日本における小型自動車の規格。ここでは単に「軽自動車」と呼ばれる軽四輪車・軽三輪車について主に記述し、道路運送車両法で地方税の軽自動車税課税対象となる自動二輪車(軽二輪)について補足する。
軽自動車
日本における小型自動車(サブコンパクトカー/マイクロカー)の規格。小さくて取り回しやすく、ランニングコストが安い上に、交通法上、普通乗用車との差異がない(普通乗用車が走れるところは軽自動車も走れる)ため、多くの家庭で日常の足として愛用されているほか、小口配送・農林漁業など業務用としても重宝されている。現在は全て四輪車だが、過去には軽オート三輪もあった。
類似のマイクロカーの規格としては他にフランスのクワドリシクル(日本では「四輪原付」などと訳される)などもあるが、免許がなくても乗れるかわりに乗員2人、車両重量400kg以下、最高時速45km以下など極端に制約が多く、軽自動車とミニカーの中間的な規格である。国土交通省はこのクワドリシクル相当の規格を「超小型モビリティ」として認定制度を創設したが、安全面や実用面で制約が多く、普及は進んでいない。
韓国の軽車(キョンチャ)は日本の軽自動車に倣った規格で、業務用の軽バンや軽トラックはよく見かけるが(全幅・全長・排気量とも日本の軽より一回り大きい)、見栄の張れる大型車が好まれる韓国では(韓国のベストセラーカーのヒュンダイ・ソナタはトヨタ・カムリ相当の大型セダンである)、乗用の軽車はそれほど支持されているとはいえない。軽自動車が日本で絶大な支持を受けている要因に「税制優遇があるから」と言われるが、軽車は日本の軽以上に優遇されているのに、韓国ではそれほど成功していない現状に、日韓の文化の差がうかがえる(もちろん道路の幅の広さなどのインフラ面の要因も考えられるが)。
軽自動車のクラス的な位置づけは超小型車というより欧州のAセグメントに近く、欧州で販売されている軽自動車はAセグメントに分類されているが、欧州仕様の軽自動車をはじめAセグメント車の排気量は1000cc程度のものが多い。また、欧州で販売されるAセグメント車は日本の軽自動車ベースの車種(ジムニー等)も含め、軽自動車より車幅が広くなっているものがほとんど。とはいえ過去の欧州の小型大衆車の多く、例えばクラシックMiniは、現在の日本の軽自動車規格に収まるサイズであり、ミニは660ccエンジンに換装することで軽登録も可能である。
現在でもアジアの新興国では、軽相当のサイズの小型車が支持を受けており、インドのタタ・ナノや中国のチェリー・QQのサイズは軽に極めて近い(ただし、全幅が軽規格より僅かに大きい1495mmとなっている)。また日本の軽をベースに現地生産された車や、日本から輸出された軽自動車もよく見かける(後述)。
特筆すべきは後の時代に他国の超小型自動車とは違い本格的な四輪車のジャンルとして地位を確立し、ハッチバックをはじめ、トールワゴン(軽トールワゴン)、ミニバン、クロスオーバーSUV、トラック(軽トラ)、クロスカントリー車、オープンカー・・・と(スペース効率に劣るセダンやクーペやピックアップトラックを除き)一般的な自動車として考え得る大抵のボディ形状をそろえていることである(ただし軽セダンは2002年までオプティが生産されていたほか、1980年代以前にはマイティボーイなどの軽ピックアップ、360cc時代にはR360など軽のクーペもあった)。
軽自動車の歴史
軽自動車の規格が初めて設定されたのは1949年だが、当時はサイズ(幅1メートル以下)・排気量(4サイクル150cc以下、2サイクル100cc以下)ともにあまりにも小さすぎ、このサイズでは実用的な自動車は実現困難として、この規格に沿った自動車はしばらく登場しなかった。その後幾度かの改訂を重ねて、1954年に排気量360cc(2サイクル車は240cc)、全長3メートル、全幅1.2メートルとして設定され、ホープ自動車などの中小メーカーからこの規格に基づいたオート三輪が次々と登場する。三輪車は同程度の大きさの四輪トラックよりも小回りが利くことから、当時の狭隘な市街地や農道には適していたのである。
1954年の4ストと2ストの排気量の統一を経て、1955年に鈴木自動車工業(現スズキ)が初の4人乗り軽乗用車スズライトを発売したが、パッケージングに課題を抱え後席に大人が乗るのは事実上不可能であり、当時の前輪駆動の技術的未熟さもあって成功を収められなかった。軽乗用車市場を確立したのは1958年に登場した富士重工業のスバル360である。同車は軽自動車規格内に大人4人が一応座れる程度の空間を確保し、なおかつ当時の水準を超える走行性能を実現。戦後初の純国産乗用車であるトヨペット・クラウンの半値以下であったことから爆発的ヒットとなり、その後の軽自動車の趨勢を決めた。
軽オート三輪では、普通自動車のオート三輪に実績のある東洋工業(現マツダ)、新三菱重工業(現三菱自動車)など大手企業が続々と参入し、特に1957年に登場したダイハツのミゼットは大ヒットしたが、1961年に富士重工業がスバル360のコンポーネントを利用した軽四輪トラックサンバーを出すと、居住性が悪く高速走行に向かない上、構造上荷台長が短い軽三輪トラックは急激に衰退した。ただ、登録車のオート三輪に比べると、維持ハードルの低い軽三輪は比較的後年になるまで残存率が高かったようだ(『こち亀』の連載開始が1976年だが、その頃はまだ都内を普通に走っていた。中川圭一が拳銃の誤射で破壊してしまうのが軽三輪である)。
新興の二輪メーカーであった本田技研工業は1963年、前年のモーターショーで披露されたスポーツ360(市販されず)と基本的に同じ高回転型DOHCエンジンを搭載した軽トラックT360で四輪に進出。8500回転で30馬力を発生する高性能から「オバケ軽トラ」「スポーツトラック」として名を馳せた(当時のスバル360のエンジン出力は18馬力である)。1967年にホンダが発売したN360は軽自動車のパワー競争に火をつけ、スバル360の軽自動車販売台数トップの座をまたたくまに奪取。ホンダの四輪市場での地歩を築くとともに、1973年のオイルショックまでの数年間に渡る軽自動車市場の再活性化の火付け役となった。もっとも同車は騒音や振動の激しさや挙動の不安定さなど荒削りな面も目立ち、訴訟騒ぎ(ユーザーユニオン事件)を引き起こしてホンダの軽乗用車からの一時撤退の遠因にもなってしまった。
360cc時代の異色モデルとして、レジャー用として企画されたオープンタイプの軽商用車であるダイハツ・フェローバギィ(1970年)とバモスホンダ(1970-1973年)がある。しかし、このような遊び心にあふれたクルマは1970年代には時期尚早だったのかフェローバギィは100台限定、バモスホンダも商業的成功は収められなかった。また、これに先立つ1967年、いったん自動車事業から撤退し遊具メーカーに転進していたホープ自動車は自動車メーカーとしての再起をかけて本格不整地用四輪駆動車ホープスターON4WDを軽商用車として開発するが量産には至らず、同車の製造権はスズキが買い取り全面的再設計の上1970年にジムニーとして発売した。1990年代後半以降主流のパッケージングとなる軽トールワゴンも、1972年にホンダ・ライフステップバンとして登場しているが、荷室有効長で不利となり他社のワンボックスカーに対抗できなかった。結局ホンダも1977年にアクティで軽ワンボックスに参入する。
1973年のオイルショックにより、自動車は高性能なだけでは商品として成立しなくなり、排ガスの清浄化も求められ始めた。しかし当時の技術では360ccエンジンでクリーンな排気とドライバビリティの両立は難しく、軽規格は1976年に排ガス対策で550ccに拡大された。排ガス対策のためのコスト増に加え軽乗用車のデラックス化が進んで割安感が薄れたため軽自動車は一時沈滞期を迎えるが、1979年にはスズキが商用規格として2人乗りに割り切り47万円の激安価格を実現したアルトで「2台目需要」を掘り起こし、軽ボンバンブームを巻き起こす。
ワンボックスでは、1980年にサンバー4WDが発売されると、特にスキープレーヤーに「手軽に買えて荷物が乗せられて普段は街乗りに使えるクルマ」として見出され、乗用車志向の軽ワンボックスバンが発売されるようになる。それらは後部座席も豪華で事実上乗用車に他ならなかったが、登録上乗用車に変更したところで「軽自動車の規格上5人乗り以上にできない」「最大積載量が100kgに落ちてしまう」「車検も軽貨物は2年車検なのでメリットがない」とデメリットが多かったため長年商用車(4ナンバー車)扱いだった。
排ガス規制後の技術発展で余裕が生まれた1980年代は自動車(二輪車・四輪車)のパワー競争が盛んだった時代である。軽自動車も例外ではなく、スズキが1986年に発売したアルトのスポーツモデルアルトワークスを皮切りにパワー競争に再突入するが、若者の無謀運転が問題視された世相もあり、同車の最大出力64馬力が軽自動車の自主規制値として設定された。1989年の物品税廃止により軽ボンバンのメリットが少なくなり、軽乗用車の主流は乗用車型(5ナンバー車)に戻った。
1990年にはカーエアコンの普及などを背景に、軽規格の排気量が660ccに拡大され、衝突安全性能も意識してボディサイズも少し大型化した。1993年に登場したスズキのワゴンRは合理的なパッケージングが1990年代のバブル崩壊後の世相にマッチして大ヒットし、軽トールワゴンを一気に軽乗用市場の主流にした。時期的なものもあってダイハツ・ムーヴともども全車5ナンバーであったが、三菱・トッポBJには4ナンバー車が設定されていた。
一方軽ワンボックスは物品税廃止・660cc化後もしばらく「事実上乗用車」であっても登録上4ナンバー車が続いたが、1997年になって「リスク細分型保険」が登場すると、当初は貨物車は適用範囲外だったため、この恩恵が受けられないことから各社5ナンバー登録(ワゴン)を発売する。しかし「乗用ライクな4ナンバー車」も、リスク細分型保険の恩恵があまりない若者を中心に依然として需要があり、上位車種として残った。しかしキャブオーバースタイルは衝突安全性の面での不利が指摘されるようになり、1998年の規格拡大の際には、スバルを除いた各社とも、短いボンネットを設けたミニバンスタイルに変わっていく(スバル・サンバーは最小旋回半径を小さくするため、従来のコンポーネントのままクラッシャブルゾーン分のノーズを突き出したスタイルになった)。スズキは唯一、2005年発売の5代目エブリィから公式に「ミニバン」を名乗っている。この遷移の中でも引き続き「4ナンバー登録の実態乗用車」のラインナップも続く。2007年に入ると法改正で(5ナンバー車と比べると条件が限定されるが)自家用車については軽4ナンバー車にもリスク細分型保険が認められるようになり、加えて圧倒的な軽自動車税の安さ(自治体にもよるが、基準値は年6,000円)もあり、各社とも製造・販売を続けている。
衝突安全対策でサイズを拡大した現行の規格(新660cc)は1998年に制定された。2017年以降、日本で一番売れている車は軽自動車(ホンダ・N-BOX)であり、かつての軽ボンバン時代のような地方の「2台持ち」需要ばかりでなく、都市部の家庭のファミリーカーとしても広く愛用されている。
軽四輪車の規格
現行の軽四輪規格は排気量は660cc、車体サイズは全長3.4m、全幅1.48m、全高2m以下、貨物積載量350kg以下と一般的なコンパクトカーより一回り小さい大きさが設定されている。ナンバープレートは黄色地に黒文字(自家用車)、黒地に黄文字(事業用車)。字光式ナンバーは現在のところ自家用車用しかなく、登録車と異なり文字の輪郭が透過して発光する形式となっている。
図柄入り等の特別仕様ナンバーは登録車同様の白地に緑文字に絵柄入りと、白地に緑文字の絵柄に加えて黄色枠となっているものがある。
この規格に当てはまる輸入車はケータハム・カーズ(イギリス)セブン160、エクサム・マルチトラック(フランス)くらいしかない(かつてはスマートKやCT&T・eZoneなどもあった)。もっとも(上記のマルチトラックを含め)欧州のクワドリシクルは軽自動車より動力性能が著しく低く(重量車でも最高出力15kw)、街乗りの乗用車としても最低限以下の性能でしかないので、軽と同じ感覚で使うのは困難である。
軽自動車の燃料
現行の軽自動車は全てレギュラーガソリン仕様で、ハイオク仕様車は無い。ただし、1990年代〜2000年代にはヴィヴィオRX-R(最終型)やプレオRS(初期型)などのハイオク指定モデルが存在した。
「軽自動車っていうぐらいだから軽油で走るんでしょ?」と勘違いした人が、ガソリンスタンドで軽油を入れてエンジンを壊してしまうという冗談のような話がある。従業員が注意を促したり張り紙をしたりする対策をとっていたのだが、それでも説明を理解していない人が軽自動車に軽油を入れようとするためか、最近ではセルフの軽油給油機に注意書きがデカデカと書かれたカバーが付けられているところも出てきている。軽油を入れるのはディーゼルエンジンの車であるが、2021年5月の時点で登録認定されたディーゼルエンジンの軽自動車は1960年頃(詳細な年月不明)に発売されたヤンマー ポニー(FM1/FMS型)ただ1車種のみである。ただ、360ccで9馬力と、当時の基準で見ても圧倒的に非力であったため、わずか2年で生産終了に至っている。
技術的には660ccのディーゼルエンジンを製作することは十分可能だが、ディーゼルには高コストでエンジン自体が重く騒音と振動が多いうえ排気ガスが汚いという欠点がある。これを解消するため高度な機構を盛り込むと、ますます高価で重い車両になってしまい、軽には向かない。ディーゼルの低燃費の強みが生きるのは加減速が少ない長距離走行であり、これまた軽の一般的な利用パターンにはマッチしない。スズキは排気量0.8リットルのE型ディーゼルエンジンをインド向けに生産しているが、直列2気筒で騒音と振動はお察しレベルであり、インドのような新興国市場では通用しても日本市場では通用しない(そもそも環境規制をクリアできない)とみられる。
軽自動車の長所
日本市場のみの販売を前提に開発される軽自動車は、日本国内のニーズに特化されているので、一般の日本人にとっての使い勝手に優れている。
特に横幅の狭さゆえの狭い駐車場や道路での取り回しの良さ、なのに下手なコンパクトカーを上回る広々とした車内が魅力である。1989年に横幅1.7メートルを超える3ナンバー車に対する自動車税が大幅に軽減され、「広い車の方がいいだろう」と思って各社が3ナンバーセダンを次々と出したところ、むしろセダン離れを起こしたことがあった。日本では大きすぎたのである。近年の登録車は、輸出に傾倒する余り海外のニーズばかりを重視した(肥大化した)車が増え、国内専用車は(センチュリーや光岡自動車の各車種を別にすると)ある程度量販が見込める車種か10年以上モデルチェンジをしていない車種のみ(2023年現在ではプロボックス、カローラアクシオ、ルーミー、AD、クロスビー、フリードとそのOEM車程度)となった。アクシオを除くカローラですら3ナンバーとなったため、登録車は取り回しの良さを重視するユーザーに敬遠されるようになり、「軽シフト」に拍車がかかっている。
維持費の安さ
- 自動車税が安い(乗用で7,200円、貨物で4,000円。普通乗用は最低でも29,500円。ただし市町村によって若干異なる)
- 車検費用の相場は2/3(関東でカローラクラスだと格安車検屋でも大体\15万コース。軽だとディーラー車検でも大体\10万)
- 貨物車でも車検は2年ごと(登録貨物車は1年車検)
- 貨物車なら任意保険料が安い(ただし、貨物では年齢制限が適用されないことがあり、一概に安くなるとは言えない)
- 駐車場を借りる時に乗用車より軽自動車の方が安い価格にされていることが多い
軽自動車のメリットはなんと言っても維持費の安さである。(新車であれば)燃費が良く、タイヤなど消耗品の価格も低廉で、税金や車検費用も安いのである。中低速走行に最適化されているため、街乗りでの軽自動車の燃費は一般に(純ガソリン車の)コンパクトカーより優れている。
維持費の安さゆえに、S660やコペン、ジムニーのような趣味性の強いモデルも、登録車との「2台持ち」ユーザーから熱い支持を受けている(ジムニーに関しては「これでないと林道に入れない」という実用車としての需要も少なからずある)。マイカーの維持費をあまり気にしないアッパーミドルの階層にあっても、ステータスとして大型の高級車を所有しつつ、日常のアシとしては軽を好むユーザーも多い。
新車価格の安さ
最近は「下手なコンパクトカー以上に新車価格が高い」軽自動車も少なくないが、あくまでミドル〜ハイエンド車でのお話である。ローエンドのグレードはやはり車両本体価格が安く設定されており新車でエアコンと一通りの安全装備がついてコミコミ100万以内というのもある。
例えば、アルト F(乗用最低グレード)の2WDの場合は...
- 快適装備
エアコン(マニュアル式)
CDラジオ&2スピーカー(AUX端子付き)
前席パワーウィンドー
アクセサリーソケット
UVカットガラス(フロントガラスのみ)
- 安全装備
プリテンショナー・可変フォースリミッター付きシートベルト&デュアルエアバッグ
トラクションコントロール機構付きABS
ESP(横滑り防止装置)
- セキュリティ関連
集中ドアロック(バックドア連動)
キー抜き忘れ/消灯忘れ警告ブザー
セキュリティアラーム
…が付いて86.3万円(税10%込み。税抜78.5万円)である。諸経費を入れても、値引きなしで100万円以内に収まる(AGS・MT同額)。アルトFには後席ヘッドレストがないため4人乗りのクルマとしては若干問題はある(ヘッドレストが付くのは「S」以上のグレードとなる)ものの、1〜2人で乗るクルマのメーカー純正装備としては、もうこれで十分ではないだろうか。
さらに、ABSがないなど安全装備の面で問題はあるが、軽ライトバンや軽トラで一番安いものは70万を切る。2011年まで販売されていたH42Vミニカバンなど、最安値グレードはエアコン付で車両本体価格60万円を切っていた。
安全性
軽自動車に関しては、歴史上の経緯から安全面での性能がとやかく言われることがある。1980年代、一応衝突安全基準の制定された後の車種でさえ、基準速度を小型車以上の50km/hに対し軽は40km/hと8掛けにした(つまり衝突エネルギーが64%になる)甘い基準を取っていたため、大型車と正面衝突すればひとたまりもなく、地域によっては「走る棺桶」とすら言われていた。ただ、現行の新660cc(1998年)以降はこの基準速度自体も小型車以上と同一基準に厳格化、さらにはABS、衝突安全ボディー、エアバッグの標準採用が常識化。2010年代以降は横滑り防止装置(2014年10月以降のフルモデルチェンジ車種に義務化)、サイドカーテンエアバッグの装備が進むなど、同時期の小型登録車と遜色ない安全性を有するまでになっている。特に予防安全に関してはスペーシア・ハスラーの「デュアルカメラブレーキサポート」やタントの「スマートアシストIII」が歩行者検知機能も搭載し「ASV++」ランクの評価を受けるなど、性能面においても日進月歩である……と言った状況があり、もはや解決も時間の問題と言える。
軽自動車におけるASV(先進安全自動車)は、ダイハツがムーヴを皮切りにミライース、タント、ウェイクなど売れ筋車種にスマートアシストを搭載したことにより、登録車(特にCセグメント以下)と比べても異常な速さで一気に進み、2014年末までには軽4社の主力乗用車種に設定された。さらに2017年の「ウェイクバン」にあたるハイゼットキャディー、ワンボックスのエブリイ4兄弟に続き、2018年にはハイゼットへの搭載など、近年では商用車への普及も進んでいる。
ただし、日本では後方からの追突に関する基準や法規はないので、追突時の後席の衝突安全性には疑問が残っている(これは軽自動車に限った話ではなく、国内専売車種のミニバンやトールワゴンなども同様)。さらに2023年のダイハツの一連の不正の発覚によってこれらの疑問に対し火に油を注ぐこととなった。
日本国内における支持
日本における四輪車のうち1/3は軽自動車が占め、乗用車の最量販クラスである。
特に起伏の激しい中四国以西だと福岡県以外でシェアは40%以上、広島県以外では全県45%オーバーであり、大半が過半数になるのも時間の問題である。現状でも鳥取県、島根県、高知県、愛媛県、長崎県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県はもう既に過半数である。
軽自動車の普及率が高い県は、総じて鉄道やバスなどの公共交通機関がほぼ壊滅状態まで追い込まれた地域か不便度の高い地域である。バスも1時間に1本くれば良い方で、酷い場合は1日1~2往復しか走らないなど、住民の足としてまともに機能しない場合が珍しくない。政令指定都市のような地域で路線数があっても中心街へから伸びる路線しかなく、それらを繋ぐ横方向の路線が無い為、車で向かえば数十分で済む場所へもバスを用いると1時間以上かかるという事もある。ゆえにそのような地域では"家に成人の数だけクルマがある"ということも珍しくなく、住民にとって軽はもはや生活必需品である。つまり、軽の税金を上げると言うことは、言ってみればスニーカーやサンダルに重税を課す、酷い言い方をすれば肢体不自由者から車椅子を取り上げてしまうようなものなのである。また軽トラック/軽ワンボックスは町工場や商店、農林漁業の必需品であり、これが無くなってしまった際の負担増には恐ろしいモノがある(商用車は登録車が毎年車検、軽は2年に一度)。
また、5ナンバーサイズ(全幅1.7m未満)を前提にした日本の駐車場のサイズ(幅2.5mが標準)では、軽の方が乗り降りがしやすいとして、登録車から乗り換える人も増えている。さらに日本では軽自動車でないと通行困難な道路もまだまだいたるところにあり、それでなくても近年の海外向けになったコンパクトカーは、車体サイズの大きさから取り回しに不便なシチュエーションも多い。特に農道は軽トラックの車幅を基準に作られており、普通車のトラックには対応できない(日本の軽自動車が欧州のAセグメントなどより車幅が狭い理由の一つ)。
しかし政府はこの現状を無視し、2015年4月以降新車登録された車両に対して税金を上げた。
ちなみに、TPPに関連してビッグスリーが軽自動車規格に関し非関税障壁だと抗議したことがあった。しかしながら、実際はフランス車やドイツ車、韓国車、英国車の軽自動車も存在している(していた)。ようは規格に基づいたクルマを売ればいいだけの話で、軽自動車市場は外国メーカーにも開かれているのである。
また軽規格の衰退は長い眼で見ると市町村の財政を圧迫するということも考えよう。登録車の自動車税は国税だが、軽自動車税は地方税(市町村税)である。末端の道路を整備しているのは市町村だし、国道も実は高速道路以外は地方自治体が整備の一部を負担している。したがって軽自動車は地方財政の貴重な財源なのである。上記の税金引き上げも、2014年4月に自動車取得税(都道府県税、ただし3分の2は市町村に配分される)が引き下げられ、将来の廃止が決まったことによる市町村の税収減を補うためのバーターであることに留意されたい。
また、スズキが軽を主力製品としていることが関係しているかは不明だが、鈴木修会長は軽増税に否定派であった。これに関する発言は以下の通りである。
「軽の税金を上げるだけでなく、リッターカーの税金を下げるという話ならいくらでも協力するのに」 (軽の品質向上で登録車と差が無くなった事による不平に)「軽自動車は寸法も排気量も厳しく制限されている。そのなかで素晴らしい4人乗りのクルマができているのは、軽メーカー各社の努力のたまもので、いわば芸術品のようなものだ。その努力を見ないで普通のクルマと同じようなものと言うのはいかがなものか」 キャリイ(12代目)発表時、軽自動車は比較的低所得の人が生活・仕事に使っているとして(軽自動車の増税は)「弱いものいじめと感じる」「こういう考え方がまかり通るということになると、残念というより、悲しいという表現が合っている」。下請けの仕事量、ひいては雇用にも影響があるとの考えを示した。(実際、三菱自動車はコンパクトカーの国内生産をやめ、タイ生産の逆輸入車を投入している) |
日本国外における支持
軽自動車は日本独自の規格であるが、日本国外でもK-Carという呼称でよく知られており、欧米や東南アジア、南アジアなどで並行輸入車や中古車などが普通に流通している。中には新車の軽自動車を左ハンドルに改造して海外に輸出する業者もある。
これまでもキャリイやエブリイ、ミラ、ハイゼット、ジムニー(日本のジムニーシエラに相当)など主に東欧や発展途上国向けの車両として排気量アップ等を行った上で輸出や現地生産された例は枚挙にいとまがないが、スズキは660ccのままHA36アルトをパキスタンで生産・販売している。これは輸出された中古の日本仕様車が(660ccでは無理だろうと思われていた)パキスタンで普通に使われていたため、「660ccでもいける」と判断したためだという。
2020年には、中国の新興メーカー「LEVDEO」が「新K-Car」と銘打った電気自動車「Mengo」を発売している。中国では小型車は「粗悪」というイメージが強く(中国のマイクロカーは安物の電気自動車か旧規格の軽自動車などの設計をベースにした前時代的なものばかりである)、大型車が好まれる傾向があるが、日本の軽自動車の存在はよく知られており、インターネットなどでは「なぜ中国にこういうクルマがないのか」といった意見を見かけることがある。同車のキャッチコピーは日本の軽自動車の「サイズは小さいがデザインはお洒落で装備は充実」というイメージを意識したものだといえるだろう。
しかしなんと言っても意外なのは米国での軽トラブームであろう。実際並行輸入するユーザーが後を絶たず、北米展開しているメーカーには正規販売の要望が長年出されていると言う...これはどういうことかというと、オフロード用バギーやゴルフカートの代用として、農場やゴルフ場などの敷地内で使われているのである。車室がありエアコンもついている軽トラは雨や積雪を苦にしない。オフロード車であるから右ハンドルでも不便がなく(一定の制限はあるが公道も走行可能)、自動車保険がリーズナブルに契約できるなどのメリットがあるという。
軽自動車の製造メーカー
現時点で軽自動車を独自開発するのはスズキ・ダイハツ・ホンダ・三菱の4社。現状でスズキはマツダと日産にOEM供給、三菱も日産に供給する。一方のダイハツもスバルとトヨタにOEM供給する。一方、スズキ・ダイハツを追うホンダは独自開発の「N」シリーズでシェアを伸ばし、「3強」の形となっている。取り残された形の三菱は、日産と折半で軽の企画・開発を行う合弁会社NMKVを設立した。
以下の通り、(光岡自動車を除く)日本の乗用車メーカーで軽四を販売していない企業はない(光岡も過去に自社ブランドの軽自動車を販売していた時期がある)。
自社生産
- スズキ
- ダイハツ工業
- NMKV(三菱自動車工業と日産自動車の合弁企業)・・・3代目eKワゴンおよび(日産)デイズ以降の両者の軽自動車開発を行っている。なお、両車とも2013年6月に発売された。製造は従来通り三菱の水島製作所であり、製造事業者も三菱とされている。なお、日産は市販車としては軽の自社生産を行ったことがないが、上記の超小型モビリティの提案を行っている(これもルノーのOEMだが)。4代目eKワゴンおよび2代目デイズ以降の開発・設計は日産が行っている。なお、製造事業者が三菱のため、リコール届出は三菱が行うこととなっている(これは他のOEM車に言えることだが・・・)。
- 本田技研工業
他社からのOEMのみ
- マツダ(スズキ、ただし1960年からスズキと提携した1989年までは自社生産を行っていた(ただし360cc時代はエンジンも自社製だったが、規格改定に伴い1976年より三菱製の供給を受ける)ほか、キャロルに関しては1998年までアルトとは全く異なるボディを使用していた。)
- スバル(ダイハツ、ただしスバル360で軽自動車を一躍大衆車の主流に押し上げた1958年から、2012年2月までは自社生産を行っていた)
- トヨタ(ダイハツ)
国外メーカー
- メルセデス・ベンツ - 輸入車としては初となる軽自動車(スマートK)を発売していた。メルセデスブランドではないが、販売チャンネルは一緒。
- エクサム CT&T- いずれも電気自動車を国内代理店に供給。
- ケーターハム - セブン160の日本仕様は軽規格で販売される。
軽二輪車
道路運送車両法上の二輪車(側車付含む)の規格。原付(二種)の上、二輪の小型自動車(小型二輪)の下に当たる。道路交通法上の普通自動二輪車(50cc超〜400cc)に含まれる。
規格は排気量125cc以上、250㏄未満/モーター出力1kw未満、車体サイズは長さ2.5m以下、幅1.3m以下、高さ2.0m以下、定員1または2名となっている。
二輪の場合は高速道路や原付(二種)の入れない自動車専用道路を走行可能で、なおかつ車検が要らない(ナンバープレートは陸運局扱い)ため、重いバイクを取り回す体力に自信のないライダーや、小柄なライダーに愛される。
軽二輪のナンバープレート
ナンバープレートは現在でも「小板」規格で白地に緑文字(自家用車)、緑地に白文字(事業用車)。
分類番号は1または2が適用される。
似た名称ではあるが異なるもの
道路交通法で「原動機(電気モーター含む)が付いていない車両」を指す。
具体的には人間がその身で動かす自転車/リヤカー/大八車/人力車などや、動物を使い牽引する馬車/牛車/犬ぞり、馬などの騎乗する動物などである。自動車免許学科試験問題の車両進入禁止 (規制標識)における設問おいて「軽車両は通行できる」という引っ掛け選択でお馴染みである(正解は軽車両も含めて通行禁止)。
自衛隊が保有する歩兵用の小型装甲車両。「軽度の装甲を施した機動車両」であり「装甲した軽自動車」ではない。