概要
通常の競馬は、馬に騎手がまたがり、そのスピードを競うものであるが、ばんえい競馬は馬がソリを曳き、騎手もソリに乗りながら馬をコントロールし所定の距離を競走するものである。
(これ以外にも1軸の馬車を引く「繋駕速歩競走」というのが北米、オーストラリア、ヨーロッパで盛んに行われており、日本でも中央競馬は1968年、地方競馬では1971年まで実施されていた)
馬も軽種のサラブレッドではなく体重800-1200kgの重種である「ばん馬」が使用される。
ばん馬は品種としての管理もサラブレッドほど厳しくはなく、「ペルシュロン」、「ブルトン」、「ベルジャン」など出走登録が可能な品種が多く、その交雑種も出走させることができる。
別の純血種同士の子は「半血種」と呼ばれ、更にその子は「日本輓系種」として登録される。
軽種との交雑種である「輓交種」は出走が認められないが、輓交種と重種の子は日本輓系種として登録することが可能。
一応平地競走や障害競走でもサラブレッド以外に「アラブ」との交雑種である「アングロアラブ」という品種は出走させることができたが、アングロアラブより俊足かつ繊細なサラブレッドの管理方法が確立したため、足の速さで劣るアングロアラブは形骸化したルールのみが残り日本の競馬界からは事実上廃絶されてしまっている。
北海道帯広市の帯広競馬場において、世界で唯一馬券の発売を伴うばんえい競馬が行われている。なお、道内では馬券を発売しないばんえい競技(草ばん馬)も行われている。
帯広競馬場でのばんえい競馬
ばんえい十勝の愛称で行われている。
コースは直線200mであり、陸上短距離のように各馬のレーンが分かれている。
コースは平坦ではなく、コース上に大小異なる盛土による障害(丘)が存在する。
スタート直後に高さ1mの第1障害、中盤以降に高さ1.6mの第2障害がある。第1障害は難なく乗り越えることがほとんどだが、第2障害は上りはじめの前に停止し呼吸を取ることが多い。
また、ゴールの判定は馬の鼻先ではなく、ソリの後端がゴールを越えたところで判定する。
ソリの重量は季節やレースのグレードによって変化し、重い場合は1tになる。
レースの見どころ
他の競馬と異なり人が追い付ける程度のかなり遅い速度でレースが展開されるため、コース脇の観客は馬と並走しながらレースを見物することもできる。
そしてそんな臨場感を味わえる中での一番の見どころはやはり第二障害における「坂越え」だろう。
この大障害は、通常の競馬以上に馬と騎手の呼吸を合わせる必要があり、騎手はいかに馬に対して的確な呼吸を指示できるか、また馬自身もいかに己の筋肉を使いこなしてソリを坂の頂点まで牽引できるかが勝負の分かれ目となる。
どれだけ早い馬であろうとこの第二障害で脱落する物は後を絶たず、また第二障害で全力を尽くした結果ゴールラインを自分の体が越えた瞬間に燃え尽きて立ち止まってしまう馬もいるなど、本当にソリがゴールに収まるまで結果が分からない予測不能の大混戦が起き得る。
ソリの重量と坂に負けない体力、その坂を踏破するに足る呼吸と肉体の技、予断を許さず最後まで騎手との連携を絶やさずにいる心力と、普通の競馬とは相通じながら全く異なる要素が要求される。
心技体すべてを尽くしたものだけが、勝利の栄冠を手に出来るのである。
冬場などは身体中から熱気を立ち昇らせて走る馬を見ることができ、その重機にも似た迫力は圧巻の極みである。
協賛競走
帯広競馬場は、協賛競走という制度がある。
これは、協賛金1万円で好きなレースに好きな名前を付けることができるもので、これを利用して様々な名前のレースがこれまでに開催されてきた。
話題になったものだと、以下のようなものがある
- もがみんかわいい杯
- 冷蔵庫の中身点検記念
- TOKYOの山口君帯広初上陸杯
- うさぴょん第2の職場お疲れ
- 右手知りませんか特別
- 祝 長尾景くんお誕生日記念
- 結婚したのか俺以外の奴と杯
- 文鳥よ千年生き宇宙を翔べ杯
- もういい。俺が走る。
- そして輝くウルトラソウル!杯!
ちなみに、つけたレース名は競馬新聞等の予想欄や馬券にもバッチリ載る。それ以外にも、そのレースの勝利馬と記念撮影できたりする特典もある。
関連項目
(関連作品・キャラクター)
『アイドルマスター』
:2011年11月20日に帯広競馬場でコラボを開催。
『銀の匙』
:作中でばんえい競走が行われ、2013年6月29日には帯広競馬場でコラボを開催。
:2022年9月3日に帯広競馬場でコラボを開催。
:2022年9月17日〜19日と、2023年9月23日〜24日に帯広競馬場でコラボを開催。
(公式)
:ばん馬をモチーフとしてデザイニングがされた。
(非公式)
ばんえいウマ娘(『ウマ娘プリティーダービー』)
:一部のファンらによる二次創作。