※メインイラストは日本馬初のBC勝ち馬ラヴズオンリーユー(BCフィリー&メアターフ・2021年)&マルシュロレーヌ(BCディスタフ・2021年)
概要
毎年11月上旬に行われる北米及びアメリカ競馬最大の祭典で、芝・ダート・距離・年齢など様々な階級によって区分されたチャンピオンレースに位置付けられるGⅠが期間中にまとめて行われる。これらは世界でも最高レベルの賞金額を誇る。
メインレースは3歳以上・ダート10ハロン戦GⅠのブリーダーズカップ・クラシック。ダート戦をメインとするアメリカ競馬にとって事実上の最強馬決定戦である。
1970年代後半から始まっていた競馬人気の下降を食い止め、アメリカ競馬サークル内に活気をもたらすため、1984年に創設された。提案者はケンタッキー州ゲインズウェイ・ファームのジョン・ゲインズ。1日に多くのGⅠ競走を行なう競馬の祭典という趣旨の開催である。名称は、創設当時は優勝賞金がブリーダー(生産者)の資本から拠出されていたことに由来する。
また、このレースが始まる以前は米国内のGⅠは西海岸・内陸・東海岸の各地域ごとの代表的な馬がメインで出走していたが、本レースのスタートにより全米の有力馬の交流が盛んになった。現在は全米はもちろん特に芝レースでヨーロッパからの出走も多く、近年は西海岸開催において日本馬の参戦も目立つようになった。
なお、他の国際的な競馬の祭典と異なり、毎年各地の持ち回り式で実施されるのが特徴。
また、全ての競走に世界各国のGⅠ競走と比べても比較的高額の賞金が懸けられることである。その多くはアメリカ国内で繋養されている種牡馬の所有者にその種付け料1回分の資金を負担させ、資金を出した種牡馬の産駒のみに出走権を与えることで成立している。かつては米国以外の国で種牡馬登録された産駒の馬が出走する場合、莫大な量の参加登録料が必要だったが、現在は緩和され他国からの参戦がしやすくなっている。
創設時は7種類(クラシック・ターフ・マイル・スプリント・ジュベナイル・ジュベナイルフィリーズ・ディスタフ)だったが、その後レース数が増加されていって現在は14種類。一時期は2歳限定短距離ダート戦のジュベナイルスプリントも施行されていたが現在は廃止され、同じく一時期施行されていた障害競走のスティープルチェイスは「グランドナショナルハードル」に改称の上BCから外され、またダート長距離戦のマラソンもBCから外され「サラブレッドアフターケアアライアンスS」としてアンダーカードで施行されるようになった(現GⅡ)。
- 特にジュベナイルスプリントはアメリカの2歳短距離王者決定戦となることが期待されたものの、出走馬が分散して(2歳牡馬王者決定戦である)ジュベナイルのレベルを下げてしまったこと、何よりそもそも事前想定よりも出走馬が質・量ともに低かったことが災いして僅か2年での廃止となった。
2022年からは14競走すべてGⅠで施行されている。1日目は2歳戦、2日目が3歳以上対象の古馬レース。2歳レースのG1はダート・芝それぞれで牡馬と牝馬でレースが分かれている。古馬レースは芝とダートでそれぞれ混合戦3階級と、牝馬限定戦ダート2階級+芝1階級が設定されている。
2002年からは全米サラブレッド競馬協会(NTRA)代表ティム・スミスの提案により「世界最高クラスの競馬開催」という地位についての訴求力を強化するため、名称が「ブリーダーズカップ・ワールド・チャンピオンシップ(Breeders' Cup World Championships)」に変更された。
他のスポーツのイベントの中継との兼ね合いから、2日目の3歳以上戦のレースの施行順は年によって異なるが、基本的にBCクラシックがメインレースとして位置付けられている他、ダートのレースと芝のレースが交互に施行される。
レース一覧
レース場は持ち回り開催の為毎年異なる。各回のほとんどのレースは同じレース場で実施される。格付けは全てGⅠ。特にサンタアニタパーク競馬場での開催が多い。
一部レースは開催回ごとに距離が異なる。主な距離を掲載。
アメリカの度量衡はヤードポンド法が主流であり、距離はハロン(単位記号:f、1f=201.168m)、重量はポンド(単位記号:lb、1lb=0.4536kg)で定められる。
1日目(フューチャー・スターズ・フライデー)
競走名 | コース | 条件 | 総賞金額 |
---|---|---|---|
BCジュベナイルターフスプリント | 芝5-5.5f | 2歳 | 100万ドル |
BCジュベナイルフィリーズ | ダート8.5f | 2歳牝 | 200万ドル |
BCジュベナイルフィリーズターフ | 芝8f | 2歳牝 | 100万ドル |
BCジュベナイル | ダート8.5f | 2歳牡・セン | 200万ドル |
BCジュベナイルターフ | 芝8f | 2歳牡・セン | 100万ドル |
2日目(チャンピオンシップ・サタデー)
競走名 | コース | 条件 | 総賞金額 |
---|---|---|---|
BCフィリー&メアスプリント | ダート7f | 3歳以上牝 | 100万ドル |
BCターフスプリント | 芝5-6.5f | 3歳以上 | 100万ドル |
BCダートマイル | ダート8f | 3歳以上 | 200万ドル |
BCフィリー&メアターフ | 芝9.5-11f | 3歳以上牝 | 200万ドル |
BCスプリント | ダート6f | 3歳以上 | 200万ドル |
BCマイル | 芝8f | 3歳以上 | 200万ドル |
BCディスタフ | ダート9f | 3歳以上牝 | 200万ドル |
BCターフ | 芝12f | 3歳以上 | 400万ドル |
BCクラシック(メインレース) | ダート10f | 3歳以上 | 600万ドル |
開催地
年度 | 開催地 |
---|---|
1984年 | ハリウッドパーク |
1985年 | アケダクト |
1986年 | サンタアニタパーク |
1987年 | ハリウッドパーク |
1988年 | チャーチルダウンズ |
1989年 | ガルフストリームパーク |
1990年 | ベルモントパーク |
1991年 | チャーチルダウンズ |
1992年 | ガルフストリームパーク |
1993年 | サンタアニタパーク |
1994年 | チャーチルダウンズ |
1995年 | ベルモントパーク |
1996年 | ウッドバイン(カナダ) |
1997年 | ハリウッドパーク |
1998年 | チャーチルダウンズ |
1999年 | ガルフストリームパーク |
2000年 | チャーチルダウンズ |
2001年 | ベルモントパーク |
2002年 | アーリントンパーク |
2003年 | サンタアニタパーク |
2004年 | ローンスターパーク |
2005年 | ベルモントパーク |
2006年 | チャーチルダウンズ |
2007年 | モンマスパーク |
2008年 | サンタアニタパーク |
2009年 | サンタアニタパーク |
2010年 | チャーチルダウンズ |
2011年 | チャーチルダウンズ |
2012年 | サンタアニタパーク |
2013年 | サンタアニタパーク |
2014年 | サンタアニタパーク |
2015年 | キーンランド |
2016年 | サンタアニタパーク |
2017年 | デルマー |
2018年 | チャーチルダウンズ |
2019年 | サンタアニタパーク |
2020年 | キーンランド |
2021年 | デルマー |
2022年 | キーンランド |
2023年 | サンタアニタパーク |
2024年 | デルマー |
2025年 | デルマー(予定) |
沿革
年 | 出来事 |
---|---|
1984 | 創設、第1回開催をハリウッドパークで施行 |
1999 | フィリー&メアターフを創設 |
2007 | ジュベナイルターフ・ダートマイルを創設 |
2008 | ジュベナイルフィリーズターフ・ターフスプリントを創設 |
2018 | ジュベナイルターフスプリントを創設。1日目が2歳戦、2日目が3歳以上戦の構成となる |
2022 | 14競走すべてがGⅠとしての施行に |
余談
日本の地方競馬の祭典「JBC競走」はブリーダーズカップを範として設けられた。
当初は「ジャパンブリーダーズカップ」という名称だったが、本家のブリーダーズカップから「ブリーダーズカップの名は誤解を招くから使わないでくれ」と抗議が来たため、「ジャパンブリーディングファームズカップ」と改称した経緯がある。
このようにブリーダーズカップを模範として日本のJBC競走のように各国でブリーダー主導のレースが作られていくようになった。
尚、日本ではポンドヤード法が全く浸透していないので度量衡はメートル・キログラムが使用される。