概要
一般的には鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池など二次電池を利用したもの(BEV=Battery Electric Vehicle)を指す。ソーラーパネルで発電した電力で走る車(ソーラーカー)もあるが、ソーラーパネルだけでは自動車を走らせるのに十分な電力を供給するのは難しいため実験的車両の域を出ていない。
なおシリーズ式ハイブリッド車(日産のe-Powerなど)や燃料電池車(FCV)も電気を動力源とし電動モーターで駆動するため、これらも電気自動車の一種とも言えるが、燃料を必要とする点でバッテリー駆動の電気自動車とは区別される。
モータースポーツの分野では以前は色物のような扱いであったが、ドイツ勢がこぞって電気自動車をアピールするために電気駆動のレーシングカーを開発するようになっており、急激に存在感を増している。
歴史
初の量産電気自動車は1880年代の英国で登場、20世紀初頭にかけてガソリン車・蒸気自動車と覇を競った。
当時の電気自動車は動力源として大きく重く有害な硫酸や鉛を使う鉛蓄電池に頼らざるを得なかったものの、ガソリン車に必要とされるトランスミッションが不必要であり、機構がシンプルで容易に量産できた。1900年、発明王トーマス・エジソンは来るべき大衆車時代を見据え、安全性が高いニッケル・鉄電池(エジソン電池)を開発したが、様々な問題から普及しなかった。
初期のガソリン車は後年より遥かに信頼性が低く、現在のマニュアルトランスミッションより扱いの面倒なドグミッションだった上、セルモーターを搭載しておらず、始動時には全力でクランクを回さなければならなかった。騒音や振動も激しかった。一方の蒸気自動車もボイラーの整備が難しく、一般ユーザーが簡単に扱えるものではなかった。また始動に時間を要し、瞬間湯沸かし式ボイラーが実用化されてからも2~3分程度の時間がかかった。このため、静かで扱いが易しく、非力な女性ドライバーでも運転できる電気自動車が一定の支持を集めたのである。
しかし1908年に変速の容易な遊星歯車式変速機(一種のセミAT)を搭載したフォード・モデルTが登場すると大勢はガソリン車優位に決し、1917年にモデルTがセルモーターを搭載すると電気自動車や蒸気自動車は競争力を失った。1920年代の早い時期に電気自動車は構内作業用くらいにしか使われなくなり、やや遅れて蒸気自動車も姿を消した。
第二次世界大戦後の日本では、本土空襲による工場の破壊で電力が余っていたことと、燃料不足により電気自動車が一時復活する(→たま電気自動車)が、朝鮮戦争による鉛価格の上昇により短期間で姿を消した。
電気自動車は、1970年代の低排出ガス化の要求とオイルショックにより「低公害車」(エコカー)の本命として注目を浴びるが、肝心のバッテリーの性能はニッケル・鉄電池やニッケル・カドミウム蓄電池(ニカド電池)でも満足のいくものではなく、電気自動車が日の目を見るのにはそれからさらに長い時間がかかった。バッテリーのエネルギー密度の低さという問題を解決するため燃料電池の研究も進められた。1990年代にリチウムイオン電池が登場し、(コスト面はともかく)バッテリーで一定の航続距離を確保できる目処がようやく立ち始めた。
電気自動車の性能が注目を集めたのは2004年に慶應大学などが開発した「エリーカ」(8輪駆動のダイレクトドライブで最高時速370km)の登場がきっかけ。電気自動車が一般販売されビジネスとして成り立つと認められたのは、テスラ・モーターズが2006年に発表、2008年に生産を開始した「テスラ・ロードスター」が登場してからである。
なお上述の「エリーカ」については商品化を目指して「SIM-Drive」という企業が立ち上げられたが、機構面で独自性が強すぎて市販車からの部品流用が不可能だったため、解散・会社清算に至っている。
大まかな分類
動力源
- 一次電池
- 二次電池(鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池など)
日本の法律では(一応)電気自動車扱いになるもの
制御方式・搭載しているモーター
整流子モーター
- 抵抗制御(大電力用半導体が普及する前のものに採用されていた)
- 電機子チョッパ制御(軽自動車規格以上のコンバートEV(※)によく見受けられる)
永久磁石式三相同期モーター
- VVVF制御(自動車メーカーが現在市販しているものはこれを採用している)
三相誘導モーター
- VVVF制御(海外のメーカーに採用例がある)
※・・・動力源と駆動装置の積み替えによる改造で電気自動車になったもの。
モーターの搭載方法
減速機とデフを介する
内燃機関車のエンジンルームに相当する空間や後輪軸上に搭載する一般的なレイアウトで、後述のダイレクトドライブ方式に比べて若干伝達効率は落ちるが、搭載空間に余裕があるので大出力のモーターを実装するのが容易。さらに減速機に代えて変速機を搭載すれば高速性能の向上が望める。
ダイレクトドライブ
車輪にモーター、ブレーキなどが一体となった駆動ユニットを取り付け駆動する。効率は良いが、ばね下重量が重くなり(走行ユニット単体で20kg~50kg以上ある)しかも晒される環境は非常に苛酷で、その対策を行おうとすると余計に重くなるなど実装はとても困難。ホイールハウス内部で機構が完結する関係上、高性能化しづらいという問題もある。
ただ、電動式の原付やマイクロカーなど元々のサイズが小型軽量で、短距離運用や晒される環境も大して苛酷でないものには採用車種(ヤマハ EC-03など)が登場している。
利点・欠点
利点
- 排ガスが少なく(Climate Feedback)、排気音が小さい。製造から廃車までのライフサイクル全体で見ても電気自動車の二酸化炭素排出量は内燃機関車の3分の1である(KDDI総合研究所)。
- 起動直後からパワーを発生するモーターの特性上、低速時トルクが非常に太く(搭載しているモーターの性能にもよるが)初期加速力に優れる。
- 発進時から最大トルクを発生するのでトランスミッションが不要、。(もっとも、モーターは極端な高回転では効率が下がるので、高速巡航用の効率改善にはトランスミッション搭載が望ましい)。
- 回生ブレーキが使用可能
尚、これら電気自動車固有の利点ではなくハイブリッド車なども持っている利点である。
- エンジンや補機がいらないので、エンジン付きでは困難な斬新なデザインの車も実現できる。
- 原油は多くを中東などに依存し不安定だが、発電には様々な手段がある。
- 技術的には既存技術の発展、転用なので容易に製造出来る。
- メンテナンスが内燃機関車より容易である(米国エネルギー省)
- ランニングコストが日本を含む世界各国で内燃機関車より安い。ノルウェーに至っては10分の1以下である。(Carbon Brief)
- 火災リスクは内燃機関車より低い(バージニア州フェアファックス郡)。
欠点
- 静穏性が高いため、歩行者などが車の存在に気づきにくい。
_バッテリー、モーターの重量が重く、それを支える為フレーム強度がより求められその結果、車体全体で更なる重量増となる。(軽いものでも250kg,重いものだと500kgほど)
__重い為、タイヤや道路などの損耗が激しくなる。また立体駐車場などへの負担も増大し、倒壊事故に繋がった例もある。
_バッテリーのエネルギー密度が物理特性上、ガソリンの20分の1しか無いため、根本的に高性能化が不可能。
_リチウムイオン電池は原理的に可燃物、火種、酸素が内部で自己完結するため外部からの消化が困難、水による消火は基本的に不可能、専用薬剤等による消火しか手段がなく重大化しやすい。。
_エネルギー源をガソリン以外に転換したとしても、アスファルト、オイル、シール類など石油を原材料とする素材で成り立っているため、ガソリン供給を抑制することで部品やアスファルトの供給が減少するため「電気自動車に一元化する前に頓挫する」
将来像
21世紀に入り地球温暖化問題や新興国の大気汚染の深刻化に伴い、温室効果ガス(主には二酸化炭素)や汚染物質を出さない移動手段が強く求められたこと、中東情勢と原油価格が慢性的に不安定であることなどから、電気自動車が一般向けの自動車として再び普及し始めた。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」では、道路輸送部門(二酸化炭素排出量全体の約15%を占める)の脱炭素化のための技術として電気自動車が有望視されている。
特に、2015年に発覚したディーゼル・ゲート(フォルクスワーゲンのディーゼル排出ガス検査における不正行為)を機に、欧州と中国を中心に電動車(プラグインハイブリッド車を含む)へのシフトが急激に進んでいる。欧州においてはロシアが強い影響力をもつ燃料資源の回避という政治的な背景もあり推進が急がれている。
また先進国を中心に「企業平均燃費」(CAFE)による規制が導入され、自動車重量に応じたCO2排出量が基準を超えたメーカーには罰金が課せられるようになっているため、燃費の悪い車を多く売る技術が未熟なメーカーにとっては電気自動車の開発・販売が急務となっている。
乗用車(日本国内)
- bZ4X(SUBARUと共同開発、SOLTERRAとは兄弟車)
- i-MiEV(2018年4月~2021年3月)
- SOLTERRA(トヨタと共同開発、bZ4Xとは兄弟車)
軽自動車(日本国内)
- C⁺pod
- 2023年度に導入予定(商用:スズキ・ダイハツ・CJPTと共同開発)。
- i-MiEV(2009年7月~2018年4月)
- MINICAB-MiEV⇒MINICAB EV
- eKクロスEV(日産自動車との合弁会社NMKVで共同開発、サクラとは兄弟車)
- 2023年度に導入予定(商用:トヨタ・スズキ・CJPTと共同開発)。
- 2025年頃に発表予定(商用とは別)。
- 2023年度に導入予定(商用:トヨタ・ダイハツ・CJPTと共同開発)。
- 2025年頃に発表予定(商用とは別)。
商用車(日本国内)
関連項目
電車 トロリーバス 電気飛行機 ソーラーカー 電動アシスト自転車 セグウェイ フォークリフト
たま電気自動車 だん吉(ザ!鉄腕!DASH!!) 日産リーフ 日産アリア 日産サクラ TESLA BYD
出川哲朗の充電させてもらえませんか?・・・電気自動車(電動バイク)の航続距離の短さをネタにした番組。
FormulaE・・・電気自動車を使用した自動車レース。
リッジレーサー・・・『6』と『7』で登場するスペシャルマシン、「ヒンメル・490B」のエンジン型式がモーター駆動である為、490Bが設定上ではリッジレーサーシリーズで唯一の電気自動車となっている。