概要
地殻内部で密着している岩盤同士が断層を境目として急速にズレ動くことによって発生する。
このズレ動いた際の振動(地震動)が地面などを通じて地表にまで影響を及ぼすものを地震と呼ぶことが多い。
ズレが発生した地点が「震源」であるが、ズレはその後広範囲に広がり、震動はズレの広がった範囲である「震源域」から発生・周囲に広がる。
地震波にはP・S波と呼ばれるものがあり、P波の方が伝搬速度が速い。震源から遠い場所で、最初の小さな揺れの後で大きな揺れが来るのはそのせい。
地震の揺れは概ね震源から近いと強く、遠いと弱くなるが、地盤が弱いと揺れが強くなる。特に「沖積層」と呼ばれる軟弱な地層は揺れの作用が大きくなり、被害を受けやすくなる。また、構造物に与える影響は揺れの周波数により異なる。同じ様な揺れの地震で建物が受けるダメージが異なるのはそれが原因。
また、硬い海洋プレートが地震波を余り減衰させずに伝える性質を持つため、通常震度分布とは異なり、震央付近では揺れは小さいが、遠く離れた場所で揺れが大きく観測される現象(異常震域)を伴う場合があり、それは主に「深発地震」が発生した時に起こりやすい。例としては2015年の小笠原諸島西方沖地震(M8.1)などが挙がる。
世界の地震の80%は大平洋を取り巻く地域で起こっている(環太平洋地震帯)。特に日本やチリ、インドネシアは全土が環太平洋地震帯に含まれる上、国土の広がりが大きいため、世界屈指の地震国といわれている。一方で世界にはフィンランドの様に非常に地質が安定しており地震が稀な地域もある。ロシアやインドや中国、米国の様な国土が広大な国は、地震が多い地域とほとんど起こらない地域の差が極端である。
地震が発生した際に旧Twitter(現・X)で情報を得ようとアクセスが多くなる傾向があるため、そのタイミングを狙ったデマや自撮り投稿も増加する。
主な地震の種類
地震は主に「プレート境界地震」と「内陸地殻内地震」「海洋プレート内地震」「火山性地震」の4種に大別される。
プレート境界地震
地球表面を覆うプレート同士の境界で発生する地震。
陸側プレート下に海側プレートが潜り込むことで、境界面で海側プレートに引込まれる様に陸側プレートにひずみが溜まり、その歪みを解放する形で陸側プレートがズレ動くことで発生する。
後述のいわゆる直下型と比べると震源域が広範囲となりやすく、超巨大地震も度々発生する。特に日本列島は4枚のプレート(ユーラシアプレート(小規模の場合はアムールプレート)・北米プレート)小規模の場合はオホーツクプレート)・太平洋プレート・フィリピン海プレート)が複雑に重なり合った場所にあり、近海には千島海溝・日本海溝・相模トラフ・南海トラフ・小笠原海溝等のプレート沈み込み帯が存在し、幾度となく巨大地震に見舞われている。
ズレ動く範囲が大きいことに加え、比較的深い震源であることが多いため揺れが伝播する範囲も広範囲に渡る。また、プレート沈み込み帯は海底に存在するため津波が発生、甚大な被害を出すこともある。関東大震災(1923年9月)・昭和東南海地震(1944年)・昭和南海地震(1946年)・東日本大震災(2011年3月11日)など。
衝突型地震
ヒマラヤ山脈周辺では、インド亜大陸プレートがユーラシア大陸プレートに衝突することによってしばしば大地震が起きている。また、海溝型と紛らわしいが日本海北部の海底も、北米プレートとユーラシアプレートの大陸プレート同士が衝突する境界に当たり、地震が多い(こちらは規模によっては津波が発生)。日本海中部地震(1983年)・北海道南西沖地震(1993年)・パキスタン地震(2005年)・ネパール地震(2015年)など。
- 発散型地震
プレート同士が引き裂かれる境界も地震が多い。ただ、M6を超えることは少なく、後述の様に発散型境界で人が居住する地域は限られている。特に、海洋プレート同士が発散する境界で起こる地震を海嶺型地震という。海嶺やアイスランドやアフリカ大地溝帯で主に発生する地震。
- 横ずれ型(トランスフォーム断層)地震
カリフォルニア州のサンアンドレアス断層はプレート境界に位置しており、ここがずれ動く地震はプレート間地震に分類される。サンフランシスコ地震(1906年)など。
内陸地殻内地震
プレート同士の衝突や沈み込みによって地殻表面にひずみが溜まり、破断するなど断層が生成されズレ動くことによって地震が発生する。一般的に直下型地震ともいわれる地震。一度ズレ動いた断層は何度もズレ動く上、前述のとおり日本列島は4枚のプレートが複雑に重なり合った上に存在するため無数の断層が日本を覆っているので、特にズレ動く可能性が高い断層を活断層と呼び警戒している。ズレ動く形式によって種類がある(後述)。
場所によっては露出するほど地表に近いため震源は比較的浅く、揺れが伝わる範囲もプレート境界型に比べれば小さいが、震源地との距離が近いためたとえ小さい規模でも付近では大きな揺れに見舞われるケースもあるほか、P波とS波がほぼ同時に到達するため緊急地震速報による速報が困難な場合も多い。
もとを糺せばプレート境界地震の影響から地層が圧迫されて発生するため、両者が連動・連鎖するケースも少なくない。実際、東北地方太平洋沖地震の後には日本各地で直下型地震が誘発された。
また、当然だが震源が海底または海に近い場合には津波が発生することもある。
プエブラ地震(2017年)、平成28年熊本地震(2016年)、新潟県中越地震(2004年)、兵庫県南部地震(1995年)など。
海洋プレート内地震
プレート境界地震が陸側のプレートと海側のプレートとの境界で陸側プレートがズレ動いて起きるのに対し、陸側のプレートに沈み込む海側のプレートで発生する地震。次の2つに分類される。
- スラブ内地震または深発地震
陸側のプレートの下に完全にもぐりみマントルへ到達した海側のプレートで発生する。通常の地震よりも震源地がより深く、深い場所では地下600キロ以上で発生する。震源地から距離がかなり離れているにもかかわらず大きな揺れや広範囲で有感地震を引き起こす異常震域を持つことで知られる。
これは、周囲の柔らかいマントルでは地震の揺れがすぐに減衰してしまうのに対して、固いプレートに沿って揺れが伝播するとエネルギーが減衰しにくいために起きる現象。小笠原諸島西方沖地震(2015年)、芸予地震(2001年)など
- アウターライズ地震
これから沈み込むプレートの盛り上がった部分(海溝外縁隆起帯)で発生する地震。特に規模の大きいプレート境界地震が発生した場合は、その後にそれに近い規模の地震を引き起こすことがあり警戒されている。この地震は地表での揺れが小さいにもかかわらず、大津波が発生しやすいという特徴を持つ。昭和三陸地震(1933年)など
火山性地震
火山直下または周辺で地下からのマグマ上昇による圧力変化やマグマの貫入によって岩盤が割れるなどして起きる地震。規模としては小さく、短い間隔で群発することも多いが、時には震度6を超える地震が発生し大きな被害を出すこともある。
地下のマグマだまりや火道(マグマの通り道)内でのマグマの動きを指す火山性微動は同じ火山性の振動でも周波数が違うため区別されるものの、どちらも地下の活動を指すものであるため、どちらかが観測された時点で特段に注意が必要。
伊豆諸島北部群発地震(2000年)、桜島地震(1914年)、島原大変肥後迷惑(1792年)
メカニズム(発生機構など)
地震は断層によって動き方が異なり、力の方向によって断層のずれ方が異なる。それぞれ「正断層・逆断層・横ずれ断層」などの種類がある。
正断層
岩盤を引き離す力によって起こる。水平に引っ張られて破壊されると、岩盤が2つに分かれ、上側がずれ落ちる。基本的に逆断層による内陸地震がほとんどであった東北地方に稀に正断層によるズレ跡が見つかることは長年の謎であったが、東北地方太平洋沖地震の発生を受けて、日本列島が太平洋側に大きく引っ張れたことによって震災直後に正断層地震が頻発したことでその理由が解明された。
逆断層
岩盤を圧縮する力によっておこる。圧縮されて破壊されると、岩盤が2つに分かれ、押し縮められて上側がせり上がる。東北や北陸は太平洋プレートによって北米プレートが押し込まれている関係上、内陸で発生する地震のほとんどは逆断層型の地震である。
横ずれ断層
岩盤に働く押し引きの力が一直線上にない時に起き、岩盤に力が加わり、上下ではなく、横に移動してずれ動く。「右横ずれ断層」「左横ずれ断層」の2種類が存在する。なお、横ずれ断層で起きる地震は、上記の「縦ずれ断層」と比較すると、大津波を発生させにくい特徴を持つ。
- 右横ずれ断層
断層を挟んで手前の断層に対して向こう側の断層が右に移動してずれ動く。
- 左横ずれ断層
「右横ずれ断層」の逆で、手前の断層に対して、向こう側の断層が左に移動してずれ動く。
地震の被害
大地震が発生すると起こることが多いが、周期が数秒以上の長くゆったりとした揺れ(長周期地震動)を起こすことがあり、高層ビルなどの大型建造物は共振しやすい。
特にM8クラス以上の巨大地震が発生すると、場合によっては長周期地震動が数百秒以上続くことがある(超長周期地震動)。超長周期地震動を観測した地震は東日本大震災のみ。
一方で主に活断層型大地震で発生することが多いが、周期数秒程度の長周期の揺れが大きな変動に伴って一気に発生する大きな地震動(長周期パルス)を起こすこともある。例としては平成28年熊本地震が挙がる。
また他にも、前震・余震と呼ばれるものを生じさせることがある。巨大地震などの前の予兆となる地震が前震で、巨大地震後の地震が余震である。巨大地震で前震がない場合もあるが、余震は必ずといって良い程起こる。
震度とは各々の地点での揺れの強さを表すため、1つの地震であっても、場所ごとに別々の値が出る。
一方で、マグニチュードは地震自体の規模(エネルギー)を表すものであり、1つの地震に対して1つの値しか出ない。地震による被害には津波・火災・土砂災害などが挙げられ、被害が同時多発的に起こる上、建築物倒壊・道路寸断などにより救援が困難となるケースも少なくない。
特に阪神淡路大震災においては建物などの倒壊で救急車や消防車到着が遅れることとなった。
また、海で地震が発生した場合は、しばしば津波が被害をもたらす。明治三陸地震のように、震害がほぼないにもかかわらず、津波が沿岸部を襲い大被害が出ること(津波地震)もある。
ときに地球裏側で起きたプレート型地震の余波が、津波となって襲い掛かることさえある。1960年のチリ地震余波が、そのまま三陸沖に津波として襲い掛かったのは有名な話である。海で規模が大きい地震が発生すると津波を伴う場合がほとんどであるが、震源が余りにも深いと津波は発生しにくい。
震度
日本における震度は「気象庁震度階級」として、以下の10等級と決められている。詳しくは別記事の「震度」を参照すると良い。
震度 | 状況等 |
---|---|
0 | 人は揺れを感じない |
1 | 屋内で静かにしている人には地震を感じる人もいる |
2 | 屋内で静かにしている人の大半は地震に気付く |
3 | 屋内で静かにしている人のほとんどが地震に気付く |
4 | ほとんどの人が驚く、電灯が揺れる、不安定な置物が倒れる |
5弱 | 多くの人が恐怖を覚える、固定していない家具が動く ※一般向けの緊急地震速報の最低予想震度 |
5強 | 物につかまらないと歩きにくい、食器などが落ちる、家具が倒れる |
6弱 | 立つのが困難になる、家具のほとんどが倒れたり動く |
6強 | 這わないと動けない、地割れが生じる、家具のほとんどが倒れる |
7 | 建築物が壊れたりひび割れたりする、人や家具が飛ばされることがある、耐震性の高い建物も傾くことがある |
同じ地域でも、状況(地盤の強弱など)により震度(と被害)は変わる。
他国では別の体系の震度を使用していたりする。
長周期地震動階級
長周期地震動の尺度を示す指標。具体的には、固有周期が1 - 2秒から7 - 8秒程度の揺れが生じる高層ビル内における、地震時の人の行動の困難さの程度や、家具や什器移動・転倒などの被害の程度から4つの段階に区分した揺れの大きさの指標のこと。
簡単に説明すると、周期(揺れが1往復するのにかかる時間)の長い揺れの大きさの指標のことである。
階級 | 状況等 |
---|---|
1 | 吊り下げものが大きく揺れ、室内にいたほとんどの人は揺れを感じ、驚く人もいる。 |
2 | 室内で大きな揺れを感じ、物に掴まりたいなど、行動に支障を感じる。棚から本などが落ちる。 |
3 | 立つのが困難で、家具が動き、不安定な家具が倒れる。ひび割れたりすることがある。 ※一般向けの緊急地震速報の最低予想階級 |
4 | 立つのが不可能で、這わないと動けない。家具のほとんどが倒れる。ひび割れや亀裂が多くなる。 |
(出典:気象庁ホームページより)
※それぞれの長周期地震動階級で示されている全現象が発生する訳ではない。
なお、他にも長周期地震動でもかなり危険な揺れである「長周期パルス」と呼ばれる揺れも存在する一方で、逆に地震情報で目にする「震度」は短い周期で揺れる地震動を「短周期地震動」と呼び、その中でもかなり危険な揺れを「キラーパルス」とも呼ばれる揺れも存在する。
階級誕生理由
上記の様に同じ地震動でも「揺れの周期」なども関係するため、地震による"地上で体感する揺れ"の大きさのみを表す「震度」だけでは、長周期地震動には十分に対応出来ず、正確に被害の程度を表すことが出来ないデメリットが存在している。
理由については、「長周期地震動」は通常地震波よりも遠くに伝わりやすい特徴を持っていることと、柔らかい地盤になっている地域では長周期の波が増幅されやすいためである。その結果、特に平野・盆地などに存在している高層ビルなどでは、その建物の固有周期と地震波の周期が一致して共振することで、長い周期の大きな揺れを起こし、地上にいる人の揺れの体感と高層階にいる人の揺れの体感に大きく差が生じている。
実際に、長周期地震動が注目されるキッカケは、2003年の十勝沖地震(M8)である。
そんな中、さらに2011年に東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生、撮影された高層ビルが長く大きく揺れる衝撃的な映像はメディアによって多くの人に視聴され、それ以前に想定されていた建物内での家具等の移動や転倒とは全く異なる挙動が起きたことが広く認識された。
「長周期地震動階級」が制定されたのは、これらが理由であり、気象庁は2013年に運用を開始している。恐らく誤解されるため記述するが、2023年2月1日から階級1以上を観測した場合は地震発生からおよそ10分程度を目安に「長周期地震動に関する観測情報」を速報として発表されるようになったが、これは緊急地震速報発表対象として入れて速報を出すのが、2023年2月1日から開始されたたという意味に過ぎず、「長周期地震動階級」自体は既に2013年から導入しており、2023年1月31日までの間は速報発表対象ではなかったために、テレビなどの地震速報には表示されなかっただけである。そのため、決して「長周期地震動階級は2023年2月1日に導入された」という意味ではない。
階級4を観測した主な地震の例
- 新潟県中越地震
- 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災):地球を自由振動させる程の超長周期地震動が数十時間に渡って観測された。
- 平成28年熊本地震の本震:長周期地震動階級が導入されてから観測史上初の階級4を観測。
- 北海道胆振東部地震
- 令和6年能登半島地震
など
マグニチュード
地震のエネルギーを示す。
対数関数であるため、マグニチュードが1増えるとエネルギーは約32倍、2増えると32×32=約1,000倍になる。つまり、10の3乗もの違いとなる。
そのため、マグニチュード5とマグニチュード7ではほとんど異ならない、のではなく、マグニチュード5の1,000倍、マグニチュード3の100万倍のエネルギーということである。
M8程度の地震となると、エネルギーは地球規模の地震動を起こす程となり、M9程度となると、地球の自転を狂わせる程となる。
マグニチュードの例
エネルギー量の末尾は単位を示す(K=キロ)
マグニチュード | エネルギー量(単位ジュール) | 補足(主な地震やその他の内容) |
---|---|---|
0 | 6.3K | - |
1 | 2M(メガ) | - |
2 | 63M | - |
3 | 2G(ギガ) | 確実に検知可能とされる最下限値 |
4 | 63G | 小型核爆弾が爆発するエネルギー量 |
5 | 2T(テラ) | 中規模の地震 |
6 | 63T | 津波を発生させるとされる最下限値。大阪府北部地震(M6.1)・イタリア中部地震(M6.2)・2018年花蓮地震(M6.4 - 6.7)・平成28年熊本地震の前震(M6.5)・鳥取県中部地震(M6.6)・長野県神城断層地震(M6.7)・北海道胆振東部地震(M6.7)・新潟県中越地震(M6.8)などのエネルギー |
7 | 2P(ペタ) | 被害の程度によっては巨大地震に位置付けられる。福井地震(M7.1)・鳥取地震(M7.2)・兵庫県南部地震(M7.3)・東北地方太平洋沖地震前震(M7.3)・平成28年熊本地震の本震(M7.3)等 |
7.5 | 11P | 大正関東地震(M7.9 - 8.1)・昭和東南海地震(M7.9 - 8.2)・四川大地震(M7.9 - 8.0)・※トルコ・シリア地震(M7.8)等 |
8 | 63P | 巨大地震。濃尾地震(M8.0)・2003年十勝沖地震(M8.0 - 8.3)・元禄関東地震(M8.1 - 8.4)・昭和三陸地震(M8.1)・1960年チリ地震の前震(M8.1)・チアパス地震(M8.1)・明治三陸地震(M8.2 - 8.5)・1952年十勝沖地震(M8.2)・安政東海地震(M8.4 - 8.6)等 |
8.5 | 350P | リスボン地震(M8.5 - 9.0)・安政南海地震(M8.5~8.7)・宝永地震(M8.6 - 9.3)・2010年チリ地震(M8.8)等 |
9 | 2E(エクサ) | 超巨大地震。カムチャツカ地震(M9.0)・東日本大震災(M9.0 - 9.1)・2004年スマトラ島沖地震(M9.1 - 9.3)・アラスカ地震(M9.2)等 |
9.5 | 11E | 1960年チリ地震(M9.5)等、現時点で地震の最大。 |
10 | 63E | 理論上の地球での地震の最大エネルギー。 |
11 | 2Z(ゼタ) | 恐竜が滅んだ際の隕石衝突時の地震エネルギー(推定値) |
12 | 63Z | 地球が断裂するエネルギー。 |
※仮名である。
規模が大きい地震
世界最大級の地震は1960年のチリ地震のMw(モーメントマグニチュード)9.5の超巨大地震で、この規模を上回る地震は存在しない。
観測史上最大級の地震は2011年の東日本大震災のMw9 - 9.1の超巨大地震である。近代観測が始まるプレート境界でM9クラスの可能性の地震は以下の通りである。
また、内陸直下型地震では1891年の濃尾地震のM8の巨大地震が観測史上最大である。近代観測が始まる内陸でM8クラスの可能性の地震は以下の通りである。
海溝型地震
内陸地殻内地震
- 1586年天正地震:濃尾地震を上回っている可能性
M10の地震について
M10クラスは断層長さや幅を考慮しても、理論上では発生する可能性は否定出来ないとされている。具体的にはマリアナ - アリューシャン海溝で3パターン、ペルー・チリ海溝で1パターン想定されている。
地震発生領域 | 海溝距離 | 断層滑り量 | 最大規模(※1) |
---|---|---|---|
マリアナ海溝+伊豆・小笠原海溝+日本海溝+千島・カムチャッカ海溝+アリューシャン海溝※2 | 8,800km | 20m | M9.9 |
日本海溝+千島・カムチャッカ海溝 | 3,000km | 60m | M10 |
アリューシャン海溝 | 3,400km | 60m | M10 |
ペルー・チリ海溝 | 5,300km | 60m | M10.3 |
※1 使用しているマグニチュードの種類は、「モーメントマグニチュード(Mw)」である。これは、気象庁が速報として出すマグニチュードは速報性重視で規模を求める「気象庁マグニチュード(Mj)」とは計算方法が異なり、より正確な規模で計算出来るためで、想定で使用する場合はこちらのマグニチュードが使用される。
※2 これ程多くの領域が1度にずれ動くことはまず考えにくい。
仮にM10程度の地震が発生した場合は、強い揺れの継続時間が20分 - 1時間続くとされている。なお、M9クラスの地震でも、強い揺れの継続時間は数分程度であるため、全く比べ物とならない程の揺れが襲うことが分かる。
また、断層破壊が終わるまでには時間がかかるため、揺れが収まる前に津波が来る可能性が高い上、津波は何日も続く可能性がある。
さらに、断層破壊は国内だけでは留まらないため、基準点が国内しか設置していない以上、GPSでも規模の即時推定は困難であると予想される。
なお、M10の地震は、過去の地震履歴を見てもこれまでのところ確認されていない。また、ある特定の海溝で起こる最悪クラスの地震規模は、上記のアリューシャン海溝やペルー・チリ海溝の様に海溝の長さによって決まることも分かるので、日本でM10の地震が発生する可能性は確率的には非常に低く、これからも起こるかどうかは分からない(出典:東北大学の資料)。
神話・伝説での地震
日本では、大鯰が地震を起こすという言い伝えがあるが、これは元は竜であったらしく、中世の絵図では日本を囲う竜が描かれている。この竜を押し込めて動かなくしているのが、鹿島神宮境内に頭のみ出して埋もれている「要石」という。
これとは別に、日本神話に「なゐの神(=地震の神)」という神が出てくるが、これは神の特性であり、特定の名前は知られていない。
←こういう姿かも不明。
中国では、地震に限らず、大きな災害の原因は為政者の不徳にあるという考えがあった。ただし、中国の地震は古来からの中心である中原で発生する頻度が低いため、洪水や旱魃などに比べると地震は影が薄い。
ギリシア神話では、ポセイドンが地震の神でもある。
伝説でも地震絡みのものは多いの、本題が地震以外にあるものが多いため、その辺は省略。
地震は予知出来るのか
地震が予知出来れば被害も激減出来るはずで、関東地震や東海地震の様に周期的に発生すると考えられていたものを中心に予知が研究されていた。
しかし、
- 発生源となる断層は判明していないだけで、未知のものも多い。
- ある特定断層の大半は活動頻度が低い。
- 特に日本では、地殻変動や堆積などで覆い隠された断層も多いとみられる。
- 断層の破壊には無数の要素が絡むため、地震が毎回同じ様に発生する訳ではない。
ため、「予知に期待するより、常に地震に備えた方が早い」と考えられることも多い。
東海地震は南海地震・東南海地震後の地震空白域であり、また、2 - 3日前から明確な地殻変動が観測される可能性が高く予知がしやすいと考えられたが、1970年代に「明日起きても不思議ではない」といわれた東海地震はそれから40年経っても発生する気配がなかった(そもそも、地震計ばかりを設置して地震の観測データを統計的にとればそのうち予知が出来る様になるなどという簡単な現象ではない)。気象庁は2017年に、地震予知は不可能として『東海地震観測情報』から『南海トラフに関連する情報』に変更している。
そもそも、地震予知成功を検証には以下の条件を満たす必要があり、
- 予知する規模
- 予知する場所
- 予知する発生時刻
の3つの許容範囲を事前に明らかとしないと予知成功・失敗判断は出来ない。例えば、「日本でM7クラスの大地震が起きる」という予知がされた場合は、範囲が広過ぎてしまい、日本のどこで大地震が起こるのかが曖昧となっている。また、約3,000kmはある日本の範囲内であっても、約3,100km地点で大地震が発生したら、ある程度の誤差でも予知に成功したとされてしまい、それをキッカケに予知成功の基準が徐々に曖昧となって行く。また、この予知は時間的な許容範囲が示されていないことも問題点であり、無期限なために、長い単位でも許容範囲とされてしまう。マグニチュードもそれと同様に、許容範囲をしっかり定めておかないと意味がなく、「マグニチュードが1異なるだけで発生頻度が桁違いに差が生じてしまう」などの問題が生じてしまう。
つまり、地震予知が困難とされると理由は、この様な非常に厳しい条件を全て満たさなければ、予知成功と認めることはできないからだ。
※人間からすれば数・数十年という単位は長く感じるかもしれないが、地震や噴火等の自然現象は、最低でも何百年という単位(正直スケール的にはそれでも短すぎる単位である)で考慮する必要があり、数・数十年という単位は人間が瞬きをした時間と同じであるため、人間の時間軸で考慮するべきではない。
緊急地震速報
予知ではないが、「緊急地震速報」では、地震波を感知して大まかな地震の強さと震源を計算することにより、発生直後に速報を出すことが可能。震源域近くでは役に立たないが、遠隔地で対処の余裕を(秒単位であるが)与えてくれる。
ただし、
- 観測点の密度が低い地域の情報精度が粗い。
- 観測点が観測不可能に陥ると情報が欠落する(特に深発地震においては予測不能となることが多い)。
- 同時に複数の地震が発生すると、それらを「同じ地震」と見なして範囲を拡大解釈してしまう。
- 特に直下型地震の場合、P波とS波がほぼ同時に到達するため、緊急地震速報より揺れが先に来る場合もある。
などの課題が存在する。
宏観異常現象
- 地震前に動物が騒いだり集団移動したりする。
- 地震前に豊漁や不漁がある。
- 地震前に異様な気象現象が起きる。
- 地震前に地下水位が変動する(※注意)。
などの様に、「動物や自然現象が地震前に通常と異なる振舞いをする」という話があり、総称して「宏観異常現象」と呼ぶ。
なのであるが、
- 肝心の宏観異常現象とされる現象の種類が多過ぎる。
その現象があっても、必ず地震が起きるという訳ではない。
- 地震と因果関係がない現象を、強引にこじつけている。
- 普段から起こっている何の変哲もない現象が、地震のせいで記憶に焼き付いただけ。
などのため、地震予知に役立てるのはほぼ無理であると考えられている。
【注意】ここで注意して頂きたいのが、「地下水や温泉の異変」である。そもそも、この現象については原因が自然現象であった場合、地下で起きている現象であることに加え、地下ではプレート活動による影響を受ける以上、他のどの宏観異常現象よりも地震・噴火が関連している可能性は十分にある。どの様な現象なのかについては、
- 温泉が止まる
- 源泉温度の異変
- 間欠泉が止まる
- 間欠泉が噴出する
- 温泉が濁る
- 地下水が濁る
- 水位の異変
等がある。
実際に過去には、
- 東日本大震災前後には、東北・関東地方などで温泉の異変は相次いで確認されている
- 過去の南海トラフ巨大地震前後には、西日本の温泉が止まるなどの記録が残っている
- 兵庫県南部地震前後でも震源域周辺地域などで、温泉異変が報告されている
- 大正関東地震発生前の1922年頃に静岡県熱海の大湯間欠泉に異変が現れたという報告がある
- 1943年の鳥取地震発生前には、温泉が真っ白に濁ったという報告がある
等、確認がされている。つまり、温泉・井戸水・地下水に異変が現れた場合は、地震や噴火の前兆現象として現れている場合があるため、一概に「地震と噴火は関係していない」などと断定することは出来ない(地下の異変は、最大で年単位で現れる)。
地震予測の研究
地震の短期的な予測は不可能に近いものの、中・長期的な予測であれば、ある程度可能となる場合がある(※因みに、上記の地震予知と地震予測は全く性質が違うため注意が必要)。
スロースリップ
スロースリップとは、断層(特にプレート境界)が非常にゆっくりずれ動く現象のことで、人間が気付く様な揺れは発生させない。今までは余り危険視されなかったが、2011年の東日本大震災発生前の1月下旬頃 - 3月にスロースリップが発生していたこともあり、かなり注目を集めている。
地下天気図
東海大学で行われている「RTM法」を用いた研究で、Rは距離・Tは時間・Mは規模を表しており、過去一定期間内の地震活動の推移は示す指標である。発生場所は静穏化異常が検出されたエリア周辺で発生することが多く、地方などのブロック単位で推定することが出来る。さらに規模もある程度推定するこができ、静穏化の異常が約1年程度以上続くとM7クラスの地震が発生するとされている。
ここでは実際に静穏化異常が検出された代表的な地震を2つ紹介する。
地震名 | 前兆現象 |
---|---|
兵庫県南部地震 | 本震発生の10ヶ月前から静穏化異常が始まり、1度収束に向かったものの、再び静穏化に転じ、その後収束して地震が発生。 |
東北地方太平洋沖地震 | 本震発生の10年前頃から静穏化が始まり、2003 - 04年頃にピークを迎え、2006年頃に収束し、その約5年後に地震が発生。 |
など
地震活動の推移
海溝型の巨大地震発生前後には、プレート境界周辺の内陸でM7前後の大規模地震が増加する傾向がある。
発生年代 | 地震名 | 震災名 | 主な内容 |
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1923年 | 大正関東地震 | 関東大震災 | 1703年の元禄関東地震以降、関東付近ではM6.4以上の大地震が約150年近く地震活動が低迷している状態が続いていたが、1850年頃を境に活発化傾向にあったことが判明している。 |
1944・46年 | 昭和東南海地震・昭和南海地震 | 西南日本では、M6.4以上の大地震は1854年の安政東海地震及び南海地震発生後の1859 - 90年の約33年間(M6.0以上の地震を近畿地方に限定すると55年間)地震活動が低迷している状態が続いていたが、1891年の濃尾地震(近畿地方の地震では1909年の姉川地震)を境に活発化傾向にあったことが判明している。 | |
2011年 | 東北地方太平洋沖地震 | 東日本大震災 | 東日本・北陸地方は、M6.4以上の大地震が1896年明治三陸地震以降も地震活動が活発化している状態が続いていたが、1940年頃から地震活動が次第に低迷し始め、2000年頃まで大規模地震が非常に少ない状態が続いていた。しかし、2000年頃から急増し、東北地方太平洋沖地震発生までの僅か10年間でM7前後の大地震が余震も含めて5回も発生するという異常な推移を辿っていたことが判明している。 |
この様に海溝型地震の場合は、地質構造やプレートが沈み込む速度などによって変わるが、少なくとも巨大地震発生前はプレートの圧縮力による影響を受けることで大地震が増加する傾向にあると言える。現在もそれを利用した研究も進められている。
前震
大地震発生は一般的に「本震 - 余震型」で発生することが多いが、本震発生前にその震源域内で発生する地震のことを「前震」と呼び、中には「前震 - 本震 - 余震型」として発生する地震も存在する。しかし、前震なのかどうかを判断するには、本震が発生して初めて分かるものである。その理由については、日本列島などの普段から地震活動が活発な場所では、1度地震活動が活発化して収束して行くことの方が多く、どれが前震かどうかを判断をすることは極めて困難であるため
前駆的地震活動
もう1つの地震の前兆として、「前駆的地震活動」という特徴的な地震を伴う場合がある。なお、前述した「前震」とは異なるので注意が必要。
- 活断層
前駆的地震活動は、蓄積されて行く断層周辺の歪みが大地震発生準備として開放され始めている、あるいは一定レベルを超えて歪みが目に見える形で現れ始めているために発生すると考えられている。
- 海溝型地震
プレートが密着して強い圧力が掛かって、ほとんど滑らない固着域・比較的スムーズに滑っている安定滑り域・その中間に当たる場所が遷移領域という3つの領域がある(プレート同士は、すべて固着している訳ではない)。
その中でも遷移領域で前駆的地震活動が起きるとされている。
他にも様々な方法を用いた研究が進められている。
創作での地震
ファンタジーでは、地震を起こす能力や魔法が戦闘に使われることも多い。
大抵の場合、飛行状態だと被害を受けなかったりする。
逆に、屋内や地底で平気で使えたりする事もあるし、戦闘後に地形にダメージを与えたままという事は滅多にない。
ぶっちゃけ、人に与えるダメージ以外は、範囲も威力も実際の大型地震に遠く及ばない。範囲では無感地震に勝つのも難しいだろう。
だが、人知を超えた強力なキャラ(大魔術師・上位精霊・神など)が、戦闘以外のイベントで使う物は、御無体な程強力である。場合によっては、1つの文明を崩壊に追いやれる程。
Pixivのタグについて
Pixivの「地震関連タグ」は上位に「Tバック、けつ、指揮、尻、撫で回したい尻、尻神様、おしり、お尻」等尻に関連した単語が多く見られる他、単なる尻の絵に「地震」というタグが付けられていることが有るが、これは「ふたば☆ちゃんねる」の、地震が発生した時に大槍葦人の描いた絵を貼り合い「地震であるけど美しい尻の画像でも見て落ち着こうぜ」とやり取りする文化に由来する。
日本で発生した地震・震災記事一覧
※ピクシブ百科事典に記事があるものに限る。震災呼称は気象庁表記に従うが、俗称が浸透しているもの、行政が独自に使っているものに関しても注記の上記す。死者数に関しては災害関連死も含む。
主な地震名 | 地震発生日時 | 地震により引起こされた震災 | 震源地・地震の規模・内容 |
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大正関東地震 | 1923年9月1日11:58頃発生 | →関東大震災 | 震源地は相模湾。地震規模はM7.9 - 8.2。死者・行方不明者数は10万5,385人とされ、日本の自然災害史上最悪。地震動は10分以上続いたとされている。 |
兵庫県南部地震 | 1995年1月17日5:46頃発生 | →阪神・淡路大震災(阪神大震災とも) | 震源地は淡路島北部(一部資料では大阪湾)。地震規模はM7.3。死者・不明者数は6,437人とされ、現地調査で初めて震度7を記録。 |
新潟県中越地震 | 2004年10月23日17:56頃発生 | →新潟県中越大震災(気象庁ではなく、新潟県が命名) | 震源地は新潟県中越地方。地震規模はM6.8。死者数は68人とされ、計測震度計で初めて震度7を記録。川口町の地震計で当時世界最高の2,516ガルを記録。 |
岩手・宮城内陸地震 | 2008年6月14日8:43頃発生 | 震源地は岩手県内陸南部地方。地震の規模はM7.2。死者・行方不明者は23人。最大震度は震度6強。 | |
東北地方太平洋沖地震 | 2011年3月11日14:46頃発生 | →東日本大震災(マスメディア等では東北・関東大震災とも) | 震源地は三陸沖。地震規模はM9.0 - 9.1とされ、「戦後最悪の震災・世界観測史上4番目に大きい地震」となった。死者・行方不明者数は2万2,000人以上とされ、震度6弱以上は広範囲に渡って観測、宮城県栗原市で震度7を記録。また、強い地震動は数分単位で続いた。この地震で大津波が起こり、この直撃を受けた福島第1原発では深刻な原子力事故が発生。 |
長野県北部地震※ | 2011年3月12日3:59頃発生 | →栄村大震災(地元での俗称) | 震源地は長野県北部。地震規模はM6.7。最大震度は長野県栄村で震度6強で、死者数は3人。東北地方太平洋沖地震から僅か13時間後の発生で、同地震の遠方誘発地震の可能性があるとされているが、余り関係ないのではないかという指摘もあり、直前の東日本大震災の影響の被害が遥かに大きかったこともあって情報が安定していない。 |
平成28年熊本地震 | 2016年4月14日21:26(前震)・16日1:25(本震)頃発生 | 震源地はいずれも熊本県熊本地方であるが、余震の一部は大分県でも発生した。地震規模はM6.5(前震)・M7.3(本震)。死者数は273人とされ、初めて震度7の揺れを2回記録することとなった。 | |
鳥取県中部地震※ | 2016年10月21日14:07頃発生 | 震源地は鳥取県中部。地震規模はM6.6。最大震度は震度6弱で、死者はなかった。大阪府でも強い揺れが感じられた。 | |
大阪北部地震※ | 2018年6月18日7:58頃発生 | 震源地は大阪府北部。地震規模はM6.1。最大震度は大阪府北部の一部で震度6弱で、死者数は6人。 | |
北海道胆振東部地震 | 2018年9月6日3:07頃発生 | 震源地は胆振地方中東部。地震規模はM6.7。死者数は44人で、北海道で初めて震度7を記録。苫東厚真火力発電所の停止により、史上初の北海道全域の停電(ブラックアウト)を引起こした。 | |
令和6年能登半島地震 | 2024年1月1日16:10頃発生 | 震源地は鳳珠郡穴水町北東。地震規模はM7.6。死者数は232人。2020年12月頃から続く群発地震の中で発生した大地震である。 |
※これらの地震は規模が基準に達していないため、気象庁は地震名を命名していない。
その他、南関東直下地震・西日本の直下地震・相模トラフ巨大地震・南海トラフ巨大地震の各記事にも記述がある。
外部リンク
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地震規模は様々なため、イラスト内の地震も微笑ましいレベルから洒落とならないレベルまで様々である。
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