データ
首都 | ウェリントン(マオリ語名:テ・ワンガヌイ=ア=タラ) |
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面積 | 26万8021平方キロメートル |
人口 | 512万2600人(2021年6月) |
建国 | 1907年9月26日(イギリスの自治領として成立) |
最大の都市 | オークランド(マオリ語名:ターマキ=マカウ=ラウ) |
通貨 | ニュージーランドドル |
公用語 | 英語・マオリ語 |
国家元首(職) | イギリス国王 |
政体 | 議院内閣制 立憲君主国 |
概要
ニュージーランド(英語:New Zealand、マオリ語: Aotearoa、読み:アオテアロア)は、南西太平洋のオセアニアのポリネシアに位置する立憲君主国。イタリアと同じく長靴のような地形の国土だが、こちらはデカ過ぎるラグビーボールを蹴飛ばして骨折している。
キウイというキーワードが目立つ。
マオリの神話に登場する神々や怪物などに関しては、ポリネシア神話を参照。
歴史
マオリ人の時代
この地を発見したのはポリネシア系民族のマオリ人であった。「マオリ」とはマオリ語で「普通の」を意味し、後に渡来した西洋人と区別する為に自分たちを「普通の人々」と呼んだこと事に由来する。考古学によるとマオリが到来したのは10世紀前後であったらしい。マオリの伝承によると最初に発見したのはクペという探検家であり、ハワイキという名の故郷からカヌーに乗って到来した。ハワイキはもちろん伝説上の土地であるが、アン・サルモンド(Aphrodite's Island,2010)はフランス領ポリネシアのライアテア島に比定している。
この地はマオリからアオテアロア(長く白き雲のたなびく地)と呼ばれるようになった。マオリは勇敢な戦士であり、狩猟漁撈に加えて農耕を行った。考古学的調査から、狩りでは当時はまだ存在した巨鳥のモアも巧みな罠を用いて狩っていた事が知られている。農耕では芋・野菜などを栽培した。
西洋人との接触
1642年12月にオランダの探検家であるアベル・タスマンが近海を航海し、この時に西洋人がアオテアロアを知った。その情報を元にオランダの地図師が同国のゼーラント州の名を借り、ニュウ・ゼーラント(新ゼーラント)」と命名した。1769年10月にイギリスの探検家であるジェームズ・クックが最初に上陸し、全島を詳しく探検して詳細な地図を残している。やがて捕鯨・アザラシ狩りなどを求め、イギリス人を中心に西洋人の移住が開始された。
イギリス統治時代
1840年2月にイギリス国王とマオリの族長たちとの間でワイタンギ条約が締結され、土地の保護と引き換えにイギリス領であると宣言された。1841年5月にオーストラリアにあるニューサウスウェールズ植民地から分離され、ニュウ・ゼーラントはイギリスの統治に服した。ワイタンギ条約での取り決めは必ずしも遵守されなかったようで、1843年6月にマオリ戦争と呼ばれる戦争がイギリスとマオリの間で発生している。後に地名は英語読みでニュージーランドと呼ばれるようになり、1907年9月にイギリスの自治領として名目上の独立を果たした。
独立後
2度の世界大戦に参戦して多くの犠牲者を出し、一方で次第にイギリスに対する自治権を拡大していく。1947年11月にイギリス連邦に加盟する独立主権国となり、冷戦時代はアメリカを盟主とする自由主義陣営に属していた。
地理と自然
ニュージーランドは地理的にはニュージーランド列島と呼ばれ、首都のウェリントンがある北島とクック海峡を挟んだ南島・周辺の島々で構成されている。最大の都市はオークランドである。国土は26万8021平方キロメートルで、旧宗主国のイギリス(24万2495平方キロメートル)と近い。2018年3月に実施された国勢調査では人口は469万9755人だが、2021年6月の推計では512万2600人であった。横浜市の人口と近い数字だと言われることもある。広大な国土に比べて人口が少ないので、今も手つかずの大自然が広がる。主な都市は、北からオークランド・ウェリントン・クライストチャーチ・ダニーデン等であり、カイコウラやアカロア、ワナカやクイーンズタウン、ミルフォードサウンド等で有名なフィヨルドランドやタウランガ等、都市部以外の観光地も少なくない。
北島は火山活動が活発であり、南島は3000メートル級の高山が並び聳える。日本に匹敵するほど地震が多い国である(ただし、大地震や津波が発生する確率と頻度は日本と比べると非常に低い)。2011年2月に起きたカンタベリー地震では、クライストチャーチにいた多くの日本人学生も被災している。
気候は概ね西岸海洋性気候であり、夏は涼しく冬は暖かい穏やかな気候である。ごくまれに南極から氷山が流れてきたりオーロラが見えることもあるほど緯度が高いが、その割には海流などの影響で寒さは控えめである。しかし一方で、夏も肌寒い時間があるため、薄着をしていると夏に風を引くこともある。また、一日の内でも気温の寒暖差が激しいため、体調管理に注意するべきである。
生態系
現在の国土は「ジーランディア」と呼ばれる大陸の名残であり、他の大陸から隔離されている為に生態系は独自性が強い。コウモリ以外の土着の陸生哺乳類が存在せず(ジーランディアの時代にはネズミの様な固有の哺乳類がいたり、かつては陸上棲のコウモリもいた)、前述のモアの他、国鳥のキーウィやカカポやタカへなどの飛べない鳥やムカシトカゲやウェタなどを特色とする陸上生態系が育ってきた。
しかし、マオリの到来によってモアやハーストイーグルやワイタハペンギンや土着のアシカなどが絶滅し、その後にも白人の入植者が持ち込んだ猫・鼠などが増えたため、18世紀以降に絶滅した種(ワライフクロウやスチーブンイワサザイなど)や絶滅の危機に晒されている種が少なくない。
生態系の独自性が強いので自然・環境保護が厳格に実施されており、過去に入植者が持ち込んだ家畜によって大きく生態系が乱された為、現在は生物の持ち込みは厳格に規制される。
また、一般的なイメージとは異なりペンギンやネッタイチョウやゾウアザラシの故郷である可能性が指摘されており、キガシラペンギンやフィヨルドランドペンギンなどの固有種も含めてペンギンの種類の数は世界で一番多い。ジャイアントペンギンを含む世界最大級のペンギンが複数種生息していた。
海にも、ニュージーランドアシカ、ニュージーランドオットセイ、セッパリイルカ・マウイイルカなどの希少な固有種または固有に近い種が見られる。ダニーデン一帯の海は、世界で唯一タスマニアクジラが何度も目撃されていたり、人間の町の近辺にシロアホウドリの営巣地がある世界で唯一の場所でもある。しかし、ミナミセミクジラやウバザメなど、現在のニュージーランド本土ではほとんど見れなくなってしまった種類もいる。
2018年以降には、いくつかの理由で「セミクジラフィーバー」が起こった(クジラの島の少女やウェラーマンも参照)。
(こちらを参照)
住民
歴史的経緯からイギリス文化とポリネシア文化が入り交じっている。住民は白人が7割前後だが先住民マオリや太平洋諸島系も1割から2割前後を占める。公用語は主に英語とマオリ語で、義務教育では両言語が必修とされる。主な宗教はキリスト教だが人口の半数近くを無宗教が占める。
イギリス連邦加盟国であり、イギリス国王をニュージーランド国王として元首に推戴する。元首の代理は総督が務めるが、実際の行政権は議会が選出する首相が行使する。政治制度はイギリス政治の伝統の影響を受けた議院内閣制であり、成文憲法を持たず議会はあらゆる法律の改廃と首相の不信任を議決できる。議会は代議院と呼ばれ一院制の普通選挙である。周囲に仮想敵国は存在しないが、太平洋を中心とした安全保障に関心を示しており、近隣諸国のクック諸島・ニウエとは自由連合関係を結んで外交・防衛の一部を代行している。さらに、国際連合・対テロの平和維持活動にも積極的に派兵を継続している。
経済
かつては人口の10倍もの数の羊がいると言われていたが、今では人口の数倍まで減ってきてその代わりに牛が増えている。いずれにせよ大変に牧畜・林業が盛んで、ラジアータパインというカリフォルニア原産のマツの仲間が主力である。それ故に貿易の輸出品目としては乳製品・食肉・木材などが主である。
また、マヌカハニーなども特産品として知られる。
マオリ族の伝統工芸である翡翠を使った物産も知られる。
文化
ラグビーは国技であり、類まれなるラグビーの強豪国として知られる。代表チームはユニフォームの色から「オールブラックス」の愛称を持つ。これに因んで、「ブラックファーンズ」「ブラックソックス」など数々のスポーツチームが名付けられた(参照)。
オールブラックスに限らず、プロのスポーツチームが試合前に見せる勇壮なダンスパフォーマンスが有名だが、これはウォークライの一種の「ハカ」というマオリの民族舞踊である。音頭を取れるのは、マオリ族の血縁者のみというルールが存在する。
ハカは男女・部族・自治体・組織などによって様々なバージョンがあり、上記のオールブラックスの関係でも、「カマテ」「カパ・オ・パンゴ」「ティマタンガ」などがある。また、国内のほぼ全ての学校にも独自のハカが存在し、朝礼やイベントやスポーツの試合などで生徒全員が踊ることもある。
なお、ハカやモコ(タトゥー)などはマオリ族の文化遺産であるため、勝手に踊ったり彫ったりするのはご法度であることをご注意いただきたい(日本では、安室奈美恵のCM騒動や『モアナと伝説の海』の関連商品のリコール騒動などがとくに有名である)。
1893年9月に世界で初めて女性の参政権を認めた事で知られ、同性婚・夫婦別姓を合法化したのも世界でもかなり早い。2019年には安楽死の合法化が決定した。
豊かな自然や地形を擁している上に南半球にある為、北半球とは逆の季節という設定で撮影できるといった利点から、映画の撮影場所としても人気が高い。ジャンルとしては、特にファンタジー映画への需要がある。映画のロケ地としての地位を確立させたのが、ピーター・ジャクソンが監督しWETAデジタルが制作に携わった『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』や『キングコング』であり、ニュージーランド航空や空港と提携したり、北島のマタマタにはホビット庄の撮影セットがそのまま保存されている。
タイカ・ワイティティやラッセル・クロウやサム・ニールなどの有名な芸能人も輩出しており、近年ではドウェイン・ジョンソンやジェイソン・モモア等のポリネシア人の血縁である著名人が、文化的交流の為にニュージーランドを訪れる事も少なくない。
「羊だらけ」というイメージを逆手に取り、『ブラックシープ』という羊を題材にしたホラーコメディが作られたこともある。
国歌
国歌の『God Defend New Zealand』は、世界でも珍しく、原住民の言語と入植者の言語の二つを組み合わせて歌われる。世界の国歌の中でもポップ色が強く、以下の様に様々な曲調に変化させる事もでき、リズムと歌詞の内容も相まって人気の高い国歌の一つである。
五番まであるが、近年では基本的には二番まで歌われる事が多い。
国旗変更騒動
1902年3月以来使用している現在のニュージーランドの国旗は、青地・左上にイギリス国旗・白く縁取られた赤い南十字星が描かれている。この国旗はオーストラリアと酷似していて紛らわしいとして変更を求める声が上がっており、2014年1月にジョン・キー首相は国旗を変更する是非を問う国民投票を実施したいと表明した。
変更賛成派からは新しい国旗のデザインに、マオリの信仰対象の1つでもある同国産の植物のシルバーファーン(銀のシダ)を取り入れようとの意見が挙がっている。退役軍人で作る反対団体からは「現在の国旗を掲げて戦い、命を落とした兵士たちのため為にも変更すべきでは無い。」との声がある。シルバーファーンのデザインで葉が左右対称に並んでおり、生物学的におかしいといった批判が出て議論は過熱した。結局2016年3月に実施された国民投票で、現在の国旗が維持される事となった。