この項目では、ヒトが会話で使う自然言語について記載する。
コンピュータのソフトウェアを開発するプログラミング言語や、架空の物語に登場する実在しない言語については人工言語を参照されたし。
概要
言語とは、ある法則を持った音声のパターンを口・喉から発し、聴覚的にコミュニケーションを行うものである。文字・手話や点字によって視覚的・触覚的なコミュニケーションにも応用される。
鳴き声によるコミュニケーションを行う生物は複数存在するが、警戒・求愛など生物として最低限な信号にとどまらない複雑な内容を伝達できるまで言語を発達させている生物は、現在知られている限り人類しかいない。
文字の発明以前の言語が推測でしか分からないこともあって、人類がいつから言語を使っていたのか、また人類の話す全ての言語が同じ起源なのか複数の起源を持つのか、などは定かではない。ただ遡れる範囲内で同じ祖先を持っているであろうと判明している言語のグループは地域ごとにあり、これら同祖の関係にあるものをまとめて「語族」と呼ぶ(後述)。
現在地球上にある言語の総数は統計により違うが、概ね3000〜8000ほどあるとされている。土着の言語が最も多様な国はパプアニューギニアで、1000万に満たない人口に対して実に800以上の言語がある。これは同国が険しい山岳と密林に覆われた地形で、物理的な隔絶のために部族間の共通語ができにくかったからだと考えられている。ニューギニア島に限らず数千ある言語のうちにはこういった少人数の部族語が多く、また便利な共通語を話すように変わっていく潮流もあって、消滅危機に瀕しているものも少なくない。
ちなみに言語数にかなりの幅があるのは、そもそもどこからが「違う言語」でどこまでが「ある1言語の方言」なのかは明確な定義がないからである。
・ほぼ同じ言葉だが、国ごとに別の言語と扱っている:ヒンディー語/ウルドゥー語、セルビア語/クロアチア語、マレー語/インドネシア語
・互いに通じないほど方言差が大きいが、1つの言語とみなされるケースが多い:中国語、アラビア語
以上のようにどこからどこまでを一つの言語とするかは定義が一定ではないので、世界の言語数の数え方も考え方によって大きく異なってくる。
日本国内においてもこうした定義の幅はある。標準語と同系統の言葉はすべて日本語という一つの言語でその中の差は方言であるという考え方が日本社会では一般的だが、学術的には沖縄の琉球諸語や八丈島の八丈語を「大和民族/和人の言葉に似た違う言語」として扱うこともあり、国連などの機関でもこの定義がなされている(参考:文化庁)。
ちなみに前者の考え方の場合は、他に日本語と同系統だときちんと証明された言語は今のところないので、日本語単独で「孤立した言語」となる。一方で、後者の定義では狭義の日本語と琉球諸語・八丈語が「日本語族」あるいは「日琉語族」という語族を形成していると扱われる。
※アイヌ語に関しては全く別の起源と考えられており、日本列島の言葉ではあるが「日本語の方言」でも「日琉語族に属する言語」でもない。
母語話者人口が多い言語
消滅危機にある言語も多数ある一方で、一部の言語は分布域の人口が多かったり、国際的に大きな影響力があったために多くの話者を抱えている。特に1億以上の母語話者を持つ言語はちょうど10個あり、日本語もその中の1つである。(参考)
言語 | 語族・系統 | 母語話者数 | 主な分布 | 備考・特徴 |
---|---|---|---|---|
中国語(汉語普通話) | シナ・チベット語族シナ語派 | 9.4億 | 中国内地・台湾 | な中華最大の人口を持つ漢民族の言語(「汉語」・「華語」)のうち華北から中原で話されてきた最大派閥の言語群で、「マンダリン」とも。漢字文化を通して日本を含め東アジアに歴史上大きな影響を与えてきた。標準語である「普通話」(中国内地)および「国語」(台湾)はどちらも北京方言がベース。国連公用語の1つ。 |
スペイン語 | 印欧語族イタリック語派 | 4.9億 | スペイン・中南米 | スペイン中部・カスティーリャ地方のロマンス語で、「カスティーリャ語」ともいう。大航海時代に覇権国家だった名残で中南米に話者が多い。近年は米国でも話者数が急増。国連公用語の1つ。 |
英語 | 印欧語族ゲルマン語派 | 3.8億 | 英国・北米・豪州など | ゲルマン系のアングロサクソン人によるイングランド発祥の言語。簡易な文法と英米の国際的影響力により事実上の世界共通語となり、非母語の話者も非常に多い。国連公用語の1つ。 |
アラビア語 | アフロ・アジア語族セム語派 | 3.7億 | 中東・北アフリカ | 大国エジプトやサウジを含めた20ヶ国以上で話される言語にして、イスラームの典礼言語。口語は方言差が大きく、古典文語である「フスハー」が標準語として用いられている。国連公用語の1つ。 |
ヒンディー語 | 印欧語族インド・イラン語派 | 3.5億 | インド | インド最大の言語で、パキスタンのウルドゥー語とは主に宗教の違いから国と文字が分かれた片割れの関係にあり、話し言葉としてはほぼ同じ。ウルドゥー語と合わせて「ヒンドゥスターニー語」とも言う。 |
ポルトガル語 | 印欧語族イタリック語派 | 2.4億 | ポルトガル・ブラジル・一部のアフリカ | ポルトガル発祥のロマンス語だが、人口大国のひとつブラジルの公用語として多数の話者を抱える。歴史上日本に初めて上陸した欧州語であり、日系ブラジル人や在日ブラジル人も多いことから日本語とも浅からず接点がある。 |
ベンガル語 | 印欧語族インド・イラン語派 | 2.3億 | インド北東部・バングラデシュ | 南アジア2番手の言語で、世界有数の人口密集地帯であるガンジスデルタを中心に話される。 |
ロシア語 | 印欧語族スラヴ語派 | 1.5億 | ロシア、旧ソ連 | 世界最大の領土を持つ国家・ロシアの言語で、ロシア帝国やソ連の影響下にあった東欧・中央アジアにも話者がいる。国連公用語の1つ。 |
日本語 | 日琉語族 | 1.2億 | 日本 | 日本の公用語。過去にはアジア太平洋に版図を広げた時期もあり、現代ではpixivを含めたアニメ・漫画などのサブカルを扱う界隈において共通語としての性質も帯びているため、非母語話者も一定数いる。 |
西パンジャーブ語 | 印欧語族インド・イラン語派 | 1.0億 | パキスタン | 南アジアで3番手の言語で、ラフンダー語ともいう。パキスタン第2の大都市ラホールを中心にパンジャーブ州で主に話される。インド領パンジャーブ州で話されシク教の典礼言語でもある東パンジャーブ語とは文字こそ違うものの口語レベルでは借用語の傾向以外に大きな差もなく、一般には単に「パンジャーブ語」と総称される事がほとんど。 |
11位以降は母語話者1億未満であるが、順にベトナム語、トルコ語、マラーティー語、テルグ語、マレー語(インドネシア語を含む)、朝鮮語、フランス語、タミル語、ドイツ語、ウルドゥー語と、地域大国の言語や大人口多民族国家インドの言語などが名を連ねる。なおこの表からも分かる通り、印欧語族は世界の中でもかなりの割合の人口が属する一大派閥である。
「インターネット上でよく使用されているトップ言語」という観点では、上記の言語の地域すべてでインターネット普及率が均等なわけではないこともあってやや様相が変わる。
その他影響力のある言語
国際的に影響力があったり、あるいは歴史上大きな影響を残した言語は、上記のような現在話者が多い言語の他にもいくつかある。
言語 | 語族・系統 | 発祥地 | 備考・特徴 |
---|---|---|---|
ラテン語 | 印欧語族イタリック語派 | イタリア中部 | ローマ帝国の公用語で、現在ある全てのロマンス語の祖。バチカンを総本山とするカトリックの典礼言語であり、欧州社会で長く知識人の教養として学ばれてきた経緯から、生物の学名など学術分野で国際的に使われる。またラテン文字は現在世界中で使われている。典礼言語の壮大なイメージからか、サブカル/創作においてコーラスに使われることもしばしば。 |
ギリシア語 | 印欧語族ヘレニック語派 | ギリシア | 古くから哲学などの学問を発展させてきたギリシアの言語で、ラテン語と並び学術用語などで重用されており、文字は数式の記号とされることも多い。また、新約聖書も当初はギリシアの口語で書かれていた。現在でも1000万規模の話者がいるが、古典語とは発音がかなり変わっている。 |
ヘブライ語 | アフロ・アジア語族セム語派 | イスラエル | 旧約聖書を記すユダヤ教の典礼言語。キリスト教圏・イスラーム圏でもヘブライ語起源の人名が広く見られる。3世紀頃に死語になったが、18〜19世紀になってユダヤ人の文化復興運動で復活。現在ではイスラエルを中心に800万ほど母語話者がおり、一度死語になってからここまで蘇った例は現状ヘブライ語しかない。 |
サンスクリット語 | 印欧語族インド・イラン語派 | インド | インドの古典語で、聖典「ヴェーダ」に起源を持つヒンドゥー教の典礼言語。パーリ語と並んで仏教にも大きく寄与し、特に東アジアで普及した大乗仏教では重要な位置を占めた。仏教用語やそれを語源とする語彙として日本語にも影響が見られる。 |
フェニキア語 | アフロ・アジア語族セム語派 | レバノン周辺 | 現在のレバノンあたりの地中海沿岸から北アフリカにかけて話された古代語。フェニキア語自体は死語となったが、今現在使われている世界の音素文字のほとんどは彼らが使ったフェニキア文字を祖としている。 |
個別の言語記事の一覧
同一語族で複数記事を有するものを語族ごとにまとめて記す。
インド・ヨーロッパ語族(印欧語族)
ヨーロッパ・ペルシア・インドにかけて分布する巨大な語族。アメリカ大陸やオセアニア・アフリカなどの旧欧州植民地でも話される。
【アルメニア語派】アルメニア語
【イタリック語派】ラテン語 / イタリア語 / フランス語 / スペイン語 / ポルトガル語 / ルーマニア語 / ロマンシュ語 / アルピタン語
【ゲルマン語派】ドイツ語 / オランダ語 / 英語 / デンマーク語 / スウェーデン語 / ノルウェー語 / アイスランド語 / スコットランド語 / アフリカーンス語
【バルト・スラヴ語派】ロシア語 / ウクライナ語 / ブルガリア語 / ポーランド語 / セルビア・クロアチア語 / リトアニア語
【ヘレニック語派】ギリシャ語
【インド・イラン語派】ヒンディー語 / ウルドゥー語 / サンスクリット語 / ベンガル語 / ネパール語 / ペルシア語
北欧・東欧からシベリアにかけての北ユーラシアに分布。
【フィン・ウゴル語派】フィンランド語 / マジャル語 / エストニア語
【サモイェード語派】※言語の個別記事なし
中東から北アフリカにかけて分布。いわゆるアブラハムの宗教と密接な関係にある。
【セム語派】アラビア語 / ヘブライ語 / マルタ語 / アッカド語 / ゲエズ語
ドラヴィダ語族
インダス文明を築いたと考えられる集団で、現在はインド南部に分布。
シナ・チベット語族
台湾(原住民)を原郷とし、イースター島からマダガスカルに至るまで太平洋・インド洋にまたがって分布。
【マレー・ポリネシア語派】インドネシア語 / マレー語 / タガログ語 / パラオ語 / ハワイ語
タイ・カダイ語族
中国南部(少数民族)から東南アジアのインドシナ半島にかけて分布。
(アルタイ諸語)
テュルク語族、モンゴル語族、ツングース語族からなる言語連合。語族とする説もある。朝鮮語族や日琉語族を含める説もある。
ユーラシア大陸内陸の遊牧民を起源とし、中央アジアを中心に分布。
【カルルク語群】ウイグル語
モンゴル語(モンゴル語族)
日琉語族
日本列島とその周辺の島嶼に分布。
その他
シュメール語(孤立した言語)
バスク語(孤立した言語)
スワヒリ語(ニジェール・コンゴ語族 バントゥー語群)
ベトナム語(オーストロアジア語族 ベト・ムオン語派)
グルジア語(カルトヴェリ語族)
アイヌ語(孤立した言語)
ナバホ語(ナ・デネ語族)
トク・ピシン(クレオール言語)
pixivに対応している言語
日本語 英語 フランス語 韓国語 ロシア語 タイ語 中国語(簡体字・繁体字) スペイン語
ネタ(架空)の言語
キャラや人物の独特な言葉遣いを、ネタとして「○○語」ということがままある。
など