概要
半導体メモリを使用した大容量記憶装置のこと。名称はSolid State Disk(またはDrive)」を略したもの。回転する円盤を持たないが、ディスクメディアの代用であるためこのように表記される。
2000年代後半以降、フラッシュメモリの価格が低下したため、NAND型フラッシュメモリを使用したFlash SSDが普及した(フラッシュメモリ以外のものについてはRAMディスクなどがある)。
2023年頃からはよく目にするUSBメモリサイズに小型化したものも出てきている。
Flash SSD
パソコン向けではSATA、mSATA、M.2の3種類が一般的。一部のタブレットPCやChromebookなどの安価な端末では代用SSDとしてマルチメディアカードを応用したeMMCが使われることがある。ノートパソコン用にはExpressCardバス接続のものもあったが、後継規格への置き換えやノートパソコン自体の薄型化・コストダウンなどにより殆ど廃れてしまった。
組み込み用途では汎用のメモリーカード規格から派生したコンパクトフラッシュやCFastが使われることもある。
SATA
ハードディスクと同じシリアルATA規格を採用したSSD。ハードディスクの磁気記録部を基板に実装されたフラッシュメモリに置き換えたもので、ケーブルを使って接続する(電源は別のケーブルから供給)。大きさは2.5インチのハードディスク(縦100.35mm×横69.85mm)と同じ(過去には1.8インチのものもあった)。初期に普及したが、現在でも古いハードディスクの置き換え用などとして一定の需要がある。
mSATA
正式名称は「Mini SATA SSD」。SSDに特化した規格である。Mini PCIeスロットと同様の形状で、ケーブルを使わずコネクタで直接マザーボードに取り付けられるようになっている。また電力もコネクタから供給するので電源ケーブルを引き回す必要がない。サイズは2.5インチハードディスクに比べるととても小さく、縦50.8mm×横29.85mmが標準。ノートパソコンなどで一時期普及したが、M.2の普及により、新しい機種では採用されていない。
M.2
現在の主流。汎用の拡張カード規格で、SSD以外にもWi-Fi、Bluetooth、GPS、NFCなど様々なモジュールの接続に活用できる。DRAMモジュールのように基板がむき出しになっており、稼働中の抜き差しは想定していない。接続規格はSATA接続のものとPCIeベースのもの、USB3.0ベースのものがある。SSD用としては「Type 2280」と呼ばれる縦22mm×横80mmの横長のものが最も一般的。「Type 2230」と呼ばれる短いものは無線接続モジュールとして使われることが多い。
U.2
以前はSFF-8639と呼ばれていた規格で、主に業務用途(エンタープライズ)向け。大きさは2.5インチまたは3.5インチの2種類で、基板がむき出しではなくケースに覆われていることと、稼働中の抜き差し(ホットスワップ)に対応していることがM.2との主な違い。
用語
シリアルATA(SATA)
従来のATA規格では光速や電気的長さの誤差を無視できない程短くなった信号間隔や高速化に伴う信号同士の干渉によって速度向上が困難になってきた為、シリアル通信にして信号線を減らし、差動伝送により干渉や外来ノイズの耐性を強化した規格。信号線が減った分は伝送速度を大幅に上げることにより、従来のATA規格を超える高速化を実現している。転送速度がSATA6Gbpsで約600MB/sで頭打ちになり、ボトルネックの原因になるため最近ではPCIeを用いたSSDが多い。
NVMe
Non-Volatile Memory Expressの略語。
インテルをはじめ、サムスン、デルなどが参加する団体から策定されたSSD接続規格。後述するPCI Expressを使用している。
PCI Express(PCIe)
シリアルATAと同様に信号の伝送を差動伝送+シリアル通信化して伝送速度を大幅に上げて通信速度を上げた規格。シリアルATAがHDDや光学ディスクなどストレージデバイス用の規格であるのに対し、PCeは拡張バスであるPCIバスの後継規格として登場。必要な転送レートに応じ、「レーン」と呼ばれる伝送線路の束が複数用意でき、レーン数に応じ×1、×4、×8、×16とある。
同じPCIeでも何度も規格が更新されており、世代によってGen ◯と表記される。
例:PCIe Gen4×4(最後の×4はレーン数)
ExpressCard
PCカードバスの後継規格として登場。PCIe×1とUSB2.0をベースに構成されている。ちなみに、読みは同じだがこれとは異なる。
これらの規格は従来の規格と物理的な接続の互換性を持っていないが、ソフトウェア面での互換性はできる限り保つように作られている。
利点
機械稼働部がないことに起因する利点が数多く存在する。
- 多くの場合、アクセスが高速。特にOSを含むソフトウェアの実行など、細かく分散したデータを読み込む使い方に強い。
- 衝撃に強い
- 静音性能が高い
- HDDに比べ形状の自由度が高く、M.2のような小スペースのものもある。
- 省電力(近年の高性能モデルではその限りでは無くなりつつあり、メーカー側もあまりアピールしなくなっている)
欠点
高度な電子機器であることに起因する欠点が存在する。
- 大容量になるほど極端に高価になる(8TB SSDは10万円近くする。対してHDDは14,000円程度。(2020年末時点)※)
- 激しい書き込み処理をすることで記録情報の配置換えが多発しアクセス速度が徐々に低下する
- 書き込み回数制限がある。ゆえに動画の編集など大量のまとまったデータの書き込み、消去を繰り返すニーズには向かない。
- 記憶寿命が短い(メーカー保障値は大抵10年)。後述の問題もあり、長期保存の必要があるデータはバックアップは必須。
- じゃあHDDはどれだけ保つのかと言うと実は3~4年程度。「あれっ」と思ってしまうだろう。だがHDDのそれは「累積稼働時間」つまり電源が入っている時の時間の合計を年数に直すとだいたいこの値になるということ。しかも駆動部分がある機械の常で個体差が激しく5年位でパンクしてしまうものもあれば20年経っても平気なのとかザラに居る。
- 故障が突然発生する。HDDは機械稼働であるため、故障がややわかりやすい。(静電気といった身近な事故の程度で故障)
- HDDと異なり故障時にデータの復旧が難しい。なので定期的なバックアップはHDDよりもさらに重要。(復旧できない点ではSDカードやUSBメモリとほぼ同じ)
- (特に小型の)高性能モデルにおける発熱の激しさとそれによる一時的な速度低下(それでもHDDより遥かに早いが)
トレードオフとなる要素
※↓は高耐久、高容量、高価格、高信頼性、寿命が長い順で表した。
素子の記憶方式 | 容量 | 価格 | 速度 | 信頼性 | 寿命 |
---|---|---|---|---|---|
単一レベル(SLC) | 少ない | 高価 | 高速 | 高い | 長い |
複数レベル(MLC) | 普通 | 普通 | 中速 | 普通 | 普通 |
複数レベル(TLC) | 多い | 安価 | 低速 | 低い | 短い |
複数レベル(QLC) | 超多い | 超安価 | 超低速 | 超低い | 超短い |
SLC(Single Level Cell):1素子に対し1段階の記録をする。1bit/セル。
MLC(Multi Level Cell):1素子に対し複数段階の記録をする。
TLC(Triple Level Cell):1素子に対し3段階の記録をする。3bit/セルのものが現在は主流となっている。
QLC(Quad Level Cell):1素子に対して4段階の記録をする。4Bit/セルというのものが2019年代後半から出てきている。
現状QLCについては読み書きの速度が遅いため、下手に安いものを購入すると安物買いの銭失いになる可能性があるため注意が必要。他にもUSBメモリやSDカードの異常に安値なモデルにも採用している事も少なくない。
もし耐久性を求めるなら高価だがMLC以上のものを探すといいだろう。
※あくまでこの時点での価格比。半導体需給状況による価格変動によってもSSDとHDDの容量あたり価格の比は結構変動する。また、HDDにも言えるが通貨相場の変動もSSDの価格に影響する。
※ちなみにセルの話はSDカードやUSBメモリも同じ仕組みである。
最近の動向
2010年代頃から、大量生産に伴い価格が大幅に下がったため、以前ほど高嶺の花ではなくなった。特にノートパソコンにおいては主流のストレージになっている。ただし容量あたりの単価はHDDよりまだまだ高価なことには変わりなく、デスクトップパソコンではテラバイトクラスのHDDを別に搭載することが多い。
容量辺りのコストと耐久性に優れた3D-NANDを搭載した製品が発売されており、ゲーム機等比較的アクセスが激しい機器でも長期に渡って安定したパフォーマンスを維持できる製品が増えてきている。インテルやキオクシア(旧東芝)、ウェスタンデジタル(サンディスクの親会社)、Samsungなど大手メーカー品やシリコンパワーやトランセンドなどのある程度この分野で長続きしているメーカーの物については一般家庭用途や一般事務用途であればデータアクセスなどの耐久性は十分信頼に耐えうるものだが、絶対に安心できるものではない。故障時のデータ復旧は絶望的であるため、信頼できるものを信頼できるところから購入するべきであることは変わりない。
フラッシュメモリを使わないSSD
業務用の製品として、DRAMを使ったSSDがある。RAMディスクと同様なもので、アクセス速度はフラッシュメモリを使用したSSDに比べはるかに高速であり書き込み回数制限もなく、また書き換えの頻発で書き込み速度が低下する心配もない。しかし、RAMディスクと同様電源が途絶えるとデータが消失してしまう。そのため電源は多重化されており、また装置内のハードディスクに周期的なバックアップが行われデータ消失に備えている。
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パソコン ハードディスク HDD フラッシュメモリ メモリーカード