ポケモンにおける暴走族はこちら→ぼうそうぞく
概要
1970年頃から本格的に広まったと言われる違法暴走集団。
警察の分類では「共同危険型暴走族」と、「違法競走型暴走族」に分けられる。公道で危険暴走を行うのはどちらも同じだが、後者は「走り屋」「ローリング族」などと呼ばれることが多く、「暴走族」の名で世間で一般的にイメージされるのは前者の「共同危険型暴走族」である。
改造バイクや特攻服などの特徴的なスタイルで徒党を組み、夜間等に暴走行為を行う。略称は「族」。女性の暴走族は「レディース」とも呼ばれる。
主に道路交通法の共同危険行為として罰せられる、違法行為である。
ネットスラングでは珍走団とも呼ばれる。この記事では主に「共同危険型暴走族」について記述し、「違法競走型暴走族」については「走り屋」の記事を参照。
暴走族の歴史
発祥は1950〜60年代(昭和30年代)に現れた「カミナリ族」で、マフラーを外してけたたましい爆音を響かせながら走り回るさまから命名された。当時はまだオートバイが高価だったため構成員は富裕層出身が多く、交通事故も度々引き起こしていたものの、若者特有のモラトリアムの範疇として、マスメディアや文化人を中心にある程度容認される傾向も見られた。
1970年代に入るとオートバイが大衆にも普及し、暴走グループに所属する若者による一般市民への暴力事件やグループ同士の抗争事件が社会問題として取り上げられるようになった。下記の共同危険型暴走族のスタイルが確立したのは1980年前後である。1980年代前半には暴走族文化が最盛期を迎え、当時の管理教育に反発する少年層の間でツッパリファッションと「なめ猫グッズ」が大流行した。
近年では一般的にイメージされる暴走族が衰退したため「暴走族」と言う言葉の意味が多様化しており、チャリ、BMX、スケートボード、ローラーブレード、マラソンなど特攻服を着ていない不良でなくても、なんでも無許可で集団進行し迷惑をかける集団を表す言葉に変化しつつある。
共同危険型暴走族
かつては特攻服を着て、改造バイクなどに乗り、独特のセンスの漢字の当て字(「夜露死苦」など)や右翼的なデザインの意匠(旭日旗など)を好んで使ったりするスタイルがおなじみであったが、段々こうしたオールドタイプの暴走族は減っている。上下関係などが厳しく、「総長」「特攻隊長」「親衛隊長」などの役職が設けられていたりもする。またヤクザなどに上納金を納めさせられている場合もある。かつては暴力団の人材供給源のひとつであり、1990〜2000年代に半グレが台頭した時もその中核となったのは暴走族上がりの者であった。
こうした体質は現代っ子には「ダサイ」と受け止められ、新入者が減り衰退中。東京や湘南などの大都市近郊では従来型の暴走族はほぼ絶滅している(まだ地方によっては昔ながらの暴走族が残っている場合もある)。こうして暴走族の高齢化が進んでおり、かつては18歳前後で引退したものが、今や主力が妻子持ちの30代という有様である。また、暴走族自体も2、3台の小規模グループで活動するケースが当たり前となり、大規模暴走族はほぼ絶滅したといって良い状況となっている。
近年顕著なのは、古いオートバイを乗り回す「旧車會」の暴走族化である。本来は1970年代〜80年代の旧車を愛好する大人の集まりだったのだが、暴走族を卒業した大人の流入により、しばしば少年時代の昔を懐かしんで暴走する成人版暴走族と化している。独特の漢字の当て字や改造バイクなどは旧来暴走族のスタイルそのものである一方、必ずしも特攻服を着用せず、コスプレや着ぐるみを着用する者までいる。SNSを利用し仲間を募り顔見知りでない者が参加することも多く、厳しい規律や上下関係などはほぼない。また従来型暴走族に比べ年齢層も広く、60代から10代までいる。親子が一緒に暴走する事も珍しくはなく、2014年には大阪府茨木市を拠点とする旧車會に所属する母親がコンビニ店員に暴行する様子を娘が撮影していたことから発覚した「コンビニ土下座強要事件」が起こっている。
暴走族の数には地域差があり、冬に路面凍結して走れない北海道などの北国にはもともと少なかった。ただ、札幌市などでは、徒党を組んで大声を出し練り歩く「徒歩暴走族」(走らないのでこのネーミングはちょっと変なのだが)なるものもおり、雪国でなくても祭りなどで大規模な交通規制が敷かれる際に、バイクなどの車両に乗らず騒いだり暴徒化する例もある。姫路市では夏祭りの際に「バーリバリ!」などととバイクの音を模した大声を出して練り歩く徒歩暴走族が出現し大規模な取締が行われ、ネット上でも話題になった。またかつてはバイクに乗れない中学生による「自転車暴走族」も存在した。
アメリカの暴走族
アメリカの暴走族に当たる組織はモーターサイクル・ギャングと呼ばれる犯罪集団と、昼間にフリーウェイを集団で爆音を立てながら大型オートバイで疾走するモーターサイクル・クラブの二つに分類される。
モーターサイクル・ギャングはその構成員は大人で、恐喝・麻薬取引および殺人といった非合法活動を働き、日本の暴走族や半グレのようなマフィアの下部組織ではなく、独立した犯罪集団と見なされる。その代表的なのがヘルズ・エンジェルスである。ただ、この犯罪組織のスタイル(ファッションなど)は健全な趣味の範疇にあるモーターサイクル・クラブに継承されているケースが多く、外見上で両者を見分けるのは困難なようである。
違法競走型暴走族の場合では、長い直線道路を利用した違法なドラッグレースが多く行われている。ナンバープレートを外して走る悪質な者も存在する。地形的に曲がりくねった峠道が少ないことから、ローリング族は定着していない。
一方のモーターサイクル・クラブは季節労働者として全米を移動しながら活動していると見られており、また健全な趣味として認知されるべく、ハイウェイ周辺のゴミ拾い活動を展開するなど、社会奉仕活動に率先して従事する姿も見られる。その多くは成人の肉体労働者(ブルーカラー)であるため、自身の健康を損なう薬物には手を出さない・社会のルールを守るなど、一定の自負をもって活動している様が見られ、日本の反社会的な存在としての暴走族とは大きな違いがあり社会的に容認されている。
なお、モーターサイクル・ギャングは映画「マッドマックス」の影響か、ポストアポカリプスジャンルの作品にもしばしば登場している。
SNSが普及した現在では「Rideout」と呼ばれる暴走集団が都市圏に出現し始めた。元々はBMXのグループライドから派生したもので、SNSの呼びかけのノリで集まった人たちがオフロードバイクなどで道路を走る行為である。ただ単に走り回るのを楽しむ集団なためモーターサイクル・ギャングに比べると危険性は低いが、いかんせん人が集まりすぎてヒートアップした人がものを壊したり、ウィリー走行を行なったりして事故ってしまう人や他トラブルが絶えないため警察による取り締まりが行われている。
フィクションの暴走族
一時期は漫画の題材としてもよく扱われたが、上記のような社会情勢の変化もありかなり作品数は減っている。
(日本的な)暴走族を扱ったフィクション作品
実在の暴走族人物
など。