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ゴップ

ごっぷ

機動戦士ガンダムに登場するキャラクター。地球連邦軍の参謀本部所属の高官。階級は大将。
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担当声優:永井一郎 細井重之(劇場版II) 楠見尚己(ORIGIN)

概要編集

地球連邦軍本部ジャブローにて、ホワイトベースに作戦指示を与える役で登場。


財政界に大きなパイプを持ち、ミライ・ヤシマの父(故人)とは知り合いだったようで、ミライに戦争が終わったら婿さんを世話してやるとやや下世話な(とはいえ親切心からであろうが)事を言っている。一方でシャアにつけられ、ジャブローの所在地をジオンに漏らした形となったホワイトベースを厄介者扱いするなど、古い体質の官僚的軍人の代表として描かれている。

また他の将校が前線に出て指揮を行っているのに対し、自らはジャブローの地下基地に篭って指揮を行っていることからレビルに「ジャブローのモグラ」と揶揄されている。


しかし、本編中においては無能と呼ばれるような行動は一切行っておらず、ジオン軍のジャブロー強襲時の配置を見て、狙いを宇宙船ドックのみと瞬時に看破するなど、むしろ戦術的に適切な指揮と優れた洞察力を発揮しているとさえ言える(あくまで、それが主観人物=ホワイトベース隊にとって利益にならないだけ)。

「ジャブローのモグラ」呼ばわりについても、そもそも参謀本部軍隊のブレーンにあたる機関であり、ましてやそこの大将クラスの人間が前線に出ないのは現実の軍隊でも当たり前であるため、少々言いがかりに近い。


ジャブローの話はゴップ無能論の否定で引き合いに出される事だが、その本編をよく見てれば戦術的判断はモブキャラとの会話で相槌を打ったに過ぎず、襲撃の最中にホワイトベース隊には情報を回しておらず、ブライトが後で怒鳴り込んでやる!!とまで言われている。ブライトはミライに頼み参謀本部から情報を集めようとしたものの、永遠に厄介者と判断したゴップが無視をしたと判断するのがシーンの入り方からしても察せられるものであり、そこを考慮しないのは不公平だろう。


また、ソロモン陥落後はジオンが和平交渉に乗り出してくるという予想も、デギン・ソド・ザビを中心とした厭戦派が和平交渉に対する動きを見せており、実際に交渉寸前の状態にまで至ったため、あながち見当違いともいえない(徹底抗戦派だったギレン・ザビが実権を握り、デギンを暗殺してしまったので不発に終わったが)。

一時期は無能論が唱えられていたが、現在はスピンオフの描写もあって再評価が進んでいる。


前述のとおり階級は大将だったが劇場版ククルス・ドアンの島では元帥となっている。


その他メディアの扱い編集

ギレンの野望シリーズ編集

ゴップ無能論の唯一にして最大の原因

階級こそ高いが、能力は最低という役立たずキャラとして設定されている。ギレンの野望では「階級が高いほど指揮範囲が上がる」「指揮範囲が重なっていると上位階級の指揮が優先される」と言うシステムなので、むしろ居るだけで迷惑。

その上、能力以外のセリフもひどく、完全に空気の読めないお荷物キャラにされている。シナリオ上でもモビルスーツ導入に懐疑的な姿勢を示して「V作戦に掛けた予算があれば軍の再建はもっと迅速に行えたのでは」とレビルに問い、それでは敗戦を繰り返すだけ、と一蹴されている。

ただし、政治要素が追加された「ジオン独立戦争記」においては実施コストが高いがローリスクハイリターンな政策を次々と提案する有能な指揮官として登場する。そのため「前線指揮官としては無能だが、後方の官僚としては有能」というキャラ付けがされている。初期階級の高さから軍団編成可能ユニット数が多いのも魅力、戦闘での指揮問題は「軍団には軍団長として配属しているが軍団配属ユニットには乗せない」ことで回避できる。(実際に連邦軍を選んだ時のデフォルトの軍団編成で彼はユニットに乗っておらず戦闘指揮用の別のキャラが配属されている。)新たに作られたパラメータの策略値の高さも魅力。

そして”新ギレンの野望”では下記のメディアでの活躍や描写により再考されたのか、直接戦闘はともかく部隊を指揮する司令塔としてなら普通に使えるレベルに強化された。とくに従来シリーズにおける魅力に相当する求心はLV上限で77と、レビル(90)の約6/7・ギレン(99)の7/9と初代やジオンの系譜あたりと比べると隔世の感があるぐらい上がっている。

まあ実際の所、各媒体で描かれる彼の本領はあくまで軍政家であり、指揮能力が優れている描写はないのだが、そこは(独戦を除いて)内政要素とキャラが切り離されているゲームなので、仕方ない所だろう。だが、後述のククルス・ドアンの島での矜持を持ち部下を落ち着かせながら率いる描写から、もしも新作が出たら指揮と求心がさらに上がる可能性はある。


THE ORIGIN編集

連邦軍大将、時系列上での初登場はジャブロー計画推進司令本部の計画担当部長として登場。

ジオンで開発が進んでいるモビルスーツは脅威にはならないという意見もある中でテム・レイの意見を受け入れてモビルスーツ開発を進めるなど、TV版やギレンの野望シリーズとは異なり明確な先見を持つ人物として描かれる。

南極条約調印の際の連邦側の代表格として、ジオン側と虚々実々の駆け引きを行う。レビルがジオンを脱出し、それがエルラン中将主導で行われたことをすぐさま把握しているという描写もあり、全くの無能でない狸爺な面も見せている。特に「星一号作戦」時には連邦軍元帥に昇進しており、ソーラ・レイで甚大な被害を受けた連邦軍主力にア・バオア・クーを攻撃させることに批判的な連邦政府関係者たちにジオンの内部分裂を示唆し、政治的な方法での解決も可能との道筋を示す事で、笑顔を絶やすことなく反対意見を完封するなど優れた政治力を発揮している。


THE ORIGINのゴップは全体的にゆったりした穏やかな口調で話すという特徴があり、彼の穏和そうな性格が窺える反面、底が見えない腹黒さを演出している。


原作ではレビルが初登場時から大将であるためか、ギレンの野望等のアニメーションでゴップとレビルは同格の軍人としての描写が多いが、THE ORIGINのアニメではレビルが宇宙軍総司令の中将に対して、ゴップは地球連邦軍統合参謀本部議長という制服組のトップとして登場するため、彼の方が上位の軍人として描写される。


上記の通りミライの父であるシュウ・ヤシマとは友人関係だったらしい。


MSV-R ジョニー・ライデンの帰還編集

U.C.0090年に地球連邦議会の議長となっている。一年戦争時、官僚的高官の間で唱えられた「レビル将軍更迭論」を抑えV作戦が発動するように根回しをしていた。

「レビル達とは違い前線に出る事はなかった、政争が私の戦場だった」という述懐や、一年戦争に従軍したヴァースキ大尉の「一年戦争中たしかに補給で苦労したことはなかった」という証言から「前線指揮官ではなく軍官僚として有能」とキャラ付けされている。

戦後は政治家に転身し、レビルやコリニー、コーウェン、ジャミトフ、バスク、ブレックスといった連邦軍の主だった面々が次々と台頭しては失脚する中、巧みに政争をくぐり抜けた結果U.C.0090年においては議会における最大派閥の長となったことで、その政治力の高さも評価されている。

決して清廉潔白な人物ではなく、自身が連邦という国、ひいては人類に巣食う寄生虫である事を自覚しているが、「寄生主である人類が危機に瀕しているのなら、寄生虫が立ち上がらなければならない」としてヴァースキ大尉に協力を仰いでいる。

また強化人間の少女イングリッド0を養子として保護しており、彼女を見て自分を「幼女を養子にして喜ぶ俗物」と判断する相手の油断を誘うなど政争に利用する一方、その将来については(やや冗談めかしてはいるが)真剣に考えて婿を探しているなど、人間的な側面も描かれている。

なお彼の一族は代々「ゴップ自然公園」を管理している。


ククルス・ドアンの島編集

巨大航空母艦ラ・グランパからジブラルタ攻略のために艦隊を率いて指揮を執る。

上記の通り今までと違い階級が元帥となっている。本作ではホワイトベース隊は彼の指揮下にある。


オデッサに身を構えるマ・クベと「兵を退かねば地球の主要都市に核を打ち込む」「私情で兵を退くわけにはいかない」と互いに地球をこれ以上安易に戦火で荒廃させたくはないが国の勝利のためには私情を押し殺さねばならないという本心を押し隠し互いに敬意を払いながらも穏やかにけん制しあう。


そしてクライマックスでは遂にミサイルは発射されてしまいゴップは飄々とした態度を捨て責任を噛みしめるために自ら滅ぼしてしまう事となった都市から目を逸らすまいとブリッジに登場するが、実はそのミサイルは贖罪のため島に孤児とともに暮らしていたククルス・ドアンの手で島の核ミサイルに細工が施されきれいな花火にされていた。顛末を知ったゴップは切り捨てると決めた愛する都市が無事だったことに安堵の笑みを浮かべ「運はこちらに向いてきた」と再びオデッサへの侵攻を再開する。一方のマ・クベも「私の部下にも芸術を理解するものがいる」と無用の破壊が避けられたことをひそかに喜んでいた。



考察~何故無能のレッテルを貼られたか~編集

近頃では「戦闘での華々しい活躍こそないものの裏方としては間違いなく有能」という評価が固まりつつあるゴップ。ではなぜギレンの野望初代では無能の代名詞扱いされてしまったのであろうか?

これは当時のガンダムシリーズのファンのイメージに起因している。


ギレンの野望初代の発売は1998年4月だが、1stガンダム初の全話収録LD-BOXが発売されたのは意外に遅く、1998年8月からである。

つまり、当時はアニメ本編を見返す手段がVHSぐらいで、公式の資料本すらも今見ると間違った設定や文章が書かれていることが珍しくなかった時代であり、ファンはおろかゲームを作る公式側もなんとなくのイメージで作品を評価していた。

そして、当時は連邦とジオンの対立を描く中で「ジオン贔屓」の風潮が強く、明らかにジオン側が「カッコよく描かれている」『機動戦士ガンダム0083』といった作品もあった(細かく読み解いていくと0083はジオンも連邦も肯定していない)。そもそも問題のゲームのタイトルからして「ギレンの野望」であり、ジオン側がメインかのように扱われている。

そのような風潮を反映した結果、連邦軍人は「現場の人間は頑張っているが上層部が無能で苦労させられる(=無能に地球は任せられないからジオンが決起した)」といったイメージになり、一見パッとせずホワイトベース隊を邪険に扱い、有能なレビル将軍との対比にも丁度良いゴップがその典型として扱われてしまったのだろう。

またギレンの野望は戦術メインのシミュレーションゲームであり、政治面までステータスに反映する余地が無く(ジオン独立戦争記はシリーズの異色作)、「役に立たないキャラも少しはいないと面白みが無い」といった事情も関係していると思われる。


さらに言えば後のシリーズに連邦の無能な高官自体は登場するのも、ゴップを安易な無能キャラにしてしまった原因になっていると思われる。

逆襲のシャアに、アデナウアー・パラヤ参謀次官というキャラクターがいた。クェス・パラヤの父親であるこの男は、普段は自分の地位を鼻にかけてふんぞり返っているいるくせにいざ目の前で有事が起こると取り乱し周囲を困惑させるという典型的な腐敗した無能なエリートとして描かれていた。

シャア・アズナブルが仕掛けた偽りの和平交渉にまんまと嵌りブライト・ノアの忠告にも耳を貸さず武装解除の立ち合いの為ルナツーに赴くが、そこでもまだ訪れていないシャアの武装解除後のことを悦に入りながら語り前線の兵士の神経を逆なでする。そして、ネオジオン艦隊から奇襲を受けた時すっかり取り乱し、クラップ艦長の行動に横から口出しして部隊の指揮系統を乱した挙句、娘の駆るヤクト・ドーガの攻撃に遭い死亡してしまう。


もちろん、ゴップとアデナウアーとの間には大きな隔たりがある。

前線で起こった変化にまるっきりついていけず更には混乱して前線指揮官に要らない口出しをしたアデナウアーに対し、ゴップはジオンの攻撃目標を的確に見抜いてレビル達指揮官に落ち着いて委ねている。

そして和平交渉に関してもアデナウアーの方はシャアと配下が一体となって戦争継続する気満々だったことが見抜けなかったのに対し、ゴップはジオン公国に少なからず厭戦の空気が蔓延していることを見抜いており、ギレンのソーラレイの奇襲もレビルすら見抜けなかったのであながち彼だけの計算違いだったとは言えない。ORIGINでは更にソーラレイの打撃に浮足立つ連邦政府高官に対し、落ち着いて現状を説明し反論を封じるという見識と胆力を見せている。


しかし、繰り返すが当時はそもそもシリーズを見返して細かく考察する環境すら整っていなかった時代であり、熱心なファンですら大雑把なイメージで作品を語るのが珍しくなかったのである。

「連邦にはアデナウアーのような無能がいる」「ジオンは0083に出てくるような武人揃い」といったイメージが、ゴップの間違ったキャラクター像を作ってしまったのだろう。


ちなみに初代ギレンの野望にジオン贔屓が蔓延しているかというとそうでもなく、一週で倒されたような下士官は概ね強くないし、特にコンスコンはジオン側の無能な将軍として描かれている(セリフも情けなく、ゴップほど極端ではないが階級に対して能力も低め)。

しかしコンスコンは描写をちゃんと読み解くとむしろ有能の部類であり、ホワイトベース隊が異常なまでに強くなっていたのでなすすべもなく倒されたという、主人公側の成長描写の踏み台にされたキャラといえる。

それでもゲーム中ではパッとしない扱いをされているあたり、当時のゲーム開発スタッフが「すぐ負けたから弱い」というイメージで能力を設定していた可能性がある。そして彼もゴップと同様、続編では能力が見直されてかなり強くなっている。


関連項目編集

機動戦士ガンダム

レビル ブライト・ノア 提督

MSV-R ジョニー・ライデンの帰還 ヤザン・ゲーブル


グリーン・ワイアット:0083の登場人物。「ギレンの野望で無能のレッテルを貼られ」「後にファンの間で再評価され」「公式スピンオフ(彼の場合は0083REBELLION)で活躍の場を得て」「新ギレンの野望で能力値が向上した」「連邦の高級将官」と、ゴップと非常に近い立場の存在。ただし彼の場合は足元が疎かな点も描かれ、結局戦死している。


エルラン:同じくギレンの野望で無能寄りの能力値にされた将軍の一人。だが、こちらは”密かにジオンに情報を売るスパイ”というTV版でも二人よりも明確に連邦に害のある行動をしていた為か、ファンから再評価される事もなく、公式でもORIGINでさらに悪化。新ギレンでは指揮能力が低下し、ゴップやワイアットに逆転されてしまうと言う、全く逆の立場を辿った。


ガルシア・ロメオ:THE・ORIGINに登場したザビ家に媚びを売る一方で戦術眼も統率能力も壊滅的で、そのくせ自分の能力を棚上げにして他人に嫉妬しまくる無能なジオン将官。ギレンの野望シリーズでパラメーター化したらそれこそシリーズ初代のゴップのような悲惨な数値になりそうである。

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