概要
機動戦士ガンダムを原点とするガンダムシリーズに登場する機動兵器の総称。
デザインの源流はスタジオぬえによる宇宙の戦士に登場するパワードスーツのイラストに見ることが出来る。
また、機動戦士ガンダムの監督である富野喜幸(現:富野由悠季)は、製作現場において登場メカを「ロボット」ではなく「モビルスーツ」と呼ぶように徹底させていた(作中で「マシン」、「人型」と呼ぶパイロットも多い)。
モビルスーツは作品ごとに動力、システム等の設定や成り立ちに差異はあるものの、人の形を模し、マニピュレータに射撃・格闘武装を携行し、歩行する事で不整地を踏破、各部に設けられたバーニア・スラスターで宇宙空間を移動するという(ガンタンクのような一部の特殊な例を除き)共通した特徴がある。
人型であるモビルスーツに対し、人の形を成していない兵器はモビルアーマーと呼ばれる。ただしガンダム試作3号機やバクゥ、ダナジン(アドバンスド・ジェネレーションにおいてはMAというカテゴリー自体存在しない)のように一見モビルアーマーに見える機体でもモビルスーツに分類される場合もある。
また、非人型に変形するもの、或いは特殊な機構によって変形合体することで人型となる可変モビルスーツも存在し、その場合非人型形態(戦闘機・モビルアーマー形態等)は独自の呼称の形態で扱われる場合もある。
また、作品によっては兵器として用いられない作業用モビルスーツを「モビルワーカー(機動戦士ガンダム)」「ワークローダー(機動戦士ガンダム00)」「モビルスタンダード(機動戦士ガンダムAGE)」「モビルクラフト(機動戦士ガンダム水星の魔女)」と呼称する場合もある。宇宙世紀ではその中でも特に小型で民間人でも扱える「ジュニアモビルスーツ」「プチモビルスーツ」もある。
その他、コンピュータ制御による無人機「モビルドール(新機動戦記ガンダムW)」、モビルトレースシステムを搭載した「モビルファイター(機動武闘伝Gガンダム)」等、作品によって用途に応じたバリエーションが存在し、物語に深みを与えるガジェットとなっている。
独特の形状のデュアルアイとV字型のアンテナで構成された頭部のMSを俗に「ガンダムタイプ」と呼称することもある。ただし明確にこの呼称を使用している作品はそれほど多くはなく、作品によってガンダムの定義も異なってくる。
このように様々なカテゴリー、仕様のバリエーションが存在するが、基本的に搭乗者は「MSパイロット」と言われる。一部の作品では別の呼称も設定されている(例:ガンダムファイター、ガンダムマイスター)
ガンダムビルドファイターズでは登場するMSは全てガンプラなのでそれでひとくくりにされている。
MSの全機種を列挙することは容易ではないため、各ガンダムシリーズの記事、および、各タイトルに登場する勢力、バリエーション過多のザク、ジム、ドム、ガンダム等の記事を各々参照のこと。
各年号における成り立ちや扱い
宇宙世紀
宇宙世紀ではジオン公国のジオニック社のS.U.I.T計画(Space Utility Instruments Tactical=戦術汎用宇宙機器)で開発された機動兵器をルーツに持つ兵器カテゴリーとされている。
ミノフスキー粒子にはレーダーや電波通信を阻害し、集積回路にも誤作動が起こるといった影響が見られ、保護することは出来たのだが使い捨てのミサイル等に対応するにはコスト的に現実的ではなかった。結果として近代的な電子戦が封じられ、有視界戦闘に回帰されることが想定された。
地球連邦に対して国力で劣るジオンの国防省は複数の兵器会社にミノフスキー粒子散布下の戦闘に対応した新型兵器を要求。ジオニック社のZI-XA3(クラブマン)、MIP社の「MIP-X1」がその要求を満たしていた。
採用コンペティションではミノフスキー粒子下の戦闘を優位に進めるために四肢を持ち、それらをばたつかせる反作用「AMBAC(Active Mass Balance Auto Control=能動的質量移動による自動姿勢制御)」により得られる高い運動性、そして高い汎用性を持つ「クラブマン」が勝利し、「MS-01」の型式番号が与えられた。対する「MIP-X1」は後の「ビグロ」を始めとする「モビルアーマー」のルーツとなった。
この計画は作業用機械の開発という建前を隠れ蓑に開発が進んでおり(パラレル性を含む『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』では「モビルワーカー」と呼ばれる)、U.C.0074年には初の軍用モビルスーツ「ザク」が誕生する事となる。
U.C.0079年に勃発したジオン独立戦争(後の一年戦争)では地球連邦軍の宇宙艦艇を相手に一方的な戦いを展開した。
しかし地球連邦軍も負けじと「V作戦」の下にモビルスーツを開発し、特にビーム兵器を標準装備したガンダムやその量産型のジムとの性能差や生産力の違いから最終的には逆転を許し、ジオン公国は敗北した。
宇宙世紀のMSの動力にはミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉という小型高出力の核融合炉が用いられており、推進剤による機動は別として半永久的に駆動が可能。
他に特筆すべき点としてこの一年戦争期に相手の直後の挙動を高い精度で予測できるなどの特殊な能力を持った人間「ニュータイプ」が発見されており、ニュータイプの放つ感応波を機体制御に利用するインターフェース「サイコ・コミュニケーター(サイコミュ)」や、それを用いミノフスキー粒子散布環境下でも遠隔操作を可能とした無線砲台「ビット」という技術が開発された。
戦後は技術を接収した地球連邦軍や小惑星アクシズに落ち延びたジオン残党軍などでそれぞれに発展を遂げ、直接機体操縦の補助に用いるバイオセンサーやビットを小型・高機動化させたファンネルなどが開発された他、手術により後天的にニュータイプ能力を付与された「強化人間」という非人道的な技術も生まれている。
戦後はこれら黎明期の基礎設計を持つMSを「第1世代MS」と定義し、連邦の内乱であるグリプス戦役以降はムーバブルフレーム構造を導入し更に滑らかな動きを追求した「第2世代MS」、モビルアーマーあるいはそれに類する高機動形態に変形が可能な「第3世代MS」、サイコミュや大出力メガ粒子砲等を内蔵し単騎での強さに重きを置いた高級機の「第4世代MS」、ミノフスキー・フライト技術による長時間の高速飛行が可能となった「第5世代MS」といったように進化を重ねていくが(ただしコストや扱える人材の問題から第3世代以降でまともに量産されているMSはリゼルやドーベン・ウルフなどひと握り)、MSが産声を上げてから40年余が経過したU.C.0120年代に核融合炉の技術的ブレイクスルーが発生し、それまで18~20m、20~30tが一般的だったMSの全高と本体重量を、機動性など各種性能を上回った状態でそれぞれ15m級、7~8t台まで落とし込むことに成功し、それ以前と以降で「第一期MS」、「第二期MS」と区別されるようになった。
ただしそこからおよそ20年後に地球圏はコロニーの独立機運が高まり地球のみならずコロニー同士でも争う宇宙戦国時代へと突入していくこととなりその混沌の中で技術力は一時は絶頂期を迎えたものの、その後10年ほどで整備性に優れる第1世代MSが再び戦場で幅を利かせるまでに衰退、地球連邦の崩壊が差し迫ったU.C.0190年代以降に開発されたMSは16~18mと当初の第二期MSよりやや大型化している。
リギルド・センチュリー
宇宙世紀から地続きとなっているこの世界でも引き続きMSは使われているが、宇宙世紀の兵器は一度封印されているため、モビルスーツの開発は封印された技術について記された「ヘルメスの薔薇の設計図」の記録を基に復元するという形で行われており、実際に宇宙世紀作品に登場したMSだとフェネクスがG-フェネクスとして復元されている。
先述のG-フェネクスのようなガンダムタイプをルーツに持つ高性能機はヘルメスの薔薇の設計図の中でも「G項目」という項目に記載されているため、「G系統」という機体群に分類されている。
動力源は「フォトン・バッテリー」という光をエネルギーとして圧縮・蓄積した容器(手帳サイズでMSなら1週間は稼働できる)が用いられており、この物資は製造元のヘルメス財団による供給バランスの都合やスコード教の宗教上の理由などにより流通や解析には厳重な制限が課せられている。
大半のMSは「ユニバーサル・スタンダード」という共通規格でコクピットハッチやUIなどの規格も統一されており、逆にこれらに批准しないものはバッテリーの解析と同様にタブー視され忌避される傾向にある。
バックパックの接続規格もこのユニバーサル・スタンダードに則っており、G-セルフが披露した多彩な換装も理論上は他のMSでも可能な行為となっている。
コクピットは全天周囲モニターやショックバルーン等グリプス戦役以降の宇宙世紀で主流になっているレイアウトを踏襲しつつ、長期間の作戦行動も想定しシートの座面にバキュームトイレが加わっており、ノーマルスーツ側も股間にファスナーが備え付けられているため、脱がずに用を足すことができる。
未来世紀
成り立ちや動力は不明だが基本的に宇宙世紀同様に機動兵器として各コロニー国家に普及している。
未来世紀ではモビルスーツの人型の基本構造を基にコクピット内の操縦者の動きをダイレクトに反映するモビルトレースシステムを搭載した競技用のマシン「モビルファイター」が開発されており、このモビルファイターに技術の粋を集めて他国のモビルファイターと一対一で闘わせる代理戦争「ガンダムファイト」により宇宙の主導権を握る国家を決定するという独特なルールが根付いている。
MSとMFの力関係はTVアニメとノベライズで異なっており、TV版では最新鋭の技術を結集させた高性能ワンオフ機ゆえにMFの方が優位とされている一方、小説版ではMFはあくまで競技用の繊細なマシンであるため、戦争行為に耐えうるMSの方が優位とされている。
ちなみに、平成三部作内ではまだ宇宙世紀の第二期MSの名残もあり、平均的な全高16~17mとやや低め、本体重量も平均的に7~8tと軽量な設定が主流となっている。
アフターコロニー
その技術的な源流はコロニー建設用の動力付き宇宙服の延長とされる。誘導兵器が全盛を迎えた時代において機動兵器の優位性が復活した理由付けとしては、対ミサイルの電波妨害技術が発達したためとする媒体も存在している(1/60スケールのウイングガンダムゼロのキット等)。これに対し、TV版劇中では、ノインの台詞にてロームフェラ財団が人型兵器を要望したためとも言われている。
なお動力は不明。TV版劇中において、ヴァイエイトのバックパックに核反応炉らしきものを搭載している描写がある。
初めて開発された戦闘用モビルスーツであるトールギスは黎明期の機体でありながら機体性能は高く、特に機動性は過剰なまでの域に達しており、アフターコロニーのモビルスーツはこのトールギスを祖としてマイルドな操作性になるようデチューンしたリーオーを基に派生していったOZ製の機体群と、逆に更なる高性能化を追求したウイングガンダムゼロの5分割された設計図からそれぞれの空白を補いつつ復元されたオペレーション・メテオ用のワンオフ機であるガンダムタイプに二分化していくことになる。
また、資源衛星都市「MO-V」ではドクター・ペルゲの手によって頭部と四肢の換装機構により汎用性を高めた設計思想のG-UNITというシリーズも開発されている。
またOZではモビルスーツをAIにより無人化させた「モビルドール」の開発も進められており、既存のMSを無人仕様に改造したものの他に、コクピットスペースすら廃しモビルドールとしての運用を前提としたビルゴといった高性能量産機も開発されている。
これらはパイロットの損耗や養成などに割かれる費用を削減できる一方で、戦争という人殺しを伴う行為に対する罪悪感を軽くしゲーム感覚にしてしまうと倫理的観点から危険視する声もOZ内でさえトレーズ・クシュリナーダ総帥などから上がっていた。
アフターウォー
コロニー建造に用いられていた作業用機械が戦闘用に用いられるようになってから進化していく形で成り立っており、本編から15年前に地球連邦軍と宇宙革命軍との間に発生した「第七次宇宙大戦」時にはフラッシュシステムにより多数の無人のビットモビルスーツをニュータイプのパイロット一人で操れる「ガンダム」も開発されているなど技術的にもある程度成熟していた。
なお動力は不明。
第七次宇宙大戦により文明が崩壊し、地球連邦軍・宇宙革命軍問わず多数のMSが民間に流出、結果MSの部品を売りさばいたり時にその武力を振るい略奪行為を働くバルチャーと呼ばれる職業が横行するようになった。
ただし疲弊した宇宙革命軍や崩壊後に再集結した新地球連邦では生産力こそ落ちたものの大戦時の性能を上回るMSの開発も進められている。
正暦
ありとあらゆる人工物を砂に還すナノマシンを散布する「月光蝶」により一度文明が完全に埋葬された正暦の地球では、モビルスーツが新たに開発されるということは無く、各地に点在する「マウンテンサイクル」と呼ばれる黒歴史の遺産が埋まっている地から発掘という形で入手・戦力化していく。中にはボルジャーノンやカプルなど宇宙世紀のMSに酷似した機体が埋まっていたりもする。
一方で文明の埋葬を免れた月面国家「ムーンレィス」ではあくまで技術の封印のみに留まっているため、人工筋繊維で駆動するマヒローや自らの発するIフィールドで機体を操り人形のように駆動させるIフィールドビーム駆動方式を採用したスモーなど地球に比べ先進的な技術を用いたMSが多数配備されている。
コズミック・イラ
一部の例外を除き、ファーストコーディネイター、ジョージ・グレンの搭乗した木星探査船「ツィオルコフスキー」に搭載された外骨格・補助動力付き宇宙服「モビルスーツ」を源流に持つ。これが不整地踏破用の二足の脚部と運搬用のアームを持つ「パワーローダー」へと発展していき、コロニー国家「プラント」にて活動する一部の政治結社(黄道同盟、後のザフト)がこのパワーローダーを大型化して兵器転用した試作兵器「ザフト」(結社の名称変更と同年にロールアウトされた記念として同じ名前を冠している)がコズミック・イラ初のモビルスーツとなる。プラント(ザフト)には地球と比べて人的資源に乏しいという事情があったことから、複数人乗りが基本となる既存兵器と対照的なサバイバビリティを考慮した一人乗りを採用しており、後にそれが陣営を問わずデファクトスタンダードとなっている。
ザフトを改良した量産機「プロトジン」、そしてプロトジンをブラッシュアップした汎用量産機「ジン」は部品の多くに世界共通規格に準じたものが用いられるなど生産性にも考慮した造りとなっている。一方、鹵獲および複製対策として操縦に高度な反射神経・運動能力・判断力・認識力を要求する仕様とした上に、コーディネイターとの神経接合を前提とした扱いの難しいM.O.S.を搭載することにより、ナチュラル(地球連合軍)に対する優位性を確保した。これによりジンは地球連合軍製量産モビルアーマー「メビウス」に対して1:5以上の戦力比を発揮したことから、モビルアーマーを主力としていた地球連合軍でさえも戦場の主役をモビルスーツに移行する動きが活発化していく。その先陣を切ったのが地球連合軍の一派閥であり、ジン発表から1年ほど遅れて「G兵器開発計画」を提案し、軍本部には反対されたものの利害が一致した外部協力者と独断にて計画を推し進め、その1年後には初の地球連合製モビルスーツとなる5機の試作機(ガンダムタイプ)を完成させる。この試作機たちには実体兵器を殆ど無効化するフェイズシフト装甲が採用され、武装もザフトでさえ実用化に至れなかった小型ビーム兵器(ビームライフル・ビームサーベル)を搭載しており、当時ザフトが運用していたモビルスーツ群とは一線を画す性能をしていた。この試作機たちは「ストライク」を除いてザフトのクルーゼ隊の独断により強奪されたが、残ったストライクの設計データと運用データを用いて量産モビルスーツの開発とM.O.Sの改良を行った結果、ナチュラルでも使用可能な操縦系ないしM.O.S.とそれに対応した純正量産モビルスーツの開発に成功し、「モビルスーツを扱える」というコーディネイター(ザフト)の優位性は消滅することとなった。しかし、ザフトはモビルスーツ開発において一日の長があることに加え、遅れていた小型ビーム兵器の技術も前述した強奪により補完し、モビルスーツが高性能化するほどパイロットに高度な操縦能力が要求されるという事情から、同時期における汎用量産機の総合性能については常にコーディネイター主体のザフトの方が幾分優れている。
動力には陣営を問わずバッテリーを採用している。これは、核融合炉の開発に失敗しているコズミック・イラにおいて、最も高出力な動力は半永久的な稼動も同時に実現する(厳密には燃料が切れるより先に機体の耐用年数が来る)核分裂エンジンとなるが、地球連合軍による核攻撃「血のバレンタイン事件」の報復措置としてザフトが大量に打ち込んだ核分裂を阻害する「ニュートロンジャマー」の影響下にある地球圏では稼動できないという事情に由来する。核エンジンより低出力かつエネルギー切れも存在するバッテリーでは、弾薬や推進剤より先にそのエネルギーが尽きることから、補給目的で定期的に母艦へ帰投する必要が生まれ、それを効率化するために帰投先の母艦も武装化して前線に出てくるようになった。
ただし、ザフトはニュートロンジャマーの効果を打ち消す装置「ニュートロンジャマーキャンセラー」も開発しており、地球連合軍製モビルスーツの脅威を実感してからは一部の派閥が極秘裏にニュートロンジャマーキャンセラー搭載型核分裂エンジンを搭載するMS「ZGMF-Xシリーズ(ファーストステージシリーズ)」の開発に着手している。
後にニュートロンジャマーキャンセラーの設計データは地球連合軍に流出するも、地球連合軍は核エンジンではなく核ミサイルに用いた他、流出から約8か月後に締結されたユニウス条約によりニュートロンジャマーキャンセラーの兵器搭載が禁止されたため、以降も動力の主流はバッテリーのままとなる。これについては、ユニウス条約締結以降にバッテリーの高性能化およびビーム兵器の効率化が格段に進んだことにより、核エンジンの優位性が薄れたことも大きい。
両陣営がモビルスーツを運用しだしてからはそれぞれで世代(シリーズ)区分がなされており、地球連合軍では「第1期GAT-Xシリーズ」を基に、強化手術を受けたブーステッドマンをパイロットとすることを前提としたワンオフ機として性能を追求した「第2期GAT-Xシリーズ」と一般兵用の量産シリーズとなる「GATシリーズ」が開発された。そしてザフトの方では、第1期GAT-Xシリーズを基礎技術としてZGMF-Xシリーズ、ユニウス条約締結以降はZGMF-Xシリーズから核エンジンを取り払い発展させた「セカンドステージシリーズ」とモノアイを有する純ザフト製量産型MSの発展型である「ニューミレニアムシリーズ」、そして条約違反を承知で再びニュートロンジャマーキャンセラー(核動力)を用いた「ハイパーデュートリオンエンジン」搭載型の「サードステージシリーズ」が開発されている。また、中立の立場を主張しているオーブ連合首長国の国営軍需企業「モルゲンレーテ社」は、地球連合軍と第1期GAT-Xシリーズを共同開発していた際に技術の一部を秘密裏に入手しており、国防の観点からそれを活かして「M1アストレイ」や「アカツキ」を開発し、M.O.S.の改良も行っている。そして、量産面において優れていたM1アストレイがオーブ国防軍の制式機の座を勝ち取ることとなり、地球連合軍と殆ど同じ時期からモビルスーツを運用し始めることができた。さらに、反コーディネイター思想の過激派組織「ブルーコスモス」に乗っ取られた大西洋連邦の侵略から立ち直って以降は陸地を主体とした防衛ドクトリンの危険性から国境線たる領海以遠への外征が可能な戦力が必要とされたため、長距離航行が可能な可変MS「ムラサメ」を開発し、その2年後には「ムラサメ改」にアップデートした。
量産機の傾向として、ザフトが新規設計やその改設計機を用いることが多いのに対して、地球連合軍はストライクの量産化に重きを置いたGATシリーズに注力していることに加え、第2期GAT-Xシリーズから派生したGATシリーズの中には「レイダー」や「フォビドゥン」のように局地用の量産機として枝分かれして開発が進められたグループも存在する。また、オーブ連合首長国はザフトや地球連合軍と比較して国力に乏しいことに加えて積極的侵略行為を行うつもりがないため、開発・運用するモビルスーツを前述した汎用量産機のみに絞っている。
ユニウス条約が締結されたことにより両軍のMSの保有数が制限されてからは、高度化していくMS単機に要求される多用途性と専門性に対応するため、地球連合軍ではストライクにて初実装されたストライカーパックシステム、ザフトではストライカーパックシステムをベースにウィザードシステムやシルエットシステムという装備換装システムが開発・普及した。そのため、ユニウス条約締結後に開発された量産機の殆どは何らかの装備換装システムに対応している。また、ストライカーパックシステムについては原初の装備換装システムであるため、地球連合以外の勢力でも採用・運用されており、独自の対応機種やストライカーパックが開発されている。そのため、複数ある装備換装システムの中でも群を抜いて対応機種とパック種が多い。
モビルスーツの無人機化も試みられており、民間組織「D.S.S.D.」では外宇宙探査用の無人運用モビルスーツ「スターゲイザー」とその操縦を担うAIやAIの学習に用いる専用M.O.Sを開発していた。それとほぼ同時期に民間企業がザフトの援助を受けて「DIアダガ」と専用操縦AI「バディシステム」を開発した。その約2年後にはファウンデーション王国がザフトから型落ち機として払い下げられたジンとディンを無人機に改修して運用している。しかし、理論上は名だたるエースパイロットと同等の操縦能力を持たせられるとされるバディシステム以外は戦闘を全て無人機に担わせるほどの技術水準には至っておらず、有人機の僚機を担当させるのが精々となる。そのバディシステムについても、教師役となる優秀なパイロットと学習期間を十全に確保することができなかったことから大した成果は出ていない。
量子コンピュータによるシミュレーションが非常に発達していることから、一々実機を製造して実験するというサイクルを回す必要が殆どないため、陣営を問わずモビルスーツの開発速度が異様に速い。例えば、ZGMF-Xシリーズの内2機は基礎技術となる第1期GAT-Xシリーズが強奪されてから66日後にロールアウトされている。一方、シミュレーションにより欠陥が見つかり設計の最終段階で廃案となるケースも多く、実際に開発・製造された機体の型式番号を並べると抜けが目立つ。
また、モビルスーツにもワンオフ機・量産機を問わず量子コンピュータが搭載されている他、バイオコンピュータも搭載されている。
ちなみに、ザフトの開発がC.E.65年、『SEED』シリーズの最新時系列がC.E.75年なため、コズミック・イラにおけるモビルスーツ史はたった10年しかない。ガンダムタイプについてもC.E.71年初頭にロールアウトされた第1期GAT-Xシリーズが初であり、多様な陣営により改良・改修も含めて数十種類開発されたが歴史としては4年程度である。
西暦
軌道エレベーター建設用のワークローダーを武装化することで兵器として発展し、「Eカーボン」という炭素系の装甲材が普及するにつれそれを攻略するために大型化していきモビルスーツという形に行き着いた。
動力は当初、化石燃料を用いていた。人革連のファントンもそのひとつであり、内燃機関から発電して駆動する。しかし、燃料が枯渇するにつれ代替手段へと移行していき、物語開始時点ではユニオンの主力機フラッグ、AEUの新型機イナクト、人革連の主力機ティエレンともにバッテリー式を採用している。このうちフラッグとイナクトには太陽光発電からの給電機能が組み込まれており(当初はイナクトのみとしていたが、後に送電網の面で限定されたタイプをフラッグが搭載と設定されている)、さらにフラッグの推進機関には水素プラズマジェットエンジンを用いている。
対する主人公勢力ソレスタルビーイングの運用するモビルスーツ「ガンダム」はGN粒子と呼ばれる特殊な光子を動力に用いており、これを発生させるGNドライヴは半永久的なGN粒子の生成が可能になっている。
後にソレスタルビーイング内の裏切り者によりこの技術が三大国家を統一した国連軍にも流出し、製造環境の問題から粒子生成が有限なGNドライヴ[T]を用いたモビルスーツが普及していくことになる。
アドバンスド・ジェネレーション
成り立ちは不明だが、MS鍛冶の末裔であるアスノ家に伝わる伝説として「救世主ガンダム」なる存在が語り継がれその肖像画が残されていたことから、モビルスーツは遥か昔から兵器として用いられていた模様。
かつて発生したコロニー国家戦争の終結時に締結された「銀の盃条約」により兵器としてのモビルスーツは撤廃され、A.G.101年時点では巨大な人型機械という構造を流用し作業用のモビルスタンダード、レース用のモビルスポーツ、警備用のモビルセキュリティといった具合に「MS」のイニシャルを転用した非戦闘用機械として細分化されていた。
動力にはプラズマが用いられており大半の機体は「プラズマバッテリー」にプラズマをプールしている(小説版ではプラズマ融合炉が動力源となっている)が、ガンダムAGE-1などはプラズマ圧縮炉を搭載し他のMSを上回る出力を実現している。
非戦闘用の機体は動力がプラズマとは限らないようで、モビルセキュリティ「ジェノアス」のベース機となったモビルスタンダード「デスペラード」には水素エンジンが搭載されている。
軍用兵器としてのモビルスーツのデータは「EXA-DB」というデータベースに封印・保管されていたが、火星移民「ヴェイガン」は最高指導者フェザール・イゼルカントがA.G.80年代にEXA-DBから不正に抜き取ったデータからヴェイガンギアを復元。このヴェイガンギアを基に様々なモビルスーツが開発・量産されA.G.101年にUEとして地球圏に姿を現す。
地球連邦軍はモビルセキュリティやモビルスポーツを武装したモビルスーツしか保有しておらず一方的に蹂躙される状況が続いていたが、A.G.115年にアスノ家に伝わるAGEシステムから抽出されたデータを用いガンダムAGE-1が開発されてからはその運用データをフィードバックするなどして戦力の増強を図り、勢力図を押し返すことに成功、以降も半世紀にわたる戦争を続けていくこととなる。
ポスト・ディザスター
本編より300年前に発生した「厄祭戦」において無人兵器「モビルアーマー」に対抗するために開発された機動兵器。
数多くあるガンダム作品の中でも「フレーム」の概念が強く根付いており、登場するモビルスーツは必ずどこかしらのフレームのグループに属している。また、多くの作品では強力な兵装として描かれることが多いビーム兵器は「ナノラミネートアーマー」という耐ビームコーティング技術の発達により逆に廃ってしまっており、武装は鈍器や実弾などの実体兵装が主流。
動力には「エイハブ・リアクター」と呼ばれる相転移炉が用いられており、中でも72機がロールアウトしたガンダム・フレームはエイハブ・リアクター2基を並列同期稼動させているため非常に高出力。
このエイハブ・リアクターは炉ごとに固有の波形を持つ磁気嵐「エイハブ・ウェーブ」を放っており、存在するだけで都市機能が麻痺するため都市部での運用は御法度とされているほか、エイハブ・ウェーブの波形から機体を割り出す技術も存在している。
作中の時代にはモビルスーツの製造技術は厄祭戦時の文明後退に伴い半ばロストテクノロジーと化しており、特にエイハブ・リアクターは治安維持組織ギャラルホルンでしか製造できないため、宇宙海賊など多くの組織は地表に埋もれていたり宇宙空間を漂っているMSを確保して修復、もしくは別の組織から購入や略奪などする形で調達している。
MSの開発能力を持つギャラルホルンやテイワズでも基礎から完全新機軸のMSを開発するのは難しいようで、ゲイレール・フレームをはじめとした歴代のギャラルホルン主力MSはヴァルキュリア・フレーム、テイワズ・フレームは詳細は明かされていないながら厄祭戦後期の高出力MSをそれぞれ源流としている。
パイロットの脊髄と機体を直結し直感的な操作を可能としている「阿頼耶識システム」もギャラルホルンは倫理的観点から施術を禁じており、世間に非合法に出回っているノウハウの劣化した施術方法は子供以外には定着しづらいうえに失敗して身体不随を引き起こす可能性も孕んだ危険なものとなっている。
またメタ的な所では、殆どのMSはフレームごとに用いられている型番に、メインとなったデザイナーの名前から抜き出したアルファベットが用いられているというお遊びが入っている。例としてガンダム・フレームは鷲尾直広氏の「WASHIO」から「ASW-G」という型番が設けられている。
アド・ステラ
成り立ちや動力は不明だが、宇宙開発が推し進められている事や作業機械であるモビルクラフトが存在している事から恐らくモビルクラフトの発展形もしくは大型化した宇宙服が基になっており、第三話でエアリアルのコクピットのUIが映し出された際に電池のマークがある事からバッテリー駆動と思われる。
思考による直感的な操作を可能とした「GUND-ARM」に分類されている機体群は、粒子間で情報共有を行う性質を持つ「パーメット」と呼ばれる物質を人体へ流入させ、それを介し義肢を動かすサイボーグ化医療技術「GUND」をモビルスーツに置き替える形で軍事転用されたものである。
ただ非侵襲性の技術にもパーメットは広く用いられており、一般的なモビルスーツやモビルクラフト、宇宙船などにも素材に混入させたパーメットを介して人と機械を接続・連携させる技術「パーメットリンク」が用いられている。
搭乗する際には起動キーとしてコンソールにセットするスマートフォン型のトークンと、背もたれのプラグを接続するためのソケットを背中に有した衣服(恐らくは先述のパーメットリンク用、多くの場合ノーマルスーツだがジャケットタイプもある)が必要になる。
本作における政府機関である「宇宙議会連合」もカラゴールというMSを保有しているが、主に描写されているのはドミニコス隊のような「ベネリットグループ」が私兵として運用しているものや、同グループの保有する「アスティカシア高等専門学園」にて教習や決闘に用いられる学校備品あるいは生徒の持ち込み品、アーシアン(地球残留者)のテロリスト「フォルドの夜明け」の所有機など国家の兵器としての枠を外れたものが多い。
パーメット識別コードは自動車のナンバーのように申請する必要があるらしく、それによってパーメット機器のトレーサビリティを担保するともにスペーシアン(宇宙暮らし)に対し弱い立場にあるアーシアンや宇宙海賊などによる密造や増長を防ぐ目論見があると思われる。
後述の条約の事情もあり、スペーシアンの運用する兵装は基本的にビーム兵器のみ。
決闘においては出力を30%落とさた緑色の発光色となっており、リミッターを解除すれば青色や紫色をした実戦仕様の出力となる。どちらもMSに対する破壊力はさほど変わらないが、実戦仕様の出力では耐ビーム処理が施された戦術試験区域の内壁も破壊し得る威力となる。
実弾兵装を使うのは現状フォルドの夜明けの運用するMSのみで、「宇宙を汚すな」と守備隊のパイロットが口にしたことから、宇宙にばら撒かれた砲弾や薬莢などがスペースデブリになる危険性があることからスペーシアンは条約によって実弾兵装を廃止していることが窺える。
先の戦争では無線操縦によるドローン兵装が台頭していたとされ、本編より21年前のA.S.101年を描いた『PROLOGUE』の時点でGUNDフォーマットとドローン技術を掛け合わせた装備と思われる無線遠隔攻撃端末「GUNDビット(ガンビット)」やそのドローン兵装を無力化するシステム「アンチドート」が登場しているなど、先の戦争による影響で無線兵装に関する技術は他作品と比べてもかなり発達していることが窺える。
関連項目
メタルアーマー:オマージュにあたる他作品の人型ロボット。