概要
ザクの量産に成功したジオン軍に対し、起死回生の一手を狙う地球連邦軍が考案した作戦。
V作戦とは単に「3つのモビルスーツでジオンを叩く」というものではなく、
- モビルスーツの開発と量産化
- モビルスーツの運用を前提とする専用母艦(ホワイトベース)の建造
- モビルスーツの運用方法の確立
の三本の柱で成り立っているものであった。
ガンタンクは地球連邦が最初に開発に成功したモビルスーツであり、その後白兵戦用のガンダム(RX-78)と支援用のガンキャノンが開発され、近距離戦のガンダム・中距離戦のガンキャノン・遠距離戦のガンタンクの3機を同時展開して闘う戦術が生み出された。
それを察知したジオン軍のシャア・アズナブル率いる部隊が、兵器の運用試験が行われるスペースコロニーのサイド7に偵察にやってくるところから物語は始まる。
これだけ聞くといかにも連邦にとって重要な作戦に思えるが、『ガンダム』作中でのホワイトベース隊は連邦内で終始厄介者扱いされており、補給も満足に受けられない有様であった。
また、モビルスーツの量産についてもガンダム完成からあまり間を置かずに行われており、戦争の大局もホワイトベース隊の活躍とはあまり関係の無いところで動いていった(結果を見ればホワイトベース隊の戦果は後々まで多大な影響をもたらすものではあったが、いなくても勝利はできたと思われる)。
具体的には『ガンダム』1話、つまりガンダムとザクの初のMS戦が行われたのが9月18日で、ホワイトベース隊が連邦軍本拠地のジャブローに到着してジムが量産されている姿を見たのが11月30日。
つまり2ヶ月少々でガンダムとホワイトベース隊からデータを取って仕様を決定して量産開始したことになり、いくらSF世界だとしてもあまりに短期間すぎる(設定上のジムの量産開始時期はさらに早く、後付も含めるとガンダム以外の試作機や先行量産機は既に各地で実戦投入されている)。
これらの状況証拠を見て、実際のV作戦は既にMSの量産体制は確立しているが、表向きは「サイド7で連邦初のMSの運用テストが行われるが、量産はそれからである」とすることでジオンを油断させ戦況を混乱させる、つまり囮作戦の一種であるとする説がある。
だとすれば、最初にジオンのトップエースであるシャアを宇宙の辺境に誘い出せた(=エースを投入する価値があるとジオンが判断した)時点で作戦は成功であり、その後の活躍は連邦からすれば全てオマケなので、補給すら渋った理由も納得がいく。
劇中でそれがハッキリ言及されることこそ無いものの、当のホワイトベース隊もそれにうっすらと気づいていたようで、ガンダムのパイロットであるアムロ・レイは補給が無いままに戦い続ける日々に疲れ、「僕たちは新兵器完成までの囮なんだ」とこぼすシーンがある。
なお、12月末を描いた『機動戦士ガンダム0080』では一般人が「連邦にモビルスーツがあるわけない」と言うシーンがある。
連邦からすれば戦争に勝つために重要なのはたかだか数機の新型ではなく多数の量産機であり、既に実戦投入されていても迂闊に情報を漏らしてはいけない機密だったともとれるし、『0080』の舞台は中立コロニーなので「戦争に関係ない人間からの認識はこの程度」ともとれる描写である。