記憶装置のこと。一般に半導体を使った記憶素子をさすことが多い。
本稿では半導体を使った記憶装置について述べる。特にDRAMとフラッシュメモリはコンピュータの存在するあらゆるところで使われ、「産業の米」とも呼ばれる。
メモリの種類
揮発性メモリ
アクセスは高速だが、電源を切ると内容は消える。(それが好都合/不都合な場合ともにある)大抵一次記憶装置であるが、SRAM+電池という形で「バッテリーバックアップ」とよばれる二次記憶装置として用いられることもある。
擬似SRAMはPRAM(Pseudo SRAM)ともよばれる。下表のPRAMとは
略称は同じだが、内部構造はまったく異なる。
また、DRAMは読み出しが破壊読出し(読むとデータが破壊される)であるが、内部の制御回路で書き戻すため、それを意識する必要はなく、指定されたタイミングで信号を与えて読めばよい。
ちなみに、SRAMは主に超高速なキャッシュメモリに使われるため、現在ではSRAMの消費電力よりDRAMの消費電力が少なくなっているという現象も出てきている。が、原理上はSRAMの方がリフレッシュ動作の必要がない分消費電力は少ない。
揮発性メモリの複合品
NVRAM
設定記憶用の小容量のSRAMと記憶保持用の電池を1つのパッケージに収めたメモリ。現在時刻の管理に使われるリアルタイムクロック回路が内蔵されていることもある。電池が消耗してしまうとメモリとして寿命を迎えてしまうので、最近はチップセットの機能+外付けの電池という構成に代替されている。
パッケージの接合部のみ巧く壊して分解出来れば電池の交換も不可能ではないが、単純なミスでも回路を破壊してしまうリスクがあるため推奨はしない。
不揮発性メモリ
大抵のものは、揮発性メモリよりアクセスに時間がかかるが、電源を切っても内容は保持される。
種類 | 備考 |
---|---|
マスクROM | データは生産時点で既に決まっている。MROMともいう |
ワンタイムROM | 1回のみ書込み可。ヒューズや絶縁膜を電流で焼き切るタイプとEPROMベースのものがある |
UV-EPROM | 書き込み後、紫外線を照射すると消去可能 |
EEPROM | 電気的な書き込み・消去が可能。フラッシュメモリもこれに属する |
PRAM | 相変化記録技術を利用した不揮発メモリ。既存の製造設備が流用可能 |
FeRAM | 強誘電体の履歴現象を利用したメモリ。DRAM並みの速度を活かし、ICカードの読み書きに使用されている。 |
ReRAM | 電界誘起巨大抵抗変化を利用したメモリ。DRAM並みの速度を持ち、消費電力が少ない |
MRAM | 磁性体の磁化方向の違いによる電気抵抗の違いを利用したメモリ。現時点では航空宇宙ないし軍用が主。 |
こちらのPRAMはPhase change RAMの略。
コンピュータの起動時はCPU内部メモリ(レジスタ)や一次記憶装置のうち揮発性メモリはデータがないので不揮発性の一次記憶装置から実行プログラムを読み、二次記憶装置の読み込みなど起動のための準備をする。組み込み用途のものでは全実行プログラムが不揮発性の一次記憶装置に書き込まれていることもある。
不揮発性メモリ特に電気的書き込みおよび消去ができるものは二次記憶装置(ディスクドライブ類)としても採用されている。(USBメモリや各種メモリカード、SSDなど)
一次記憶では一般に読み込み速度はRAMに劣るのでROM内のデータをRAMに写し、本来ROMにアクセスするデータを写したRAMから読む手段が用いられることがあり、これをシャドウRAMという。これは、パソコンなどでは実行するOSによってシャドウRAMに対応/非対応ともにありうる。
記憶階層について
装置名 | 概要 |
---|---|
一次記憶装置 | CPUが直接アクセスできる記憶装置 |
二次記憶装置 | 出入力チャネル経由の記憶装置。一次記憶装置に比べ桁違いに安くて大容量 |
三次記憶装置 | ロボット機構を使用した記憶装置。 |
オフライン記憶装置 | CPUの管理下にないもの。大抵リムーバブルメディア全般が該当 |
余談
現在のメモリは高度に集積された半導体なので、精密な製造工程でも一部分のみ不良が出ることがある。そのため、チップ上のメモリセルのブロックをわざと余分に作っておいて検査の段階で不良があるセルのブロックをレーザーや過電流で回路から切り離し、残った部分が一定以上あれば良品として製造している。こうすると歩留まりを上げられるので所定の容量のメモリが安く作れる。
使用する際はメモリチップ内部の制御回路が管理するため、一部のブロックを切り離しても外部からは連続しているように見えるので心配は無用である。
ちなみに、マルチコアのCPUでも物によってはコアを余分に作っておいて不良コアのみ回路から切り離す製法が使われている。CPUではメモリほど予備のコアを作ることはできないが歩留まりを上げることはできる。
破壊による調整はアナログICでも行われ、微調整のために抵抗と電源とは逆方向のツェナーダイオードを並列に接続し、計測しながら所定のツェナーダイオードのみ短絡して破壊し、電流阻止をできないようにする。すると、ツェナーダイオードを破壊した場所は抵抗を外して導線に繋ぎ変えた事と等価になるので微調整ができる。これをツェナーザップトリミングという。