「我が名はユーハバッハ お前の全てを奪う者だ」
CV:菅生隆之
この記事はBLEACH最終章に繋がる重大なネタバレ情報を含みます。 |
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原作未読・アニメ勢の方はネタバレに注意して閲覧ください。 |
ポエム
一歩踏み出す 二度と戻れぬ
三千世界の 血の海へ(55巻、アニメ千年血戦篇 1話)
笑え
希望に満たされていろ
この世界は天秤だ
何ものかが希望に満たされれば
他の何ものかが絶望する
だから
決して絶望するな
これ以上無い程の希望に包まれていろ
我々以外の全てを
絶望に沈める為に※(アニメ版千年血戦篇 PV第4弾)
手向けの鐘が鳴り響く
剣に打たれ
地に堕ちるまで(アニメ版千年血戦篇 28話)
※ハッシュヴァルトと共に朗読。
聖帝頌歌(カイザー・ゲザング)
封じられし滅却師の王は
900年を経て鼓動を取り戻し
90年を経て理知を取り戻し
9年を経て力を取り戻し
9日間を以て世界を取り戻す
概要
『BLEACH』の最終章『千年血戦篇』から登場し、本作最大最強の敵として君臨する存在。
読者からの愛称は「バッハ」。
滅却師で構成された「見えざる帝国」の皇帝。全ての滅却師の始祖とされ、石田雨竜を帝国に引き抜き、彼を自身の後継者に任命する。
因縁深き不倶戴天の敵である死神達の殲滅を目標に掲げ、尸魂界のみならず虚圏や現世の「三界」全てに宣戦布告し、星十字騎士団を率いて瀞霊廷へと侵攻。
かつての怨敵である護廷十三隊の総隊長・山本元柳斎重國を一刀両断にして殺害し、その他多くの死神を虐殺することで作中随一といえる甚大な被害を齎した三界開闢史上“最悪の脅威”である。
常日頃「平和」という言葉を唱え、自身が目指す平和を実現させる為に行動する。
その最終目的は三界以前の「生と死が入り混じる混沌の世界」を復活させること。その為に霊王を殺害して力の全てを取り込み、三界である現世・尸魂界・虚圏を一つにすることで、全ての人間を死の恐怖から開放しようとした。
人物像
容姿
身長200cm。
腰近くまで伸びる長髪に立派な口髭、額には眉毛が無く中央に割れ目があって眼窩上が隆起しており、威圧感のある鋭い赤い目の眼光が特徴の大男。
衣装は白い軍服の上にボロボロになった歴戦を感じさせる深紅のマントを羽織り、白装束が特徴的な滅却師の中でも異質な印象を与える。
以上のような魔王然としたオーラを放つ風貌はどこか吸血鬼ドラキュラを彷彿とさせる。
人物
配下の者達からは「陛下」と呼称され、上述の外見と圧倒的な霊圧を以てして非常に恐れられており、部下たちを「仲間」と称すも敗北や自身への不届きを一切許さず、躊躇いもなく処刑を執行する冷徹な恐怖政治を行う独裁者である。
アルファベットでの綴りはYHWACH。つまり「YHVH」がモチーフとされ、かつて現世では「神」として崇められた過去を持つ。誕生時は視覚・聴覚・触覚や声帯の感覚が無く、いわゆる『四重苦』を持って生まれてきたが、後述の能力故に周囲の人間に求められ、その死と共に魂と力を奪い、やがては四重苦を克服したが、他者を殺し簒奪を続けなければ四重苦に戻ってしまうため、敵味方を問わず殺戮を続けている。
この先は物語の根幹に関わる重大なネタバレ情報を含みます。原作未読・アニメ勢の方は注意してください。
黒崎一護との関係
ユーハバッハは滅却師の始祖であり、全ての滅却師はユーハバッハの血を継いでいる。つまり滅却師の黒崎真咲を母に持つ黒崎一護もまた、ユーハバッハの子孫という事になる。
そして一護が「斬月のオッサン」と呼んでいた斬月の具象化は、「千年前のユーハバッハ」と同じ姿をしている。実は彼の正体は斬月などではなく、「一護の中の滅却師の力」であることが判明する。
一護本来の力は死神と虚をベースとしたものであり、「斬月のオッサン」は、長らく一護を戦いから遠ざける為に死神の力を押さえ込み「斬月」の具象化のふりをしていた。
一護が初めてユーハバッハの姿を見た際、「"誰か"を思い出しそうになった」のも当然と言えよう。
しかし一護はユーハバッハに対して、自身の先祖であるということや、斬月のオッサンの元になった人物という感動などはほぼ皆無に等しく、それ以上に最愛の母である真咲を間接的に死に追いやった張本人(後述)にして、護るべき仲間達や世界を破滅させる存在として当然ながら敵視している。
声優は当然ながら斬月のオッサンと同じく菅生氏であり、演技も斬月のオッサンに近いが穏やかな声色の斬月のおっさんと比較してもどこかドスの効いた威圧感のある口調が特徴。
また、一護に対しても「一護」と呼ぶなど、原作者も意識している。
余談だが、彼が所持している刀は斬月と酷似している。
石田雨竜への対応
前述の通りに配下達には恐怖政治で支配していたが、9年前の聖別を何事もなく生き永らえた石田雨竜に深い興味を示し、騎士団入団直後に自身の後継者として任命、霊王宮への侵攻直前に一護と対峙した際には「訣れの挨拶を済ませたか?もう会えないぞ」と石田の意思を尊重して気遣いの言葉を出したりと甘いどころか破格の対応をしている。
当然のようにバズビーなどの騎士団メンバーは不満や疑念を抱くことなってしまった。
隠し事や嘘は言わない
彼の特筆すべき点の一つとして決して嘘や隠し事をしない。
本作の登場人物の多くは敵味方問わず真実や重要な事を言わなかったり、適当な理由つけて誤魔化そうと秘匿主義者が多い中、ユーハバッハにはそういった描写はない(ただし、事後報告だったり、聞かれないと答えなかったりはする)。
自身が知っている情報等は包み隠さず誰にでも説明しており、一護との邂逅では黒崎真咲の死の真相等を(自身が知っている範疇であるが)全部教えようとしたり、一護がキルゲの監獄の力から切り抜けた理由を丁寧に解説してくれた。
後継者の件で部下はざわつき、説明を求めようしたバズビーらに対しては「疑問も懸念も要らぬ。この男の力を見たら自ずとも理解する」と念押ししていた。
本作のラスボス兼黒幕ながら、知らない事、イレギュラーな出来事には強がったりせずに素直に答えてくれる。前述した石田が何故乗り越えたのかのはユーハバッハは「私は知らない」と話し、石田宗弦が遺した手記に記された真相を聞いた際には驚愕。一護との初戦では自身の予想を上回る一護の力が目覚めて反撃を受けた時には素直に驚愕して「しくじった」と自身の失策を認めた。
アニメ版の追加補足された無間に投獄されていた藍染との会話では、「私の力を脅威と考えるからこそ此処に来たのだろう」と語る彼に対しては「そうだ」、「だから貴様を特記戦力として入れている」と素直に肯定しており、「崩玉と融合したお前は殺すにも連行して封殺するにも時間が掛かり過ぎる」と彼を評価している。
戦闘能力
基礎戦闘力
作中最高峰の実力者。その力量は配下である星十字騎士団はおろか十三隊の隊長格や十刃レベルを超越する高次元の猛者であり、その実力はかつての崩玉を取り込んだ藍染にも引けを取らない。
そのため彼と互角に渡り合える者は作中の中でも限られている。
霊子兵装には刀剣を用い、作中では滅却師十字から召喚する翼の意匠がある刀身の形が斬月と酷似した大剣や“大聖弓”から放たれる霊子の青白い矢を剣のように使って戦う。また、滅却師故に戦況に応じて弓矢(神聖滅矢)を使用する場面もある。
滅却師の基本戦術を用いた身体能力も桁違いであり、上述した刀剣を用いた戦闘ではキルゲの監獄で消耗していたとはいえ、滅却師完聖体のキルゲを終始完封していた一護の卍解・天鎖斬月の超速戦闘に互角以上に立ち回り、彼の斬術を物ともせず圧倒し続けた。ユーハバッハが繰り出す血装や飛廉脚は他の滅却師の追随を許さないレベルに鍛え上げられていると思われ、滅却師の頂点に君臨するに相応しい力を発揮している。
固有能力
自身の聖文字は"A"で、能力名は全知全能【The Almighty/ジ・オールマイティ】。
この能力は主に二つあり、「全てを奪い与える能力」と「これから起こるすべてを見通し知ることが出来る能力=未来視」である。
「全てを奪い与える能力」は、自らの魂の欠片を他者に与え、与えられた者の心身の欠陥を満たすことができる力。その者が死ぬと、与えた魂は自分に還り、その者の能力や経験などを全て奪いパワーアップする。尸魂界第一次侵攻では自身の魂を瀞霊廷全域にばら撒き、敵味方問わず誰かが死ぬ度にユーハバッハは強化されていった。この能力を発展させたのが「聖文字(シュリフト)」と「簒奪聖壇(ザンクト・アルタール)」を応用した技術である「メダリオン」で、星十字騎士団のメンバー達に与えた。
「未来視」は、ユーハバッハが見知った能力では彼を殺すどころか傷一つ負わせることさえできなくなる。つまりユーハバッハが見知った力は全て無力化される。という無法のような強大な能力。文章だけだと勘違いしやすいが、未来を見ているが故に回避できる訳ではない。
「全てを奪い与える能力」は「力の9年」の始まりである9年前に聖別で取り戻し、「未来視」の方は霊王宮における兵主部一兵衛との戦闘中にようやく取り戻して発動したが、それは「力の9年」が終わらなかったため(もし終わる前に使ってしまうと制御を失い、星十字騎士団の力を「全てを奪い与える能力」で奪い尽くしかねなかった為)。未来視を解禁したことにより一兵衛の能力を無力化した。
未来視の能力については、発動する=ユーハバッハが『目を開く』ことを意味しており目の中に瞳が3つあるという異形の姿となる。
そして、『全知全能』の未来視の力には「あらゆる未来を見通し意のままに『改変する』」という能力がある。ハッシュヴァルト曰く「全知全能の真の恐ろしさは未来を視る力ではない」。
ユーハバッハは未来を「無数の砂粒」に例え、彼が言う「未来を変える」とは「無数の砂粒の中から別の砂粒に飛び移る」と称し、ユーハバッハはそれらの砂粒(未来)全てに干渉し完全に掌握する。つまりユーハバッハに視えない未来は無く、自身にとって都合の悪い未来は全て意のままに書き換えられてしまう。しかし、下述の霊王を吸収した後に使った力なので元来の能力なのか霊王を吸収したことによってパワーアップしたのかは意見が分かれる。
見通し改変できるのは未来の事象に限ることと能力の行使にはユーハバッハの認識が必要という特徴から過去を改変する能力や現在を改変する能力、認識を操作する能力を受けると能力を阻害、無効化されてしまう弱点も存在する。
また、前回の元柳斎戦の情報を持つと明言している零番隊がユーハバッハの能力を全く把握していなかった事、当の元柳斎自身が偽物のユーハバッハの実力に全く疑問を抱いていなかった事から、千年前の元柳斎戦でもこの全知全能の力は使っていない様子である。
理由は長らく不明だったが、原作者監修のアニメ版では侵攻前に不可侵条約を結ぼうと提案した和尚と決裂した際、霊王の左腕を得る代わりに死ぬまで未来視の能力の使用ができない状態にされていたことが明らかになった。また、その際のユーハバッハの瞳の数は2つ(力を封印される際に二つの瞳が重なり合う形で1つになった)だったのに対し、本編の未来視の時は3つだったことや、未来視のことを知っていたはずの和尚が霊王宫での対戦の際に能力について驚愕していたことから、1000年前の未来視は単なる未来を予知する力であり、今のような知った力の無力化や未来改変などの能力は備わっていなかった可能性が高い(そもそも1000年前に聖文字が作り出されていたのかも不明である)。仮に未来視が健在だった場合、後述の不意打ちが決まっていた保障もないので戦略的に大きな意味があったのは間違いない。
霊王吸収後
「恐ろしいか?」
浮竹十四郎の神掛により現れた霊王の右腕であるミミハギ様および本体の霊王を吸収することで、全身を具現化した黒い霊圧の影と無数の目が覆う姿に変貌した。
霊王を取り込んだことで霊圧をはじめとしたあらゆるスペックが極限まで跳ね上がっており、アニメ版の補完シーンでは霊王を吸収中に変化したユーハバッハの霊圧は崩玉と融合して高次元の存在となった藍染のみが唯一まともに知覚できていたレベルで、瀞霊廷に居る浦原や隊長格といった実力者達でさえ藍染に指摘されるまではユーハバッハの霊圧を感じ取れなくなっていた程である。
その強大さは、
- 吸収した霊王の力の奔流を行使して霊王宮から遥か下方の見えざる帝国の建造物を全て上空へ移送し、霊王宮を「真世界城」へ作り変える
- 一護のパワーアップした真の天鎖斬月も卍解した瞬間に未来改変によってへし折られ、一切の反撃を許さず一方的に圧倒される
- 未来すべてに対して力を行使することで井上織姫による事象の拒絶も無効化している。
- 阿散井恋次の双王蛇尾丸も彼の左腕ごと切断して吹き飛ばす ユーハバッハ曰く「卍解など役に立たん」
- 肉体自身を影と化すことで体を吹き飛ばされる致命傷を受けても、全知全能により自身の死を書き換える猶予が出来るようになった
- 崩玉と融合した未知数の霊圧を持つ藍染も自身の黒い霊圧で圧倒して無力化する
- 上記二つと並行して三界を崩壊させるために瀞霊廷の遮魂膜を突き破り尸魂界全てを黒い霊圧で飲み込まんとする
などと絶大なもの。
しかし、上記した通り未来改変能力は全知全能元来の能力である可能性もあるので、実際霊王を吸収した事によって、どの能力がどのように変化ないし進化したのかは不明な点が多い。
総合的な評価
劇中では油断や傲慢な性格なども見られたが、総合的な戦闘能力はBLEACH史上最強クラスの実力者と言えるもので、ラスボスに相応しい貫禄と力を持つ。
使用した技
- 聖別(アウスヴェーレン)
―【掲げよ 銀の紋章・灰色の草原・光に埋もれた円環の途・瑪瑙の眼球・黄金の舌・頭蓋の盃・アドナイェウスの棺 掲げるものは お前の心臓】―
彼自身が不要と判断した見えざる帝国の者から能力を強制的に回収し、他の者に与え直す能力で、奪われた者は能力を奪われるばかりかダメージも受ける。それだけで済めばまだマシで、最悪の場合は白骨化し死亡する。そして、与え直された者は力を得て復活する。
零番隊の戦いで戦死した神赦親衛隊四名(アニメ版ではハッシュヴァルトと石田も)を復活させる為に使用し、地上で死神たちと交戦したロバート・アキュトロンらは力を奪われて白骨化し、それに伴い死亡した。直撃を免れても光そのものに、「魂魄に刻まれた力を吸収する」効果があるようでリルトットやジゼル、バズビーは滅却師完聖体を失った。
余談だが、この力の対象となった者の結末は3通りあり、聖別を受けたことによって白骨死体と化した者、一時的に生きていたが衰弱死した者、完聖体を失ったのみで以降の活動に支障が無さそうな者がいる。この違いは不明。
- 大聖弓(ザンクト・ボーゲン)
「私は私に【声】を与える!!!」
巨大な光の弓を形成し、巨大な「神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)」を複数発射させる。
また、雨竜がチルッチ戦で使用した「魂を切り裂くもの(ゼーレシュナイダー)」同様、手に持って剣として使うことも可能。
- 外殻静血装(ブルート・ヴェーネ・アンハーベン)
「私に触れたな?」
「静血装(ブルート・ヴェーネ)」を体外まで拡張させ、円形のドームの防御壁を作り出す。
これに触れると身体を侵食し、肉体の主導権を奪うことが可能。
- 簒奪聖壇(ザンクト・アルタール)
「ならば貴様の力も奪ってくれる!名も無きものではなく、私自身の力でな!」
発動させると上空から五芒星が現れ、相手の力を奪い取る光を放つ。
- 苦悶の環(クヴァール・クライス)
アニメ補完技。第一次侵攻で一護に使用。相手を囲むように光の柱を複数出現させ、そこから同時に「神聖滅矢」を発射する。矢は軌道を操ることも可能で、矢を刺した瓦礫で一護を押しつぶすなどの応用が利く。
- 聖域礼賛(ザンクト・ツヴィンガー)
原作ではユーハバッハに変身した“R”のロイド・ロイドが使用した滅却師の攻防一体の極大防御呪法。
掌からローマ数字が刻まれた4本の光の柱を出現させて結界を展開し、中に踏み入れた者を光の刃で切り裂く。
アニメの補完描写では霊王宮での一護との戦闘で本人も使用した。
劇中の活躍
本編以前
遥か昔に現世で「光の帝国(リヒト・ライヒ)」を建国し、現世の全てを制圧する。そして星十字騎士団を創設して、滅却師と対立した尸魂界へと侵攻するも初代護廷十三隊に敗北。多くの団員が死亡し、自身も元柳斎に深手を負わされた。しかし尸魂界の影の中に霊子による異空間「影の領域(シャッテン・ベライヒ)」を作って逃げ込み、国家の名を「見えざる帝国(ヴァンデン・ライヒ)」へ改め、1000年に渡って力を蓄えて新たな星十字騎士団を創り上げた。
アニメ化された最終章ではその大筋が描かれ、侵攻前に不可侵条約を結ぶために光の帝国を訪れた一兵衛との交渉が決裂した際、霊王の左腕を得る代わりに死ぬまで全知全能の能力の使用ができない状態にされてしまい、その状態で尸魂界に侵攻したことが明かされた。初代護廷十三隊に蹂躙された部下は無数の屍と化し、独り残されたユーハバッハは弓矢を取り出すも死体の山に潜んでいた雀部長次郎に背中を刺され、間髪入れず卍解した元柳斎に袈裟斬りにされて敗れている。
これらの補完から総合すると、前述の零番隊が所持していたユーハバッハの情報の少なさは、そもそも当時のユーハバッハはその能力の全貌を明かす前に敗走していたという事になる(実際、手負いのまま初代護廷隊員に取り囲まれ、正面からは猛り狂う残火の太刀を携えた元柳斎が迫り来るという絶望的な状況の中でも、不敵な笑みを浮かべていたことから、雀部の闇討ちがなければ一人だけでも初代護廷と戦って勝つ自信があったと思われる)。
滅却師の間では「聖帝頌歌」という伝承が伝わっており、その通り9年前に力を取り戻した。この時、純血ではない「混血統滅却師(ゲミシュト・クインシー)」から「聖別」により力を奪っており、雨竜の母・片桐叶絵はこれが原因で死亡している。また、純血統だったがある理由で不浄と判断された一護の母・黒崎真咲も、奪われた直後に遭遇した虚と戦う術を失い、一護を庇う形で死亡。
つまり、一護と雨竜にとっては母親の仇と言える存在である。
その後、藍染による崩玉を巡った激闘が落ち着いたタイミングで進軍を開始。初戦は虚圏を襲撃し、統治していたティア・ハリベルを完膚なきまでに圧倒して銀架城へと連行した。
第一次瀞霊廷侵攻
現世へ一護の足止めに行ったアズギアロ・イーバーン、瀞霊廷へ元柳斎に宣戦布告に行ったリューダース・フリーゲンのいがみ合いをとめる形で初登場。
リューダースの片腕を吹き飛ばした後に、彼の報告を聞いた後は「未来のことではなく今の話がききたい」という理由で、イーバーンには「平和への礎になれ」という理由で2人を粛清。
特記戦力の一人である一護が虚圏に浸入したのを見計らい、自ら星十字騎士団を率いて瀞霊廷の侵攻を開始し、ユーグラム・ハッシュヴァルトと共に死神達を殺戮しながら戦況を傍観していたが、騎士団3名を斃した更木剣八が襲来。
圧倒的な力を以て剣八を難なく倒したが、直後に宿敵の元柳斎が来襲し交戦。剣術や聖域礼賛を用いるも元柳斎の卍解の前に倒されたが、倒れたのは影武者であり、本物は「無間」に投獄されている藍染に会っていた。
影武者として時間稼ぎをしたロイド・ロイドを賞賛の言葉を送りつつ粛清し、元柳斎の卍解を奪い矢剣で彼を両断して殺害。引き上げようとしたがキルゲ・オピーの監獄から脱出した一護と交戦して圧倒的な力でねじ伏せ、彼を麾下へ加える為に見えざる帝国へ連行しようとするも「影の領域」圏外での活動時間の限界が来たため拿捕を諦めて帰還。帰還後は石田雨竜を自身の後継者として配下に加える。
第二次瀞霊廷侵攻
影の領域を瀞霊廷全域に広げて見えざる帝国へと上書きし、地の利を得て戦局を有利に進める。ハッシュヴァルトと石田と共に高台から戦況を見物し、霊王宮から修業を終えた一護が戦場に着くと2人を連れて一護が通ってきた道を利用して遂に霊王宮へと侵攻。霊王宮に到着すると零番隊の襲撃を受ける。
連れてきたニャンゾル・ワイゾルが修多羅千手丸に斃された後、神赦親衛隊を召喚して零番隊に差し向けるが王悦らによって石田、ハッシュヴァルト共々全滅させられたものの、瀞霊廷に残した星十字騎士団全員を聖別することで彼等を蘇らせると共に強化し、王悦らの始末を任せて自身は零番隊のリーダーにして特記戦力の一角である一兵衛との大将戦に挑む。
滅却師の技を駆使して戦うも、一文字の力で自身の力も名も奪われて斃されたかに思えたが、ここで「聖帝頌歌」の「力の9年」が終わりを告げ、全知全能を解禁して彼の能力を無効化する形で逆転勝利。全身を木端微塵にして兵主部を葬った。
霊王大内裏へ侵入して遂に霊王を肉薄。駆けつけた一護の肉体を操り霊王を斬らせて殺害させる。
原作では何故一護に霊王を殺させたかについて説明はされなかったが、アニメにおいて人間、死神、滅却師、完現術者、虚の5つ全ての因子を持つ一護にしか霊王を殺せなかったとユーハバッハの口から語られた。
その後は霊王の死による世界の崩壊を食い止めるべく浮竹十四郎が使用した神掛により現れた霊王の右腕をも取り込み、霊王の全てを奪い我が物とすることを宣言。
一護らが再度霊王宮の侵入の準備などを許したが、彼は霊王の力の全てを取り込む事に成功し、万象を超越する力を手に入れた。その力を以てして霊王宮を自らの望む世界に創り変え、新たな居城「真世界城(ヴァールヴェルト)」にて君臨し、親衛隊に死神達の討伐を命じる。
結末
この先は最終回のネタバレ情報を含みます。原作未読・アニメ勢の方は注意してください。
「さあ 絶望してくれるなよ 一護」
真世界城の玉座にて一護と井上織姫を迎え撃ち、全知全能により二人を圧倒して天鎖斬月を破壊し、一護の中にある滅却師と虚の力を奪い取って完全に心を折って絶望させる。そして戦っていたハッシュヴァルトとジェラルドをも不要と判断して聖別で命と力を奪い取り、尸魂界に降り立つ。そこで待ち構えていた藍染と会敵。
月島秀九郎の能力により天鎖斬月を修復して追ってきた一護と共に来た阿散井恋次に藍染を加えた3対1の最終血戦に発展するも絶大な力で難なく彼等を退け、一護の胸に風穴を開けて止めを刺した…。
かに思えたが……
藍染「……そうか」
「黒崎一護に 視えているか」
ユーハバッハは貫いた相手を一護だと思っていたが実は藍染だった。鏡花水月の完全催眠にかかったことで一護と錯覚しており、鏡花水月を解かれたことで一護ではなく藍染だと気付き、このフェイントに動揺。
その隙を突かれ、一護に背後から刺され(このシチュエーションは、千年前の雀部と重なる形である)、そのまま渾身の月牙天衝を喰らって体を吹き飛ばされる。
それでも「自分が死ぬ」という未来を改変して(もしくはジェラルドの能力を使って)復活し藍染を退けるが、駆け付けた石田に「静止の銀で作った、ユーハバッハの能力を一瞬だけ無力化できる鏃」を撃ち込まれる。
再び一護に斬りかかられ、能力を停止させられても天鎖斬月の攻撃を受け止めて砕くが、その中から現れた真の斬月により体を真っ二つに両断され、彼に自身の持論を語りながら遂に死亡した。
最期は皮肉にも、かつて自分が殺害した山本元柳斎と同様、能力を封じられ真っ二つにされるという形であった。
敗北する直前、己が斬月に斬られるという現実に直面したことで、眠っていた時に見た光景が夢ではなく予知であったと初めて自覚しており、その夢はハッシュヴァルトが見せたものだと思い込んでいた。
かつて半身として迎え入れ、側近として常に帯同させていたハッシュヴァルトに対してすら、「本心では自分を憎んでいるに違いない」と心からは信を置いていなかったのが窺える。
こうして、三つの世界を一つにすることで生死の概念の存在しない世界を創る事を望んだ皇帝は、独裁的なやり方で部下を無意味に処刑したことも敗因となり(某考察動画によれば、星十字騎士団討伐数ランキングで一位に輝いている)、かつての敵すら味方につけた、自身の血を引く一人の若き死神代行によってその野望を打ち砕かれたのだった。
原作ではその後どうなったか不明であったが、小説『WE_DO_knot_ALWAYS_LOVE_YOU』及び『Can't_Fear_Your_Own_World』によれば、死後、その亡骸は霊王の代わりとして和尚に封印され、三界の安定に使われている。
ユーハバッハの亡骸は現在二代目霊王様として、三界維持という仕事を任されており、自らが平和への礎となって、責任をもって仕事をしている。
三界の崩壊を目論み、平和の礎のもと部下を粛正し続けた彼は皮肉にも自らが平和への礎にされ、三界を維持する存在になったのだ。
なお、彼の魂の残骸は死後十年も世界に残り続け、最終的に偶然にも黒崎家に辿り着いた際、一護と織姫の息子であり、自身の血を引く次世代の黒崎一勇に始末されて完全に消滅した。
目的
最後まで行動の目的が不明だった藍染や、小説版で凄絶な過去が明かされた銀城空吾と違い、ユーハバッハは本編にて自身の行動目的をはっきりと明かしている存在でもある。
それは、生と死の無い世界を作り、人々に安寧をもたらすこと。
このユーハバッハの目的は、アニメ化に際して、原作よりも早めにそして詳細に描かれており、そこからユーハバッハの人物像がより深く掘り下げられている形になる。
ユーハバッハは力を奪う際に、力を奪った相手の死に際の絶望と苦悶の声を日頃から聞いており、その事に対して強い不満を抱いていた。その為、世界が生と死によって分たれていることを憂いており、まなこ和尚から尸魂界との不可侵条約を持ちかけられた際には、その不満をぶち撒けて和尚を攻撃し、事実上の交渉決裂となった。
その際に、上述されるように和尚より霊王の左腕を与えられて能力を封じられるが、これにより力を取り込んだ際の苦悶の声も止んだ為に、ユーハバッハはこれを受け入れていた。
藍染を超える巨悪と断じられ、部下や仲間を容赦なく自らの力の生贄にし、他者からあらゆる力や命すらも奪い取ることを平然と行なっていたユーハバッハだが、彼なりに正義と信念を貫いていたのである。
尚、そんなユーハバッハの理想に対して、藍染は「生と死の無い世界には恐怖は無いが、その代わりに歩みを進める力も無い」と断じており、ある程度の理解を示しつつも、両者が相容れない価値観の持ち主であったことも示されている。
台詞
やめろ 全く 何度言えば分かるのだお前たちは 私の前で争うな 私は争いを好まぬぞ さあ平和のための報せを聞こう
辛いものだな 争いというものは
闇から生まれし我が息子よ
運命の歯車の上で轢き潰される哀れな砂粒よ
力は使わぬ 久し振りに父子の会話を楽しみたい
テーマ曲
余談
自身の敗因
作中においてほぼ無敵に近く、正に最強の敵として描かれた彼だが、それでも討ち斃された敗因として、自分自身を唯一至上の存在として部下たちを平然と切り捨てていた事が挙げられる。
- 裏切ったバズビーらの助けで一護らは真世界城のエリアに侵入できた
- ハッシュヴァルトを聖別しなければ、石田は最終決戦に駆け付けることがなかった
- 過去の聖別で不要の滅却師を殺した際に、心臓に残した銀の血栓を利用されて自身がそれで能力を一時的に喪失。
また、かつて所属していた者が脱退時に持ち逃げした通行証が問題なく使えて、真世界城へ侵入できたりとザル警備が仇となっている。
公式Q&A
作者からファンクラブ会員への質問解答によって、ユーハバッハの力について判明したことが幾つかある。
- 聖文字
今まで読者の多くは聖文字はユーハバッハに与えられた文字に対応する能力が開花すると考えていたが違った。
曰く、ユーハバッハの眼には単語が刻印されているように視えるという。つまり、それぞれが潜在的に持っていた力がユーハバッハの魂によって開花する。聖文字自体に意思があるのかは不明だが、死神と斬魄刀の関係と似ている。ペルニダとジェラルドが聖文字を与えられていないのが伏線だった。
- 星章化
滅却師が開発した死神の卍解を奪う技術。
これはユーハバッハの簒奪聖壇を応用した技術らしい。
ネタキャラ化
そんなユーハバッハだが、千年血戦篇がアニメ化すると第7話のハッシュヴァルトとの会話、訣別譚(第2クール)のOP映像では登場人物が現代的なファッションしてる中で、ユーハバッハは黒スーツをきめて満面の笑みを浮かべてヘリコプターで石田を迎えに来て手を差し伸べる(通称:ヘリ陛下)などとネタキャラという一面をみせる。
元柳斎殺害後に、彼の頭を踏みつけては原作では4ページ、アニメでは2分ほど「現在の山本元柳斎重國の弱さと理由」に関して口上。
その長い語りと熱量に「生粋の厄介オタク」、「アンチが下手なファンよりその対象者への思いが凌駕している」と同等に扱われている。
結果的にニコニコ動画やイラストではアニメが好きな陛下などと扱われている。
関連イラスト
霊王吸収後
関連タグ
斬月のオッサン(力の残滴)