概要
虚を「滅却」する霊力を持つ人間の種族。
因みに、滅却師に関連する用語の一部にはドイツ語、及びそれに類似した表現が使われている。
死神の斬魄刀で斬られた虚は生前が極悪人の場合を除き浄化され尸魂界に送られるが、彼らの霊力で滅却された虚は霊子として分解されたあとにそのままその世界に残留する。
現世と尸魂界の魂の比重が極度に傾くと世界の崩壊を引き起こしかねないため、魂のバランスを保とうとする死神と、現世で人を襲う虚を滅却し続ける滅却師の間で幾度も議論がされていたが、200年ほど前に死神と徹底的に相反し、死神の手により現世の殆どの滅却師は滅ぼされた。
後に、虚を消滅させる目的は感情的な憎しみによるものではなく、そもそも滅却師になる人間には虚に対する抗体が無い為だと判明する。
実は、作中世界の人間や死神には、虚に対する抗体が魂魄の中に存在し、それにより虚化しても魂魄を保つことができるが、滅却師にはそれが存在しない為、虚化は疎か、虚の存在自体が魂魄を破壊して確実な死を齎すものであったため、譬え世界の崩壊を招くとしても虚を消滅させざるを得なかったのである。
滅却師の起源は三界が創造される以前、生死の曖昧で緩やかに循環していた世界にまで遡る。
虚になることも循環の一つに過ぎなかったが、ある時虚が人間を喰らうようになり魂の循環が虚で止まるようになってしまった。
それに対する世界の抗体の様に現れたのが、虚を「滅却」し霊子として世界の循環に戻す力を持った、後に霊王と呼ばれる人間であった、
外部の霊子を操る滅却師の力に加えて虚になることへの耐性と自身の内からの霊力を操る「死神の力」、物質の魂に干渉する「完現術者」の力を併せ持った強大な存在であり、人々と世界を守るために戦った彼は救世主とも言える存在だった。
しかし同時期に現れた能力者のうち、死神の力は霊王以外にも発現していたが、後の死神の五大貴族と呼ばれる者達は、霊王を贄とする事で三界を創造する計画を立案し、そのための対話に霊王が応じた隙を突いて霊王を封印して楔として作り変え利用し、世界を分断して現世、虚圏、尸魂界が創造される事となった。
こうして死神によってデザインされた新しい世界に於いて、死神は魂のバランサーとして世界に必須な存在に収まる一方で、かつては世界を救う力を振るっていた滅却師は天敵である虚と戦うだけで世界のバランスを崩しかねない不遇の存在となってしまった。
千年ほど前には滅却師の始祖であるユーハバッハ(霊王の実子なのか、霊王の滅却師の力が人のカタチになったのかは作中でも不明)は霊王の真実を知ったことで世界を再び創り直そうと、建国した滅却師の国家「光の帝国(リヒト・ライヒ)」を率いて尸魂界へと戦争を起こし、敗北している。
千年前の戦いと二百年前の戦いで激減し、今では生き残りは極僅かと言われており、当初は石田雨竜、石田竜弦、石田宗弦の3人しか登場していなかったが、最終章・千年血戦篇にて千年の間潜伏していた光の帝国の残存勢力「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)」が登場し、尸魂界への宣戦布告と侵攻を行った。
能力
虚と戦うための様々な術を体得しているが、その殆どは大気中に偏在する霊子(霊体の構成物質となる素粒子)を自らの霊力で集め、操る技術を基盤としたもので、内に秘めた自身の霊力を源として戦う死神のそれとは異なる。
用語は主にドイツ語から取られているものが多い。
- 霊子兵装(れいしへいそう)
空間に偏在する霊子を集束し、自身の霊力でコーティングし弓の形状を成した兵装。滅却師が虚と戦うための最もスタンダードな武器である。
基本的には弓矢だが、千年血戦篇では異なる形状にする者もおり、サーベルやメリケンサックなどもある。ちなみにアニメオリジナルのバウント篇では、先んじてボウガンや拳銃の霊子兵装を用いる滅却師がいた。
- 神聖弓(ハイリッヒ・ボーゲン)、神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)
滅却師の放つ霊子を固めた光の弓矢の正式名称であり、彼らの基本戦術。
本編に描写される限りでは「矢」を放つことさえできれば必ずしも「弓」を用いる必要は無いらしく、事実「見えざる帝国」の滅却師の中には弓ではない全く違う装備から様々な形状の「矢」を放って戦う者もいる。
- 飛廉脚(ひれんきゃく)
足元に作った霊子の流れに乗って高速移動する滅却師の高等歩法。飛廉脚は石田家が使っている名称なので正式な名称は違うものである可能性もある。
死神の瞬歩、破面の響転(ソニード)に値する。
- 乱装天傀(らんそうてんがい)
無数の糸状に縒り合せた霊子の束を動かない箇所に接続し、自分の霊力で自分の身体を操り人形のように強制的に動かす超高等技術。
この術を発動すれば手足が麻痺しても骨が砕けても霊力の続く限り動き続けることができる。
- 血装(ブルート)
霊子を血液の中に流すことで、攻撃用の「動血装(ブルート・アルテリエ)」または防御のための「静血装(ブルート・ヴェーネ)」を発動する。但し、それぞれのシステムが独立しているため、同時には使用できない。
劇中では主に星十字騎士団が使用。アニメ版では静血装を発動する際は腕などに青い紋様が浮かび上がる。また、死神の始解による攻撃を人体の急所である眼球すらも防ぎ切っていた。
ある人物は静血装の達人とされ、その息子も戦いの最中に無自覚で使用する場面があった。
アニメ公式サイトによれば純粋な滅却師は鍛練せずとも生まれながらに使えるらしい。
また詳細は不明だが、ユーハバッハはこの応用として、体外に血液を排出する事でバリアのようなものを張る「外殻静血装(ブルート・ヴェーネ・アンハーベン)」を使用した。
- 影(正式名称不明)
影の中に霊子空間「影の領域(シャッテン・ベライヒ)」を造ったり、穿界門や黒腔のように三界の移動を行える。
劇中では瀞霊廷の影の中に「見えざる帝国」を造り1000年間潜伏していた。
- 滅却師最終形態(クインシー・レツトシュティール)
「散霊手套」を付け七日七夜弓を成すことのできた滅却師が、手套を外した姿。
手套の霊子拡散能力による抑制が無くなったことで、極限まで高まった霊子集束能力を活かした極めて強力な戦闘能力を発揮できるが、滅却師の限界を超えた集束力を発揮する事となり、余程の才のある者で無い限り、一時的な超強化と引き換えに滅却師の力を失ってしまう。
なお、この形態の後に失った滅却師の力を復活させるには、精神と肉体を極限まで削った後、心臓の洞房結節右19mmに霊弓の一撃を受けなければならない。
星十字騎士団のキルゲ・オピー曰く、脆さ故に概念自体が200年程前に死滅した「過去の遺物」で、雨竜の祖父である宗弦だけがそれに執心していたという。
- 聖隷(スクラヴェライ)
上記の"極限まで高まった"霊子集束能力の正式名称。
世界全体が霊子で構成される尸魂界や虚圏で発動すると、大気中のみならず構造物や生物さえも霊子に分解して引き寄せてしまうほど強力。
「最終形態」と、後述する「完聖体」で使用できる。
- 聖域礼賛(ザンクト・ツヴィンガー)
滅却師の攻防一体の極大防御呪法。
光の柱に囲まれた結界を張り巡らせ、入った者を神の光によって斬り裂く。
作中ではユーハバッハに化けたロイド・ロイドが使用したが、元柳斎の卍解「残火の太刀」で破壊された。
見えざる帝国限定
星十字騎士団が使用する能力。
詳しくは個別記事を参照。
- 星章化(メダライズ)
卍解を奪う能力。
詳しくは⇒星十字騎士団へ
- 聖別(アウスヴェーレン)
ユーハバッハが行った滅却師の選別と滅却師の力と命の徴収。
詳しくは個別記事を参照。
用語
- 五角形の滅却十字(クインシー・クロス)
その名の通り、五角形の十字。宗弦から竜弦に引き継がれた滅却師の正統後継者の証。
- 純血統滅却師(エヒト・クインシー)
純血の滅却師。見えざる帝国のメンバーや、宗弦と竜弦ら石田家、そして滅却師としての黒崎家最後の生き残りである黒崎真咲がこれに該当する。
- 混血統滅却師(ゲミシュト・クインシー)
人間と滅却師との混血の滅却師。登場したのは雨竜とその母・片桐叶絵のみ。千年血戦篇から9年前の6月17日、ユーハバッハの"聖別"の対象に全員が選ばれ、彼に滅却師の力を全て奪われた。
現在生存しているのは雨竜ただ一人。
- 聖帝頌歌(カイザー・ゲザング)
滅却師の伝承で、曰く
「封じられし滅却師の王は 900年を経て鼓動を取り戻し 90年を経て理知を取り戻し 9年を経て力を取り戻す」
という。王の正体はユーハバッハであり、本人によると最後に
「9年を経て力を取り戻し 9日間を以て世界を取り戻す」
が加わる。