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予後不良

よごふりょう

医療用語で「回復の見通しが立たない場合」を指す。この項目では、競馬の予後不良について記述する。
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概要

競走馬の故障の中でも、最悪の事態と言えるのがこの予後不良である。
多くの場合は脚部の粉砕骨折など、非常に重い怪我をした場合にこの診断が下される。

にとって予後不良とは、簡単に言えば死亡宣告のような物と言える。
何故なら予後不良診断が下されるほどの重傷の場合は、その状態からの回復が困難であるケースがほとんどだからである。
馬という哺乳類は、堂々とした体躯に反して胃腸の栄養吸収の効率が悪く、加えて雑食の人間のようにタンパク質やカルシウム等のミネラルを多量に摂取できるわけでなく、またなど偶蹄目のように胃を複数備えてそこで細菌を飼って食した草を発酵させタンパク質やミネラル類を合成するといった器官も持たないため、骨折や筋組織のダメージ完治に長い時間を要する。加えてその間、歩くことができず500kg以上の馬体を維持するための心肺機能や免疫力も低下するため、さらなる疾患を併発させて苦しむリスクを伴う。
この「骨折による歩行困難」と「体力低下による疾病の発症」という二重の枷により、予後不良の馬はどうあがこうとも痩せ衰える以外の未来しかない残酷な結末を迎える。

このため、予後不良診断が下されてしまった競走馬には薬を用いた安楽死処分が行われ、その馬は生涯を終える事となる。(昔は銃で行ったりすることがある。)

この安楽死処分を「残酷だ」と言う者も居るが、馬にとってはそれ以上生きながらえさせる事自体が苦痛となる事が多い。
脚に重度の故障を患った馬は、折れた足をかばうようにして立つため他の足にもかなりの負担がかかる。
そして、重い負担によって他の脚も蹄葉炎(Wikipedia-蹄葉炎)等を発症し、自立不可能となってしまう。
腹帯等で吊る事により足を地面に付かせないようにはできるが、馬と人は言葉が通じないためこのような歩くことができない環境では大きくストレスを溜めてしまい、合併症を起こしてしまったり治療困難な事態も珍しくない。
最後に待っているのは、痛みによるショック死か、衰弱死である。
ビンゴガルーヤマニングローバルサクラローレルのように極稀に、予後不良級の怪我を治療する事に成功したケースもあるが、予後不良からの復帰は莫大な費用がかかる上、回復の可能性も非常に低いため、予後不良の診断が下された馬は安楽死させる事が普通となっている。過去にテンポイントサクラスターオーマティリアルも治療を受けたものの、テンポイントは症状悪化により衰弱死、サクラスターオーは骨折を発症させたため安楽死になっている。また、マティリアルは手術後の痛みによりストレス性の出血性大腸炎(これは馬にとっては大変致命的な病である)を起こし、安楽死の措置を取ることとなったが、マティリアルが措置を受ける前に出血性ショックで死亡した。
サラブレッドは経済動物。金を作らない馬に大金をかける程、競馬の世界は甘くは無いのである。
元々馬は心臓だけでは血流を身体の隅々まで行き届かせる事ができず、脚をポンプ代わりとして歩く事によりはじめて隅々まで血流を行き届かせる事ができる動物であり、結局無理に生きながらえさせるよりは、いっそ安楽死させた方が馬にとっても人にとっても良い事なのである。
なお、現在のように安楽死処分が徹底されるようになったのは、後述するある一頭の馬が辿った末路が問題となったためである。

ハマノパレード問題

ハマノパレードは、父テューダーペリオッド、母オイカゼ、母父ソロナウェーという血統の牡馬。
高い素質を持っていたが、反面非常に気性が荒く、癖馬の達人だった元厩務員をわざわざ呼んできて担当者にする程であった。
その後骨膜炎の発症など紆余曲折を経たものの、その才能は1973年の宝塚記念で開花。
当時の芝2200mの日本レコードを叩きだし、優勝した。

しかし、その直後に出走した高松宮杯で転倒し、左第一関節脱臼および左第一指節種子骨粉砕骨折を発症してしまう。
ハマノパレードには予後不良の診断が下されてしまい、その場で安楽死処分を受けた…と、思われていたのだが…

高松宮杯での事故の翌日、愛知県の食肉市場に「さくら肉『本日絞め』400キログラム」という商品が入荷した。
さくら肉と言えば、いわゆる馬肉の事。食肉市場ではごくありふれた商品だが、その商品の入荷後から「あの肉は、予後不良となったハマノパレードの物では無いか?」という不穏な噂が流れ始めた。
そして、この噂を聞いたスポーツニッポンが取材を行った結果、信じがたい事実が明るみとなった。

ハマノパレードは予後不良診断後に痛みを和らげられる事無く一晩放置され、翌日に愛知県近郊の屠殺場で屠殺され、食肉となって市場に送られていたのであった。

華のグランプリホースが迎えた、あまりにも無残な最期。この事実を知った競馬ファンや動物愛護団体からは抗議が殺到。
日本中央競馬会も動きだし、現在の「予後不良となった競走馬は即刻安楽死させる」というシステムが周知徹底される事となった。

ちなみに、当時は予後不良となった競走馬が屠殺される事は珍しくなかったらしい。

予後不良と診断された著名な馬

※マークのついた馬は下に備考を記載

馬名故障を発症したレース故障の詳細主な勝ち鞍
キーストン第15回阪神大賞典左第一指関節完全脱臼第32回東京優駿
ハマノパレード第3回高松宮杯左第一関節脱臼等第14回宝塚記念
テンポイント第25回日経新春杯左後脚開放骨折第22回有馬記念
キングスポイント第92回中山大障害(春)右足根粉砕骨折第88回中山大障害(春)
ノアノハコブネ第33回阪神大賞典寛骨骨折第46回優駿牝馬
サクラスターオー第32回有馬記念左前脚繋靱帯断裂等第47回皐月賞
マティリアル第34回京王杯オータムハンデ右前第一指節種子骨複骨折第36回スプリングステークス
サンエイサンキュー第37回有馬記念右トウ骨手根骨複骨折第28回札幌記念
ライスシャワー第35回宝塚記念左第一指関節開放脱臼第111回天皇賞(春)
ワンダーパヒューム第31回京都牝馬特別左第一指関節脱臼等第55回桜花賞
ハシルショウグン1996年障害4歳上未勝利左前第一指関節脱臼第16回帝王賞
ホクトベガ第2回ドバイワールドカップ左前腕節部複雑骨折第18回エリザベス女王杯等
サイレンススズカ第118回天皇賞(秋)左前脚手根骨粉砕骨折第39回宝塚記念
タガノテイオー第52回朝日杯3歳ステークス左第一趾骨粉砕骨折第5回東京スポーツ杯3歳ステークス
シンボリインディ第33回ダービー卿チャレンジトロフィー右下腿骨開放骨折※第4回NHKマイルカップ
ラフィアンフーリッシュプレジャーとのマッチレース右前脚種子骨粉砕骨折(旧)NY牝馬3冠
バーバロ第131回プリークネスステークス右後脚球節下第一趾骨粉砕骨折等第132回ケンタッキーダービー
アントニオバローズ(出走せず)肺胸膜炎第43回シンザン記念
イコピコ2011年夏至ステークス右第一指関節脱臼第57回神戸新聞杯
ロックハンドスター第24回南部杯右上腕骨骨折第36回桐花賞
ジョワドヴィーヴル(出走せず)左後肢の下腿骨粉砕骨折第63回阪神ジュベナイルフィリーズ
マジェスティバイオ2013年イルミネーションジャンプステークス右前浅屈腱断裂第14回中山グランドジャンプ
メルシーエイタイム第136回中山大障害左第二趾関節脱臼第130回中山大障害
オオエライジン第37回帝王賞左前球節部完全脱臼第12回兵庫ダービー
アポロマーベリック第138回中山大障害左第三中手骨開放骨折第16回中山グランドジャンプ
シングウィズジョイ第58回アメリカジョッキークラブカップ左上腕骨骨折第50回サンスポ賞フローラステークス
タガノゴールド第68回北國王冠心臓麻痺第62回園田金盃

備考

馬名内容
キーストン落馬した山本騎手に歩み寄り、気遣うような仕草を見せた。
ハマノパレード事故後、屠殺場に送られ屠殺される
テンポイントファンの声に押され、延命治療が行われるも43日後に衰弱死。ただし、この時の治療の試みは無駄になったわけではなく、テンポイントの知見を元に獣医学が進歩し、その後多くの馬が助かるようになったことも事実である。そうして確立された現在の医療技術ならばテンポイントは助かるとも。テンポイントが顕彰馬に選ばれた理由には恐らくこの事も含まれている
サクラスターオーファンの声と馬主の意向によって治療が行われたが、約4か月半後に自立不可能となり、安楽死
シンボリインディスタート前にゲート内で暴れ、開放骨折を発症
バーバロゲートを壊して発馬、再スタート後すぐ競走中止。懸命の治療により一旦は快方に向かったものの、3か所に蹄葉炎を発症したため安楽死
アントニオバローズバレンタインS出走後、喘鳴症を再発。手術を行ったが、放牧先への移送中に肺炎を発症し、栗東トレセンで治療を行ったが回復せず、肺胸膜炎となり安楽死
ジョワドヴィーヴル鳴尾記念に向けて調整をしていたところ、途中で異常が発生し診療所に向かわせたところ、骨折が判明となり安楽死


余談

一部の競馬ゲーム(ダービースタリオンウイニングポスト(初代・6以降))にもこの要素が取り入れられ、プレイヤーのトラウマ要素にもなっている。(ダビスタの場合は「予後不良と診断されました」(シリーズによっては安楽死という言葉も追加されている)のテロップが出てその後生涯成績が出る、ウイニングポストのプレイヤー所有馬の場合は生涯成績の表示の後に「刹那の競走馬生活を駆け抜けた優駿 その志半ばでターフにその生命捧げる (馬名)よ、安らかに眠れ」というテロップが出てプレイヤー所有馬の調教師がその馬が予後不良と診断されたことをプレイヤーに伝える。また、プレイヤーが所有していない史実の馬(上記のライスシャワー、サイレンススズカ等)が予後不良になった場合、秘書がその馬が予後不良と診断されたことをプレイヤーに伝える。)

競馬は博打である以上、競馬場は多かれ少なかれ鉄火場のような雰囲気が有るが、予後不良のアナウンスが流れた際は、例え未勝利馬だろうが重賞馬だろうが空気が重くなる。

競馬関係、特にJRAが、広報のためにあらぬ方向へ突っ走った時には「公式が予後不良」と言われる事がある。
例えばJAPAN WORLD CUPとかウマドンナとか。

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