概要
漢字では独逸語と書き、一般に独語あるいは独と略す。
現在インターネットの使用人口の全体の約7%がドイツ語であり、英語、中国語、スペイン語、日本語に次ぐ第5の言語。ウェブページ数においては全サイトのうち約8%がドイツ語のサイトであり、英語に次ぐ第2の言語。EU圏内では、母語人口は域内最大。
語感が格好良いからか、フィクションでは、とくにドイツと関係無い技&武器の名称に、ドイツ語が採用される事が非常に多い。
方言
方言差が大きく、標準語は中南部で話される高地ドイツ語。北部の低地ドイツ語はオランダ語に近い。そもそもオランダ語や南アフリカ共和国公用語のアフリカーンス語も、言語学上は(広義の)ドイツ語の方言として扱われる事がある。
ほかの言語同様方言差が激しく、ドイツ人自身も出身地の方言を話すことが一種のプライドであるため若年層もかなり強い方言で話す。特に南部のバイエルン州やザクセン州を中心とする東部はその独特な方言(バイエルン語)からネタにされる。スイスに至っては方言(スイス語もしくはアレマン語と呼ばれる)が標準語とあまりにかけ離れ過ぎており、標準語の修得の時点で既に外国語学習同然という有様である。しかも、同じスイス語自体でも村一つ隔てるだけで全く言葉が通じないほど差が著しい。
標準語は東部のテューリンゲン州やザクセン=アンハルト州の方言がベースとなっているが、発音自体はむしろ北部のハノーファーの方言の方が標準語に近いという。
ロシア人が第2外国語で最も多く取得している言語であり、ウラジーミル・プーチンも取得している言語である。欧州圏では重要なビジネス言語として学ぶ人も多いが当のドイツ人も英語をよく理解できる人が多かったりする。
単語そのものの特徴
単語を読むだけなら不規則な英語より簡単で、その格好良い響きと相俟って創作者にとっては心強い味方に成り得る。
また漢字の熟語同様に既存の単語を繋げて新造語をほいほい作ったりする。間にスペースを入れないため、慣れない外国人は苦労する。
例)Kampfflugzeug = Kampf + flug + zeug (戦う+飛ぶ=+もの=戦闘機)
そのため極端に長い単語がよく見受けられるが、分解して覚えれば理解しやすい。
例) sprachwissenschaftlich = (言語+知っている+こと+的 = 言語学的)
裏を返せばどこまでが一つの単語であるかを視覚的に判別しやすいため、慣れれば便利なことこの上なし。
日本では明治以降、学術用語として広く学ばれ、特に医学用語を中心とした理系用語(カルテ、オペ、クランケ、アレルギー、エネルギーなど)やスキー用語(ストック、シュプール、ゲレンデ、シャンツェなど)、登山用語(ザイル、リュックサック、ワンダーフォーゲルなど)にドイツ語由来の外来語が多い。
また第二次大戦前は、学生の間でドイツ語の語彙を取り入れて話すことが流行し、現在も日本語として定着している「エネルギッシュ」(英語では energetic)や「アルバイト」(ドイツ語で「労働」の意)やはその名残である。(もっとも近年は、略して「バイト」と呼ぶことが多いが。)さらにメルヘンなどもドイツ語由来である。
なんといってもプロイセンからナチスを経て東ドイツに至る軍国主義が強烈であるゆえ、創作では主に悪役だとか危険なメカの名前に使われるなど、中二病的というイメージが強い。「サリン」「ゲバルト」「パンツァー」「ジークハイル」なんかもドイツ由来。
発音と綴りの特徴
英語の読みが著しく変則的なのに対し、ドイツ語の読みはいくぶん規則的であり、基本的にローマ字読みすればよい。ただし、1つの母音字に対し短音と長音の2種類の読み方があり、発音が微妙に変わる。母音の後ろに同じ子音が2連続すれば短く、母音が2連続またはhが後ろに続けば長い(それ以外はケースバイケース)。ドイツ語のJはローマ字のYで読む、WはVの音で読む、Vは外来語でなければFの音で読むこと、母音でeiは「アイ」・ieは「イー」・euは「オイ」と二重母音で読み、子音後や語末の-b, -d, -gは澄んだ音(無声音)の-p,-t,-kになることなど、いくつかの留意点や例外がある。さらに英語では使われないä、ü、ö等のウムラウト付文字が使用される。
また、20世紀に入ってからは母音後のrの母音化が起こっている(例:Hitlerをヒトレルではなくヒトラーと発音するなど)。現在ではrを巻いて発音するのは古臭いか、しばしばネタにされる南ドイツ方言的とみなされるため注意が必要。
言葉の読み方と文法は同じゲルマン語派である英語とはあまり似ていない。ただし多くの基礎単語は語源を共有しており、英語の知識から意味が推測できる語は結構多い。例えば本(英語:book、ドイツ語:Buch)、水(英語:water、ドイツ語:Wasser)、魚(英語:fish、ドイツ語:Fisch)、単語(英語:word、ドイツ語:Wort)など。
文法面の特徴
文法は英語と比較すれば複雑である。
名詞の性は3種類あり、綴りから性を判別することが難しい。名詞を複数形にする方法は4種類(と不規則変化)があり単語ごとに異なる。冠詞には4種類の格変化がある。
語順についてはかなり珍しい挙動をする。
まず動詞フレーズを文末に置き、これがデフォルトの形となる。yes/no疑問文を作るときはその文末の(活用している)動詞を文頭に移動し、平叙文を作るときはさらに文要素の中からひとつ選んで文頭の左側に置き、これが話題になる(主語である必要はない)。文末に動詞がある文型は、従属節やzu不定詞内では保たれる。
……早い話が、これは「語順が2種類あり、場合によってそれらを使い分ける必要がある」というとんでもない統語規則である。たとえば「今日は雨が強かったので家にいた」をドイツ語にすると „Heute bin ich zu Hause geblieben, weil es stark geregnet hat.“ となるが、逐語的に英語にすると "Today have I home stayed, because it today strongly rained has." となる。
とは言え、こういった複雑さも慣れである程度克服することは可能であるし、会話する分には冠詞など一切無視して話しても意味はある程度通じる。
何故かクリンゴン語、ガミラス語等の、架空言語の原型として用いられる事が多い。
生じやすい誤解
敗戦により理系分野でのドイツ語の権威も英語にとってかわられたため、もはや中学に高校では教わる機会がほとんどなく、大学の1、2年で学ぶ機会を逃すとなかなか学ぶ機会が巡ってこない。
そのため割と誤解が生じやすい言語であり、ネットで事実のように書かれていることが実は誤解だったり、誤解を招く表現だったりする。
例えばeinsは「アインス」と発音する、というのは半分正解だが半分は間違いである。
というのも、発音規則上は確かに「アインス」という発音でいいのだが、実際にドイツ語ネイティブが口に出して言っているときはnとsが連続している関係上「アインツ」と発音することが多いのである。ドイツ語ネイティブに対して「アインス」と言うと意味は理解してもらえるだろうが、「ああこの人はドイツ語を話し慣れてないな」という反応をされること請け合いである。
正しいドイツ語を学びたければネットの知識で満足することなく、大学の授業、語学教室、テレビ講座などを参照してほしい。
組み合わせの例
- Volkswagen=Volks+wagen(フォルクスワーゲン=国民の+車)
- Nibelungenlied=Nibelungen+Lied(ニーベルンゲンの歌=ニーベルンゲン族+歌)
- Bühnenweihfestspiel=Bühnen+weih+Festspiel(神聖舞台祝祭劇(※1)=舞台+神聖な+祝祭)
(※1)ある酔狂な作曲家が自分の作品に付けたジャンル名。カッコつけすぎと言わざるを得ない。
公用語としている国
- ドイツ連邦共和国
- オーストリア共和国
- スイス連邦(他にイタリア語、フランス語、ロマンシュ語)
- リヒテンシュタイン公国
- ベルギー王国(他にフランス語、フラマン語)
- ルクセンブルク大公国(文語である標準ドイツ語と口語方言であるルクセンブルク語の2言語が公用語に指定されている。他にフランス語も併用)
他に話される地域
pixiv百科事典に記事があるドイツ語(抜粋)
カイザー カウフマン クーゲルシュライバー クロイツ コンラート
ハインリヒ バウムクーヘン パンツァー フランツ フューラー フリューゲル ヘルムート
メッサー ミヒャエル ミュラー ルートヴィヒ ワーゲン ウンエントリヒ
これでもほんの一部である。
主な数詞
数 | ドイツ語表記 | 主なカタカナ表記 |
---|---|---|
0 | null | ヌル |
1 | eins / ein | アインス(アインツ) / アイン |
2 | zwei | ツヴァイ |
3 | drei | ドライ |
4 | vier | フィーア / フィア |
5 | fünf | フュンフ |
6 | sechs | ゼクス / ゼックス |
7 | sieben | ズィーベン |
8 | acht | アハト |
9 | neun | ノイン |
10 | zehn | ツェーン / ツェン |
11 | elf | エルフ |
12 | zwölf | ツヴェルフ |
13 | dreizehn | ドライツェーン |
14 | vierzehn | フィアツェーン / フィルツェーン |
15 | fünfzehn | フュンフツェーン |
16 | sechzehn | ゼヒツェーン |
17 | siebzehn | ズィープツェーン(×ズィーブツェーン) |
18 | achtzehn | アハツェーン(×アハトツェーン) |
19 | neunzehn | ノインツェーン |
20 | zwanzig | ツヴァンツィヒ / ツヴァンツィッヒ |
主な単語
体の部位
意味 | 単数形 | 複数形 |
---|---|---|
頭 | コプフ / コップフ / Kopf | ケプフェ / Köpfe |
手 | ハント / Hand | ヘンデ / Hände |
拳 | ファオスト / Faust | フォイステ / Fäuste |
脚 | バイン / Bein | バイネ / Beine |
足 | フース / Fuß | フューセ / Füße |
戦闘
意味 | 単数形 | 複数形 |
---|---|---|
戦闘 | シュラハト / Schlacht | シュラハテン / Schlachten |
防御 | フェアタイディグン / Verteidigung | フェアタイディグンゲン / Verteidigungen |
攻撃 | アングリフ / Angriff / アタッケ / Attacke | アングリッフェ / Angriffe / アタッケン / Attacken |
打撃 | シュラーク / Schlag | シュレーゲ / Schläge |
蹴撃 | トリット / Tritt / キック / Kick | トリッテ / Tritte / キックス / Kicks |
剣撃 | ヒープ / Hieb | ヒーベ / Hiebe |
投げ | ヴルフ / Wurf | ヴュルフェ / Würfe |
格闘技 | カンプフクンスト / Kampfkunst | カンプフキュンステ / Kampfkünste |
近接格闘術 | ナーカンプフ / Nahkampf | ナーケンプフェ / Nahkämpfe |
護身術 | ゼルプストフェアタイディグン / Selbstverteidigung |
自然
意味 | 単数形 | 複数形 | |
---|---|---|---|
火 | フォイアー / Feuer / ブラント / Brand | フォイアー / Feuer / ブレンデ / Brände | |
炎 | フラメ / Flamme / ローエ / Lohe | フラメン / Flammen / ローエン / Lohen | |
煉獄 | フェーゲフォイアー / Fegefeuer | フェーゲフォイアー / Fegefeuer | |
火山 | ヴルカーン / Vulkan | ヴルカーネ / Vulkane | |
熱 | フィーバー / Fieber / ヴェルメ / Wärme | フィーバー / Fieber | |
火の粉 | フンケ / Funke | フンケン / Funken | |
水 | ヴァサー / ヴァッサー / Wasser | ヴェサー / Wässer | |
雷 | ブリッツ / Blitz | ブリッツェ / Blitze | |
風 | ヴィント / Wind | ヴィンデ / Winde | |
太陽 | ゾンネ / ゾネ / Sonne | ゾンネン / Sonnen | |
月 | モーント / Mond | モーンデ / Monde | |
星 | シュテァン / Stern | シュテァネ / Sterne | |
陽光 | ゾンネンリヒト / ゾネンリヒト / Sonnenlicht |