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概要編集

インド洋および太平洋赤道周辺〜南半球に広範囲に分布する言語群。

基本的にはオセアニアの言語と思って差し支えない。


その分布域は北は台湾、南はニュージーランド、東はイースター島、西はマダガスカルであり、人工的に世界各地に分布することとなった印欧語にも引けを取らないほどの広大な地理的広がりを有する。

当語族の中で最も話者数の多い言語はマレー語であり、中でもそのインドネシア方言であるインドネシア語の話者数は1億6500万人と、日本の総人口を上回る(ただし、共通語であるために母語話者数はそれほど多くなく、2000万〜3000万人程度と推測される)。


極めて多数の個別言語から成り、その正確な数は不明であるが、千を超えるとする説もある。

正確な数が把握できないのは、そもそも言語学的に方言言語の区別が曖昧であり、どこからを別言語とみなすのかに常に議論の余地があること、マレー語のように、国毎に異なる正書法(マレーシア語とインドネシア語)が確立されている複数中心地言語の存在、未発見の原住民俗語の存在可能性や、すでに消滅した言語をどこまで算入するのかといった問題によるもの。


特徴編集

日琉語族シュメール語同様の畳語を多用する。よく、エスニックオタク界隈では「同じ単語を2回繰り返す言葉は南国っぽい」などと言われることがあるが、この「同じ言葉を2回繰り返す」というのがまさにオーストロネシア語の特徴。


地理的には極めて広大な地域に根付いている言語群であるが、マレー半島を除きその使用地域は全て島嶼部であるために、総陸地面積はそれほど大きくはなく、全体的に均一であり、言語を超えて文法や基礎語彙の類似点が多い。例えばマレー語とタガログ語の違いは方言に毛が生えた程度である。

子音はそれほど多用せず、子音字1〜3字ごとに母音が挿入される音節言語である。そのため、明るく快活な印象を与える言語が多く、「音が可愛い」と言われる言語が多い。母音、子音ともに種類はそれほど多くなく、語学学習の上でのスピーキングの難易度が低い。

一人称複数系(we)には、シナ・チベット語族同様に話の相手を含むか含まないかで明確に区別する。相手を含むか含まないかを全く意識しない印欧語との顕著な相違点である。

時制は存在せず、過去、未来全ての時制を現在形で表現するため、5W1Hの「When」を常に言及しないと話が訳がわからなくなることがある。しかし、完了形は存在する言語が多い。


コピュラ(英語のbe動詞)が存在しないため、述語名詞と動詞の形態上の差異に乏しい。印欧語を初めとする多くの言語において、形容詞は構文上名詞的性質をもつ(例:「She is a student」同様に「She is beautiful」とは言うが、「She sleeps」同様に「She beutifuls」とは言わない)が、オーストロネシア語の場合はこの述語名詞と動詞の形態上の差異の曖昧さに伴って形容詞が名詞とも動詞とも取れないどっちつかずの様相を呈する。そのため、形容詞が動詞的性質を持つ日流語同様に、対格言語(他動詞の主語が自動詞の主語と同様の形態を取る能動態がベーシックの言語)でありながら能格言語(他動詞の目的語が自動詞の主語と同様の形態を取る受動態がベーシックの言語)的な性質を帯びる表現(日本語の「うさぎは耳が長い」など。「長い」のは「うさぎ」ではなく「耳」だが、構文上の主語は「うさぎ」になっている)が時折現れる言語もしばしば見られるという。


具体例と現状編集

台湾編集

アタヤル語、パイワン語など編集

中国語やその方言を除く原住民俗語は、全てこの語族に属する。そのほとんどが日本におけるアイヌ語のように、保存運動家によってのみ話される消滅危機言語となっている。


マレーシア編集

マレー語(マレーシア語)編集

国語であるマレーシア語は、インドネシア語とともにマレー語の基幹方言を成す


シンガポールブルネイ編集

マレー語編集

いずれもインドネシア語よりはマレーシア語に近いマレー語が、独自に正書法を得て用いられている。


タイ編集

マレー語(ヤーウィー語)編集

南部在住の回教系住民により話されるヤーウィー語は、マレー語の方言である。


インドネシア編集

マレー語(インドネシア語)、ジャワ語スンダ語チアチア語ほか多数編集

標準語であるインドネシア語はマレー語をベースに共通語として構築された人工言語であり、オーストロネシア語族最大の話者数を有するジャワ語スンダ語などの、古くから用いられる地方少数言語もその大半がオーストロネシア語族に属するため、英語やオランダ語などのその他の語族に属する言語に比べて習得難易度が低い(日本語の方言に毛が生えた程度)であったのも、本来国内在住の母語話者が極めて少ないマレー語が標準語に選ばれた理由の一つ。


フィリピン編集

タガログ語セブ語ほか多数編集


マダガスカル編集

マダガスカル語編集

5世紀ごろの民族移動に伴って、マレー語となるグループから分化して成立した。人工的に持ち込まれたものを除くと、オーストロネシア語では唯一アフリカで用いられる言語。


南洋諸島編集

パラオ語、キリバス語、ナウル語、ニウエ語など編集

国別、島別に多様な言語が用いられているが、全てオーストロネシア語である。


ニュージーランド編集

マオリ語編集


アメリカ合衆国編集

ハワイ語、サモア語ほか編集

ハワイの原住民俗語であるハワイ語をはじめ、サモア準州グアムなど、太平洋島嶼部に位置する地域では基本的にオーストロネシア語が話されている


フランス編集

タヒチ語ほか編集

仏領ポリネシアを初めとする太平洋島嶼部で広く用いられる。


チリ編集

ラパヌイ語編集

イースター島で用いられる。


日本編集

縄文語編集

日本語の構造解析を行うと、文法や基礎語彙に相容れないはずのオーストロネシア語的な特徴が散見されることから、太古の昔オーストロネシア語が話されていたところに、弥生人により持ち込まれたアルタイ語や渡来人により持ち込まれた朝鮮語やシナ・チベット語が接触して、孤立言語である日琉語族が発生したとの学説がある。いずれの言語も文字を持たないために決定的な証拠を欠いており、今後も検証可能な証拠が出土する可能性は皆無に近いが、日本語・朝鮮語道祖論のような政治的タブーにも触れる恐れのない学説であるために、現状最も有力な学説の一つとして存在する。


人工的に移入された地域編集


オーストラリア編集

アボリジニの用いる原住民俗諸言語はいずれも能格言語であり、オーストロネシア語には該当しないが、かつて無人島であったクリスマス島では移民により持ち込まれたマレー語やタガログ語が広く話される。


南アフリカ編集

マレーシアインドネシアにルーツを持つイスラム教徒により、マレー語の方言が話されるコミュニティが存在する。

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