概要
何らかの理由で人生の先が見込めない動物を、苦しまないで死なせることである。
一般的には保健所送りにされて時間の経った犬や猫、骨折(予後不良)した競走馬に施す処置だが、他の動物や人間にも適用される。
海外の一部では人間に対しても合法で行われている。代表的なのはスイスで、最も古い1942年に始まった。
ただし、実施には回復不能な病や障害と、それに伴う耐えきれない苦痛があるのが前提となり、厳格な審査を要するため簡単には受けられない。
自殺と安楽死
安楽死を合法化すべきという議論は国を問わず定期的に沸き起こる。
理由は自殺対策である。
自殺の理由は様々だが、それぞれ生きることに苦しみを抱いている点は共通している。
それを具体的な救済もなく精神論的に「生きろ」と強制する方が残酷であり、安らかに死ねるならそうしたいという話は多い。
実際、世の中の自殺は飛び降りや電車への飛び込み、首つりなど一瞬とはいえ多大な苦痛を伴うことになり、安らかに自殺する方法はまず無い。
日本でも、完治の見込みがない病気の患者が医者に裏金を渡し、薬物注射による安楽死を依頼したという事件があった。
当然ながら法整備がされていないため医者は殺人容疑で逮捕されたが、人それぞれの倫理観により善悪の判断が分かれる事例であり世間の議論を呼んだ。
長らく世界的に安楽死が法制化されなかった理由は、ひとつはキリスト教やイスラム教国において「生死は神が決める」という思想が強いこと。もう一つは優生学や新自由主義支持者等により「福祉を削減してどんどん安楽死させろ」という主張が行われる可能性が高いことである
。
しかし、2010年代以降はキリスト教圏を含む欧米を中心に安楽死の合法化が急速に拡大している。中でもカナダが最も急進的に法制化を進めているとされ、世界的に安楽死への態度が変わりつつある。
2020年代に入ってからは、ドイツ、オーストリア、ニュージーランドなどで相次いで安楽死の合法化が行われた。
余談
- 相模原障害者施設殺傷事件の死刑囚は、「意思疎通のとれない障害者は一方的に安楽死させるべき」という主張をしているが、これは安楽死ではなく虐殺であり、前提が間違っている。そもそも安楽死というのは本人の明確な意思表示が必要である。ALS患者嘱託殺人事件を患者本人が望んでいた証拠があるのでこれと一緒たにする発言も誤りである。
- COVID-19流行時も、特に急激に死者・重症者が急増したアメリカでは、厳格な行動制限を採らずに、州ごとにトリアージガイドラインを策定した。これに対し、当時のドナルド・トランプ大統領に対し、「弱者の切り捨て」という非難もあった。また、自己責任意識の強いネットユーザーからは、日本でも高齢者や基礎疾患のある人しか、ほぼ亡くならない事が分かると、彼らを切り捨てて経済を再開させるべきとの意見も多く見られた。