ナマコ
なまこ
棘皮動物の一群で分類学的にはナマコ綱に属する。漢字表記は『海鼠』。マナマコ・キンコ・フジナマコなど1500種以上が知られ、大きさも様々。
ほとんどの種類が体壁中に毒を含むが、マナマコなど食用になるナマコは毒がごく少ない、または人間が代謝可能な物質であるのでよほど大量に食べない限りは害はない。
生態は、基本的に海底にゴロゴロ転がって砂や海中のプランクトンやマリンスノーを食べているだけという極めて省エネ型の動物である。砂は非常に栄養価が低いので摂食量もそれなりに多く、ナマコのいる海はナマコの排泄物だらけということになる...が言い換えれば砂に混じった有機物を食って海をきれいにしているというわけである。種によっては海底の砂に潜んで触手だけ出したり、ユメナマコのように海中を漂う種類もある。
多くの種は逃げたり隠れたりもせず、ただ海底にゴロゴロと転がっているだけであるため簡単に捕らえられるが、積極的に捕食する魚はほとんどいない。これは体壁の固さと、魚にとって毒になるサポニンという物質を含んでいるためだが、人間にはサポニン耐性があるのでよほど大量に摂食しない限り害はない(ちなみにサポニンは甘草や緑茶、大豆などにも含まれ、防カビ・血糖値安定などの作用がありいずれも人間が好んで利用する植物である)。
ただし大量に摂取するとさすがにお腹を壊すので注意。
二枚貝や巻貝にはナマコを好んで食うものもいるが、体を溶かして逃げる。
外見は「触手を内蔵した口を持つ棘だらけの弾力に富むキュウリ」そのもの。弾力はひんやりした硬めの低反発クッションや人肌くらいと思っていただきたい。触ると固くなり、しばらく揉んでいると急に柔らかくなって溶けたようになる。原型をとどめないほどドロドロになったナマコも水槽に入れると元のナマコに戻る。これは「キャッチ結合組織」という棘皮動物特有の組織によるもので、エネルギーを消費する筋肉を使わなくても固くなったり柔らかくなったりできる。
解剖してみると、内部は消化器と生殖器が目立つだけ、という単純な仕組みをしている(このほか呼吸樹というナマコ特有の呼吸器を持つ。一応神経系もあるが脳や眼はない)。ナマコが「省エネ」なのは神経や筋肉や感覚器のようなエネルギーを消費する組織が非常に少ないからである。外敵に襲われると腸を肛門より放出し、それを外敵が食べている間に逃亡するという能力を持っている。なお、失われた内臓は半年ほどで再生するといわれる。
棘皮動物の体の特徴である「五放射相称」はナマコも例外ではない。外観上は目立たないが、解剖してみるときちんと筋肉が五放射相称に走っていることがわかる。
ウキナマコ科
見た目こそグロテスクだが、高級食材や珍味として知られ、一部の種を生食する他このこ(卵巣、“くちこ”とも呼ぶ)やいりこ(干物)・このわた(内臓の塩辛)等の加工物が有名である。中国では干しナマコに加工する。
輪切りにして酢の物にした「なまこ酢」、内臓を塩漬け・発酵させた「このわた」は共に珍味として珍重される。
中国の薬膳の考えではナマコには強い薬効が有るとされており、ナマコまたはイリコ(干しナマコ)の漢字表記の1つが「海参」なのは「海の(高麗)人参」の意味。