誘導
- (transcend)英語で「(限界を)超える」「超越する」意の動詞。
- 台湾に本社を置く半導体メモリ製品を中心に製造を行う企業。 日本法人(トランセンドジャパン)も持っている。→TRANSCEND
- 日本の競走馬・種牡馬。
- 『ウマ娘プリティーダービー』にて3をモチーフとして登場するウマ娘。→トランセンド(ウマ娘)
当記事では3に関して解説する。
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名馬の肖像
前へ行け
追いつけなかった
交わせなかった。
どれほどの圧力も
お前を脅かすことは
できなかった。
だから行け
東へ、西へ、砂漠の国へ。
その逃走と闘争を
私たちは見届けよう。
かなた後ろから見守ろう。
【『名馬の肖像』2017年チャンピオンズカップ】
概要
トランセンドとは、JRA所属の競走馬・種牡馬。2010年・11年のジャパンカップダート(現・チャンピオンズカップ)、2011年のフェブラリーステークス・マイルチャンピオンシップ南部杯などを制した。2011年JRA最優秀ダートホース。
また、レパードステークス・みやこステークスの第1回の覇者でもある。
プロフィール
経歴
幼駒時代
母・シネマスコープに、アメリカのダートGⅠを2勝し、日本に輸入されたワイルドラッシュが交配されて誕生。姉のサンドリオン(2003年産、父・コマンダーインチーフ)はオープン時代の紫苑ステークスを制しているが、父・母ともダートに良績を集めるファミリーに産まれた。ノースヒルズのスタッフによれば、「扱いやすい馬で、元気いっぱい」「牧場でも、育成した大山ヒルズでも評価の高い馬」だったという。
3歳(2009年)
順調に成長すると、栗東・安田隆行厩舎に入厩。古馬にも劣らない調教時計を記録し、若干遅めのデビューではあったものの、ダービーが目標に据えられた。
デビューは京都芝の1800mに川田将雅を背に出走。調教の充実度から注目され1番人気に推され先行してレースを進めたが、同じく逃げ馬を追走していた勝ち馬に3/4馬身差遅れた2着に終わる。続戦予定だった芝1600mの3歳未勝利戦はフレグモーネによる出走取り消しとなり、脚元の不安に鑑みてダートの未勝利戦を選択。安藤勝己を背にここを楽々と勝ち抜けると、次走のダートの条件戦も不良馬場を逃げ後続に1秒以上の差をつけ快勝した。再度ダービーへの色気をもって挑んだ初重賞は芝の京都新聞杯。2番手に取りついて馬群を率いる形でレースを進めたが、直線では余力がなく同門のベストメンバーの制覇の後方でゴールイン。調教時やレース後などに鞍上の安藤から「芝も悪くないけどふらふらする面がある。ダートの遅い流れのほうが合っているかも」というコメントがあったことを踏まえ、このレース以降は本格的にダートへと目先を移した。
ダート転向初戦に選ばれたのは新潟ダート1800m・麒麟山特別(1000万円以下)。ダートで揉まれてきた古馬のなかにあって1番人気に推されると、2番手を追走すると最後は後ろを8馬身突き放す、当時のレコードタイムでの圧勝を果たした。鞍上の内田博幸もこの競馬っぷりを「強すぎだよ、反則的なまでにね。(注文?)ないね。レベルが違いすぎて怒られちゃうね」と褒め称え、本馬を保有する前田幸治オーナーもこのレースを契機にドバイワールドカップへの出走意欲を安田師に伝えている。続けて、3歳馬向けのダート重賞として新たに設置されたレパードステークスに出走。前走で騎乗した内田が騎乗停止となったため、松岡正海が手綱をとった。すっと2番手に取りつくと逃げるアドバンスウェイを追走、直線半ばで突き放すとスーニやシルクメビウス、ワンダーアキュートといったのちの強豪も歯牙にかけず、本来は高速決着になりにくい良馬場ながら自身が叩きだしたレコードタイの数字を刻んで完封した。
続いてオープン級古馬との初対決として選ばれたエルムステークスでは、軽ハンデもあって単勝1倍台の人気に推されるも前3頭に離された4着。内田がサクセスブロッケンに騎乗するため松岡との再タッグで臨んだ武蔵野ステークスは先行できず中団で外目を回るこの馬には向かない展開になり、同世代・ワンダーアキュートの逃走劇の裏で6着として3歳シーズンを終えた。
4歳(2010年)
シーズン初戦はオープン・アルデバランステークス。安藤との再タッグで2番手で追走する1番人気のフサイチセブンをピッタリマークすると、直線で抜け出したところを1馬身差し切って勝利。2頭が競り合いながらゴールするなかで、それまでのレコードを1秒以上更新するものであった。放牧を経て出走したアンタレスステークスで単勝1番人気に推され、グレード制重賞初制覇の期待がかけられた。レース本番では激しく急かしていったラッシュストリートをよそに先行集団につけ、先行してフサイチセブンなどを捉えにかかったが、4角で手応えを失い8着に大敗した。
続けて中京競馬場改修の影響でこの年から京都競馬場で開催されていた東海ステークスに参戦。鞍上の安藤勝己が同日に開催されるオークスでオウケンサクラに騎乗するため、このレースから藤田伸二をパートナーに迎えた。それまでノースヒルズ関連の競走馬に藤田が騎乗することは少なかったが、2010年のドバイワールドカップの際に、同レースの視察に向かっていた前田幸治オーナーと、ローレルゲレイロでドバイゴールデンシャヒーンに騎乗予定があった藤田が飛行機で偶然隣の席になったことがあり、このときに藤田に対して前田オーナーが「今後チャンスがあれば騎乗を依頼する」と伝えたことによるコンビ結成だった。これ以降、引退まで藤田が継続して騎乗を続けた。
レース本番は、ゲートこそ5分のスタートだったものの藤田は押していってこの馬を先頭に立たせる形を作り、直線で早めに引き離しにかかった。結果こそシルクメビウスの末脚にわずかに屈して2着となったものの、これ以降の強引にハナを奪って粘らせるスタイルが確立されたレースとなった。
秋初戦は日本テレビ盃。同年の帝王賞を制した船橋所属のフリオーソに対してハナを譲らず直線入り口まで半馬身ほどの差をつけて逃げる形をとった。しかし最終直線の手応えでは完全に見劣り、3~4番手で先行していたスマートファルコンの追撃はしのいだものの2馬身半差で2着。中央に舞台を戻して参戦した新設重賞のみやこステークスでは、これまでの藤田との2レース同様ハナを奪う形をとると4角で加速して先行勢を突き放し、外から伸びたキングスエンブレムを封じて優勝。レパードステークスに続いて新設重賞を制したことでメディアからは「初物キラー」との称号も頂戴した。
優先出走権を得て、本馬初となるGⅠレース・ジャパンカップダートに出走。ブリーダーズカップに出走した前年度の統一王者・エスポワールシチーやJBCクラシックを制したスマートファルコンといった中心的な存在が不在、さらには史上初となる海外馬・地方馬の参戦が0頭となった混戦のなか、単勝1番人気に推された。
レースでは、スタート直後にハナを奪う。後ろのバーディバーディにマークされながらもマイペースを刻み、最後は猛追してきたグロリアスノアをわずかに退けて初制覇を飾った。管理する安田隆行調教師は調教師として初めてのGⅠ制覇、馬主のノースヒルズについても2007年・オークスのローブデコルテ、自社生産馬としては2005年のヘヴンリーロマンス以来久々のGⅠ勝利となった。
5歳(2011年)
フェブラリーステークス~JRAダート統一王者へ~
放牧を経て、次走に選ばれたのはフェブラリーステークス。前走からのぶっつけや良績が1800m以上に集中していること、府中の長い直線を逃げ切れるかどうかが不安視されたが、それでもエスポワールシチーやスマートファルコンといった中央勢の中心的存在が不在となったこともあって3.5倍の単勝1番人気となった。
地方ではあり得ない芝スタートに戸惑い後方になったフリオーソをよそに、好スタートから藤田の押っつけに応えて先頭に立つと、マチカネニホンバレとともにハナに立ち先行。直線半ばで先行していたマチカネニホンバレやバーディバーディを振り落とすと、後方から上がり最速の末脚で突入してきたフリオーソも退け、GⅠ連勝を飾った。JRAダートGⅠ連覇はウイングアロー、カネヒキリ、エスポワールシチーに続く快挙であった。
この勝利によって届いたドバイワールドカップの招待を受け、これを受諾した。
ドバイワールドカップ
ドバイワールドカップに向けてヴィクトワールピサ、ブエナビスタとともに出国した直後、東日本大震災が発生。各馬の陣営ともこの時期に競馬をすべきか、ということに躊躇いがあったものの、調教時間を揃える・各陣営スタッフでお揃いのシャツを着るなどの形で協力し、「チーム日本」で調整が進められた。トランセンド自身も日本にはないオールウェザーの馬場にもしっかり対応し、世界の強豪に伍していくため攻めの調整が進められた。
好スタートを切ると藤田の合図に応えて先行。普段は若干気合をこめていく本馬が、中継車のカメラを気にして落ち着いたこともあって、一発を狙った超スロー逃げを展開し13頭を引き連れて競馬を進める展開に。向こう正面から出遅れて最後方になったヴィクトワールピサが先頭までミルコ・デムーロのサインのもとで大捲りを展開するも、それでも引っかからずピサとトランセンドの2頭でまとまって先頭でレースを進める。直線でも手応え十分で回ってきたが、最後まで伸びてきたヴィクトワールピサに先着を許した。それでもこれまで全く日本馬が相手にならなかったドバイの地でワンツーフィニッシュとなり、震災で沈む日本にエールを届けた。
異例のマイルCS南部杯
長期の休みと日本テレビ盃の回避を挟み、次走に選ばれたのはマイルチャンピオンシップ南部杯。この年の南部杯は岩手競馬が東日本大震災で重大な被害を受けたため、「岩手競馬を支援する日」として興行面での収益が見込める東京競馬場での代替開催となった。
府中競馬に岩手のファンファーレが鳴り響いたこのレースでは、トランセンドはぶっつけとなったこともあってか先頭へ行くことができず、代わりに前・統一王者のエスポワールシチーにハナを譲る形に。道中で岩手の星・ロックハンドスターが芝・ダートの境目で転倒し落馬する(のち、予後不良)という波乱もありながらエスポワールシチーが1000m57秒8のハイラップを刻む展開に、本質的にマイルが短いトランセンドは対応に苦慮。コーナーから押しながら追走という形になり、最終直線半ばまで一度もハナに立つことがない厳しい競馬を強いられたが、引き離しにかかるエスポワールシチーを交わしにかかるダノンカモンと併せると驚異的な粘り腰を発揮。最後は逃げるエスポワールシチーや猛追してきたシルクフォーチュン、さらには併せたダノンカモンを競り落とし、東京ダート1600mのコースレコードにコンマ2秒迫る1分34秒8のタイムを刻んで勝利を飾った。
JBCクラシック~砂の最強王者決定戦~
次走に選ばれたのは大井開催のJBCクラシック。トランセンドはこの年中央GⅠ無敗の王者として、昨年のJBCクラシックから東京大賞典、帝王賞を含む6連勝で地方ダートグレードを総なめしてきたスマートファルコンに挑む構図で、2011年の砂の王者を決定するレースとなった。オッズ面でも、スマートファルコンが単勝1.2倍、トランセンドが単勝2.4倍で多くの支持を集め、二強対決の様相を呈した。
好スタートから早々と先頭に立ったスマートファルコンに対し、トランセンドはそれをマークする形で3馬身ほど後ろを追走。後ろはシビルウォーを挟んで大きく置かれる形となり、完全に2頭のマッチレースとなった。しかし、大井のコーナーをぴったりと埒沿いに加速して回るスマートファルコンと武豊に対し、トランセンドはコーナーでやや膨れ、若干おかれる形に。最終直線入り口で手が動きながらも、ゴールから残り100m付近で再加速。ジリジリとスマートファルコンを捉えにかかったが1馬身差まで追い詰めたところがゴール。スマートファルコンの連覇を許した。このレースの3着には3番人気のシビルウォーが入り、3連複は160円、3連単は250円という史上稀に見る低配当を記録した。
ジャパンカップダート・史上初の連覇
前年度覇者として臨んだジャパンカップダートでは、スマートファルコンが出走を回避した一方で、逃げ馬にとって不利となる大外枠に入ったことや、追い切りが秋2戦ほど動かなかったこともあって、人気をエスポワールシチーと分け合う形になった。
内で先行しようとするエスポワールシチーやニホンピロアワーズをいなして早々とハナを叩くと、前年度よりもスローになった前半1分1秒8のタイムで逃走。コーナーで迫ろうとするエスポワールシチーの追撃をかわすと、直線150mを越えたあたりから完全に後続を引き離して1着でゴールイン。史上初となる同レースの連覇を達成した。
JRA主催のダートGⅠ/JpnⅠを全て勝利したという実績が評価され、この年のJRA賞最優秀ダートホースを受賞した。
6歳(2012年)
同年初戦は連覇がかかったフェブラリーステークスに出走し、単勝1倍台の圧倒的な人気に推された。しかし、レースでは先行して押しきりを図るも出足がつかず、3コーナーでは鞍上の藤田の手が動き出す形で、いつもの粘り腰どころか先頭に立つこともできないまま前崩れのペースに巻き込まれて7着に大敗。JCダートで先着したテスタマッタの台頭を許す結果に鞍上の藤田も「もう、全然進んでいかなかった」「気持ちの問題かなあ…」と首をひねった。続けて海外に遠征し前年度の雪辱を期してドバイワールドカップに向かうも、マーク対象だったスマートファルコンが出遅れたことに加え、前年度の走りが警戒されたこともあって後続に厳しく突かれる形となり、まったく見せ場を作れず13着に沈んだ。
スマートファルコンが現役から去った秋初戦・川崎開催のJBCクラシックでは再び1番人気に推されたが、2周目の向こう正面で先頭に立つのがやっとで、最終直線ではまったく粘れずワンダーアキュートに8馬身おかれた3着に終わる。中央に舞台を戻し史上初となる3連覇を目指したジャパンカップダートでも先頭に一度も立つことはなく、それどころか道中で失速しまさかのシンガリ負け。続けてキャリア初めて臨んだ東京大賞典も復調には程遠く、中央勢最下位の7着に終わった。
順風満帆だった2011年とは一転してこの年は未勝利に終わり、ダート王としての威厳はすっかり鳴りを潜めた。
7歳(2013年)
精彩を欠いたレースが続くことから、同年1月9日付で競走馬登録を抹消。アロースタッド繋養の種牡馬となった。
種牡馬成績
地方ダートに優れた産駒を輩出し、特に2017年産のゴールドホイヤーは2020年に南関ダート三冠の1つである羽田盃を制したほか、古馬でも重賞を複数勝利している。
中央では、2023年の阪神スプリングジャンプを2016年産のジェミニキングが制している。