もしかして→「ふんか」
概要
火山現象のひとつ。日本の気象庁の定義では「火山現象として、火口外へ固形物(火山灰、岩塊等)を放出または溶岩を流出する現象」を言う。また、火山災害の原因のひとつでもある。
噴き出すものはマグマなどの高温の物質であることが多いが、火山灰を含んだ熱水(泥)・溶けた硫黄が噴出した例もある。マグマの性質と量によって規模や噴火様式が異なる。
気象庁では“固形物が噴出場所から水平若しくは垂直距離概ね 100~300m の範囲を超すものを噴火として”記録するので、現象としての噴火と記録としての噴火には少し差がある。こうした気象庁基準で噴火扱いされない小さな噴火は『規模の小さな噴出』として記録される。
転じて、人が激怒したりプッツンすることの比喩的表現としても用いられることがある。
噴火の起こる仕組み
地下数十kmで生成された溶けた高温の岩石であるマグマは液体であり、周辺の物質よりも比重が軽いため徐々に上昇する。そして地下5~10kmあたりで周辺と密度が釣り合い、浮力を失い停滞する。その一部が地表に達して火山をつくる。
マグマには地下の強い圧力と高温によって揮発性のガスが溶け込んでいる。多くは水で、他にも二酸化炭素や硫黄などがある。マグマが地表近くに来たことで圧力が下がり、含まれているガスが急速に分離・発砲して噴き出すのが噴火である。
原理としてはコーラなどの炭酸飲料やビールの蓋を開けた途端に、液体に溶けている二酸化炭素が発砲して溢れ出すのと同じである。
このようにマグマ自体によって起こる噴火現象をマグマ噴火と呼んでいる。
この他に、マグマが大量の水と触れた結果、水が一気に蒸発してマグマと共に爆発を起こすマグマ水蒸気噴火、火山の地表近くにあった水がマグマによって高温になり、何らかの理由で爆発的に噴出する水蒸気爆発もあり、これも噴火に含まれる。
普通は地下でおとなしくしているマグマが地表に達する理由は、さまざまあると考えられている。
1.更なるマグマの供給で溢れる。
2.地下の岩盤の圧力の変化で押し出されたり、減圧する。
3.マグマが少し冷えたときに溶けていたガスが分離する。
4.地震でマグマ溜まりが揺らされガスが分離する、あるいは断層が動いて岩盤の圧力が下がる。
噴火の様式
実際の噴火の様式はマグマの流動性(粘り気)・温度・環境(特に多量の水があるかどうか)によって異なる。
また、マグマ溜まりでは噴火するまでの間にマグマの成分が分離して上部と下部では物質の組成が異なる場合がある。そのため途中で噴火の様式が変化する場合もある。
マグマ噴火
ハワイ式 Hawaiian eruption
流動性が高い高温の玄武岩質マグマを噴出する噴火。ガスをあまり含まないので爆発的な噴火になることは少ない。
比較的静かにマグマを噴水のように噴き出し、溶岩流を流すほか、火口に溶岩湖を形成したりする。火口の周りにはマグマのしぶき(スパター)が積み重なってできたスパター丘が形成される。
ハワイのキラウエア火山やレユニオン島のピトン・ドゥ・ラ・フルネーズ火山などのホットスポット(マントルからマグマが湧き上がってくる場所)やアイスランドのような地殻が二つに離れてゆく場所(発散型境界)にある火山の多くがこの様式の噴火を起こす。
火口や溶岩に近づかなければ安全なので噴火が観光の目玉になっている火山も多い。
代表例 キラウエア火山(ハワイ島) ピトン・ドゥ・ラ・フルネーズ火山(レユニオン島) ファグラダルスフィヤル火山(アイスランド)
ストロンボリ式 Strombolian eruption
比較的流動性が高い高温のマグマを噴出する噴火。マグマは玄武岩質から安山岩質で、ハワイ式の噴火をするマグマよりもガス成分が多い。
マグマのしぶきや火山弾を噴き上げ花火のように噴出する。マグマのしぶきはあまり高く噴き上がらず、多くの場合数百メートルにとどまる。含まれているガスが発砲するためにマグマは細かく砕かれ、スコリア(マグマが細かく砕けて固まったもの)や火山礫などになる場合が多いが、噴出するマグマの量が多いと溶岩流を流すこともある。火口の周りには噴出物が積もった富士山型の火砕丘(かさいきゅう)ができる。
十分に距離を取り、ヘルメットなどを装備すれば比較的安全に観察できる火山もあるが、そのような火山は少数である。ストロンボリ火山のように観光の目玉になっているような所でさえ、時に想定を大きく上回る噴火が突然発生して犠牲者が出ることもある。
代表例 ストロンボリ火山(イタリア・ストロンボリ島) 三原山・1986年噴火の初期(日本)
ブルカノ式 Vulcanian eruption
流動性が低いマグマが爆発的に噴出する噴火。マグマは多くの場合で安山岩質で、ガス成分が多い。
爆発は単発か、短い時間で終わり、大量の火山灰を噴き出して数千メートルの噴煙を上げる。爆発の際に火砕サージ(高温の火山ガスの爆風)・小規模な火砕流を伴うこともある。
爆発は強力で、衝撃波を発し、火口の周辺数キロまで数十キロ〜数トンの岩塊を飛ばす。激しい爆発のため広い火口ができ、火口の周りには火砕丘ができる。
爆発によって飛び散る岩石の速度は時速数百キロに達し、当たれば致命傷。火口に近づいて噴火見物などは自殺行為である。
この様式の噴火を起こす火山は、噴火が休止中であっても登山を試みる場合は必ず最新の火山の活動状況を調べ、立ち入りの規制を厳守することが必須である。噴火現象そのものによる死者の多くは立ち入り規制を無視して規制区域内に入ったか、想定以上の噴火が突然発生したことによる。
代表例 ヴルカーノ火山(イタリア・ヴルカーノ島) 桜島(日本) 浅間山(日本)
プレー式 Peléan eruption
流動性が低いマグマが爆発的に噴出する噴火。マグマは安山岩質か流紋岩質で、ガス成分が多い。
爆発は激しく大量の火山灰・火山弾を噴き出して数千メートルの噴煙を上げる。爆発の際に、あるいは噴出した溶岩流や溶岩ドームが崩れて火砕流を発生させる。非常に粘り気の強いマグマであるため、あまり長く流れない分厚い溶岩流か、ほとんど固まった溶岩を噴出して溶岩ドームや火山岩尖(溶岩岩尖)をつくる。
火口の近くにいなくても発生した火砕流が大きな災害を引き起こすこともあり、極めて危険な噴火様式と言える。この噴火様式の名前の元となったプレー火山の1902年の噴火では約2万9000人が死亡した。
代表例 プレー火山(マルティニーク島) 雲仙・普賢岳(日本)
プリニー式 Plinian eruption
大量のマグマが爆発的に、かつ連続して噴出する噴火。安山岩質のマグマを噴出する火山での例が多いが、富士山の宝永噴火のように玄武岩質マグマを主に噴出する火山でも発生する。
爆発は激しく、大量の火山灰などを噴出して噴煙の高さは数キロ〜十数キロ、特に大きいものだと高さ20〜50キロにも及ぶ噴煙を上げて地球規模の気象に影響を与える。しばしば大規模な火砕流を発生させ、火口周辺の数十キロ〜数百キロの範囲を焼き払う。
他の噴火様式はその様式の噴火をおこなう代表的な、あるいは初めて観察された火山の名前をつけられているが、この噴火様式の名前は有名なベスビオ火山の西暦79年の噴火について説明を遺した帝政ローマ時代の政治家・小プリニウスの名前に由来する。
代表例 ベスビオ火山(イタリア)の噴火(79年) 富士山(日本)の宝永噴火(1707年) 桜島(日本)の大正噴火 (1914年) 福徳岡ノ場(日本)の噴火(2021年) フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ(トンガ)の噴火(2022年)
プリニー式は規模の大きさでさらに細分される。
準プリニー式 Subplinian:
プリニー式だが規模の小さいものを指す。例として霧島山・新燃岳の2011年・2018年噴火があげられる。
ウルトラプリニー式 Ultra-Plinian:
プリニー式噴火の中でも特に規模が大きい(火山爆発指数 VEI で6以上)の噴火を指す。周辺の地形を一変させる巨大な噴火であり、最低でも周辺地域は壊滅、もし現代で発生すれば国家レベルの破滅あるいは人類社会の危機をもたらすレベルの巨大な噴火である。
フィリピン・ルソン島のピナツボ火山1991年の噴火(火山爆発指数 VEI6、噴出物の量はおよそ10キロ立方メートル)、7300年前の鬼界カルデラ・アカホヤ噴火(推定火山爆発指数 VEI7、噴出物の量はおよそ100キロ立方メートル)などが知られる。さらにイエローストーン(アメリカ)・トバ湖(インドネシア)はさらにその上をゆく巨大な噴火を起こした。
このレベルの噴火になると山すら残さず消し飛ぶ、あるいは出たものの量が多すぎてかえって窪地になり、巨大なカルデラが形成される。阿蘇山(日本)や十和田湖(日本)・屈斜路湖(日本)などはこうした巨大な噴火でできた火山地形である。
マグマ水蒸気噴火・水蒸気爆発
スルツェイ式 Surtseyan eruption
浅い海底や湖で噴火が起こると、水が一気に蒸発して大爆発を起こす。
コックテールジェットと呼ばれる四方八方に広がる噴煙が特徴的である。水蒸気を多く含んだ白っぽい噴煙が立ち上がり、しばしばサージと呼ばれる高温の熱風を周辺に放出するので危険である。典型的なものは玄武岩質マグマとされるが、日本では安山岩質のマグマを噴出する海底火山でもこの噴火が見られる。
急激に冷やされたマグマのかけらが火口周辺に積もり、噴火が続くとやがて新しい島となることもある。そうして水と触れなくなると他の噴火様式に変化する場合も珍しくない。
代表例 スルツェイ島(アイスランド) 手石海丘(日本) 明神礁(日本) 西之島(日本)
水底噴火 Submarine eruption
深い海底で噴火が起こると、高い水圧によってマグマが出てきても爆発が抑えられて静かにマグマを火口から流す噴火が起こる。この時マグマの表面はすぐに冷やされてクッションや枕のような形に固まる(枕状溶岩)。しかしすぐにその殻を破ってマグマが流れ出しすぐに固まる…を繰り返して、特徴的な溶岩流を深海底に作り出す。
深海で起こるため観察できることはほとんど無いのだが、地球上の噴火の多くはこうした深海底で起こっているので最も一般的な噴火とも言える。日本列島では大昔にそうしてできた海底火山を地上で観察できる場所があるので、興味のある人はご覧いただきたい。
代表例 世界各地の海嶺
水蒸気プリニー式 Phreatoplinian
周辺に大量の水がある所に、大量のマグマが噴出するとプリニー式噴火のようなマグマ水蒸気爆発を起こす。水蒸気が多いので噴煙が白っぽいのが特徴。
代表例 タール火山の2020年の噴火(フィリピン・ルソン島)
氷底噴火 Subglacial eruption
厚い氷河や氷床の底で噴火が起きると、最初は氷の厚さと重みに押されて表面上は何も見えず、やがて氷が溶けるとマグマ水蒸気爆発や水蒸気プリニー式噴火を起こす。
大量の氷が溶けるので、しばしば大規模なラハール(火山泥流)やヨークルフロイプ(氷河決壊洪水)といった危険な現象を起こす。
アイスランドや南極・高山など、人里離れた場所で起こることが多い上に観測機材が設置しにくいため、噴火がある程度大きくならないと気づかないこともある。
代表例 エイヤフィヤトラヨークトル火山の2010年の噴火(アイスランド)
水蒸気爆発(水蒸気噴火) Phreatic eruptions
マグマの熱で熱せられた水が何らかの理由で急激に気化して起こる爆発。
出てくるものは基本的に水蒸気なので噴煙は白っぽい。時には過去の噴火で積もった火山灰や溶岩を一緒に吹き飛ばすので、一時的に灰色や黒っぽい噴煙が出ることもある。
本格的なマグマ噴火の前に火山内部の地下水が熱せられたり、地下のマグマの温度が上昇したり、長年にわたって熱せられ続けた火山の内部が脆くなって高温の地下水が噴出する場合など、爆発に至る理由はさまざまであるが、原理的には熱しすぎた圧力鍋が爆発するのと同じと言える。
火山学的には噴火の規模は小さいのだが、たまたまそこに人間が居合わせれば死に至る危険な火山現象である。
代表例 御嶽山の2014年の噴火(日本):死者63人、第二次世界大戦後の日本での最悪の火山災害
火山爆発指数 Volcanic Explosivity Index
火山爆発指数は火山の噴火の大きさを数値で表す際によく用いられる。VEIと略記されることが多い。最小は0、最大は8。
これは噴出物量・噴煙の高さ・噴火継続時間を元に計算されている。噴火で出てくる物質の量が多く、噴煙の高さが高く、噴火している時間が長いほど火山爆発指数は大きくなる。
VEI | 噴煙の高さ | 噴出物の量 | 噴火例 |
0 | 100m以下 | 1万立方メートル以下 | 無数にある |
1 | 100m以上1000m以下 | 1万立方メートル以上 | 無数にある |
2 | 1〜5キロ | 100万立方メートル以上 | 有珠山(2000〜2001年) |
3 | 3〜15キロ | 1000万立方メートル以上 | 伊豆大島(1986年) |
4 | 10〜25キロ | 0.1 キロ立方メートル以上 | 浅間山天明噴火(1783年) |
5 | 25キロ以上 | 1キロ立方メートル以上 | アメリカ・セントヘレンズ山(1980年) |
6 | 25キロ以上 | 10キロ立方メートル以上 | ピナトゥボ山(1991年) |
7 | 25キロ以上 | 100キロ立方メートル以上 | 鬼界カルデラ・アカホヤ噴火(紀元前5300年ごろ) |
8 | 25キロ以上 | 1000キロ万立方メートル以上 | イエローストーン・ラーバクリーク噴火(およそ63万年前) |
しかし火山爆発指数には致命的な欠点があって、爆発的な噴火でないと正しく評価できないのである。そのためハワイ式のような静かに大量のマグマを噴出する噴火は、どれだけ大量のマグマを出しても火山爆発指数は0になってしまう。そのため火山爆発指数以外の方法も提案されている。
火山爆発指数は災害の規模とは関係が無い。例えば周囲100キロに誰もいない場所でVEI5の噴火が突然起こっても被害は無い。災害というのは自然現象によって人命や健康・財産・社会に被害が出て災害となるのである。むろんVEI7〜8クラスの噴火になると地球レベルの影響をもたらす可能性があるので、何らかの影響は出るであろうが。