フィクションにおけるヤクザはヤクザの記事を参照。
概要
日本の犯罪組織の類型の一つ。いわゆるヤクザ。
「暴力団」は警察・行政用語で、構成員自身はしばしば「極道」と自称する。
暴力団対策法の定義では、「その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」とされ、警察によって各組織(指定暴力団)とその構成員(組員)が把握されている。暴力団と関わりを持つ者のことを「暴力団関係者」という。
組織
組織は組長(会長、総長も含む)を中心に動く、完全なる縦社会。
上部組織の下にそれぞれ組幹部が持つ多数の組があり、下部組織は上部に上納金を納めなければならない。このため貧富の格差は非常に大きく、末端組織の下っ端組員は食うや食わずの生活だが、大手の組長は裕福な生活をしている。
組長の意思に背いたり、重大な失敗を犯したりと組織に泥を塗るような者はけじめとして指を切り落とすか容赦なく殺害される事もザラだったが、近年は警察の取り締まりのために、永久追放(絶縁)で済まされることも多い。
暴力団は全国に存在するが、いわゆる「西高東低」の傾向があり、一般的に近畿地方や九州などの西日本の方が指定団体数も多く、凶暴性も高いとされている。
1991年の暴力団対策法(暴対法)の施行以降、大ぴらな活動はできなくなっており、ヤクザ稼業(シノギ)の合理・合法化が進んでいる。法律により現在は組の名前を出して脅すような行為だけでなく、ヤクザを公言するだけで逮捕される。さらに、日本全国自治体の「暴力団排除条例」に従い暴力団員の社会生活が困難になりつつあり、その数は著しく減少している。
暴力団の組織名は、建築業者などが使う組の屋号が多い。これは、ヤクザがしばしば建築業者などを兼ねていたからである。
かつてのヤクザは公然と組事務所を構えており、地域の顔役・名士と重なる部分もある存在だった。戦前には、ヤクザから政治家になった人物も少なくなかった(小泉純一郎の祖父にあたる小泉又次郎はその代表格である)。
トップとなる組長の継承には儀式があり、一例として山口組では盃の儀礼から始まり先代から目録として「寿恵廣(二対の扇)」「魂(刀とされている)」「練絹(上物の絹織物)」「任侠道奥伝(巻物)」「組の一切の諸権利」が次代に贈られる。「任侠道奥伝」とは所謂極道社会における秘伝書だとされるが、その巻物には実は何も書かれていない白紙らしい。その意味は「任侠道とは文字として書くだけでは語れない」のだという。
勢力争いなどで、暴力団同士が暴力的な衝突を行うこともあり、銃や火炎瓶などが持ち出され死者や負傷者を出したりもする。堅気(一般人)への直接の手出しはタブーとされるが、ヤクザの抗争に一般人が巻きこまれ、死亡事件になることもある。
ただし、この傾向は戦後に山口組が勢力を拡大し始めて以降のものであり、山口組の勢力拡大の時期≒暴力団の有り方が大きく変わった時期には、時代についていけずに廃業したり大きな組織の傘下となった暴力団も少なくなかった。
例えば、ノンフィクション作家の宮崎学の実家も、半分堅気・半分ヤクザというべき稼業だったが、山口組が勢力を拡大した時期にヤクザを廃業している。
ある意味で、暴力団としては異端だった(元々は堅気に近かったが、時代の変化によりヤクザ的な稼業が主になった)山口組が日本最大の暴力団となる事によって、皮肉にも、それまで曖昧だったヤクザと堅気の区別が明確化したとも言える。
有力な暴力団は、他の組織を配下に従え全国組織を作っており、有名どころでは山口組や稲川会などがある。
彼らが主に活動拠点としている場所はヤクザ(組)事務所と呼ばれ、治安の悪化の原因となる。だから根こそぎ一気に撲滅すればいい――とも言い切れず、警察にとっては「秩序だった悪」として「無秩序な悪」への牽制となる必要悪と言い得る面もあり、強引な手法で壊滅させることは避けている。特に1980年代までは多くの都道府県警と地元のヤクザは「持ちつ持たれつ」の関係であり、ヤクザをおとり捜査に活用したり情報提供を受ける見返りに、みかじめ料徴収や薬物密売などの違法行為を黙認してきた。
また、民間企業で喩えるならM&Aのような事も行なわれており、例えば山口組系の「名門」とされる組織の中にも、元々は、山口組とは独立に発生した組織だったが、後に山口組の傘下となったものも有る。(これが、いわゆる「親子盃」)
暴対法の成立以降は警察との「共存共栄」の関係が崩壊し、従来のような資金集め(みかじめ料徴収など)が困難になったため、合法的な企業(フロント企業)を設立し、一般市民を装っていることが多い。ただしフロント企業は、往々にしてブラック企業であり、その活動において一たびトラブルが発生すれば、それまでの仮面を脱ぎ捨てて暴力団としての性格を露わにすることも珍しくない。
暴力団対策法以降は、暴力団員の減少が著しい一方、暴走族上がりや外国人など暴力団に籍を置かない者らによる犯罪集団「半グレ」が台頭。シノギなどにおいては暴力団と共存関係を築き、事実上の下部組織として上納金を収める場合もある。警察も彼らを“準暴力団”と定義して取り締まりに乗り出している。
組員
近年のヤクザは上述のようにフロント企業を通じてビジネスを行うケースが増えており、そのため組の幹部クラスには大学卒業者や法律の知識が多いインテリヤクザが増え、従来のように低学歴でドロップアウトしてヤクザになった者達は上納金などに苦しみながらこき使われる格差社会となりつつある。弱肉強食の世界ゆえに手切れ金としての大金の上納を要求される・堅気になっても金づるにされる事が多々ある世界で、誇張抜きに末端の底辺ヤクザの場合はそれこそ真面目にアルバイトでもした方がマシな収入状況であったりする。
所詮悪事で金儲けを行う犯罪組織のメンバーであることに変わりはなく、フィクション界にありがちな「社会のはみ出し者の受け皿で、組員の結び付きは強く、義理人情に篤い」「必要悪として裏社会からカタギを守っている」なんてものは毛頭ない。というかオモテの社会以上に弱肉強食なこの世界でそんな寝言を掲げてたら体よく使い潰されるのがオチであり、仁侠モノ等を見て憧れを抱いたとしても、実際の暴力団に入団しようなんて考えないように。
全員が付けているわけではないが、組員の一部は「渡世名」と呼ぶ、ヤクザ世界の芸名のようなものを名乗る場合がある。
(例:山口組組長の司忍(本名は篠田建市)、酒井法子実父の酒井峰吉(本名は酒井三根城))
主な活動
みかじめ料、上納金
地域の水商売の店、風俗店から「みかじめ料」の名目などで金を払わせる。また、下部組織や暴走族などから上納金を取り立てる。
金貸し
金融業者を立ち上げ、借りた客には法外な利子を上乗せし、事実上完済不能な状況に追い込んで、利息の支払いを継続させて儲ける。
また、返済するころを見計らって事務所を閉めて延滞金を請求する場合もある。
暴力行為
パチンコなどの民営賭博施設で用心棒として待機し、ライバル組織や警察を追い払おうとしたり、同業他者の営業妨害を行う。
借金の取立ての場合、債務者の住居にある金品や器物の強奪や破壊を行う。
裏取引・裏工作
政治家や新興宗教などの個人及び法人から報酬を貰い、その見返りに証拠品を湮滅したり名簿の改竄等の情報工作をする。
拉致・監禁・殺害
依頼主や組長の敵対者(ジャーナリスト、政治家、同業者など)本人、またはその家族の拉致・監禁・暗殺。
密輸・密売買
主な物品は麻薬や銃器、宝石や貴重な動物の一部など高価な物や法規制されているものなどを不正に外国から仕入れたり売買する。(マネーロンダリング含む)薬物は自分でも使用する場合もある。
また、盗難車など盗品の密輸出にかかわる場合もある。ネットゲームにおけるRMT(リアルマネートレード)も暴力団が関わっているともされている。
密漁
夜間、密漁に励み、フロント企業を通じて大手水産会社に卸す。主にアワビやナマコ、シラスウナギなどの高価な魚種が標的になる。
芸能活動
芸能プロダクションや報道機関を掌握、或いは自ら設立し、自社のタレントが売れない場合、ヘアヌード写真集出版、最悪の場合AVに無理やり出演させる。また敵対する事務所の売れっ子を蹴落とすためにスキャンダルをブラックジャーナリストと共謀してでっち上げたりして蹴落とす。
暴力団と芸能界の繋がりは深く、昭和時代には公然と交友関係やプロデュースをアピールしていた。美空ひばりの興行を山口組のフロント企業が仕切っていたのは有名である。(芸能界と暴力団の関係が大目に見られていた時代だったので、その企業の役員の中に山口組の3代目組長の名前が有る、という隠す気すらないような状況だった)
主な組織
関連タグ
ギャング 暴走族 半グレ チンピラ 不良 ヤンキー チーマー
鹿児島県警:警察の皮を被った特定危険指定暴力団(公営ヤクザ)
お気持ちヤクザ:暴力団とは無縁な一般人でありながら「社会的に守られている身分」を悪用して警察に捕まりにくい犯罪に手を染める者の総称(クレーマーやツイフェミ)。