユウマが記憶と想像力を…アークとの絆を取り戻した事で現れたアークと戦う事になり、最後はアークの放ったアークファイナライズで「柱」と運命を共にした。
- モチーフはおそらく、シュルレアリスムの画家ルネ・マグリットの絵画・『夜の意味』の男性。仮面を外した素顔は同じくマグリットの『人の子』から来ていると思われる。
- CVの津嘉山正種氏は、今回がウルトラシリーズ初出演。特撮出演はなんと1966年の『マグマ大使』以来実に58年振りとなる。
- 演者の岡部氏は本作でギヴァス等のスーツアクターを担当しており、2話連続での出演となった。
- スチール写真の後ろ姿を見たファンからは、「この人物こそがゼ・ズーではないか」という予測も立てられていた。
- 仮面のデザインは、「柱」含めて登場回を担当した越監督自らが担当している。
- デザインモチーフは、マヤ文明やインカ帝国といった超古代文明の遺産をベースに、ウルトラマンの特徴であるアルカイックスマイルと対になるようにデザインされている。
- より詳しい素性は不明だが、元は地球の人間だった事は確実であり、自ら人外の存在なってウルトラマンと戦った学者というポジションは『ウルトラマンダイナ』に登場したヤマザキ・ヒロユキことゾンボーグ以来となる。
- アーク役の萩原聖人氏は前述の通り『カイジ』に出演しているが、演じているのは主人公カイジ。そして津嘉山正種氏はラスボスとも言える兵藤和尊を演じている。
- 図らずもカイジVS兵藤の構図となり、SNS等では「今日の『アーク』は実質『カイジ』」とネタにする声も見られた。
- pixivでは、中の人繋がりでこんなイラストも投稿されている。
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EPISODE.22:虚飾の箱庭
いや~…。過去一、文字に起こすのが難しい物語でした…。ウルトラマンアーク最後の日常回である第22話『白い仮面の男』、昭和や平成ではあったけど、ニュージェネシリーズではあまり見なかった不条理極まりない哲学的な神回でした!今のチビッ子達、どころか我々大人さえ置いてけぼりを食らった今回の話でしたが、それだけに痛烈に印象に残りました。もしかすると、どの物語も面白いアークの話の中でもトップクラスの神回かもしれません。ユウマとアークの今回の敵は怪獣…ではなく、その怪獣を”概念”のレベルから消し去る事で人々から不安や苦しみなどの憂いを取り除き、人類にとっての楽園を築こうと目論む謎の『白い仮面の男』、そして白い仮面の男の目論見を現実のものにできる楽園夢想遺構・『柱』と呼ばれる存在でした。幼い頃のユウマの想像を形にした絵から生まれたウルトラマンアークに相応しく、今回の物語には画家であるルネ・マグリットの小ネタが随所に散りばめられていました。白い仮面の男のビジュアルの元ネタは絵画『夜の意味』、その素顔の元ネタは絵画『人の子』、ユウマが完全に柱の世界に取り込まれる直前に飛び立った空色の鳩もマグリットの絵画が元ネタです(鳩の絵は数多く在って、どれが元ネタか分かりませんでした💦)。ちなみに、柱の元ネタは絵画『ピレネーの城』だそうです。素晴らしい絵画のモチーフを物語に落とし込んで、且つここまで不気味で不条理な物語に仕上げられるのは、まさにウルトラシリーズの醍醐味ですね。個人的に、こういうテイストの物語はウルトラシリーズでしか作れないと思います。ライダーや戦隊では無理でしょう。白い仮面の男の声を演じたのは俳優の津嘉山正種さんです。この方はウルトラマンアークの声を担当している俳優の萩原聖人さんとは『カイジ』で共演されているそうです。しかも、萩原さんは主人公のカイジ、津嘉山さんはラスボスの兵藤和尊を演じておられるそうです(笑)。今回はウルトラマンカイジ(笑)?ストーリーは、柱を通して「楽園とは何か?」という問いかけをしているように感じられましたね。楽園と言えば私が大好きなアニメ映画『楽園追放』(2026年に続編上映決定)がありますが、あれも電脳世界ディーヴァという『社会』で人々は安寧を得たけど、代わりに自由を失い、主人公アンジェラが謎のハッカー・フロンティアセッターを追う任務の中で「本当の自由、本当の楽園とは何か」を見出す物語でした。今回のヴィラン、白い仮面の男が作り出そうとしていた『楽園』も、まさにディーヴァのようなある種の”監獄”のような世界に見えました。白い仮面の男が不要だと感じたモノをそぎ落として、捨てて、その成れの果てが、あの色が無いモノクロのような世界だったのでしょう。不安や苦しみを無くせば確かに人は心の安寧を得る事ができますが、苦難を乗り越えた先に掴める大切なモノを永遠に失ってしまう事になります。一方から見れば痛みや苦しみ、悲しみを与えるものでしかない存在も、世界を成り立たせるには必要な存在なのです。ウルトラシリーズの世界ではウルトラマンも怪獣も世界を成り立たせるのに必要な存在なのです。夢のような世界を創っても、いつか夢は覚めます。SSSS.GRIDMAN第9話で新条アカネが有象無象怪獣バジャックを使って創り出した『新条アカネにとって都合の良い世界』が長くは続かなかったように。例え怖くとも、人は前に進むしかないのです。不安や苦しみ、恐怖があるからこそ、人は勇気を持って前に進むのです。その勇気を、決して忘れてはいけません。そんな事を考えさせられる、とても素晴らしいお話でした。さて、いよいよ次回からウルトラマンアークの物語は最終章へ!ユウマの体に深刻なダメージが刻まれ、胸には『不吉な光』が宿る中、ユウマを狙って現れたのは第4の宇宙獣トリゲロス!ゼ・ズーの脅威はまだ去っていなかったのです!執拗にユウマを追い続けるトリゲロス。アークに変身して戦っても、トリゲロスはアークの攻撃を全て無効化してしまうようです…。最悪の状況下でユウマが固める”決意”とは…!?次回も楽しみにしています!!11,816文字pixiv小説作品