概要
地球連邦側からUEと呼ばれていた火星独立国家であり、AG以前に行われた「火星移住計画マーズバースディ」によって火星圏に建造された16基のコロニーへ移り住んだ者達の末裔。
当初、火星は土地も広大で資源も豊富であると言われ、新天地として期待されていた。
しかし、いざ火星へ移住したはいいものの、計画の要であった火星のテラフォーミングに失敗した上それが原因で高致死性の疫病マーズレイが発生。移住者の20パーセント超が死亡するという大惨事となった為に計画は頓挫し、以降の移住計画もすべて白紙に戻されたうえ、マーズレイ発生責任の回避を計った地球連邦によって移住計画があったという事実そのものが歴史から隠蔽されるに至り、火星移民者達は地球に帰ることもできずに見捨てられる形となった(連邦は表向きでは蔓延した死病で移民は全滅したと言うでたらめな公式発表をした)。
150年という長い間、過酷な環境での生活を強いられている為か、全体主義的な国家体制を成す。
住民は中東の民族衣装の様な服を着ており、コロニー内の街並みも中東のような石造りのものとなっている。また端末などの表記には独特なフォントのアルファベットが使用されている(その形状故に非常に解りづらいが、作中におけるヴェイガンの端末・画面表記をよく読んでみれば『CALL』『Fazard』『diva』『caution』などと言った単語を確認できる)おり、数字表記にはローマ数字が用いられている(ローマ数字には0を示す文字は無いため、アルファベットのOによって代用されている)。
自分達を火星へ置き去りにした地球圏の人々を地球種と呼んで蔑み、憎んでいる。
また、長い時間の間に火星作業機械(ドラゴンに酷似していたとのこと)を発展させた独自の兵器を開発し、加えて指導者であるフェザール・イゼルカントが失われた技術を収めたデータベース「EXA-DB」からデータの一部を入手した結果、軍事テクノロジーの多くを廃絶した地球圏より隔絶した軍事技術を保有するに至っている。
結果として地球連邦のそれを上回る性能のMSの開発、Xラウンダーと呼ばれる優秀な戦闘要員の育成にも成功したヴェイガンは、自分たちを置きざりにした地球連邦を壊滅させ、自らの手に青き地球の大地を取り戻さんと、地球侵略計画プロジェクト・エデンを発動し、全面対決に打って出ることとなる。
AG115年のコウモリ退治戦役以降からは本格的に地球連邦と全面戦争に突入しており、勢力圏を拡大していった。なお、その間に地球側でも公表されたのか軍や民間にヴェイガンの正体は認知されていった模様。
ノベライズ版によると計画そのものは隠蔽されていないがマーズレイ発生の「詰め腹」を切られる事を恐れた連邦政府が火星移民の全滅まで事態を傍観することを選択し、移住者達からの地球帰還要請を拒否してしまった。その上失敗した同時期にザラムとエウバのコロニー国家戦争が勃発、半世紀にわたる戦争で地球圏のネットワークが滅茶苦茶になった事を利用して、連邦は戦争中に火星移民は地球圏に帰還したと情報を改竄していた。しかし、その戦争のせいで人口が激減したためか火星移住計画を覚えている地球圏の人間は皆無となったうえそれらの記録もすべて消し去ったため、結果的に火星に取り残された人々の事は忘れられてしまうこととなった。
生活環境
先述でも記されたように過酷な環境の中で生活していた為か国家体制は全体主義のようになっている。
首都は火星の衛星軌道上に浮かぶ火星圏最大のコロニー「セカンドムーン」で球体が左右に殻のようなものがついている形が特徴(元々は火星開拓の拠点であり移動可能な宇宙船だった)。セカンドムーンには中東のような石造りの建物が並ぶ街なみが広がっている。交通網はモノレールや電気自動車を用いる。また空も地球圏のコロニーと違い空が広がる(ホログラムらしい)。日本じみた習慣(入浴文化など)がある模様。また他にも通常のコロニーが幾つかある。
資源が限られている為か無駄にしないようリサイクルされており、それは生活関連からMS関連まで徹底している。そのため生活サイクルは地球圏より効率の良いものとなっているのだが医療関連は滞っており、マーズレイによって短命な人間も多くいる(なお、マーズレイについては個別記事にて参照)。
なお、作中で食事シーンも幾度か描かれていたが庶民の食事は通常、パン一切れと粗末なスープ。
(最高指導者である)イゼルカントがキオを国賓として招待するシーンもあったのだが、そこで出された晩餐もナンとカレー風のシチューを中心にした質素な物であり地球圏に比べると明らかに食料事情は劣悪であると考えられる。
(なお、地球圏では一般家庭でももっと良い夕食をとっている描写がある)
……マーズレイがここまで悪化した原因のひとつが栄養失調と考えるのは考えすぎだろうか?
実態
高度な軍事技術力と、指導者を崇拝する結束力を保有するが、人材と物資が圧倒的に乏しいこともあり、有能な戦闘員をコールドスリープで温存している。階級制度は無いが立場により軍服が異なっていたり目上の者を「様」付けで呼ぶ等、上下関係はしっかりしている。まだ「UE」と呼ばれていた開戦当初はステルス技術と隠蔽工作によって効果的に立ち回っていたが、敵がAGEシステムによって強化されていき、戦争が長期化すると徐々に綻びが出るようになった。だがそれでも敵の本部を破壊することに成功させ、地球本土への降下・侵攻を開始している。
幼少期から高い技術を持つMSパイロットとして温存されていたデシル・ガレットは、ふと気付けば弟が指揮する部隊の一兵卒として不満を抱いたまま使われてしまった。それ以外の兵士も「なぜあんな若造が現場指揮官なのか?」という疑問を抱いたまま戦場に赴くため、部隊内の上下関係は完全に冷え切っており、組織内の連携もロクに取れていない有様であった。
その上、何故か効果的な侵攻作戦を行わず、敵に猶予を与えてしまう隙があるような作戦を実行している(まるで痛めつけるかの如くコロニーがじわじわと崩壊するような攻撃をして民間人と敵軍が避難するチャンスを与えたり、敵基地に時限爆弾をセットしておきながら味方が退避する為とか言って爆破までの時間を長めにしたりする等)ため、「この作戦は舐めプではないのか」「イゼルカント様は何を考えてるのか」と敵味方双方から疑問に思われていたが実はこれにはイゼルカントが仕組んだプロジェクト・エデンのとんでもない思惑が隠されていたのだ。
ゼハート・ガレットは珍しくも部下を尊重する指揮官であり、結果的に作戦失敗が続いても重要作戦に関わる事が多くなった。それでも部下の大半はコールドスリープから目覚めた知らない人だらけで人心掌握も出来ず、焦ってMSに乗って戦場に飛び出してしまった間に指揮官不在となって作戦失敗。そんな人物であってもイゼルカント様の勅命で全権委任されたりしてしまう。
コールドスリープで若いままの肉体を保ちつつ、両陣営の技術を統合した最強MSに搭乗していても、絶えまぬ努力で技量を磨くタイプの人には全く勝てなかった。
なお、買収や脅迫で大勢の地球種を内通者にしており、その中には地球連邦政府の首脳部までも先祖のマーズバースディに関係した不正行為をネタに脅されヴェイガンに内通させていたが、所詮ヴェイガンにとっては内通者も捨て駒に過ぎないのである(また内通者一掃後の連邦政府新体制の腐敗に怒ったのかザラムやエウバの中からヴェイガンに協力するセクトまで現れ始めている)。
終戦までの道のり
ラ・グラミス最終決戦の後、ネームドキャラの大半は戦死し、生き残った軍人といえばファルク・オクラムドくらい(小説版ではザナルド・ベイハートも生き残って入るので少しはマシではあるが)だった。
残された軍人たちに終戦処理が上手く出来るのかという不満とそれに伴う不確定要素を多く抱えているためヴェイガン内では不安の声が広がっていった。当然ながらこれを良しとしない残党勢力は多く存在し、戦後しばらくは大なり小なり局地戦紛争が展開されることとなる。
元はと言えばマーズバースディの失敗が原因であり、これを解決すれば残党も降伏し戦争の終結ができると連邦側は思っていたのだが事が上手く進むわけはなく、マーズレイを解消するための『イヴァースシステム』が完成・実施するまで紛争は終わらなかったのである。結局ヴェイガン側が納得するまでに30年もの歳月を費やす結果となり、マーズレイの解決と火星開拓計画の再開によって一応は和平が結ばれたようではある。
関連キャラクター
第一部に登場したヴェイガンのMS・キャラクターの概要は「UE」の記事を参照
第2部
ゼハート・ガレット(第3部にも登場)
フェザール・イゼルカント(第3部にも登場)
第3部
第4部
連邦軍から寝返ったメンバー
関連メカニック
MS
ヴェイガンの戦力の中核を担うのはMSである。EXA-DBのサブユニットから得た技術データをベースに強力な機体を仕上げている。
腰部にスカート状に折りたたまれた翼と尾のようなパーツを持つ。
翼状のパーツはそれ自体が推進システムとして使用可能であり、同じ技術を用いた板状のパーツが各部に装備されている。
左右の掌にはビームサーベル発生器兼用のビームバルカンが内蔵され、胸部にもビーム兵装を持ち、尾もそれぞれ何らかの武装(ビームライフル・実体剣など)として機能する。
また、各機とも両手の親指と小指が左右対称の長さと形状になっている。これはパーツを使いまわせるようにするためであり、ほかのパーツも極力左右対称の作りにしリサイクルを徹底している。そのため左右非対称な機体はほぼ存在しない。掌の形状の問題から当初は手持ち武器を装備した機体は無かったが、後に専用の手持ち火器が開発されている。
コックピットは胴体や胸部ではなく頭部にあり、搭乗スペース確保のためなのか連邦のMSより頭身が低い。各部は技術の流出を防ぐ目的で機能不全に陥った部位は自動的にパージ・自爆する構造となっている。
非常に堅牢な電磁装甲とそれを応用した高いステルス性能を持ち、ジェノアスのビームスプレーガンといった従来の通常兵器では傷一つ付けることができなかったが、ドッズライフルなどの登場により優位性は失われ、バクトに搭載されていた強化型電磁装甲が防御の要として標準装備となった。
ガフランと言った初期の機体は地球圏内の拠点が連邦領内から比較的離れていたため、長距離飛行能力を持つ可変機が主力であった(エネルギー温存のため武装は必要最低限にし、防御用の電磁装甲も腕部しか搭載されなかった)が、140年頃は勢力拡大に伴いその必要性が薄れた為、より人型に近い機体が投入されるようになっていった。
地球本土への侵攻を開始した160年代から投入された重力下で運用される機体は地球の自然環境・不規則な地形などに対応すべく人型に捕われない怪獣のような異形なデザインの機体が数多く開発されている。
また、機械らしい直線的なデザインを持つ連邦軍のモビルスーツとは対照的に、生物的な曲面主体のフォルムを持ち、一時期オーラバトラーやギーガーのエイリアン、ヴァジュラに例えられていたこともある。
(実際、オーラバトラー風のUEが描かれたりプラモデルがオーラバトラー・カラーに塗られたりしたこともある)
尚、ヴェイガンのMSの開発母体となった火星開拓用のMSはドラゴンのような形状をしていたらしく、これが異形なデザインへ繋がっていった模様。
第2部
第3部
第4部
連邦製の機体
ティエルヴァ(第4部)
PSP版の機体
グルード(UNKNOWN SOLDIERSにも登場、ラ・グラミス攻防戦にてロールアウト)
外伝の機体
艦艇
ファ・ゼオス(第3部)
要塞・コロニー
ラ・グラミス(第4部)
関連タグ
火星独立ジオン軍オールズモビル軍:同じく火星を本拠とする他のガンダムシリーズの敵勢力。
ジオン軍:オマージュと思われるガンダムシリーズの敵勢力。上記のオールズモビルの前身である。
木星帝国:他のガンダム作品の地球圏以外の天体を本拠としている敵勢力。こちらは地球側からの援助があまりなされていない為に貧しい状況となっており、それに不満を抱いた結果、地球侵攻を決意している。
木連:『機動戦艦ナデシコ』の組織。正体が判明するまでは地球側に「木星トカゲ」と呼ばれていた事、その正体が追放された地球人で地球への復讐のために戦争を始めた事、地球側がその正体を隠蔽していた事など共通点が多い。スパロボBXでは過去に木星圏への移住にヴェイガンが協力していた、というクロスオーバーがされており同じ境遇とその恩から同盟を組んでいる(流石にゲキ・ガンガーのノリは理解できなかったが)。
重装機兵レイノス:同じく、『正体不明の敵が、実は見捨てられた地球人だった』パターンの作品。
ヴァース帝国:火星の開拓民が地球に見捨てられ、国家を形成し地球侵略を始めた繋がり。こちらは国家形成から30年と比較的若く、また地球側も入植があった事とその存在自体は認めている点などが異なる(ただし、支援を始めとする陳情は無視している状態)。
ディガルド武国:とあるルートから入手した、主人公勢とは一線を画す技術力を持ち、特殊な兵器でのみ倒せる爬虫類のようなメカが主力の点が共通する。ちなみにダナジンはゾイドに酷似しているとファンからよくいわれている。